Sustainable Japan | 世界のサステナビリティ・ESG投資・SDGs

【ランキング】2024年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能な企業100社」

 毎年のダボス会議の目玉のひとつは、カナダの出版社Corporate Knightsが発表するサステナビリティの観点で世界企業ランキング「Global 100 Most Sustainable Corporations in the World (Global 100 Index)」。同ランキングは2024年版は1月17日に発表された。早速、2024年の顔ぶれを見ていこう。

Global 100 トップ10

順位 企業 国・地域 業界
1 シムズ オーストラリア 廃棄物管理
2 ブランブルズ オーストラリア 製造業
3 ヴェスタス・ウィンド・システムズ デンマーク 製造業
4 台湾高鉄 台湾 インフラ
5 ノルデックス SE ドイツ エネルギー
6 ブラジル銀行 ブラジル 金融
7 シュナイダーエレクトリック フランス 製造業
8 クリスチャン・ハンセン デンマーク 食品・消費財・アパレル
9 スタンテック カナダ コンサルティング
10 SMAソーラーテクノロジー ドイツ 製造業

(出所)CorporateKnightsの発表を基にニューラル作成

昨年に引き続きトップ10入りしたのは、

  • ブランブルズ
  • ヴェスタス・ウィンド・システムズ
  • 台湾高鉄
  • シュナイダーエレクトリック
  • スタンテック

の5社。今年もメソドロジー改定があり、順位の入れ替えも大きかった。

 また、日本でも知名度の高い企業やSustainable Japanでしばしば取り上げる企業も多数、11位から100位の間にランクインした。

  • 11位 オートデスク
  • 17位 オーステッド
  • 18位 アルストム
  • 19位 ネステ
  • 20位 ダッソー・システムズ
  • 22位 シティ・デベロップメンツ
  • 27位 ブラックフィールド・リニューアブル・パートナーズ
  • 35位 エーザイ
  • 36位 ラジアスリサイクル(旧シュニッツァー・スチール・インダストリーズ)
  • 45位 ケリング
  • 46位 テスラ
  • 48位 SAP
  • 50位 NIO(蔚来汽車)
  • 53位 ノボノルディスク
  • 54位 プーマ
  • 55位 サムスンSDI
  • 58位 ノボザイムズ
  • 64位 シスコシステムズ
  • 66位 サノフィ
  • 67位 HP
  • 71位 アップル
  • 72位 リコー
  • 76位 ユニリーバ
  • 77位 ゼロックス・ホールディングス
  • 81位 ヒューレット・パッカード・エンタープライズ
  • 86位 ヘンケル
  • 90位 BNPパリバ
  • 95位 アストラゼネカ
  • 100位 シスメックス

 日本からは、エーザイ、リコー、シスメックスの3社がランクイン。日本企業のランクイン数は、2015年の1社から2016年と2017年は4社。2018年も4社を維持し、2019年は2倍の8社へ、2020年は6社に減り、2021年5社、2022年3社、2023年4社、今回3社へと減少した。昨年まで6年連続でランクインしていた積水化学工業は圏外となった。

Global 100 地域別社数ランキング

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
ヨーロッパ 44 59 55 49 52 53 59 59 51 49 46 41 44 42
北米 21 14 20 31 32 27 25 22 28 29 33 36 31 29
アジア・太平洋 31 23 18 18 15 18 14 14 17 18 18 20 22 25
中南米 3 3 5 2 1 2 2 5 4 3 2 3 2 2
中東・アフリカ 1 1 1 0 0 0 0 0 0 1 1 0 1 2

 地域別のトップ100企業数は、ヨーロッパと北米を合わせた企業で71%。アジア・太平洋のランクイン数は25社で昨年から3社増えた。

Global 100 アジア内国別ランクイン社数ランキング

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
アジア・太平洋 31 23 18 18 15 18 14 14 17 18 18 20 22 25
 日本 19 12 4 5 1 4 4 4 8 6 5 3 4 3
 シンガポール 1 2 3 4 4 4 3 3 2 3 3 3 4 4
 中国 0 0 0 0 1 1 1 1 0 2 2 4 3 8
 オーストラリア 6 6 9 5 4 5 2 2 2 2 2 3 3 2
 香港 1 0 1 1 1 0 1 0 0 1 1 3 3 3
 韓国 1 2 1 3 4 4 3 3 3 2 2 2 2 2
 台湾 0 0 0 0 0 0 0 1 2 2 1 1 2 2
 トルコ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 1
 インド 3 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 1 0 0

(出所)CorporateKnightsの発表を基にニューラル作成

 アジア・太平洋地域内のランクイン企業数は、中国が8社でトップ、シンガポールが4社、香港と日本が3社となった。中国のラインクイン企業は、小鵬汽車が25位、Risen Energyが30位、Zhuzhou CRRC Times Electricが33位、ヤディア・グループ・ホールディングスが42位、理想汽車が43位、NIO(蔚来汽車)が50位、Xinyi Solarが63位、中国銀行が94位。その後は、オーストラリア、台湾、韓国が2社、トルコが1社だった。

ランキングの評価方法①(4つのスクリーニング)

 Global 100の選出方法は、評価対象は上場企業のみで、対象企業は、以前は20億米ドル以上だったが、2021年からは売上10億米ドル以上となった。

 その後に3段階のスクリーニングが行われ、そのスクリーニング基準を満たさない企業はその時点でランキング対象から除外される(但し、前年のGlobal 100ランクイン企業は、自動的にランキングの対象となる)。それを通過した企業のみにスコアリングが為され、ランキングされる。スクリーニングは以下の2点。

  1. 財務状況
  2. 製品カテゴリーと不祥事

1. 財務状況

 情報開示のスクリーニングを通過すると次は財務状況でスクリーニングされる。具体的には、以下の要件のうち4つ以上満たす必要がある(PiotroskisのFスコアと呼ばれている)。

  1. 純利益が黒字であること
  2. 営業キャッシュフローが黒字であること
  3. (純利益/期初総資産)が前年度の数値を上回っていること
  4. 営業キャッシュフローが純利益を上回っていること
  5. 長期負債÷総資産の年平均額が増加していないこと
  6. 流動比率が高まっていること
  7. 前年に普通株式発行を行っていないこと
  8. 粗利益が前年より増加していること
  9. 総資産回転率が向上していること

2. 製品カテゴリー

 財務状況のスクリーニングを通過すると次は製品カテゴリーのスクリーンが行われる。今年は大幅な変更があった。

  1. 医薬品アクセスインデックスで下位25%の製薬会社
  2. 栄養アクセスインデックスで下位25%の食品会社
  3. Motley Fool、Wespath、Sin Stocks、RedLightNetworkでリストアップされたアダルト企業
  4. InfluenceMapで気候変動ロビー活動がレッドの企業
  5. InfluenceMapで気候変動議決権行使が下位25%の運用会社
  6. バンクトラックが指定する気候変動に有害なプロジェクトに10%以上の経営的、財政的な関与をしている企業
  7. NBIMに投資除外指定されたセメント会社
  8. NZ SuperFundに投資除外指定された民間武器会社
  9. NBIMとNZ SuperFundに投資除外指定された問題のある武器メーカー
  10. ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が問題のある武器売上比率50%と認定している武器メーカーの上位25社
  11. Chain Reaction ResearchまたはNBIMが森林破壊関与と認定している企業
  12. GICSで化石燃料セクターに位置づけられており、新規投資の脱炭素向け割合が直近で50%未満の企業
  13. 動物福祉専門機関により「遅れている」と認識された企業
  14. アメリカ・フレンズ奉仕団に投資除外推奨されている営利刑務所運営会社
  15. Banking on Climate Chaosが指定する直近の持続可能な収益の比率が10%以下で化石燃料事業関連の新規融資比率が高い5行。
  16. GICSでギャンブルセクターに位置づけられている企業
  17. NBIMに腐敗で投資除外指定されている企業
  18. 罰金・和解金の対売上比が1%を過去1年間で超えた企業
  19. 米国及びカナダ政府の投資家向け制裁リストに掲載されている企業
  20. NBIMにオイルサンドで投資除外指定されている企業
  21. NBIMに人権侵害で投資除外指定されている企業
  22. 発電量または売上の10%以上が石炭である企業(ただし、発電量または売上の20%未満が石炭かつ今後石炭関連の投資計画がなく、投資の50%以上が持続可能なものである場合は対象外)
  23. NBIMとNZ SuperFundにたばこで投資除外指定されている企業

ランキングの評価方法②(スコアリング)

 スコアリングする際の評価基準は、25項目ある。そのうち11項目が必須項目で業種になく評価に用いられる。その他12項目は、業種に応じたウエイトが用意されている。今回は、CEO報酬制度の採点から経営陣全体の報酬制度の採点に変更となった。前回同様、気候変動アドボカシーに関する項目がボーナス加点項目となる。また、水、廃棄物、VOC、NOx、SOx、PM、税納付、休業災害率、自己死者数のパフォーマンスが低い場合、総合スコアにペナルティとして減点、売上高の一定割合以上の罰金を課された企業も減点される。

  • エネルギー生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷(直接的および間接的なエネルギー消費量ー再生可能エネルギー消費量)
  • GHG生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 二酸化炭素排出量(スコープ1とスコープ2)
  • 水生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 水使用量
  • 廃棄物生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 廃棄物排出量
  • VOC生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ VOC排出量
  • NOx生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 窒素酸化物排出量
  • SOx生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 硫黄酸化物排出量
  • PM生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ PM排出量
  • サステナブル売上:EUタクソノミー、中国タクソノミー、気候債券イニシアチブ(CBI)等が定める「サステナブル」商品・サービス売上比率
  • サステナブル投資:Corporate Knightsが指定する「クリーン」R&D投資・設備投資・M&A投資比率
  • 休業災害(LTI)率
  • 事故死者数: 事故死者数 ÷ 総従業員数
  • 離職率: 離職者数 ÷ 総従業員数
  • 有給傷病休暇:本社所在国で有給傷病休暇10日以上、有給中の給与50%以上支給
  • 経営陣報酬制度:サステナビリティ指標に連動した報酬制度の有無及び構成ウエイトの割合
  • 経営陣の女性比率
  • 取締役の女性比率
  • 経営陣の人種マイノリティ比率:本社所在国の従業員の人種比率と経営陣の人種比率の差
  • 取締役の人種マイノリティ比率:本社所在国の従業員の人種比率と取締役の人種比率の差
  • サプライヤー:ブルームバーグのデータをもとに企業の最大サプライヤーを特定。そのサプライヤーをGlobal 100と同じ評価方法でスコアリングした際のスコア
  • 政治影響: 気候変動に関する政策アドボカシーの状況(ボーナス加点項目として設けられた)
  • CEO報酬と従業員平均報酬の比率
  • 税納付: 納税額 ÷ 過去5年EBITDA
  • 年金保護: 75% ×(DB及びDC年金掛金total ÷ フルタイム当量従業員パーセンタイルランク)+ 25% ×((DB年金資産の公正価値 ÷ フルタイム当量従業員パーセンタイルランク)− (1-(DB年金資産の公正価値 ÷ 負債パーセンタイルランク))
  • 制裁減点: 制裁金・課徴金・罰金 ÷ 過上

最終ランキングの作成

 最終ランキングは全業界横断での評価ではなく、まず業界ごとのスコアランキング表が作られる。そして、ベンチマーク指標であるMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)でのセクター(業界)割合を用い、各業界からの最終ランキングに入ることができる業界ごとの企業数を割り当てる。最後に、その業界割当数を用い業界ランキングの上位企業から最終ランキングに入れられる。

【ランキング】2024 Global 100
【メソドロジー】The 2024 Global 100: Overview of Corporate Knights Rating Methodology

 毎年のダボス会議の目玉のひとつは、カナダの出版社Corporate Knightsが発表するサステナビリティの観点で世界企業ランキング「Global 100 Most Sustainable Corporations in the World (Global 100 Index)」。同ランキングは2024年版は1月17日に発表された。早速、2024年の顔ぶれを見ていこう。

Global 100 トップ10

順位 企業 国・地域 業界
1 シムズ オーストラリア 廃棄物管理
2 ブランブルズ オーストラリア 製造業
3 ヴェスタス・ウィンド・システムズ デンマーク 製造業
4 台湾高鉄 台湾 インフラ
5 ノルデックス SE ドイツ エネルギー
6 ブラジル銀行 ブラジル 金融
7 シュナイダーエレクトリック フランス 製造業
8 クリスチャン・ハンセン デンマーク 食品・消費財・アパレル
9 スタンテック カナダ コンサルティング
10 SMAソーラーテクノロジー ドイツ 製造業

(出所)CorporateKnightsの発表を基にニューラル作成

昨年に引き続きトップ10入りしたのは、

  • ブランブルズ
  • ヴェスタス・ウィンド・システムズ
  • 台湾高鉄
  • シュナイダーエレクトリック
  • スタンテック

の5社。今年もメソドロジー改定があり、順位の入れ替えも大きかった。

 また、日本でも知名度の高い企業やSustainable Japanでしばしば取り上げる企業も多数、11位から100位の間にランクインした。

  • 11位 オートデスク
  • 17位 オーステッド
  • 18位 アルストム
  • 19位 ネステ
  • 20位 ダッソー・システムズ
  • 22位 シティ・デベロップメンツ
  • 27位 ブラックフィールド・リニューアブル・パートナーズ
  • 35位 エーザイ
  • 36位 ラジアスリサイクル(旧シュニッツァー・スチール・インダストリーズ)
  • 45位 ケリング
  • 46位 テスラ
  • 48位 SAP
  • 50位 NIO(蔚来汽車)
  • 53位 ノボノルディスク
  • 54位 プーマ
  • 55位 サムスンSDI
  • 58位 ノボザイムズ
  • 64位 シスコシステムズ
  • 66位 サノフィ
  • 67位 HP
  • 71位 アップル
  • 72位 リコー
  • 76位 ユニリーバ
  • 77位 ゼロックス・ホールディングス
  • 81位 ヒューレット・パッカード・エンタープライズ
  • 86位 ヘンケル
  • 90位 BNPパリバ
  • 95位 アストラゼネカ
  • 100位 シスメックス

 日本からは、エーザイ、リコー、シスメックスの3社がランクイン。日本企業のランクイン数は、2015年の1社から2016年と2017年は4社。2018年も4社を維持し、2019年は2倍の8社へ、2020年は6社に減り、2021年5社、2022年3社、2023年4社、今回3社へと減少した。昨年まで6年連続でランクインしていた積水化学工業は圏外となった。

Global 100 地域別社数ランキング

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
ヨーロッパ 44 59 55 49 52 53 59 59 51 49 46 41 44 42
北米 21 14 20 31 32 27 25 22 28 29 33 36 31 29
アジア・太平洋 31 23 18 18 15 18 14 14 17 18 18 20 22 25
中南米 3 3 5 2 1 2 2 5 4 3 2 3 2 2
中東・アフリカ 1 1 1 0 0 0 0 0 0 1 1 0 1 2

 地域別のトップ100企業数は、ヨーロッパと北米を合わせた企業で71%。アジア・太平洋のランクイン数は25社で昨年から3社増えた。

Global 100 アジア内国別ランクイン社数ランキング

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
アジア・太平洋 31 23 18 18 15 18 14 14 17 18 18 20 22 25
 日本 19 12 4 5 1 4 4 4 8 6 5 3 4 3
 シンガポール 1 2 3 4 4 4 3 3 2 3 3 3 4 4
 中国 0 0 0 0 1 1 1 1 0 2 2 4 3 8
 オーストラリア 6 6 9 5 4 5 2 2 2 2 2 3 3 2
 香港 1 0 1 1 1 0 1 0 0 1 1 3 3 3
 韓国 1 2 1 3 4 4 3 3 3 2 2 2 2 2
 台湾 0 0 0 0 0 0 0 1 2 2 1 1 2 2
 トルコ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 1
 インド 3 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 1 0 0

(出所)CorporateKnightsの発表を基にニューラル作成

 アジア・太平洋地域内のランクイン企業数は、中国が8社でトップ、シンガポールが4社、香港と日本が3社となった。中国のラインクイン企業は、小鵬汽車が25位、Risen Energyが30位、Zhuzhou CRRC Times Electricが33位、ヤディア・グループ・ホールディングスが42位、理想汽車が43位、NIO(蔚来汽車)が50位、Xinyi Solarが63位、中国銀行が94位。その後は、オーストラリア、台湾、韓国が2社、トルコが1社だった。

ランキングの評価方法①(4つのスクリーニング)

 Global 100の選出方法は、評価対象は上場企業のみで、対象企業は、以前は20億米ドル以上だったが、2021年からは売上10億米ドル以上となった。

 その後に3段階のスクリーニングが行われ、そのスクリーニング基準を満たさない企業はその時点でランキング対象から除外される(但し、前年のGlobal 100ランクイン企業は、自動的にランキングの対象となる)。それを通過した企業のみにスコアリングが為され、ランキングされる。スクリーニングは以下の2点。

  1. 財務状況
  2. 製品カテゴリーと不祥事

1. 財務状況

 情報開示のスクリーニングを通過すると次は財務状況でスクリーニングされる。具体的には、以下の要件のうち4つ以上満たす必要がある(PiotroskisのFスコアと呼ばれている)。

  1. 純利益が黒字であること
  2. 営業キャッシュフローが黒字であること
  3. (純利益/期初総資産)が前年度の数値を上回っていること
  4. 営業キャッシュフローが純利益を上回っていること
  5. 長期負債÷総資産の年平均額が増加していないこと
  6. 流動比率が高まっていること
  7. 前年に普通株式発行を行っていないこと
  8. 粗利益が前年より増加していること
  9. 総資産回転率が向上していること

2. 製品カテゴリー

 財務状況のスクリーニングを通過すると次は製品カテゴリーのスクリーンが行われる。今年は大幅な変更があった。

  1. 医薬品アクセスインデックスで下位25%の製薬会社
  2. 栄養アクセスインデックスで下位25%の食品会社
  3. Motley Fool、Wespath、Sin Stocks、RedLightNetworkでリストアップされたアダルト企業
  4. InfluenceMapで気候変動ロビー活動がレッドの企業
  5. InfluenceMapで気候変動議決権行使が下位25%の運用会社
  6. バンクトラックが指定する気候変動に有害なプロジェクトに10%以上の経営的、財政的な関与をしている企業
  7. NBIMに投資除外指定されたセメント会社
  8. NZ SuperFundに投資除外指定された民間武器会社
  9. NBIMとNZ SuperFundに投資除外指定された問題のある武器メーカー
  10. ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が問題のある武器売上比率50%と認定している武器メーカーの上位25社
  11. Chain Reaction ResearchまたはNBIMが森林破壊関与と認定している企業
  12. GICSで化石燃料セクターに位置づけられており、新規投資の脱炭素向け割合が直近で50%未満の企業
  13. 動物福祉専門機関により「遅れている」と認識された企業
  14. アメリカ・フレンズ奉仕団に投資除外推奨されている営利刑務所運営会社
  15. Banking on Climate Chaosが指定する直近の持続可能な収益の比率が10%以下で化石燃料事業関連の新規融資比率が高い5行。
  16. GICSでギャンブルセクターに位置づけられている企業
  17. NBIMに腐敗で投資除外指定されている企業
  18. 罰金・和解金の対売上比が1%を過去1年間で超えた企業
  19. 米国及びカナダ政府の投資家向け制裁リストに掲載されている企業
  20. NBIMにオイルサンドで投資除外指定されている企業
  21. NBIMに人権侵害で投資除外指定されている企業
  22. 発電量または売上の10%以上が石炭である企業(ただし、発電量または売上の20%未満が石炭かつ今後石炭関連の投資計画がなく、投資の50%以上が持続可能なものである場合は対象外)
  23. NBIMとNZ SuperFundにたばこで投資除外指定されている企業

ランキングの評価方法②(スコアリング)

 スコアリングする際の評価基準は、25項目ある。そのうち11項目が必須項目で業種になく評価に用いられる。その他12項目は、業種に応じたウエイトが用意されている。今回は、CEO報酬制度の採点から経営陣全体の報酬制度の採点に変更となった。前回同様、気候変動アドボカシーに関する項目がボーナス加点項目となる。また、水、廃棄物、VOC、NOx、SOx、PM、税納付、休業災害率、自己死者数のパフォーマンスが低い場合、総合スコアにペナルティとして減点、売上高の一定割合以上の罰金を課された企業も減点される。

  • エネルギー生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷(直接的および間接的なエネルギー消費量ー再生可能エネルギー消費量)
  • GHG生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 二酸化炭素排出量(スコープ1とスコープ2)
  • 水生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 水使用量
  • 廃棄物生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 廃棄物排出量
  • VOC生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ VOC排出量
  • NOx生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 窒素酸化物排出量
  • SOx生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 硫黄酸化物排出量
  • PM生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ PM排出量
  • サステナブル売上:EUタクソノミー、中国タクソノミー、気候債券イニシアチブ(CBI)等が定める「サステナブル」商品・サービス売上比率
  • サステナブル投資:Corporate Knightsが指定する「クリーン」R&D投資・設備投資・M&A投資比率
  • 休業災害(LTI)率
  • 事故死者数: 事故死者数 ÷ 総従業員数
  • 離職率: 離職者数 ÷ 総従業員数
  • 有給傷病休暇:本社所在国で有給傷病休暇10日以上、有給中の給与50%以上支給
  • 経営陣報酬制度:サステナビリティ指標に連動した報酬制度の有無及び構成ウエイトの割合
  • 経営陣の女性比率
  • 取締役の女性比率
  • 経営陣の人種マイノリティ比率:本社所在国の従業員の人種比率と経営陣の人種比率の差
  • 取締役の人種マイノリティ比率:本社所在国の従業員の人種比率と取締役の人種比率の差
  • サプライヤー:ブルームバーグのデータをもとに企業の最大サプライヤーを特定。そのサプライヤーをGlobal 100と同じ評価方法でスコアリングした際のスコア
  • 政治影響: 気候変動に関する政策アドボカシーの状況(ボーナス加点項目として設けられた)
  • CEO報酬と従業員平均報酬の比率
  • 税納付: 納税額 ÷ 過去5年EBITDA
  • 年金保護: 75% ×(DB及びDC年金掛金total ÷ フルタイム当量従業員パーセンタイルランク)+ 25% ×((DB年金資産の公正価値 ÷ フルタイム当量従業員パーセンタイルランク)− (1-(DB年金資産の公正価値 ÷ 負債パーセンタイルランク))
  • 制裁減点: 制裁金・課徴金・罰金 ÷ 過上

最終ランキングの作成

 最終ランキングは全業界横断での評価ではなく、まず業界ごとのスコアランキング表が作られる。そして、ベンチマーク指標であるMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)でのセクター(業界)割合を用い、各業界からの最終ランキングに入ることができる業界ごとの企業数を割り当てる。最後に、その業界割当数を用い業界ランキングの上位企業から最終ランキングに入れられる。

【ランキング】2024 Global 100
【メソドロジー】The 2024 Global 100: Overview of Corporate Knights Rating Methodology

 毎年のダボス会議の目玉のひとつは、カナダの出版社Corporate Knightsが発表するサステナビリティの観点で世界企業ランキング「Global 100 Most Sustainable Corporations in the World (Global 100 Index)」。同ランキングは2024年版は1月17日に発表された。早速、2024年の顔ぶれを見ていこう。

Global 100 トップ10

順位 企業 国・地域 業界
1 シムズ オーストラリア 廃棄物管理
2 ブランブルズ オーストラリア 製造業
3 ヴェスタス・ウィンド・システムズ デンマーク 製造業
4 台湾高鉄 台湾 インフラ
5 ノルデックス SE ドイツ エネルギー
6 ブラジル銀行 ブラジル 金融
7 シュナイダーエレクトリック フランス 製造業
8 クリスチャン・ハンセン デンマーク 食品・消費財・アパレル
9 スタンテック カナダ コンサルティング
10 SMAソーラーテクノロジー ドイツ 製造業

(出所)CorporateKnightsの発表を基にニューラル作成

昨年に引き続きトップ10入りしたのは、

  • ブランブルズ
  • ヴェスタス・ウィンド・システムズ
  • 台湾高鉄
  • シュナイダーエレクトリック
  • スタンテック

の5社。今年もメソドロジー改定があり、順位の入れ替えも大きかった。

 また、日本でも知名度の高い企業やSustainable Japanでしばしば取り上げる企業も多数、11位から100位の間にランクインした。

  • 11位 オートデスク
  • 17位 オーステッド
  • 18位 アルストム
  • 19位 ネステ
  • 20位 ダッソー・システムズ
  • 22位 シティ・デベロップメンツ
  • 27位 ブラックフィールド・リニューアブル・パートナーズ
  • 35位 エーザイ
  • 36位 ラジアスリサイクル(旧シュニッツァー・スチール・インダストリーズ)
  • 45位 ケリング
  • 46位 テスラ
  • 48位 SAP
  • 50位 NIO(蔚来汽車)
  • 53位 ノボノルディスク
  • 54位 プーマ
  • 55位 サムスンSDI
  • 58位 ノボザイムズ
  • 64位 シスコシステムズ
  • 66位 サノフィ
  • 67位 HP
  • 71位 アップル
  • 72位 リコー
  • 76位 ユニリーバ
  • 77位 ゼロックス・ホールディングス
  • 81位 ヒューレット・パッカード・エンタープライズ
  • 86位 ヘンケル
  • 90位 BNPパリバ
  • 95位 アストラゼネカ
  • 100位 シスメックス

 日本からは、エーザイ、リコー、シスメックスの3社がランクイン。日本企業のランクイン数は、2015年の1社から2016年と2017年は4社。2018年も4社を維持し、2019年は2倍の8社へ、2020年は6社に減り、2021年5社、2022年3社、2023年4社、今回3社へと減少した。昨年まで6年連続でランクインしていた積水化学工業は圏外となった。

Global 100 地域別社数ランキング

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
ヨーロッパ 44 59 55 49 52 53 59 59 51 49 46 41 44 42
北米 21 14 20 31 32 27 25 22 28 29 33 36 31 29
アジア・太平洋 31 23 18 18 15 18 14 14 17 18 18 20 22 25
中南米 3 3 5 2 1 2 2 5 4 3 2 3 2 2
中東・アフリカ 1 1 1 0 0 0 0 0 0 1 1 0 1 2

 地域別のトップ100企業数は、ヨーロッパと北米を合わせた企業で71%。アジア・太平洋のランクイン数は25社で昨年から3社増えた。

Global 100 アジア内国別ランクイン社数ランキング

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
アジア・太平洋 31 23 18 18 15 18 14 14 17 18 18 20 22 25
 日本 19 12 4 5 1 4 4 4 8 6 5 3 4 3
 シンガポール 1 2 3 4 4 4 3 3 2 3 3 3 4 4
 中国 0 0 0 0 1 1 1 1 0 2 2 4 3 8
 オーストラリア 6 6 9 5 4 5 2 2 2 2 2 3 3 2
 香港 1 0 1 1 1 0 1 0 0 1 1 3 3 3
 韓国 1 2 1 3 4 4 3 3 3 2 2 2 2 2
 台湾 0 0 0 0 0 0 0 1 2 2 1 1 2 2
 トルコ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 1
 インド 3 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 1 0 0

(出所)CorporateKnightsの発表を基にニューラル作成

 アジア・太平洋地域内のランクイン企業数は、中国が8社でトップ、シンガポールが4社、香港と日本が3社となった。中国のラインクイン企業は、小鵬汽車が25位、Risen Energyが30位、Zhuzhou CRRC Times Electricが33位、ヤディア・グループ・ホールディングスが42位、理想汽車が43位、NIO(蔚来汽車)が50位、Xinyi Solarが63位、中国銀行が94位。その後は、オーストラリア、台湾、韓国が2社、トルコが1社だった。

ランキングの評価方法①(4つのスクリーニング)

 Global 100の選出方法は、評価対象は上場企業のみで、対象企業は、以前は20億米ドル以上だったが、2021年からは売上10億米ドル以上となった。

 その後に3段階のスクリーニングが行われ、そのスクリーニング基準を満たさない企業はその時点でランキング対象から除外される(但し、前年のGlobal 100ランクイン企業は、自動的にランキングの対象となる)。それを通過した企業のみにスコアリングが為され、ランキングされる。スクリーニングは以下の2点。

  1. 財務状況
  2. 製品カテゴリーと不祥事

1. 財務状況

 情報開示のスクリーニングを通過すると次は財務状況でスクリーニングされる。具体的には、以下の要件のうち4つ以上満たす必要がある(PiotroskisのFスコアと呼ばれている)。

  1. 純利益が黒字であること
  2. 営業キャッシュフローが黒字であること
  3. (純利益/期初総資産)が前年度の数値を上回っていること
  4. 営業キャッシュフローが純利益を上回っていること
  5. 長期負債÷総資産の年平均額が増加していないこと
  6. 流動比率が高まっていること
  7. 前年に普通株式発行を行っていないこと
  8. 粗利益が前年より増加していること
  9. 総資産回転率が向上していること

2. 製品カテゴリー

 財務状況のスクリーニングを通過すると次は製品カテゴリーのスクリーンが行われる。今年は大幅な変更があった。

  1. 医薬品アクセスインデックスで下位25%の製薬会社
  2. 栄養アクセスインデックスで下位25%の食品会社
  3. Motley Fool、Wespath、Sin Stocks、RedLightNetworkでリストアップされたアダルト企業
  4. InfluenceMapで気候変動ロビー活動がレッドの企業
  5. InfluenceMapで気候変動議決権行使が下位25%の運用会社
  6. バンクトラックが指定する気候変動に有害なプロジェクトに10%以上の経営的、財政的な関与をしている企業
  7. NBIMに投資除外指定されたセメント会社
  8. NZ SuperFundに投資除外指定された民間武器会社
  9. NBIMとNZ SuperFundに投資除外指定された問題のある武器メーカー
  10. ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が問題のある武器売上比率50%と認定している武器メーカーの上位25社
  11. Chain Reaction ResearchまたはNBIMが森林破壊関与と認定している企業
  12. GICSで化石燃料セクターに位置づけられており、新規投資の脱炭素向け割合が直近で50%未満の企業
  13. 動物福祉専門機関により「遅れている」と認識された企業
  14. アメリカ・フレンズ奉仕団に投資除外推奨されている営利刑務所運営会社
  15. Banking on Climate Chaosが指定する直近の持続可能な収益の比率が10%以下で化石燃料事業関連の新規融資比率が高い5行。
  16. GICSでギャンブルセクターに位置づけられている企業
  17. NBIMに腐敗で投資除外指定されている企業
  18. 罰金・和解金の対売上比が1%を過去1年間で超えた企業
  19. 米国及びカナダ政府の投資家向け制裁リストに掲載されている企業
  20. NBIMにオイルサンドで投資除外指定されている企業
  21. NBIMに人権侵害で投資除外指定されている企業
  22. 発電量または売上の10%以上が石炭である企業(ただし、発電量または売上の20%未満が石炭かつ今後石炭関連の投資計画がなく、投資の50%以上が持続可能なものである場合は対象外)
  23. NBIMとNZ SuperFundにたばこで投資除外指定されている企業

ランキングの評価方法②(スコアリング)

 スコアリングする際の評価基準は、25項目ある。そのうち11項目が必須項目で業種になく評価に用いられる。その他12項目は、業種に応じたウエイトが用意されている。今回は、CEO報酬制度の採点から経営陣全体の報酬制度の採点に変更となった。前回同様、気候変動アドボカシーに関する項目がボーナス加点項目となる。また、水、廃棄物、VOC、NOx、SOx、PM、税納付、休業災害率、自己死者数のパフォーマンスが低い場合、総合スコアにペナルティとして減点、売上高の一定割合以上の罰金を課された企業も減点される。

  • エネルギー生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷(直接的および間接的なエネルギー消費量ー再生可能エネルギー消費量)
  • GHG生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 二酸化炭素排出量(スコープ1とスコープ2)
  • 水生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 水使用量
  • 廃棄物生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 廃棄物排出量
  • VOC生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ VOC排出量
  • NOx生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 窒素酸化物排出量
  • SOx生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 硫黄酸化物排出量
  • PM生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ PM排出量
  • サステナブル売上:EUタクソノミー、中国タクソノミー、気候債券イニシアチブ(CBI)等が定める「サステナブル」商品・サービス売上比率
  • サステナブル投資:Corporate Knightsが指定する「クリーン」R&D投資・設備投資・M&A投資比率
  • 休業災害(LTI)率
  • 事故死者数: 事故死者数 ÷ 総従業員数
  • 離職率: 離職者数 ÷ 総従業員数
  • 有給傷病休暇:本社所在国で有給傷病休暇10日以上、有給中の給与50%以上支給
  • 経営陣報酬制度:サステナビリティ指標に連動した報酬制度の有無及び構成ウエイトの割合
  • 経営陣の女性比率
  • 取締役の女性比率
  • 経営陣の人種マイノリティ比率:本社所在国の従業員の人種比率と経営陣の人種比率の差
  • 取締役の人種マイノリティ比率:本社所在国の従業員の人種比率と取締役の人種比率の差
  • サプライヤー:ブルームバーグのデータをもとに企業の最大サプライヤーを特定。そのサプライヤーをGlobal 100と同じ評価方法でスコアリングした際のスコア
  • 政治影響: 気候変動に関する政策アドボカシーの状況(ボーナス加点項目として設けられた)
  • CEO報酬と従業員平均報酬の比率
  • 税納付: 納税額 ÷ 過去5年EBITDA
  • 年金保護: 75% ×(DB及びDC年金掛金total ÷ フルタイム当量従業員パーセンタイルランク)+ 25% ×((DB年金資産の公正価値 ÷ フルタイム当量従業員パーセンタイルランク)− (1-(DB年金資産の公正価値 ÷ 負債パーセンタイルランク))
  • 制裁減点: 制裁金・課徴金・罰金 ÷ 過上

最終ランキングの作成

 最終ランキングは全業界横断での評価ではなく、まず業界ごとのスコアランキング表が作られる。そして、ベンチマーク指標であるMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)でのセクター(業界)割合を用い、各業界からの最終ランキングに入ることができる業界ごとの企業数を割り当てる。最後に、その業界割当数を用い業界ランキングの上位企業から最終ランキングに入れられる。

【ランキング】2024 Global 100
【メソドロジー】The 2024 Global 100: Overview of Corporate Knights Rating Methodology

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 毎年のダボス会議の目玉のひとつは、カナダの出版社Corporate Knightsが発表するサステナビリティの観点で世界企業ランキング「Global 100 Most Sustainable Corporations in the World (Global 100 Index)」。同ランキングは2024年版は1月17日に発表された。早速、2024年の顔ぶれを見ていこう。

Global 100 トップ10

順位 企業 国・地域 業界
1 シムズ オーストラリア 廃棄物管理
2 ブランブルズ オーストラリア 製造業
3 ヴェスタス・ウィンド・システムズ デンマーク 製造業
4 台湾高鉄 台湾 インフラ
5 ノルデックス SE ドイツ エネルギー
6 ブラジル銀行 ブラジル 金融
7 シュナイダーエレクトリック フランス 製造業
8 クリスチャン・ハンセン デンマーク 食品・消費財・アパレル
9 スタンテック カナダ コンサルティング
10 SMAソーラーテクノロジー ドイツ 製造業

(出所)CorporateKnightsの発表を基にニューラル作成

昨年に引き続きトップ10入りしたのは、

  • ブランブルズ
  • ヴェスタス・ウィンド・システムズ
  • 台湾高鉄
  • シュナイダーエレクトリック
  • スタンテック

の5社。今年もメソドロジー改定があり、順位の入れ替えも大きかった。

 また、日本でも知名度の高い企業やSustainable Japanでしばしば取り上げる企業も多数、11位から100位の間にランクインした。

  • 11位 オートデスク
  • 17位 オーステッド
  • 18位 アルストム
  • 19位 ネステ
  • 20位 ダッソー・システムズ
  • 22位 シティ・デベロップメンツ
  • 27位 ブラックフィールド・リニューアブル・パートナーズ
  • 35位 エーザイ
  • 36位 ラジアスリサイクル(旧シュニッツァー・スチール・インダストリーズ)
  • 45位 ケリング
  • 46位 テスラ
  • 48位 SAP
  • 50位 NIO(蔚来汽車)
  • 53位 ノボノルディスク
  • 54位 プーマ
  • 55位 サムスンSDI
  • 58位 ノボザイムズ
  • 64位 シスコシステムズ
  • 66位 サノフィ
  • 67位 HP
  • 71位 アップル
  • 72位 リコー
  • 76位 ユニリーバ
  • 77位 ゼロックス・ホールディングス
  • 81位 ヒューレット・パッカード・エンタープライズ
  • 86位 ヘンケル
  • 90位 BNPパリバ
  • 95位 アストラゼネカ
  • 100位 シスメックス

 日本からは、エーザイ、リコー、シスメックスの3社がランクイン。日本企業のランクイン数は、2015年の1社から2016年と2017年は4社。2018年も4社を維持し、2019年は2倍の8社へ、2020年は6社に減り、2021年5社、2022年3社、2023年4社、今回3社へと減少した。昨年まで6年連続でランクインしていた積水化学工業は圏外となった。

Global 100 地域別社数ランキング

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
ヨーロッパ 44 59 55 49 52 53 59 59 51 49 46 41 44 42
北米 21 14 20 31 32 27 25 22 28 29 33 36 31 29
アジア・太平洋 31 23 18 18 15 18 14 14 17 18 18 20 22 25
中南米 3 3 5 2 1 2 2 5 4 3 2 3 2 2
中東・アフリカ 1 1 1 0 0 0 0 0 0 1 1 0 1 2

 地域別のトップ100企業数は、ヨーロッパと北米を合わせた企業で71%。アジア・太平洋のランクイン数は25社で昨年から3社増えた。

Global 100 アジア内国別ランクイン社数ランキング

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
アジア・太平洋 31 23 18 18 15 18 14 14 17 18 18 20 22 25
 日本 19 12 4 5 1 4 4 4 8 6 5 3 4 3
 シンガポール 1 2 3 4 4 4 3 3 2 3 3 3 4 4
 中国 0 0 0 0 1 1 1 1 0 2 2 4 3 8
 オーストラリア 6 6 9 5 4 5 2 2 2 2 2 3 3 2
 香港 1 0 1 1 1 0 1 0 0 1 1 3 3 3
 韓国 1 2 1 3 4 4 3 3 3 2 2 2 2 2
 台湾 0 0 0 0 0 0 0 1 2 2 1 1 2 2
 トルコ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 1
 インド 3 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 1 0 0

(出所)CorporateKnightsの発表を基にニューラル作成

 アジア・太平洋地域内のランクイン企業数は、中国が8社でトップ、シンガポールが4社、香港と日本が3社となった。中国のラインクイン企業は、小鵬汽車が25位、Risen Energyが30位、Zhuzhou CRRC Times Electricが33位、ヤディア・グループ・ホールディングスが42位、理想汽車が43位、NIO(蔚来汽車)が50位、Xinyi Solarが63位、中国銀行が94位。その後は、オーストラリア、台湾、韓国が2社、トルコが1社だった。

ランキングの評価方法①(4つのスクリーニング)

 Global 100の選出方法は、評価対象は上場企業のみで、対象企業は、以前は20億米ドル以上だったが、2021年からは売上10億米ドル以上となった。

 その後に3段階のスクリーニングが行われ、そのスクリーニング基準を満たさない企業はその時点でランキング対象から除外される(但し、前年のGlobal 100ランクイン企業は、自動的にランキングの対象となる)。それを通過した企業のみにスコアリングが為され、ランキングされる。スクリーニングは以下の2点。

  1. 財務状況
  2. 製品カテゴリーと不祥事

1. 財務状況

 情報開示のスクリーニングを通過すると次は財務状況でスクリーニングされる。具体的には、以下の要件のうち4つ以上満たす必要がある(PiotroskisのFスコアと呼ばれている)。

  1. 純利益が黒字であること
  2. 営業キャッシュフローが黒字であること
  3. (純利益/期初総資産)が前年度の数値を上回っていること
  4. 営業キャッシュフローが純利益を上回っていること
  5. 長期負債÷総資産の年平均額が増加していないこと
  6. 流動比率が高まっていること
  7. 前年に普通株式発行を行っていないこと
  8. 粗利益が前年より増加していること
  9. 総資産回転率が向上していること

2. 製品カテゴリー

 財務状況のスクリーニングを通過すると次は製品カテゴリーのスクリーンが行われる。今年は大幅な変更があった。

  1. 医薬品アクセスインデックスで下位25%の製薬会社
  2. 栄養アクセスインデックスで下位25%の食品会社
  3. Motley Fool、Wespath、Sin Stocks、RedLightNetworkでリストアップされたアダルト企業
  4. InfluenceMapで気候変動ロビー活動がレッドの企業
  5. InfluenceMapで気候変動議決権行使が下位25%の運用会社
  6. バンクトラックが指定する気候変動に有害なプロジェクトに10%以上の経営的、財政的な関与をしている企業
  7. NBIMに投資除外指定されたセメント会社
  8. NZ SuperFundに投資除外指定された民間武器会社
  9. NBIMとNZ SuperFundに投資除外指定された問題のある武器メーカー
  10. ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が問題のある武器売上比率50%と認定している武器メーカーの上位25社
  11. Chain Reaction ResearchまたはNBIMが森林破壊関与と認定している企業
  12. GICSで化石燃料セクターに位置づけられており、新規投資の脱炭素向け割合が直近で50%未満の企業
  13. 動物福祉専門機関により「遅れている」と認識された企業
  14. アメリカ・フレンズ奉仕団に投資除外推奨されている営利刑務所運営会社
  15. Banking on Climate Chaosが指定する直近の持続可能な収益の比率が10%以下で化石燃料事業関連の新規融資比率が高い5行。
  16. GICSでギャンブルセクターに位置づけられている企業
  17. NBIMに腐敗で投資除外指定されている企業
  18. 罰金・和解金の対売上比が1%を過去1年間で超えた企業
  19. 米国及びカナダ政府の投資家向け制裁リストに掲載されている企業
  20. NBIMにオイルサンドで投資除外指定されている企業
  21. NBIMに人権侵害で投資除外指定されている企業
  22. 発電量または売上の10%以上が石炭である企業(ただし、発電量または売上の20%未満が石炭かつ今後石炭関連の投資計画がなく、投資の50%以上が持続可能なものである場合は対象外)
  23. NBIMとNZ SuperFundにたばこで投資除外指定されている企業

ランキングの評価方法②(スコアリング)

 スコアリングする際の評価基準は、25項目ある。そのうち11項目が必須項目で業種になく評価に用いられる。その他12項目は、業種に応じたウエイトが用意されている。今回は、CEO報酬制度の採点から経営陣全体の報酬制度の採点に変更となった。前回同様、気候変動アドボカシーに関する項目がボーナス加点項目となる。また、水、廃棄物、VOC、NOx、SOx、PM、税納付、休業災害率、自己死者数のパフォーマンスが低い場合、総合スコアにペナルティとして減点、売上高の一定割合以上の罰金を課された企業も減点される。

  • エネルギー生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷(直接的および間接的なエネルギー消費量ー再生可能エネルギー消費量)
  • GHG生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 二酸化炭素排出量(スコープ1とスコープ2)
  • 水生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 水使用量
  • 廃棄物生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 廃棄物排出量
  • VOC生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ VOC排出量
  • NOx生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 窒素酸化物排出量
  • SOx生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 硫黄酸化物排出量
  • PM生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ PM排出量
  • サステナブル売上:EUタクソノミー、中国タクソノミー、気候債券イニシアチブ(CBI)等が定める「サステナブル」商品・サービス売上比率
  • サステナブル投資:Corporate Knightsが指定する「クリーン」R&D投資・設備投資・M&A投資比率
  • 休業災害(LTI)率
  • 事故死者数: 事故死者数 ÷ 総従業員数
  • 離職率: 離職者数 ÷ 総従業員数
  • 有給傷病休暇:本社所在国で有給傷病休暇10日以上、有給中の給与50%以上支給
  • 経営陣報酬制度:サステナビリティ指標に連動した報酬制度の有無及び構成ウエイトの割合
  • 経営陣の女性比率
  • 取締役の女性比率
  • 経営陣の人種マイノリティ比率:本社所在国の従業員の人種比率と経営陣の人種比率の差
  • 取締役の人種マイノリティ比率:本社所在国の従業員の人種比率と取締役の人種比率の差
  • サプライヤー:ブルームバーグのデータをもとに企業の最大サプライヤーを特定。そのサプライヤーをGlobal 100と同じ評価方法でスコアリングした際のスコア
  • 政治影響: 気候変動に関する政策アドボカシーの状況(ボーナス加点項目として設けられた)
  • CEO報酬と従業員平均報酬の比率
  • 税納付: 納税額 ÷ 過去5年EBITDA
  • 年金保護: 75% ×(DB及びDC年金掛金total ÷ フルタイム当量従業員パーセンタイルランク)+ 25% ×((DB年金資産の公正価値 ÷ フルタイム当量従業員パーセンタイルランク)− (1-(DB年金資産の公正価値 ÷ 負債パーセンタイルランク))
  • 制裁減点: 制裁金・課徴金・罰金 ÷ 過上

最終ランキングの作成

 最終ランキングは全業界横断での評価ではなく、まず業界ごとのスコアランキング表が作られる。そして、ベンチマーク指標であるMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)でのセクター(業界)割合を用い、各業界からの最終ランキングに入ることができる業界ごとの企業数を割り当てる。最後に、その業界割当数を用い業界ランキングの上位企業から最終ランキングに入れられる。

【ランキング】2024 Global 100
【メソドロジー】The 2024 Global 100: Overview of Corporate Knights Rating Methodology