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【日本】国交省、気候変動考慮の河川整備基本方針改定。流域治水で企業の自主防衛必要性増す

 国土交通省は、今後気候変動の影響により更に洪水被害が激甚化するとの予測を踏まえ、治水計画を「過去の降雨実績に基づくもの」から「気候変動の影響を考慮したもの」へと変更する作業を進めている。8月30日には3つの水系で長期計画変更が決まり、10水系で変更が確定した。

 国土交通省は、2020年の熊本県球磨川の河川氾濫を機に、治水計画を「過去の降雨実績に基づくもの」から「将来の気候変動影響を考慮したもの」へと変更し、過去実績ではなく将来予測をベースに計画の必要性を判断する大規模な方針転換を行った。同時に、治水計画で万全な対応を行い、流域住民には安心して暮らしてもらうという考え方から、河川の流域のあらゆる関係者が協働して流域全体で行う治水対策「流域治水」への転換も決めた。これにより、周辺地方自治体、企業、住民が治水対策の当事者となり、自分事化して対策していく必要性が出てきた。

【参考】【日本】国交省と経産省、災害時電源でEV等活用のマニュアル発表。流域治水への転換も(2020年7月13日)

 最初の長期治水計画の変更は、2021年10月に近畿地方の新宮川水系と、宮崎県の五ヶ瀬川水系で、気候変動を踏まえた初の河川整備基本方針が策定。その後も、国土交通省が直接所管する一級河川の水系で、基本方針の改定が進められており、球磨川水系、十勝川水系、阿武隈川水系、多摩川水系、関川水系の5水系についても河川整備基本方針の変更が完了。そして、8月30日には、狩野川水系、由良川水系、肱川水系でも変更が完了した。すでに、吉井川水系、大野川水系、小丸川水系、天竜川水系でも変更の議論が始まっている。

 例えば、今回の計画変更では、狩野川水系では、長期的な河川整備の目標流量である洪水の規模(基本高水)が引き上げられた。狩野川水系は大仁地点で4,000m3/sから、4,600m3/sに、由良川水系は福知山地点で6,500m3/sから、7,700m3/sに、肱川水系は大洲地点で6,300m3/sから、7,500m3/sへと変更となった。

 また、これまでは河川の氾濫阻止が行政の至上命題だったが、気温が2℃上昇した場合には、洪水ピーク流量は平均で2割増、4℃上昇時には4割増となることから、氾濫阻止が不可能になるとの考えに至っており、「流域治水」の概念に変更となった意味は大きい。

 まず、河川の周辺に広がる田畑や住宅では、雨水貯留浸透施設やため池、「田んぼダム」等の自主対策が推奨される。これにより河川氾濫の要因となる雨水の河川への大量流入を防ぐ。

 しかし、それでも氾濫阻止が確実にはできないことから、行政の主眼は、河川氾濫を前提にした流域全体で協力した被害軽減へと移る。具体的には、土地利用の規制・誘導・移転促進、不動産取引時の水害リスク情報提供、金融による誘導の検討等までに及ぶことになる。さらに、企業や個人は、工場や住宅のスイン水対策の自己防衛も必要となる。

 国土交通省は、流域治水を機能させるためには、「流域治水を自分事と捉え、具体的に取り組もうとする人が増える」ことが最大のカギとしている。それにより、個々人や個々の企業での自主防衛が始まり、さらに防災関連市場が活性化し、水害関連の事業機会を活かそうとする人も増えてくるとしている。

【参照ページ】気候変動を考慮して狩野川、由良川及び肱川の長期計画を変更しました
【参照ページ】流域治水の推進に向けた普及施策の行動計画をとりまとめました
【参照ページ】河川整備基本方針の変更の考え方について

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 国土交通省は、今後気候変動の影響により更に洪水被害が激甚化するとの予測を踏まえ、治水計画を「過去の降雨実績に基づくもの」から「気候変動の影響を考慮したもの」へと変更する作業を進めている。8月30日には3つの水系で長期計画変更が決まり、10水系で変更が確定した。

 国土交通省は、

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 国土交通省は、今後気候変動の影響により更に洪水被害が激甚化するとの予測を踏まえ、治水計画を「過去の降雨実績に基づくもの」から「気候変動の影響を考慮したもの」へと変更する作業を進めている。8月30日には3つの水系で長期計画変更が決まり、10水系で変更が確定した。

 国土交通省は、

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 国土交通省は、今後気候変動の影響により更に洪水被害が激甚化するとの予測を踏まえ、治水計画を「過去の降雨実績に基づくもの」から「気候変動の影響を考慮したもの」へと変更する作業を進めている。8月30日には3つの水系で長期計画変更が決まり、10水系で変更が確定した。

 国土交通省は、2020年の熊本県球磨川の河川氾濫を機に、治水計画を「過去の降雨実績に基づくもの」から「将来の気候変動影響を考慮したもの」へと変更し、過去実績ではなく将来予測をベースに計画の必要性を判断する大規模な方針転換を行った。同時に、治水計画で万全な対応を行い、流域住民には安心して暮らしてもらうという考え方から、河川の流域のあらゆる関係者が協働して流域全体で行う治水対策「流域治水」への転換も決めた。これにより、周辺地方自治体、企業、住民が治水対策の当事者となり、自分事化して対策していく必要性が出てきた。

【参考】【日本】国交省と経産省、災害時電源でEV等活用のマニュアル発表。流域治水への転換も(2020年7月13日)

 最初の長期治水計画の変更は、2021年10月に近畿地方の新宮川水系と、宮崎県の五ヶ瀬川水系で、気候変動を踏まえた初の河川整備基本方針が策定。その後も、国土交通省が直接所管する一級河川の水系で、基本方針の改定が進められており、球磨川水系、十勝川水系、阿武隈川水系、多摩川水系、関川水系の5水系についても河川整備基本方針の変更が完了。そして、8月30日には、狩野川水系、由良川水系、肱川水系でも変更が完了した。すでに、吉井川水系、大野川水系、小丸川水系、天竜川水系でも変更の議論が始まっている。

 例えば、今回の計画変更では、狩野川水系では、長期的な河川整備の目標流量である洪水の規模(基本高水)が引き上げられた。狩野川水系は大仁地点で4,000m3/sから、4,600m3/sに、由良川水系は福知山地点で6,500m3/sから、7,700m3/sに、肱川水系は大洲地点で6,300m3/sから、7,500m3/sへと変更となった。

 また、これまでは河川の氾濫阻止が行政の至上命題だったが、気温が2℃上昇した場合には、洪水ピーク流量は平均で2割増、4℃上昇時には4割増となることから、氾濫阻止が不可能になるとの考えに至っており、「流域治水」の概念に変更となった意味は大きい。

 まず、河川の周辺に広がる田畑や住宅では、雨水貯留浸透施設やため池、「田んぼダム」等の自主対策が推奨される。これにより河川氾濫の要因となる雨水の河川への大量流入を防ぐ。

 しかし、それでも氾濫阻止が確実にはできないことから、行政の主眼は、河川氾濫を前提にした流域全体で協力した被害軽減へと移る。具体的には、土地利用の規制・誘導・移転促進、不動産取引時の水害リスク情報提供、金融による誘導の検討等までに及ぶことになる。さらに、企業や個人は、工場や住宅のスイン水対策の自己防衛も必要となる。

 国土交通省は、流域治水を機能させるためには、「流域治水を自分事と捉え、具体的に取り組もうとする人が増える」ことが最大のカギとしている。それにより、個々人や個々の企業での自主防衛が始まり、さらに防災関連市場が活性化し、水害関連の事業機会を活かそうとする人も増えてくるとしている。

【参照ページ】気候変動を考慮して狩野川、由良川及び肱川の長期計画を変更しました
【参照ページ】流域治水の推進に向けた普及施策の行動計画をとりまとめました
【参照ページ】河川整備基本方針の変更の考え方について

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