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【日本】SOMPOの社外調査委員会、ビッグモーター事案で中間報告書。ガバナンス問題も指摘

 SOMPOホールディングスは10月10日、傘下の損害保険ジャパンによるビッグモーター自動車保険金不正請求事案で、第三者からなる社外調査委員会の中間報告書を公表した。

【参考】【日本】損保大手、自動車保険を2024年から値上げ。ビッグモーター不正請求事案とも関連(2023年9月3日)

 同報告書では、損害保険ジャパンによる自動車整備工場等への入庫紹介(DRS)のビジネスモデルについても概説している。中古車販売事業者は、車両販売等に左右されない安定的な経営基盤を確立するために、収益の柱を車検・点検入庫の強化、任意保険の獲得にシフトさせ始めていたという背景があったことを紹介。これにより、中古車販売事業者が、自動車修理ビジネスを展開しており、その付随業務として、保険会社の任意保険を紹介する立場を得ていたことがわかった。

 自動車修理のタイミングでは、自動車保険の切替えが「少なくなく」、そのため、損害保険ジャパンにとっては、ビッグモーターと連携することで、自社の自動車保険が他社への切り替えられることを防ぐ狙いがあったとみられる。2013年度時点で、ビッグモーターの取扱保険料約80億円のうち、損害保険ジャパンの保険料は約67億円でシェア84.4%を占めていたが、2022年度にはビッグモーターの取扱保険料約200億円のうち、損害保険ジャパンのシェアは60.5%にまで低下。損害保険ジャパンにとってはシェアを維持する思惑があったと考えられる。また同報告書では、ビッグモーターの取扱保険料は、2015年度以降年々増加し、2022年度には他の大型中古車販売店及びディーラーの代理店の中でトップとなっていたことも伝えている。

 さらに、ビッグモーターは、DRS実績の比率に応じて、自賠責保険の損害保険各社への配分や、損害保険会社の任意保険の紹介を行う制度を導入しており、これにより、ビッグモーターへのDRS実績を巡り、損害保険会社の競争が過熱していた。

 損害保険ジャパンは、遅くとも2009年頃から継続的にDRSの拡充に取り組んでいたが、2020年度には、損害保険ジャパンが事故受付を行った対象事故件数41.9万件のうち、実際にDRSにまで漕ぎ着けたのが2.4万件にとどまっており、2021年度には会社をあげて、DRS率50%を目標とする取り組みが始まっていた。その一環として、2018年度には「ビッグモーター本部」まで立ち上がっていた。

 自動車整備工場から伝えられる損害保険金請求に関し、通常は、一般社団法人日本損害保険協会に加盟する損保会社から委嘱を受け「保険事故」の損害調査業務を行う「アジャスター」が調査を担当することになっているが、請求妥当性チェックでの乖離(かいり)検証による乖離率が5%以下であり、工場ランクが最高位の「S」であったDRS工場においては、アジャスターが調査方法の決定のみに関与し、損害保険会社が査定を行う簡易調査が認められている。ところが、損害保険ジャパンでは、モニタリングの結果、乖離率が高いと判断されたDRS工場に関しても簡易調査を継続。また、ビッグモーター内部での売上に対するプレッシャーから、請求不正のリスク発生していることへの懸念が、損害保険ジャパンの社内でも報告されていたが、損害保険ジャパンの上層部に伝えられることはなかったという。

 大手損害保険3社は、2022年度に不正請求の疑いを認識し、ビッグモーターに対する自主調査を実施。調査はアジャスターが担ったものの、実施したのは損害保険会社からビッグモーターに出向していたアジャスターだった。その中で、ビッグモーターは、アジャスターに対し調査結果の改竄も指示しており、アジャスターは、出向先のビッグモーター、及び出向元の損害保険会社の双方から、弱い立場にあり、従わざるをえなかった模様。

 6月には大手損害保険3社が、ビッグモーターに対するDRSを停止したが、損害保険ジャパンは7月に再開を決定。その背景には、ビッグモーターとの将来の関係悪化を避けたい思惑があり、ビッグモーター社長の対策強化の姿勢を信じたい状況があったということがうかがえる。

 損害保険ジャパンは、ビッグモーターに対するDRSを再開にするに際し、金融庁に調査内容を報告していたが、ビッグモーター上層部によってヒアリング内容が改竄されていたこと等は報告しなかった。同報告書は「問題を矮小化し事実を隠ぺいしていたとのそしりを受けてもやむを得ないものであった」と明言している。

 同報告書では、問題の所在として、会議での議論が成り行きで決まっていたことや、法務・コンプライアンス部門や広報部門が重要会議に参加していなかった点、会議メンバー出席者の主体性が欠如していた点も挙げた。

 今回の報告書では、SOMPOホールディングスの責任にまでは触れていない。同社外調査委員会は、2023年末までに最終報告書の作成を予定。その中で、再発防止策の提言をまとめる考え。

【参照ページ】【ニュースリリース一覧】当社子会社の保険料の調整行為に関する対応

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 SOMPOホールディングスは10月10日、傘下の損害保険ジャパンによるビッグモーター自動車保険金不正請求事案で、第三者からなる社外調査委員会の中間報告書を公表した。

【参考】【日本】損保大手、自動車保険を2024年から値上げ。ビッグモーター不正請求事案とも関連(2023年9月3日)

 同報告書では、

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 SOMPOホールディングスは10月10日、傘下の損害保険ジャパンによるビッグモーター自動車保険金不正請求事案で、第三者からなる社外調査委員会の中間報告書を公表した。

【参考】【日本】損保大手、自動車保険を2024年から値上げ。ビッグモーター不正請求事案とも関連(2023年9月3日)

 同報告書では、

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 SOMPOホールディングスは10月10日、傘下の損害保険ジャパンによるビッグモーター自動車保険金不正請求事案で、第三者からなる社外調査委員会の中間報告書を公表した。

【参考】【日本】損保大手、自動車保険を2024年から値上げ。ビッグモーター不正請求事案とも関連(2023年9月3日)

 同報告書では、損害保険ジャパンによる自動車整備工場等への入庫紹介(DRS)のビジネスモデルについても概説している。中古車販売事業者は、車両販売等に左右されない安定的な経営基盤を確立するために、収益の柱を車検・点検入庫の強化、任意保険の獲得にシフトさせ始めていたという背景があったことを紹介。これにより、中古車販売事業者が、自動車修理ビジネスを展開しており、その付随業務として、保険会社の任意保険を紹介する立場を得ていたことがわかった。

 自動車修理のタイミングでは、自動車保険の切替えが「少なくなく」、そのため、損害保険ジャパンにとっては、ビッグモーターと連携することで、自社の自動車保険が他社への切り替えられることを防ぐ狙いがあったとみられる。2013年度時点で、ビッグモーターの取扱保険料約80億円のうち、損害保険ジャパンの保険料は約67億円でシェア84.4%を占めていたが、2022年度にはビッグモーターの取扱保険料約200億円のうち、損害保険ジャパンのシェアは60.5%にまで低下。損害保険ジャパンにとってはシェアを維持する思惑があったと考えられる。また同報告書では、ビッグモーターの取扱保険料は、2015年度以降年々増加し、2022年度には他の大型中古車販売店及びディーラーの代理店の中でトップとなっていたことも伝えている。

 さらに、ビッグモーターは、DRS実績の比率に応じて、自賠責保険の損害保険各社への配分や、損害保険会社の任意保険の紹介を行う制度を導入しており、これにより、ビッグモーターへのDRS実績を巡り、損害保険会社の競争が過熱していた。

 損害保険ジャパンは、遅くとも2009年頃から継続的にDRSの拡充に取り組んでいたが、2020年度には、損害保険ジャパンが事故受付を行った対象事故件数41.9万件のうち、実際にDRSにまで漕ぎ着けたのが2.4万件にとどまっており、2021年度には会社をあげて、DRS率50%を目標とする取り組みが始まっていた。その一環として、2018年度には「ビッグモーター本部」まで立ち上がっていた。

 自動車整備工場から伝えられる損害保険金請求に関し、通常は、一般社団法人日本損害保険協会に加盟する損保会社から委嘱を受け「保険事故」の損害調査業務を行う「アジャスター」が調査を担当することになっているが、請求妥当性チェックでの乖離(かいり)検証による乖離率が5%以下であり、工場ランクが最高位の「S」であったDRS工場においては、アジャスターが調査方法の決定のみに関与し、損害保険会社が査定を行う簡易調査が認められている。ところが、損害保険ジャパンでは、モニタリングの結果、乖離率が高いと判断されたDRS工場に関しても簡易調査を継続。また、ビッグモーター内部での売上に対するプレッシャーから、請求不正のリスク発生していることへの懸念が、損害保険ジャパンの社内でも報告されていたが、損害保険ジャパンの上層部に伝えられることはなかったという。

 大手損害保険3社は、2022年度に不正請求の疑いを認識し、ビッグモーターに対する自主調査を実施。調査はアジャスターが担ったものの、実施したのは損害保険会社からビッグモーターに出向していたアジャスターだった。その中で、ビッグモーターは、アジャスターに対し調査結果の改竄も指示しており、アジャスターは、出向先のビッグモーター、及び出向元の損害保険会社の双方から、弱い立場にあり、従わざるをえなかった模様。

 6月には大手損害保険3社が、ビッグモーターに対するDRSを停止したが、損害保険ジャパンは7月に再開を決定。その背景には、ビッグモーターとの将来の関係悪化を避けたい思惑があり、ビッグモーター社長の対策強化の姿勢を信じたい状況があったということがうかがえる。

 損害保険ジャパンは、ビッグモーターに対するDRSを再開にするに際し、金融庁に調査内容を報告していたが、ビッグモーター上層部によってヒアリング内容が改竄されていたこと等は報告しなかった。同報告書は「問題を矮小化し事実を隠ぺいしていたとのそしりを受けてもやむを得ないものであった」と明言している。

 同報告書では、問題の所在として、会議での議論が成り行きで決まっていたことや、法務・コンプライアンス部門や広報部門が重要会議に参加していなかった点、会議メンバー出席者の主体性が欠如していた点も挙げた。

 今回の報告書では、SOMPOホールディングスの責任にまでは触れていない。同社外調査委員会は、2023年末までに最終報告書の作成を予定。その中で、再発防止策の提言をまとめる考え。

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