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【金融】低炭素戦略と株価収益率の関係。スタンフォード大研究者ペーパーを読み解く

 米スタンフォード大学の学際研究組織「グローバル・プロジェクツ・センター」のSoh Young In研究員率いるチームは2月8日、気候変動リスク対応投資の財務リターンを分析したワーキングペーパー「Is ‘Being Green’ Rewarded in the Market?: An Empirical Investigation of Decarbonization Risk and Stock Returns」を発表しました。気候変動に配慮したポートフィリオは超過リターンを得られることが判明したと報告しています。

 同ワーキングペーパーは、米上場企業736社の2005年1月から2015年12月までの11年間のデータを対象とし、企業単位の原単位二酸化炭素排出量(分母は売上)、株価収益率、他のリスクファクターを分析。二酸化炭素排出量データはTrucost、株価収益率データはCRSP、他の財務変数はCompustat、ESGスコアはMSCI ESGリサーチを用いています。既存研究では、二酸化炭素排出量については、企業自身が情報開示するデータを用いることが多かったのですが、横比較するには外部機関のデータのほうが適していると判断し今回は第三者のTrucostのデータが用いられました。

 同研究ではまず、超過リターン分析を実施。原単位排出量の少ない企業をロング(買い持ち)、多い企業をショート(売り持ち)するポートフォリオ「EMI」を独自に設定し、株価収益率をシミュレーションを実施しました。結果、同ポートフォリオは超過リターンが得られました。

 続いて、超過リターンの帰属ファクターを見出すため、一般的なリスクファクターであるバリュー、サイズ、モメンタム等を含め分析を行った結果、同ポートフォリオの超過リターンは一般的なリスクファクターでは説明ができず、3.5%から5.4%の超過リターンが得られた結論づけています。

 さらに超過リターンの源泉を探るため、原単位二酸化炭素排出量の少ない企業のファンダメンタルを分析したところ、トービンのQ理論として知られる「市場での企業価値/資本再取得価格」とROI、カバレッジ・レシオが高く、ROAは低いことがわかりました。また、ガバナンスに優れた企業ほど、原単位二酸化炭素排出量が少ないことがわかりました。

 加えて同研究は、原単位二酸化炭素排出量の削減を投資家が迫ったという逆の因果関係があったかをチェック。しかし、同期間に投資家が二酸化炭素排出量削減を積極的に要望したということは見いだせず、逆の因果関係による説明も棄却。さらに、他のマクロファクターとして、インフレーション、原油価格、非伝統的金融政策等の影響も確認したが、有意な結果は得られませんでした。

 最終的に、同論文では、二酸化炭素排出量ファクターは超過リターンの源泉として長期的に機能し続けていると提案しています。

【ペーパー】Is “Being Green” Rewarded in the Market? An Empirical Investigation of Decarbonization and Stock Returns

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 米スタンフォード大学の学際研究組織「グローバル・プロジェクツ・センター」のSoh Young In研究員率いるチームは2月8日、気候変動リスク対応投資の財務リターンを分析したワーキングペーパー「Is ‘Being Green’ Rewarded in the Market?: An Empirical Investigation of Decarbonization Risk and Stock Returns」を発表しました。気候変動に配慮したポートフィリオは超過リターンを得られることが判明したと報告しています。

 同ワーキングペーパーは

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 米スタンフォード大学の学際研究組織「グローバル・プロジェクツ・センター」のSoh Young In研究員率いるチームは2月8日、気候変動リスク対応投資の財務リターンを分析したワーキングペーパー「Is ‘Being Green’ Rewarded in the Market?: An Empirical Investigation of Decarbonization Risk and Stock Returns」を発表しました。気候変動に配慮したポートフィリオは超過リターンを得られることが判明したと報告しています。

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 米スタンフォード大学の学際研究組織「グローバル・プロジェクツ・センター」のSoh Young In研究員率いるチームは2月8日、気候変動リスク対応投資の財務リターンを分析したワーキングペーパー「Is ‘Being Green’ Rewarded in the Market?: An Empirical Investigation of Decarbonization Risk and Stock Returns」を発表しました。気候変動に配慮したポートフィリオは超過リターンを得られることが判明したと報告しています。

 同ワーキングペーパーは、米上場企業736社の2005年1月から2015年12月までの11年間のデータを対象とし、企業単位の原単位二酸化炭素排出量(分母は売上)、株価収益率、他のリスクファクターを分析。二酸化炭素排出量データはTrucost、株価収益率データはCRSP、他の財務変数はCompustat、ESGスコアはMSCI ESGリサーチを用いています。既存研究では、二酸化炭素排出量については、企業自身が情報開示するデータを用いることが多かったのですが、横比較するには外部機関のデータのほうが適していると判断し今回は第三者のTrucostのデータが用いられました。

 同研究ではまず、超過リターン分析を実施。原単位排出量の少ない企業をロング(買い持ち)、多い企業をショート(売り持ち)するポートフォリオ「EMI」を独自に設定し、株価収益率をシミュレーションを実施しました。結果、同ポートフォリオは超過リターンが得られました。

 続いて、超過リターンの帰属ファクターを見出すため、一般的なリスクファクターであるバリュー、サイズ、モメンタム等を含め分析を行った結果、同ポートフォリオの超過リターンは一般的なリスクファクターでは説明ができず、3.5%から5.4%の超過リターンが得られた結論づけています。

 さらに超過リターンの源泉を探るため、原単位二酸化炭素排出量の少ない企業のファンダメンタルを分析したところ、トービンのQ理論として知られる「市場での企業価値/資本再取得価格」とROI、カバレッジ・レシオが高く、ROAは低いことがわかりました。また、ガバナンスに優れた企業ほど、原単位二酸化炭素排出量が少ないことがわかりました。

 加えて同研究は、原単位二酸化炭素排出量の削減を投資家が迫ったという逆の因果関係があったかをチェック。しかし、同期間に投資家が二酸化炭素排出量削減を積極的に要望したということは見いだせず、逆の因果関係による説明も棄却。さらに、他のマクロファクターとして、インフレーション、原油価格、非伝統的金融政策等の影響も確認したが、有意な結果は得られませんでした。

 最終的に、同論文では、二酸化炭素排出量ファクターは超過リターンの源泉として長期的に機能し続けていると提案しています。

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