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【国際】ICVCM、ボランタリークレジットのCCP運用ルール完成。化石燃料関連は大幅制限

 国際的なボランタリーカーボンクレジットクレジット基準策定ガバナンス機関ICVCMは7月27日、カーボンクレジットの品質ラベルに関する「コアカーボン原則(CCP)」に関し、運用ルールを定めた文書を正式発表した。

 ICVCMは3月、カーボンクレジットの品質ラベルに関する「コアカーボン原則(CCP)」、プログラムレベル審査フレームワーク、審査手順の3つを発表。今回の発表された文書は、3月発表の内容を統合し、さらに残課題となっていたカテゴリーレベル評価フレームワークの章も新たに追加した。

 カテゴリーレベル評価フレームワークでは、4つの基準を設けた。まず、カーボンニュートラルへの移行に適合していることを確保するため、化石燃料の排出や技術固定化につながるプロジェクトを除外。具体的には石油増進回収(EOR)型の炭素回収・利用・貯留(CCUS)、化石燃料のみを動力源とする陸上輸送、石炭火力発電、削減努力のない(Unabated)な化石燃料火力発電を除外した。但し、ガス火力発電に関しては、国の低炭素化移行計画に基づくゼロエミッション発電と認められる場合に限り、新設を許容した。

 その他の基準では、永続性な排出削減と除去を表すものでなければならないとし、40年以上プロジェクトが続くことを前提とした。山火事等で除去が取り消されるリスクがある場合は、リスクに応じた「バッファ・プール」を設け、取り消された場合の補償分とする。森林、湿地帯、海洋生態系、農地土壌等のプロジェクトは明確に同要件の対象となる。

 さらに、追加性(アディショナリティ)の要件と、確実な定量化要件も盛り込まれた。確実な定量化では、適切な活動バウンダリーを設けた上で、排出削減もしくは除去量を、保守的に測定しなければならない。また、バウンダリー外の排出量へのノックオン効果を考慮し、定期的に定量手法を見直さなければならない。

 社会・環境セーフガード要件も設定された。各プログラムは、生物多様性と天然資源の持続可能な管理に対するリスクの評価・緩和、土地取得や人権を含む先住民族と地域コミュニティに対するリスクの評価・緩和、先住民族と地域コミュニティに関する自由で事前のインフォームド・コンセント(FPIC)と透明性の確保が要件となった。

 今回の要件設定では、特に、森林に関するREDD+プロジェクトの扱いでは、プロジェクトと管轄区域の両レベルでクレジットを評価する際、最近の市場動向と新しい方法論を慎重に検討することを決定。さらに、国レベルまたは準国家レベルの大規模な森林プログラム(管轄REDD+もしくはJREDD+)についても具体的な基準を策定していくことを決めた。

 今回の発表では、ICVCMは、市場監督ミッションも負うことを決めた。具体的には、プログラム監査、抜打ち検査、苦情処理等を通じて、市場を監督する。CCPの遵守に懸念がある場合は、プログラムやカテゴリーを見直す権限も持つ。さらに、もし重大な欠陥が見つかれば、プログラムまたはカテゴリーの資格を停止または終了させる権限も持つこととなった。但し、CCPは、クレジット制度への認証付与であり、クレジット創出プロジェクトの個別評価は行わない。

 ICVCMは今回、CCPを改訂していくための7つの継続的改善作業プログラムも発表した。第2版発行は2026年を予定している。

  • JREDD+を含め、国レベルおよび準国家レベルの管轄プログラムのインテグリティの確保
  • 永続性要件をさらに強化する方法(プールされたバッファー・リザーブの開発とストレステスト、補償期間の長期化等)
  • 人工衛星画像や機械学習等、プロジェクトを検証、監視、報告できるデジタル技術やリモートセンシング技術に関する普遍的なデータ基準の策定
  • 信用価格と収益の開示基準、標準化契約、これらをサポートするために必要な市場インフラの開発
  • プロジェクトをホスト国の気候変動に関する公約と整合させる最善の方法
  • カーボンクレジット・プロジェクトの検証・妥当性確認を行う企業に対する監視の強化
  • 抜け穴を防ぎつつ、小規模プロジェクト向けの簡素化したCCP承認手法の開発

 ICVCMは6月、英政府と英慈善団体Children’s Investment Fund Foundationが発足した「ボランタリーカーボン市場インテグリティ・イニシアチブ(VCMI)」との協働も発表している。役割分担では、ICVCMがカーボンクレジット創出基準を、VCMIがカーボンクレジットの使用基準を策定していく。

【参考】【国際】ICVCMとVCMI、ボランタリーカーボンクレジットで共通品質フレームワークを共同整備へ(2023年6月27日)

【参照ページ】Global benchmark for high-integrity carbon credits aims to mobilize climate finance at speed and scale

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 国際的なボランタリーカーボンクレジットクレジット基準策定ガバナンス機関ICVCMは7月27日、カーボンクレジットの品質ラベルに関する「コアカーボン原則(CCP)」に関し、運用ルールを定めた文書を正式発表した。

 ICVCMは3月、

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 国際的なボランタリーカーボンクレジットクレジット基準策定ガバナンス機関ICVCMは7月27日、カーボンクレジットの品質ラベルに関する「コアカーボン原則(CCP)」に関し、運用ルールを定めた文書を正式発表した。

 ICVCMは3月、

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 国際的なボランタリーカーボンクレジットクレジット基準策定ガバナンス機関ICVCMは7月27日、カーボンクレジットの品質ラベルに関する「コアカーボン原則(CCP)」に関し、運用ルールを定めた文書を正式発表した。

 ICVCMは3月、カーボンクレジットの品質ラベルに関する「コアカーボン原則(CCP)」、プログラムレベル審査フレームワーク、審査手順の3つを発表。今回の発表された文書は、3月発表の内容を統合し、さらに残課題となっていたカテゴリーレベル評価フレームワークの章も新たに追加した。

 カテゴリーレベル評価フレームワークでは、4つの基準を設けた。まず、カーボンニュートラルへの移行に適合していることを確保するため、化石燃料の排出や技術固定化につながるプロジェクトを除外。具体的には石油増進回収(EOR)型の炭素回収・利用・貯留(CCUS)、化石燃料のみを動力源とする陸上輸送、石炭火力発電、削減努力のない(Unabated)な化石燃料火力発電を除外した。但し、ガス火力発電に関しては、国の低炭素化移行計画に基づくゼロエミッション発電と認められる場合に限り、新設を許容した。

 その他の基準では、永続性な排出削減と除去を表すものでなければならないとし、40年以上プロジェクトが続くことを前提とした。山火事等で除去が取り消されるリスクがある場合は、リスクに応じた「バッファ・プール」を設け、取り消された場合の補償分とする。森林、湿地帯、海洋生態系、農地土壌等のプロジェクトは明確に同要件の対象となる。

 さらに、追加性(アディショナリティ)の要件と、確実な定量化要件も盛り込まれた。確実な定量化では、適切な活動バウンダリーを設けた上で、排出削減もしくは除去量を、保守的に測定しなければならない。また、バウンダリー外の排出量へのノックオン効果を考慮し、定期的に定量手法を見直さなければならない。

 社会・環境セーフガード要件も設定された。各プログラムは、生物多様性と天然資源の持続可能な管理に対するリスクの評価・緩和、土地取得や人権を含む先住民族と地域コミュニティに対するリスクの評価・緩和、先住民族と地域コミュニティに関する自由で事前のインフォームド・コンセント(FPIC)と透明性の確保が要件となった。

 今回の要件設定では、特に、森林に関するREDD+プロジェクトの扱いでは、プロジェクトと管轄区域の両レベルでクレジットを評価する際、最近の市場動向と新しい方法論を慎重に検討することを決定。さらに、国レベルまたは準国家レベルの大規模な森林プログラム(管轄REDD+もしくはJREDD+)についても具体的な基準を策定していくことを決めた。

 今回の発表では、ICVCMは、市場監督ミッションも負うことを決めた。具体的には、プログラム監査、抜打ち検査、苦情処理等を通じて、市場を監督する。CCPの遵守に懸念がある場合は、プログラムやカテゴリーを見直す権限も持つ。さらに、もし重大な欠陥が見つかれば、プログラムまたはカテゴリーの資格を停止または終了させる権限も持つこととなった。但し、CCPは、クレジット制度への認証付与であり、クレジット創出プロジェクトの個別評価は行わない。

 ICVCMは今回、CCPを改訂していくための7つの継続的改善作業プログラムも発表した。第2版発行は2026年を予定している。

  • JREDD+を含め、国レベルおよび準国家レベルの管轄プログラムのインテグリティの確保
  • 永続性要件をさらに強化する方法(プールされたバッファー・リザーブの開発とストレステスト、補償期間の長期化等)
  • 人工衛星画像や機械学習等、プロジェクトを検証、監視、報告できるデジタル技術やリモートセンシング技術に関する普遍的なデータ基準の策定
  • 信用価格と収益の開示基準、標準化契約、これらをサポートするために必要な市場インフラの開発
  • プロジェクトをホスト国の気候変動に関する公約と整合させる最善の方法
  • カーボンクレジット・プロジェクトの検証・妥当性確認を行う企業に対する監視の強化
  • 抜け穴を防ぎつつ、小規模プロジェクト向けの簡素化したCCP承認手法の開発

 ICVCMは6月、英政府と英慈善団体Children’s Investment Fund Foundationが発足した「ボランタリーカーボン市場インテグリティ・イニシアチブ(VCMI)」との協働も発表している。役割分担では、ICVCMがカーボンクレジット創出基準を、VCMIがカーボンクレジットの使用基準を策定していく。

【参考】【国際】ICVCMとVCMI、ボランタリーカーボンクレジットで共通品質フレームワークを共同整備へ(2023年6月27日)

【参照ページ】Global benchmark for high-integrity carbon credits aims to mobilize climate finance at speed and scale

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