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【国際】国連グローバル・コンパクト、サプライチェーン公正な移行ガイド発行。5つのアクション

 国連グローバル・コンパクト(UNGC)は8月3日、企業向けに「サプライチェーンにおける公正な移行(ジャスト・トランジション)」ガイドを発行した。公正な移行を、移行計画(トランジション・プラン)とリスクマネジメント戦略の中に組み込む実践方法を指南した。

 今回のガイドは、UNGC、国際労働機関(ILO)、国際労働組合連合会(ITUC)が2016年の国連気候変動枠組条約第26回グラスゴー締約国会議(COP26)で発足した「ジャスト・トランジションに関するシンク・ラボ」に参画している機関からの知見をまとめ、ストックホルム環境研究所(SEI)が作成を担当。同ラボには現在、SEIの他、国連責任投資原則(PRI)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、国連環境計画(UENP)、国連児童基金(UNICEF)、CDP、世界資源研究所(WRI)、人権とビジネス研究所(IHRB)、The B Team等が加盟している。

 UNGCは5月には、企業向けサプライチェーン以外も含めた「公正な移行」ガイダンスを発行しており、今回のガイドは、サプライチェーンに関して詳述したものとなっている。また、2022年11月には「気候変動適応に関するジャスト・トランジション」ガイドも発行済み。

 今回のガイドは、公正な移行の概念範囲として、環境サステナブルな経済が、関係者全員にとって可能な限り公正かつインクルーシブな方法で促進され、ディーセントワークの機会を創出し、誰一人取り残さないことを保証するものと定義。気候変動の移行による雇用への影響だけでなく、気候変動による社会的弱者への物理的リスク等も含めた。

 同ガイドは、国際労働機関(ILO)が各国政府向けに発行した「すべての人のための環境的に持続可能な経済・社会への公正な移行のためのガイドライン」、World Benchmarking Alliance(WBA)のマルチステークホルダー連合体「Collective Impact Coalition」が発表したジャスト・トランジション指標を踏まえ、企業と政府に対し、推奨アクションを示している。

【参考】【国際】運用会社、石油・ガス大手100社に公正な移行求める書簡送付。WBAのイニシアチブ(2022年5月24日)

 企業への指針では、バリューチェーンからの排出量は、企業の事業活動による排出量の平均11.4倍もあり、サプライチェーンを対象とした気候変動対策の重要性が近年増していると指摘。その結果、予期せぬ労働リスクや社会的リスクが発生する可能性があるとした。具体的には、労働者の雇用への影響や、児童労働、危険な労働条件、先住民を含むコミュニティへの悪影響等、サプライチェーンにおける労働問題が含まれると言及した。

 対策面では、影響を受けるステークホルダーと間で、オープンで透明性の高いエンゲージメントを重視。これにより、多様な視点を取り入れ、信頼を育みながら、計画がさまざまなステークホルダー固有のニーズや願望を満たすことできるとした。この作業を、企業自身の事業だけでなく、サプライチェーンでも実施してくことを訴えた。

 マネジメントのカギととなるデータ収集では、WBAのジャスト・トランジション指標の他、ストックホルム環境研究所自身が2つのデータ主導型イニシアチブを主導していることも紹介した。1つ目は、森林破壊に関する可視化データツール「TRASE」。もう一つが、海運部門からの排出量と特定のサプライチェーン主体を結びつけるデータプラットフォーム「グローバル・シッピング・ウォッチ(GSW)」。

 これらを受け、企業に対し5つのアクションを勧告した。

  • 社内でサプライチェーンが抱える社会的混乱と気候変動リスクへの認識を向上させ、サプライヤー等のステークホルダーとエンゲージメントし、悪影響を最小化する是正措置の実施。
  • サプライヤーを教育して、サプライチェーン全体の資源、資産、プロセスの可視性を実現し、幅広いリスクとコストの無駄を特定。
  • ジャスト・トランジション原則に基づき、社会的対話とステークホルダー・エンゲージメントの実施、能力開発支援、労働基本原則と権利の尊重、人権・環境デューデリジェンスの実施。
  • 経営者団体や労働者団体とともに、環境的・社会的に責任ある企業行動に対する強力な市場シグナルを生み出すような政策やインセンチブを設計・実施・改善。特に、公共調達システムの改革を、政府や地方自治体に提言。
  • 政府だけでなく、大企業も中小企業の資金とキャパシティ・ビルディングを支援。

 政府への指針では、サプライチェーン・デューデリジェンスの法定義務化、公共調達サプライチェーンでの実践を通じた率先垂範、中小企業に対する金融アクセス強化、インフォーマル雇用と社会的保護によるセーフティネットの4つを求めた。

【参照ページ】UN Global Compact launches Business Guidance for a Just Transition in Supply Chains

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 国連グローバル・コンパクト(UNGC)は8月3日、企業向けに「サプライチェーンにおける公正な移行(ジャスト・トランジション)」ガイドを発行した。公正な移行を、移行計画(トランジション・プラン)とリスクマネジメント戦略の中に組み込む実践方法を指南した。

 今回のガイドは、

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 国連グローバル・コンパクト(UNGC)は8月3日、企業向けに「サプライチェーンにおける公正な移行(ジャスト・トランジション)」ガイドを発行した。公正な移行を、移行計画(トランジション・プラン)とリスクマネジメント戦略の中に組み込む実践方法を指南した。

 今回のガイドは、

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 国連グローバル・コンパクト(UNGC)は8月3日、企業向けに「サプライチェーンにおける公正な移行(ジャスト・トランジション)」ガイドを発行した。公正な移行を、移行計画(トランジション・プラン)とリスクマネジメント戦略の中に組み込む実践方法を指南した。

 今回のガイドは、UNGC、国際労働機関(ILO)、国際労働組合連合会(ITUC)が2016年の国連気候変動枠組条約第26回グラスゴー締約国会議(COP26)で発足した「ジャスト・トランジションに関するシンク・ラボ」に参画している機関からの知見をまとめ、ストックホルム環境研究所(SEI)が作成を担当。同ラボには現在、SEIの他、国連責任投資原則(PRI)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、国連環境計画(UENP)、国連児童基金(UNICEF)、CDP、世界資源研究所(WRI)、人権とビジネス研究所(IHRB)、The B Team等が加盟している。

 UNGCは5月には、企業向けサプライチェーン以外も含めた「公正な移行」ガイダンスを発行しており、今回のガイドは、サプライチェーンに関して詳述したものとなっている。また、2022年11月には「気候変動適応に関するジャスト・トランジション」ガイドも発行済み。

 今回のガイドは、公正な移行の概念範囲として、環境サステナブルな経済が、関係者全員にとって可能な限り公正かつインクルーシブな方法で促進され、ディーセントワークの機会を創出し、誰一人取り残さないことを保証するものと定義。気候変動の移行による雇用への影響だけでなく、気候変動による社会的弱者への物理的リスク等も含めた。

 同ガイドは、国際労働機関(ILO)が各国政府向けに発行した「すべての人のための環境的に持続可能な経済・社会への公正な移行のためのガイドライン」、World Benchmarking Alliance(WBA)のマルチステークホルダー連合体「Collective Impact Coalition」が発表したジャスト・トランジション指標を踏まえ、企業と政府に対し、推奨アクションを示している。

【参考】【国際】運用会社、石油・ガス大手100社に公正な移行求める書簡送付。WBAのイニシアチブ(2022年5月24日)

 企業への指針では、バリューチェーンからの排出量は、企業の事業活動による排出量の平均11.4倍もあり、サプライチェーンを対象とした気候変動対策の重要性が近年増していると指摘。その結果、予期せぬ労働リスクや社会的リスクが発生する可能性があるとした。具体的には、労働者の雇用への影響や、児童労働、危険な労働条件、先住民を含むコミュニティへの悪影響等、サプライチェーンにおける労働問題が含まれると言及した。

 対策面では、影響を受けるステークホルダーと間で、オープンで透明性の高いエンゲージメントを重視。これにより、多様な視点を取り入れ、信頼を育みながら、計画がさまざまなステークホルダー固有のニーズや願望を満たすことできるとした。この作業を、企業自身の事業だけでなく、サプライチェーンでも実施してくことを訴えた。

 マネジメントのカギととなるデータ収集では、WBAのジャスト・トランジション指標の他、ストックホルム環境研究所自身が2つのデータ主導型イニシアチブを主導していることも紹介した。1つ目は、森林破壊に関する可視化データツール「TRASE」。もう一つが、海運部門からの排出量と特定のサプライチェーン主体を結びつけるデータプラットフォーム「グローバル・シッピング・ウォッチ(GSW)」。

 これらを受け、企業に対し5つのアクションを勧告した。

  • 社内でサプライチェーンが抱える社会的混乱と気候変動リスクへの認識を向上させ、サプライヤー等のステークホルダーとエンゲージメントし、悪影響を最小化する是正措置の実施。
  • サプライヤーを教育して、サプライチェーン全体の資源、資産、プロセスの可視性を実現し、幅広いリスクとコストの無駄を特定。
  • ジャスト・トランジション原則に基づき、社会的対話とステークホルダー・エンゲージメントの実施、能力開発支援、労働基本原則と権利の尊重、人権・環境デューデリジェンスの実施。
  • 経営者団体や労働者団体とともに、環境的・社会的に責任ある企業行動に対する強力な市場シグナルを生み出すような政策やインセンチブを設計・実施・改善。特に、公共調達システムの改革を、政府や地方自治体に提言。
  • 政府だけでなく、大企業も中小企業の資金とキャパシティ・ビルディングを支援。

 政府への指針では、サプライチェーン・デューデリジェンスの法定義務化、公共調達サプライチェーンでの実践を通じた率先垂範、中小企業に対する金融アクセス強化、インフォーマル雇用と社会的保護によるセーフティネットの4つを求めた。

【参照ページ】UN Global Compact launches Business Guidance for a Just Transition in Supply Chains

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