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【国際】B Lab、Bコーポレーション認証の大規模改訂作業が大詰め。ISSBやESRS等に収斂

 Bコーポレーション(B Corp)認証を運営する米NGOのB Labは1月16日、Bコーポレーション基準の改訂に関するパブリックコメント募集を開始した。受付は3月26日まで。改訂後にはすでにBコーポレーション認証を取得している企業にも新基準への遵守が求められるようになる見込み。

 現在、Bコーポレーション認証を取得している企業は95ヶ国8,000社以上ある。Bコーポレーション認証は、ネガティブ・インパクトよりも、ポジティブ・インパクトに焦点を当てており、Bインパクト・アセスメント(BIA)で80点以上を取得することが要件となる。そのため全ての項目ではなく、80点以上を取れるよう項目を選ぶ「メニュー・アプローチ」が採用されている。ネガティブ・インパクトでは、重大な悪影響の観点のみがチェックされる。加えて、売上50億米ドル以上の会社には、透明性とマテリアリティ・マネジメントに関する慣行の実施も求められる。

 B Labは2020年12月に大規模な基準改訂作業を開始。背景には、Bコーポレーション認証が2006年に創設された当時から状況が大きく変わっており、Bコーポレーション認証の意義が不明瞭になってきたことや、地域や企業規模、業界等の状況に応じた状況が反映されていない点、認証要件として盛り込まれている継続的改善の欠如、リスク視点の欠如等が挙げられている。その中には、気候変動や人権等の重要課題に十分応えられていないという観点もある。Bコーポレーションの評価項目となる「Bインパクト・アセスメント(BIA)」自体は過去に6回改訂されているが、評価体系を大きく変更する必要があると判断し、今回の大規模改訂作業を始めるに至っている。

 今回の改訂の主な内容は、

  • パーパスとステークホルダー・ガバナンス:定義されたパーパスに従って行動し、全ての人と地球のために、インクルーシブで公正かつ再生型の経済システムの創造に貢献する。自社株買いや配当の意思決定でステークホルダーの便益を考慮する要件も盛り込まれる。
  • 労働者エンゲージメント:従業員がエンゲージメントされていると感じている。双方向のコミュニケーションがあり、労働者の意見が尊重される。大企業では労働者代表に関する項目も盛り込まれる。
  • 公正な賃金:労働者は、自分自身とその家族のために適正な生活賃金を確保することができ、労働者間の賃金は平等である。
  • 正義、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI):ダイバーシティとインクルージョンを享受できる職場環境を有し、公正で公平な地域社会に有意義に貢献する。
  • 人権:人々に尊厳をもって接し、人権を尊重する。サプライヤーでの人権課題のモニタリングとエンゲージメントも要件に加わる。
  • 気候変動:気候変動とその影響に対処するため、科学的知見に基づき行動する。
  • サーキュラーエコノミーと環境スチュワードシップ:事業活動やバリューチェーンにおいて環境スチュワードシップを発揮し、サーキュラーエコノミーに貢献する。
  • 集団行動:公平で包括的、かつ再生型な経済の実現に向け、共通の理解、ソリューション、実行を促進する上で指導的な役割を果たす。ロビー活動に関する要件も盛り込まれる。
  • 補完的トピック:中核となるインパクト・トピックに加え、事業がもたらす幅広い影響を包括的に特定・測定し、時間をかけて改善する。「インパクト・マネジメント」は「補完的インパクト・トピック(CIT)」に名称変更となる。

 策定される実施ガイダンスに関しては、遵守必須の「コンプライアンス・ガイダンス」と任意推奨の「アドバイザリー・ガイダンス」に分かれる。親会社やグループ会社の考え方はコンプライアンス・ガイダンスとして盛り込まれる。定量評価の一部も同様にコンプライアンス・ガイダンスして規定される。ステークホルダー・エンゲージメントや一部の方法論等についてはアドバイザリー・ガイダンス側で位置付けられる。基準の詳細設計では、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)や、IFRSの国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)による「IFRS S1」「IFRS S2」、GRIスタンダードとの相互運用性評価も行われる。

 新基準では、メニュー・アプローチを廃し、各項目内で具体的な要件を満たさなければ、認証を取得できないようにする。一方、スコアリング制度そのものは維持し、各社の改善に向けた参考情報として位置づける。

 認証除外業種としては、銃器、武器、軍需品、ポルノ、タバコ、ギャンブル、娯楽用大麻は引き続き除外。石炭やオイルサンド等の化石燃料事業の売上が年間売上の5%以上を占める企業も対象外となる。民間刑務所サービス業等も対象外となる。

 Bコーポレーションの特徴の一つであるポジティブ・インパクト面を評価する「インパクト・ビジネスモデル(IBM)」の評価手法も修正される。新基準でIBMを主張するためのは3つの方法論が用意される。まず、パフォーマンス要求事項に関する柔軟性を高めた説明アプローチ、次に、特定のインパクト・トピックでの要求事項の遵守と同等性を証明するアプローチ。3つ目が、Bコーポレーション認証のPublic Profileや、他のB Labプログラムで一般に認知されている手法で説明するアプローチ。

【参照ページ】B Lab Launches Public Consultation on the Standards for B Corp Certification

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 Bコーポレーション(B Corp)認証を運営する米NGOのB Labは1月16日、Bコーポレーション基準の改訂に関するパブリックコメント募集を開始した。受付は3月26日まで。改訂後にはすでにBコーポレーション認証を取得している企業にも新基準への遵守が求められるようになる見込み。

 現在、

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 Bコーポレーション(B Corp)認証を運営する米NGOのB Labは1月16日、Bコーポレーション基準の改訂に関するパブリックコメント募集を開始した。受付は3月26日まで。改訂後にはすでにBコーポレーション認証を取得している企業にも新基準への遵守が求められるようになる見込み。

 現在、

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 Bコーポレーション(B Corp)認証を運営する米NGOのB Labは1月16日、Bコーポレーション基準の改訂に関するパブリックコメント募集を開始した。受付は3月26日まで。改訂後にはすでにBコーポレーション認証を取得している企業にも新基準への遵守が求められるようになる見込み。

 現在、Bコーポレーション認証を取得している企業は95ヶ国8,000社以上ある。Bコーポレーション認証は、ネガティブ・インパクトよりも、ポジティブ・インパクトに焦点を当てており、Bインパクト・アセスメント(BIA)で80点以上を取得することが要件となる。そのため全ての項目ではなく、80点以上を取れるよう項目を選ぶ「メニュー・アプローチ」が採用されている。ネガティブ・インパクトでは、重大な悪影響の観点のみがチェックされる。加えて、売上50億米ドル以上の会社には、透明性とマテリアリティ・マネジメントに関する慣行の実施も求められる。

 B Labは2020年12月に大規模な基準改訂作業を開始。背景には、Bコーポレーション認証が2006年に創設された当時から状況が大きく変わっており、Bコーポレーション認証の意義が不明瞭になってきたことや、地域や企業規模、業界等の状況に応じた状況が反映されていない点、認証要件として盛り込まれている継続的改善の欠如、リスク視点の欠如等が挙げられている。その中には、気候変動や人権等の重要課題に十分応えられていないという観点もある。Bコーポレーションの評価項目となる「Bインパクト・アセスメント(BIA)」自体は過去に6回改訂されているが、評価体系を大きく変更する必要があると判断し、今回の大規模改訂作業を始めるに至っている。

 今回の改訂の主な内容は、

  • パーパスとステークホルダー・ガバナンス:定義されたパーパスに従って行動し、全ての人と地球のために、インクルーシブで公正かつ再生型の経済システムの創造に貢献する。自社株買いや配当の意思決定でステークホルダーの便益を考慮する要件も盛り込まれる。
  • 労働者エンゲージメント:従業員がエンゲージメントされていると感じている。双方向のコミュニケーションがあり、労働者の意見が尊重される。大企業では労働者代表に関する項目も盛り込まれる。
  • 公正な賃金:労働者は、自分自身とその家族のために適正な生活賃金を確保することができ、労働者間の賃金は平等である。
  • 正義、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI):ダイバーシティとインクルージョンを享受できる職場環境を有し、公正で公平な地域社会に有意義に貢献する。
  • 人権:人々に尊厳をもって接し、人権を尊重する。サプライヤーでの人権課題のモニタリングとエンゲージメントも要件に加わる。
  • 気候変動:気候変動とその影響に対処するため、科学的知見に基づき行動する。
  • サーキュラーエコノミーと環境スチュワードシップ:事業活動やバリューチェーンにおいて環境スチュワードシップを発揮し、サーキュラーエコノミーに貢献する。
  • 集団行動:公平で包括的、かつ再生型な経済の実現に向け、共通の理解、ソリューション、実行を促進する上で指導的な役割を果たす。ロビー活動に関する要件も盛り込まれる。
  • 補完的トピック:中核となるインパクト・トピックに加え、事業がもたらす幅広い影響を包括的に特定・測定し、時間をかけて改善する。「インパクト・マネジメント」は「補完的インパクト・トピック(CIT)」に名称変更となる。

 策定される実施ガイダンスに関しては、遵守必須の「コンプライアンス・ガイダンス」と任意推奨の「アドバイザリー・ガイダンス」に分かれる。親会社やグループ会社の考え方はコンプライアンス・ガイダンスとして盛り込まれる。定量評価の一部も同様にコンプライアンス・ガイダンスして規定される。ステークホルダー・エンゲージメントや一部の方法論等についてはアドバイザリー・ガイダンス側で位置付けられる。基準の詳細設計では、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)や、IFRSの国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)による「IFRS S1」「IFRS S2」、GRIスタンダードとの相互運用性評価も行われる。

 新基準では、メニュー・アプローチを廃し、各項目内で具体的な要件を満たさなければ、認証を取得できないようにする。一方、スコアリング制度そのものは維持し、各社の改善に向けた参考情報として位置づける。

 認証除外業種としては、銃器、武器、軍需品、ポルノ、タバコ、ギャンブル、娯楽用大麻は引き続き除外。石炭やオイルサンド等の化石燃料事業の売上が年間売上の5%以上を占める企業も対象外となる。民間刑務所サービス業等も対象外となる。

 Bコーポレーションの特徴の一つであるポジティブ・インパクト面を評価する「インパクト・ビジネスモデル(IBM)」の評価手法も修正される。新基準でIBMを主張するためのは3つの方法論が用意される。まず、パフォーマンス要求事項に関する柔軟性を高めた説明アプローチ、次に、特定のインパクト・トピックでの要求事項の遵守と同等性を証明するアプローチ。3つ目が、Bコーポレーション認証のPublic Profileや、他のB Labプログラムで一般に認知されている手法で説明するアプローチ。

【参照ページ】B Lab Launches Public Consultation on the Standards for B Corp Certification

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