Sustainable Japan | 世界のサステナビリティ・ESG投資・SDGs

【国際】G20/OECDコーポレートガバナンス原則2023が発行。株主によるサステナビリティ強化を重視

 経済協力開発機構(OECD)は9月11日、「G20/OECDコーポレートガバナンス原則」を改訂し、「G20/OECDコーポレートガバナンス原則2023」を発行した。同原則は2015年に策定され、今回が初改訂となった。

【参考】【アジア】OECD、アジア12ヶ国・地域のコーポレートガバナンス調査報告書公表。7つの提言(2022年4月9日)

 改訂原則は、OECDコーポレート・ガバナンス委員会が2021年11月から2023年3月にかけて作成。2022年9月から10日にかけてパブリックコメントの募集も実施された。2023年6月7日と8日に開催されたOECD閣僚理事会で採択。さらに9月9日と10日に開催されたG20ニューデリー・サミットでも承認された。金融安定理事会(FSB)も支持した。

 日本では同日に、関西経済連合会、北海道経済連合会、北陸経済連合会、中部経済連合会、中国経済連合会、四国経済連合会、九州経済連合会が、自主作成したコーポレートガバナンス・コードの改訂案を公表したが、「G20/OECDコーポレートガバナンス原則2023」とは相反する内容が多く、大きな波紋を呼びそうだ。

【参考】【日本】関経連等、コーポレートガバナンス・コード改訂案提言。政策保有株式売却等に反対(2023年9月12日)

 今回の改訂では、「コーポレートガバナンスにおけるステークホルダーの役割」の章が削除され、大規模に改編する形で「サステナビリティとレジリエンス」の章が新設された。

 同章では、冒頭に、「企業は、雇用を創出し、イノベーションに貢献し、富を生み出し、必要不可欠な財やサービスを提供することで、経済の中心的役割を担っている。各国は、パリ協定や持続可能な開発目標に沿って、持続可能なネットゼロ/低炭素経済への移行を公約しており、企業は、適用される政策や異なる管轄区域がたどる移行経路を考慮しながら、急速に変化する規制や事業環境に対応する必要がある」と言及した。

 さらに「投資家は、企業が、人的資本管理を含め、気候変動やその他のサステナビリティに関するリスクや機会をどのように評価、特定、管理しているかについての開示を検討するようになってきている。これを受け、多くの国・地域が、企業のサステナビリティ事項へのエクスポージャーとその管理に関する開示を要求しているか、または要求する予定である」とし、投資家に理解される開示を進めることが、サステナビリティを大きく前進させる道であるとの考えを確立した。そのため投資家と企業との健全な対話を促した。

 マテリアリティの考え方としては、「サステナビリティ関連情報が、投資家の企業価値評価、投資判断、議決権行使判断に影響を与えると合理的に予想される場合、重要な情報とみなされる可能性がある」とし、シングルマテリアリティの概念を採用。さらに、マテリアリティは時間の経過とともに変化し、例えば、短期的には財務的に重要でないと思われるサステナビリティリスクも、長期的には重要となることもあると記述し、ダイナミックマテリアリティの概念も打ち出した。その上で、一部の地域ではダブルマテリアリティを採用する法域もあると付言した。

 サステナビリティ情報開示では、国際的な比較可能性と品質を重視。さらに、財務情報と連結されるべきとし、財務情報と同じ厳密さでサステナビリティ情報を測定し、さらにサステナビリティ報告で重要とした情報は、財務報告にも記述すべきとした。さらに、サステナビリティ報告についても、第三者保証を段階的に導入すべきとした。

 ステークホルダーとの対話では、「長期的な事業戦略に対する信頼を構築する上で不可欠な役割を果たす可能性がある」と明記。また、ステークホルダー間の価値創造的な協力を促進することは、企業の長期的な利益になりうるとし、株主価値と矛盾しないとの立場を採った。個別には、コーポレートガバナンスへの従業員参加は、従業員持株制度等を含め多くの法域で重視されているとしつつ、年金基金の運用は会社の経営陣の判断から独立させるべきとした。投資家に関しては、株主の権利を尊重し、株主との対話において、会社は株主の衡平待遇の原則を遵守すべきと明記。さらに債権者の権利行使を促進することも盛り込んだ。

 企業のロビー活動についても、取締役会が決議した長期的なサステナビリティ戦略を、経営陣がロビー活動で十分考慮しているかを、取締役会が監督すべき明記。さらに、「カーボンプライシング政策に反対するロビー活動は、企業の短期的な利益を増加させることが期待されるかもしれないが、持続可能な社会の実現という企業の目標には合致しない」とし、カーボンプライシングについては賛成すべきとの考えを盛り込んだ。

 また、「株主の権利と公平な取扱い及び主要な持分機能」の章も強化され、株主の権利をさらに重視した。基本的な株主の権利として「外部監査人の選任、任命、承認」を追加。バーチャルやハイブリッドの株主総会の有効性も盛り込んだ。

 「機関投資家、株式市場、その他の仲介機関」の章も強化された。具体的には、「機関投資家と投資先企業とのエンゲージメントを促進・支援すべき」の項目を追加。サービスプロバイダーの利益相反防止に関する対象として、前版では議決権行使助言会社、アナリスト、仲介会社、信用格付機関だけだったが、今回新たにESG格付・データプロバイダー、インデックスプロバイダー、投資助言会社も追加。さらに、ESG格付・データプロバイダー、信用格付機関、インデックスプロバイダー、議決権行使助言会社が使用する手法は透明性があり、一般に公開されるべきとした。

 「取締役会の責任」の章でも、善管注意義務を果たしていた場合には取締役は訴訟から保護されるべきと明記。リスク選好度と企業文化を確立し、内部統制を含むリスクマネジメントの監督も取締役会の重要な責務とした。

【参照ページ】Leaders endorse revised G20/OECD Principles of Corporate Governance to promote corporate sustainability, market confidence and financial stability

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 経済協力開発機構(OECD)は9月11日、「G20/OECDコーポレートガバナンス原則」を改訂し、「G20/OECDコーポレートガバナンス原則2023」を発行した。同原則は2015年に策定され、今回が初改訂となった。

【参考】【アジア】OECD、アジア12ヶ国・地域のコーポレートガバナンス調査報告書公表。7つの提言(2022年4月9日)

 改訂原則は、OECDコーポレート・ガバナンス委員会が2021年11月から2023年3月にかけて作成。2022年9月から10日にかけてパブリックコメントの募集も実施された。2023年6月7日と8日に開催されたOECD閣僚理事会で採択。さらに9月9日と10日に開催されたG20ニューデリー・サミットでも承認された。金融安定理事会(FSB)も支持した。

 日本では同日に、関西経済連合会、北海道経済連合会、北陸経済連合会、中部経済連合会、中国経済連合会、四国経済連合会、九州経済連合会が、自主作成したコーポレートガバナンス・コードの改訂案を公表したが、「G20/OECDコーポレートガバナンス原則2023」とは相反する内容が多く、大きな波紋を呼びそうだ。

【参考】【日本】関経連等、コーポレートガバナンス・コード改訂案提言。政策保有株式売却等に反対(2023年9月12日)

 今回の改訂では、「コーポレートガバナンスにおけるステークホルダーの役割」の章が削除され、大規模に改編する形で「サステナビリティとレジリエンス」の章が新設された。

 同章では、冒頭に、

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 経済協力開発機構(OECD)は9月11日、「G20/OECDコーポレートガバナンス原則」を改訂し、「G20/OECDコーポレートガバナンス原則2023」を発行した。同原則は2015年に策定され、今回が初改訂となった。

【参考】【アジア】OECD、アジア12ヶ国・地域のコーポレートガバナンス調査報告書公表。7つの提言(2022年4月9日)

 改訂原則は、OECDコーポレート・ガバナンス委員会が2021年11月から2023年3月にかけて作成。2022年9月から10日にかけてパブリックコメントの募集も実施された。2023年6月7日と8日に開催されたOECD閣僚理事会で採択。さらに9月9日と10日に開催されたG20ニューデリー・サミットでも承認された。金融安定理事会(FSB)も支持した。

 日本では同日に、関西経済連合会、北海道経済連合会、北陸経済連合会、中部経済連合会、中国経済連合会、四国経済連合会、九州経済連合会が、自主作成したコーポレートガバナンス・コードの改訂案を公表したが、「G20/OECDコーポレートガバナンス原則2023」とは相反する内容が多く、大きな波紋を呼びそうだ。

【参考】【日本】関経連等、コーポレートガバナンス・コード改訂案提言。政策保有株式売却等に反対(2023年9月12日)

 今回の改訂では、「コーポレートガバナンスにおけるステークホルダーの役割」の章が削除され、大規模に改編する形で「サステナビリティとレジリエンス」の章が新設された。

 同章では、冒頭に、

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 経済協力開発機構(OECD)は9月11日、「G20/OECDコーポレートガバナンス原則」を改訂し、「G20/OECDコーポレートガバナンス原則2023」を発行した。同原則は2015年に策定され、今回が初改訂となった。

【参考】【アジア】OECD、アジア12ヶ国・地域のコーポレートガバナンス調査報告書公表。7つの提言(2022年4月9日)

 改訂原則は、OECDコーポレート・ガバナンス委員会が2021年11月から2023年3月にかけて作成。2022年9月から10日にかけてパブリックコメントの募集も実施された。2023年6月7日と8日に開催されたOECD閣僚理事会で採択。さらに9月9日と10日に開催されたG20ニューデリー・サミットでも承認された。金融安定理事会(FSB)も支持した。

 日本では同日に、関西経済連合会、北海道経済連合会、北陸経済連合会、中部経済連合会、中国経済連合会、四国経済連合会、九州経済連合会が、自主作成したコーポレートガバナンス・コードの改訂案を公表したが、「G20/OECDコーポレートガバナンス原則2023」とは相反する内容が多く、大きな波紋を呼びそうだ。

【参考】【日本】関経連等、コーポレートガバナンス・コード改訂案提言。政策保有株式売却等に反対(2023年9月12日)

 今回の改訂では、「コーポレートガバナンスにおけるステークホルダーの役割」の章が削除され、大規模に改編する形で「サステナビリティとレジリエンス」の章が新設された。

 同章では、冒頭に、「企業は、雇用を創出し、イノベーションに貢献し、富を生み出し、必要不可欠な財やサービスを提供することで、経済の中心的役割を担っている。各国は、パリ協定や持続可能な開発目標に沿って、持続可能なネットゼロ/低炭素経済への移行を公約しており、企業は、適用される政策や異なる管轄区域がたどる移行経路を考慮しながら、急速に変化する規制や事業環境に対応する必要がある」と言及した。

 さらに「投資家は、企業が、人的資本管理を含め、気候変動やその他のサステナビリティに関するリスクや機会をどのように評価、特定、管理しているかについての開示を検討するようになってきている。これを受け、多くの国・地域が、企業のサステナビリティ事項へのエクスポージャーとその管理に関する開示を要求しているか、または要求する予定である」とし、投資家に理解される開示を進めることが、サステナビリティを大きく前進させる道であるとの考えを確立した。そのため投資家と企業との健全な対話を促した。

 マテリアリティの考え方としては、「サステナビリティ関連情報が、投資家の企業価値評価、投資判断、議決権行使判断に影響を与えると合理的に予想される場合、重要な情報とみなされる可能性がある」とし、シングルマテリアリティの概念を採用。さらに、マテリアリティは時間の経過とともに変化し、例えば、短期的には財務的に重要でないと思われるサステナビリティリスクも、長期的には重要となることもあると記述し、ダイナミックマテリアリティの概念も打ち出した。その上で、一部の地域ではダブルマテリアリティを採用する法域もあると付言した。

 サステナビリティ情報開示では、国際的な比較可能性と品質を重視。さらに、財務情報と連結されるべきとし、財務情報と同じ厳密さでサステナビリティ情報を測定し、さらにサステナビリティ報告で重要とした情報は、財務報告にも記述すべきとした。さらに、サステナビリティ報告についても、第三者保証を段階的に導入すべきとした。

 ステークホルダーとの対話では、「長期的な事業戦略に対する信頼を構築する上で不可欠な役割を果たす可能性がある」と明記。また、ステークホルダー間の価値創造的な協力を促進することは、企業の長期的な利益になりうるとし、株主価値と矛盾しないとの立場を採った。個別には、コーポレートガバナンスへの従業員参加は、従業員持株制度等を含め多くの法域で重視されているとしつつ、年金基金の運用は会社の経営陣の判断から独立させるべきとした。投資家に関しては、株主の権利を尊重し、株主との対話において、会社は株主の衡平待遇の原則を遵守すべきと明記。さらに債権者の権利行使を促進することも盛り込んだ。

 企業のロビー活動についても、取締役会が決議した長期的なサステナビリティ戦略を、経営陣がロビー活動で十分考慮しているかを、取締役会が監督すべき明記。さらに、「カーボンプライシング政策に反対するロビー活動は、企業の短期的な利益を増加させることが期待されるかもしれないが、持続可能な社会の実現という企業の目標には合致しない」とし、カーボンプライシングについては賛成すべきとの考えを盛り込んだ。

 また、「株主の権利と公平な取扱い及び主要な持分機能」の章も強化され、株主の権利をさらに重視した。基本的な株主の権利として「外部監査人の選任、任命、承認」を追加。バーチャルやハイブリッドの株主総会の有効性も盛り込んだ。

 「機関投資家、株式市場、その他の仲介機関」の章も強化された。具体的には、「機関投資家と投資先企業とのエンゲージメントを促進・支援すべき」の項目を追加。サービスプロバイダーの利益相反防止に関する対象として、前版では議決権行使助言会社、アナリスト、仲介会社、信用格付機関だけだったが、今回新たにESG格付・データプロバイダー、インデックスプロバイダー、投資助言会社も追加。さらに、ESG格付・データプロバイダー、信用格付機関、インデックスプロバイダー、議決権行使助言会社が使用する手法は透明性があり、一般に公開されるべきとした。

 「取締役会の責任」の章でも、善管注意義務を果たしていた場合には取締役は訴訟から保護されるべきと明記。リスク選好度と企業文化を確立し、内部統制を含むリスクマネジメントの監督も取締役会の重要な責務とした。

【参照ページ】Leaders endorse revised G20/OECD Principles of Corporate Governance to promote corporate sustainability, market confidence and financial stability

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