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【アメリカ・中国】米中政府、サニーランズ宣言発表。気候変動対策強化で一致。複数の作業部会設置へ

 米ジョン・ケリー気候担当大統領特使と中国の謝振華気候変動担当特使は11月14日、気候変動対策の連携を強化する「サニーランズ宣言」を発表した。両者は、2023年7月16日から19日まで北京で、11月4日から7日までカリフォルニア州サニーランズで会談し、協議を続けていた。

 米中両政府は、2021年4月に「気候危機に対処する米中共同声明」を、2021年11月に「2020年代における気候行動の強化に関する米中グラスゴー共同宣言」を発表していたが、その後、米中関係の悪化により、大きな進展がなかった。今回のサニーランズ宣言は、国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)に向け、両国での協調に到達した画期的な宣言となった。

 同宣言では、まず、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)を含む入手可能な最善の科学的知見に警鐘を鳴らしつつ、米国及び中国は、公平及び共通だが差異ある責任の原則とそれぞれの能力を反映しつつ、1.5℃目標の達成に向けた努力を追求することを確認した。

 その上で、2020年代における具体的な気候変動行動を加速させるための対話と協力を行うため、「2020年代の気候変動行動強化に関する作業部会」の運用を開始することも決定した。同作業部会は、エネルギー転換、メタン、サーキュラーエコノミー及び省エネ、低炭素で持続可能な省・州・都市、森林減少に加え、他の共同声明等で特定した協力分野をテーマとする。

 また、エネルギー転換、メタン及び非二酸化炭素の温室効果ガス(GHG)、サーキュラーエコノミー及び省エネ、地方政府強力、森林、温室効果ガスと大気汚染物質削減のシナジー、2035年国別削減目標(NDC)、COP28の各分野では個別の合意に達した。

 エネルギー転換では、2030年までに再生可能エネルギー設備容量を世界全体で3倍にする努力を追求するというG20首脳宣言を支持。2030年までに石炭、石油、ガスの各火力発電を再生可能エネルギーに代替する動きを加速させることでも合意した。米中エネルギー効率フォーラムも再開する。エネルギー政策と戦略に関する二国間対話も再開し、現実的な協力を強化するためのトラックII活動を促進する。2030年までに、産業及びエネルギー源を含め、それぞれ少なくとも5件の大規模な協力的CCUSプロジェクトを推進することでも合意した。

 メタン及び非CO2のGHGでは、2035年のNDCに盛り込むため、各自で国別メタン排出削減行動計画を実施。また、両国での政策対話、技術的解決策の共有、キャパシティビルディングに関する技術作業部会協力も直ちに開始する。一酸化二窒素の排出管理のための措置でも協力する。ハイドロフルオロカーボ(HFC)の段階的削減のため、キガリ改正下で協力し、製造される全ての冷却機器について野心的な最低効率基準の適用を確保することもコミットした。

 サーキュラーエコノミー及び省エネの分野でも政策対話を開始する。両国の企業や大学・研究機関間の共同プロジェクトも支援する。海洋環境を含むプラスチック汚染に関する国際的な法的拘束力のある文書を作成することでも協力する。

 地方政府間協力では、特に、電力、交通、建物、廃棄物分野で、州、省、市間の気候協力を支援。双方の州政府、企業、シンクタンク等の参画も促す。両国政府間では、政策対話、ベストプラクティスの共有、情報交換、及び協力プログラムの促進のため、定期会合を開催する。2024年前半には、ハイレベル・イベントを開催することでも合意した。

 森林では、双方の法規制及び政策を通じ、違法輸入の禁止に関する措置を実施。2030年までに森林の減少を阻止し、再生させるための努力を進めることでも約束。そのための作業部会も設置する。

 2035年NDCでは、全ての温室効果ガスを含み、世界平均気温の上昇を2℃以下に抑え、気温上昇を1.5℃に抑える努力を追求するというパリ協定の気温目標に沿った削減量を反映することでも一致した。

 COP28では、議長国のアラブ首長国連邦(UAE)を加え、メタン及び非CO2のGHGガスサミットを共催。パリ協定の下での最初のグローバル・ストックテイクへの期待も表明し、各締約国が野心、実施、協力について考える極めて重要な機会と認識した。

 COP28で予定されているグローバル・ストックテイク決議案の文言では、盛り込むべき10の文章でも合意した。具体的には、パリ協定によって締約国及び非締約国のステークホルダーの行動が喚起されたという認識を盛り込むことで一致。他には、最新のIPCC報告書を含む利用可能な最善の科学から情報を得ること、そしてパリ協定と整合性を確保すること、各締約国に全ての温室効果ガスをカバーする経済全体の2035年NDCを要請していくこと、気候変動適応の実効性を高める目標や指標の策定すること、先進国締約国に対し、適応資金の提供を2倍以上にするよう求めること等でも一致した。

【参照ページ】Sunnylands Statement on Enhancing Cooperation to Address the Climate Crisis

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 米ジョン・ケリー気候担当大統領特使と中国の謝振華気候変動担当特使は11月14日、気候変動対策の連携を強化する「サニーランズ宣言」を発表した。両者は、2023年7月16日から19日まで北京で、11月4日から7日までカリフォルニア州サニーランズで会談し、協議を続けていた。

 米中両政府は、

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 米ジョン・ケリー気候担当大統領特使と中国の謝振華気候変動担当特使は11月14日、気候変動対策の連携を強化する「サニーランズ宣言」を発表した。両者は、2023年7月16日から19日まで北京で、11月4日から7日までカリフォルニア州サニーランズで会談し、協議を続けていた。

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 米ジョン・ケリー気候担当大統領特使と中国の謝振華気候変動担当特使は11月14日、気候変動対策の連携を強化する「サニーランズ宣言」を発表した。両者は、2023年7月16日から19日まで北京で、11月4日から7日までカリフォルニア州サニーランズで会談し、協議を続けていた。

 米中両政府は、2021年4月に「気候危機に対処する米中共同声明」を、2021年11月に「2020年代における気候行動の強化に関する米中グラスゴー共同宣言」を発表していたが、その後、米中関係の悪化により、大きな進展がなかった。今回のサニーランズ宣言は、国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)に向け、両国での協調に到達した画期的な宣言となった。

 同宣言では、まず、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)を含む入手可能な最善の科学的知見に警鐘を鳴らしつつ、米国及び中国は、公平及び共通だが差異ある責任の原則とそれぞれの能力を反映しつつ、1.5℃目標の達成に向けた努力を追求することを確認した。

 その上で、2020年代における具体的な気候変動行動を加速させるための対話と協力を行うため、「2020年代の気候変動行動強化に関する作業部会」の運用を開始することも決定した。同作業部会は、エネルギー転換、メタン、サーキュラーエコノミー及び省エネ、低炭素で持続可能な省・州・都市、森林減少に加え、他の共同声明等で特定した協力分野をテーマとする。

 また、エネルギー転換、メタン及び非二酸化炭素の温室効果ガス(GHG)、サーキュラーエコノミー及び省エネ、地方政府強力、森林、温室効果ガスと大気汚染物質削減のシナジー、2035年国別削減目標(NDC)、COP28の各分野では個別の合意に達した。

 エネルギー転換では、2030年までに再生可能エネルギー設備容量を世界全体で3倍にする努力を追求するというG20首脳宣言を支持。2030年までに石炭、石油、ガスの各火力発電を再生可能エネルギーに代替する動きを加速させることでも合意した。米中エネルギー効率フォーラムも再開する。エネルギー政策と戦略に関する二国間対話も再開し、現実的な協力を強化するためのトラックII活動を促進する。2030年までに、産業及びエネルギー源を含め、それぞれ少なくとも5件の大規模な協力的CCUSプロジェクトを推進することでも合意した。

 メタン及び非CO2のGHGでは、2035年のNDCに盛り込むため、各自で国別メタン排出削減行動計画を実施。また、両国での政策対話、技術的解決策の共有、キャパシティビルディングに関する技術作業部会協力も直ちに開始する。一酸化二窒素の排出管理のための措置でも協力する。ハイドロフルオロカーボ(HFC)の段階的削減のため、キガリ改正下で協力し、製造される全ての冷却機器について野心的な最低効率基準の適用を確保することもコミットした。

 サーキュラーエコノミー及び省エネの分野でも政策対話を開始する。両国の企業や大学・研究機関間の共同プロジェクトも支援する。海洋環境を含むプラスチック汚染に関する国際的な法的拘束力のある文書を作成することでも協力する。

 地方政府間協力では、特に、電力、交通、建物、廃棄物分野で、州、省、市間の気候協力を支援。双方の州政府、企業、シンクタンク等の参画も促す。両国政府間では、政策対話、ベストプラクティスの共有、情報交換、及び協力プログラムの促進のため、定期会合を開催する。2024年前半には、ハイレベル・イベントを開催することでも合意した。

 森林では、双方の法規制及び政策を通じ、違法輸入の禁止に関する措置を実施。2030年までに森林の減少を阻止し、再生させるための努力を進めることでも約束。そのための作業部会も設置する。

 2035年NDCでは、全ての温室効果ガスを含み、世界平均気温の上昇を2℃以下に抑え、気温上昇を1.5℃に抑える努力を追求するというパリ協定の気温目標に沿った削減量を反映することでも一致した。

 COP28では、議長国のアラブ首長国連邦(UAE)を加え、メタン及び非CO2のGHGガスサミットを共催。パリ協定の下での最初のグローバル・ストックテイクへの期待も表明し、各締約国が野心、実施、協力について考える極めて重要な機会と認識した。

 COP28で予定されているグローバル・ストックテイク決議案の文言では、盛り込むべき10の文章でも合意した。具体的には、パリ協定によって締約国及び非締約国のステークホルダーの行動が喚起されたという認識を盛り込むことで一致。他には、最新のIPCC報告書を含む利用可能な最善の科学から情報を得ること、そしてパリ協定と整合性を確保すること、各締約国に全ての温室効果ガスをカバーする経済全体の2035年NDCを要請していくこと、気候変動適応の実効性を高める目標や指標の策定すること、先進国締約国に対し、適応資金の提供を2倍以上にするよう求めること等でも一致した。

【参照ページ】Sunnylands Statement on Enhancing Cooperation to Address the Climate Crisis

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