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【アメリカ】全米自動車労組、ビッグ3で段階的ストライキ突入。史上初。労使交渉決裂

 全米自動車労組(UAW)は9月15日、フォード、GM、ステランティスの組合員がストライキに突入したと発表した。大手3社の労働組合員が同時にストライキに突入するのは史上初。

 UAWでは8月、3社の労働組合員約14.5万人が、ストライキの発動権をUAW執行部に与えることを可決。その後も会社側との労使交渉が続いていたが、ついに決裂した。 

【参考】【アメリカ】全米自動車労組、ストライキ発動権を執行部に付与。賃上げ等要求。EV転換は支持(2023年8月26日)

 今回のストライキに入ったのは、フォードのミシガン組立工場(リージョン1Aローカル900)の約3,300人、GMのウェンツビル組立工場(リージョン4ローカル2250)の組合員約3,600人、ステランティスのトレド組立工場(リージョン2Bローカル12)の5,800人。3社の総労働組合員数14.5万人に占める割合は約9%。

 UAWは、今回のストライキ手法を「スタンドアップ・ストライキ」と呼称している。これは、一斉に全体でストライキに入るのではなく、段階的にストライキに入る割合を上げていくというコストパフォーマンス追求戦略を指す。ストライキが発動されていない組合員は通常通り勤務できるが、契約更新はできない。但し、執行部により特例判断は認められている。

 ストライキに参加した人には、UAWから週毎に約500米ドルのストライキ手当が支給されるが、UAWの資金にも限りがある。そのため、UAWは少数人数で大きな効果を上げるため、今回ストライキに入った3つの支部を慎重にターゲットとして選定した模様。一方、事前には14.5万人全体が一斉にストライキに突入する可能性も指摘されていたため、小規模となったとの見方もある。

 ストライキに入る前の労使交渉では、フォードは9%、GMは10%、ステランティスは14.5%の昇給を提示。しかし、UAW側は、各社のCEOの昇給実績だった40%以上の昇給率を求め、拒否。提示された昇給率は、足元のインフレ率すらカバーできないと主張した。またUAW側は、別途、インフレに見合う生活調整費の支給も要求したが、3社の会社側はいずれも一時金の支払いのみを提示し、こちらも折り合いがつかなかった。

 自社株買いに関しても、UAW側は、会社側が100万米ドル自社株買いする毎に2米ドルを従業員に支払う「利益シェア・スキーム」を要求。これに対し、GMとフォードは、利益シェアを要求額より減額したスキームを提案し、ステランティスは全面拒否。雇用保障の一環として、従業員の家族保護プログラムの導入も要求したが、3社はいずれも拒否。ライフ・ワーク・バランスのための有給休暇の増加も求めたが、同様の3社ともに拒否した。

 EVバッテリー生産の合弁会社の給与水準も大きな争点となった。現在、GMとステランティスは合弁会社でEVバッテリーを生産しているが、合弁会社には親会社の年金制度や退職者医療保険制度が適用されていない。これにより、EVに業務がシフトした場合に、福利厚生が悪化することが危惧されている。UAW側は同様の福利厚生制度を求めたが、会社側は拒否。

 また3社では、2000年代に経営難に陥った際に、新入社員の昇給を8年をかけて段階的に引上げ、最高水準に到達する人事制度を導入している。これに対し、UAWは、最上級の昇給水準に上がる期間は90日間に短縮することを求めたが、3社は6年間を提示。加えて会社側は、経営難後に、新入社員には確定給付年金と退職者医療保険の加入の権利を剥奪していたが、UAW側は今回復活を要求。会社側は飲まなかった。

 UAW側は、退職金の増額も求めたが、企業側は拒否した。

【参照ページ】THE STAND UP STRIKE BEGINS AT THE BIG THREE
【参照ページ】Demanding for Ford
【参照ページ】Demanding for GM
【参照ページ】Demanding for Stellantis
【参照ページ】STAND UP STRIKE FREQUENTLY ASKED QUESTIONS
【画像】UAW

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 全米自動車労組(UAW)は9月15日、フォード、GM、ステランティスの組合員がストライキに突入したと発表した。大手3社の労働組合員が同時にストライキに突入するのは史上初。

 UAWでは8月、

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 全米自動車労組(UAW)は9月15日、フォード、GM、ステランティスの組合員がストライキに突入したと発表した。大手3社の労働組合員が同時にストライキに突入するのは史上初。

 UAWでは8月、

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 全米自動車労組(UAW)は9月15日、フォード、GM、ステランティスの組合員がストライキに突入したと発表した。大手3社の労働組合員が同時にストライキに突入するのは史上初。

 UAWでは8月、3社の労働組合員約14.5万人が、ストライキの発動権をUAW執行部に与えることを可決。その後も会社側との労使交渉が続いていたが、ついに決裂した。 

【参考】【アメリカ】全米自動車労組、ストライキ発動権を執行部に付与。賃上げ等要求。EV転換は支持(2023年8月26日)

 今回のストライキに入ったのは、フォードのミシガン組立工場(リージョン1Aローカル900)の約3,300人、GMのウェンツビル組立工場(リージョン4ローカル2250)の組合員約3,600人、ステランティスのトレド組立工場(リージョン2Bローカル12)の5,800人。3社の総労働組合員数14.5万人に占める割合は約9%。

 UAWは、今回のストライキ手法を「スタンドアップ・ストライキ」と呼称している。これは、一斉に全体でストライキに入るのではなく、段階的にストライキに入る割合を上げていくというコストパフォーマンス追求戦略を指す。ストライキが発動されていない組合員は通常通り勤務できるが、契約更新はできない。但し、執行部により特例判断は認められている。

 ストライキに参加した人には、UAWから週毎に約500米ドルのストライキ手当が支給されるが、UAWの資金にも限りがある。そのため、UAWは少数人数で大きな効果を上げるため、今回ストライキに入った3つの支部を慎重にターゲットとして選定した模様。一方、事前には14.5万人全体が一斉にストライキに突入する可能性も指摘されていたため、小規模となったとの見方もある。

 ストライキに入る前の労使交渉では、フォードは9%、GMは10%、ステランティスは14.5%の昇給を提示。しかし、UAW側は、各社のCEOの昇給実績だった40%以上の昇給率を求め、拒否。提示された昇給率は、足元のインフレ率すらカバーできないと主張した。またUAW側は、別途、インフレに見合う生活調整費の支給も要求したが、3社の会社側はいずれも一時金の支払いのみを提示し、こちらも折り合いがつかなかった。

 自社株買いに関しても、UAW側は、会社側が100万米ドル自社株買いする毎に2米ドルを従業員に支払う「利益シェア・スキーム」を要求。これに対し、GMとフォードは、利益シェアを要求額より減額したスキームを提案し、ステランティスは全面拒否。雇用保障の一環として、従業員の家族保護プログラムの導入も要求したが、3社はいずれも拒否。ライフ・ワーク・バランスのための有給休暇の増加も求めたが、同様の3社ともに拒否した。

 EVバッテリー生産の合弁会社の給与水準も大きな争点となった。現在、GMとステランティスは合弁会社でEVバッテリーを生産しているが、合弁会社には親会社の年金制度や退職者医療保険制度が適用されていない。これにより、EVに業務がシフトした場合に、福利厚生が悪化することが危惧されている。UAW側は同様の福利厚生制度を求めたが、会社側は拒否。

 また3社では、2000年代に経営難に陥った際に、新入社員の昇給を8年をかけて段階的に引上げ、最高水準に到達する人事制度を導入している。これに対し、UAWは、最上級の昇給水準に上がる期間は90日間に短縮することを求めたが、3社は6年間を提示。加えて会社側は、経営難後に、新入社員には確定給付年金と退職者医療保険の加入の権利を剥奪していたが、UAW側は今回復活を要求。会社側は飲まなかった。

 UAW側は、退職金の増額も求めたが、企業側は拒否した。

【参照ページ】THE STAND UP STRIKE BEGINS AT THE BIG THREE
【参照ページ】Demanding for Ford
【参照ページ】Demanding for GM
【参照ページ】Demanding for Stellantis
【参照ページ】STAND UP STRIKE FREQUENTLY ASKED QUESTIONS
【画像】UAW

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