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【国際】ILO、暴力・ハラスメント防止で報告書。労働安全衛生事項として労働協約に盛り込むべき

 国際労働機関(ILO)は1月15日、労働安全衛生の一環として、職場での暴力・ハラスメント防止に関する報告書を発行した。発行資金は、EU欧州委員会とILOが負担した。

 職場での暴力・ハラスメントについては、2019年6月のILO総会でILO190号条約(仕事の世界における暴力とハラスメントを禁止する条約)が採択。同時に同条約を補足するILO206号勧告も採択されている。ILOの決議投票では、各加盟国に関し、政府2票、労働者代表1票、経営者代表1票の合計4票が割り当てられており、同総会では、日本政府と日本労働組合総連合会(連合)が賛成、日本経済団体連合会(経団連)は反対票を投じた。同条約は、批准数が規定数を満たし、2021年6月25日に発効。日本は未批准。日本政府は、2019年5月に改正労働施策総合推進法を成立させたが、防止義務のみで、禁止や罰則は設けていない。

 同条約では、「暴力及びハラスメント」を、単発か繰り返されるかにかかわらず、身体的、精神的、性的若しくは経済的損害を目的とした、もしくはこれらの損害を引き起こす、もしくは引き起こす可能性がある一定の範囲の許容できない行為及び慣行又はそのおそれと定義している。また「仕事の世界」の定義として、非正規社員も含めた全従業員及び使用人としており、さらに退職者や求職者、インターン、ボランティアも対象としている。

 同条約では、各加盟国に対し、仕事の世界における暴力及びハラスメントを定義し、禁止するための法令を制定することを義務化。また、各加盟国が、各企業に対し、マネジメント度合いに応じ、仕事の世界における暴力及びハラスメントを防止するための適切な措置や、合理的に実効可能な限り、方針を策定して実行する法令を制定することも求めている。

 今回のガイダンスでは、暴力・ハラスメント(V&H)は、「労働者個人の健康、ウェルビーング、生活、生産性の低下、代替、退職、レピュテーション被害による企業の業績、生産性の高い労働者の潜在的な喪失、社会サービスや福祉への圧力の増大による社会全体にとって、大きな犠牲を伴う」と認識。また、将来的には、「雇用契約の新しい形態、労働力の高齢化、仕事の集約化、デジタル監視、ワークライフバランスの悪化等、仕事の性質を変えつつある多くの要因によって、さらに悪化する可能性がある」とした。

 同ガイダンスは、2022年のILO総会で、「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」を改正し、労働安全衛生を、労働における基本的原則及び権利に含めることを決議していることに触れ、ILO190条約の内容も、ILO中核的労働基準として、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)上の人権として扱われていることを想起した。

 その上で、先行的に法令を制定している国での状況をレビュー。暴力・ハラスメント防止を労働安全衛生のテーマとして扱うことが一般的になっていることを明らかにした。一方、既存の法令が事後救済に焦点を当てて、予防的フレームワークが手薄になっていることを課題として取り上げた。

 同報告書では、先行事例も紹介しつつ、職場の方針やリスクアセスメント、特に労働者に対する研修や情報提供、暴力・ハラスメントに関するリスクマネジメント措置に関するガイダンスを盛り込んだ。とりわけ社会的対話のプロセスを重視した。企業と労働組合が締結する「労働協約(CBA)」の中で、暴力・ハラスメントに関する取り決めを行うことも有効とした。

【参照ページ】Preventing and addressing violence and harassment in the world of work through occupational safety and health measures

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 国際労働機関(ILO)は1月15日、労働安全衛生の一環として、職場での暴力・ハラスメント防止に関する報告書を発行した。発行資金は、EU欧州委員会とILOが負担した。

 職場での暴力・ハラスメントについては、

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 国際労働機関(ILO)は1月15日、労働安全衛生の一環として、職場での暴力・ハラスメント防止に関する報告書を発行した。発行資金は、EU欧州委員会とILOが負担した。

 職場での暴力・ハラスメントについては、2019年6月のILO総会でILO190号条約(仕事の世界における暴力とハラスメントを禁止する条約)が採択。同時に同条約を補足するILO206号勧告も採択されている。ILOの決議投票では、各加盟国に関し、政府2票、労働者代表1票、経営者代表1票の合計4票が割り当てられており、同総会では、日本政府と日本労働組合総連合会(連合)が賛成、日本経済団体連合会(経団連)は反対票を投じた。同条約は、批准数が規定数を満たし、2021年6月25日に発効。日本は未批准。日本政府は、2019年5月に改正労働施策総合推進法を成立させたが、防止義務のみで、禁止や罰則は設けていない。

 同条約では、「暴力及びハラスメント」を、単発か繰り返されるかにかかわらず、身体的、精神的、性的若しくは経済的損害を目的とした、もしくはこれらの損害を引き起こす、もしくは引き起こす可能性がある一定の範囲の許容できない行為及び慣行又はそのおそれと定義している。また「仕事の世界」の定義として、非正規社員も含めた全従業員及び使用人としており、さらに退職者や求職者、インターン、ボランティアも対象としている。

 同条約では、各加盟国に対し、仕事の世界における暴力及びハラスメントを定義し、禁止するための法令を制定することを義務化。また、各加盟国が、各企業に対し、マネジメント度合いに応じ、仕事の世界における暴力及びハラスメントを防止するための適切な措置や、合理的に実効可能な限り、方針を策定して実行する法令を制定することも求めている。

 今回のガイダンスでは、暴力・ハラスメント(V&H)は、「労働者個人の健康、ウェルビーング、生活、生産性の低下、代替、退職、レピュテーション被害による企業の業績、生産性の高い労働者の潜在的な喪失、社会サービスや福祉への圧力の増大による社会全体にとって、大きな犠牲を伴う」と認識。また、将来的には、「雇用契約の新しい形態、労働力の高齢化、仕事の集約化、デジタル監視、ワークライフバランスの悪化等、仕事の性質を変えつつある多くの要因によって、さらに悪化する可能性がある」とした。

 同ガイダンスは、2022年のILO総会で、「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」を改正し、労働安全衛生を、労働における基本的原則及び権利に含めることを決議していることに触れ、ILO190条約の内容も、ILO中核的労働基準として、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)上の人権として扱われていることを想起した。

 その上で、先行的に法令を制定している国での状況をレビュー。暴力・ハラスメント防止を労働安全衛生のテーマとして扱うことが一般的になっていることを明らかにした。一方、既存の法令が事後救済に焦点を当てて、予防的フレームワークが手薄になっていることを課題として取り上げた。

 同報告書では、先行事例も紹介しつつ、職場の方針やリスクアセスメント、特に労働者に対する研修や情報提供、暴力・ハラスメントに関するリスクマネジメント措置に関するガイダンスを盛り込んだ。とりわけ社会的対話のプロセスを重視した。企業と労働組合が締結する「労働協約(CBA)」の中で、暴力・ハラスメントに関する取り決めを行うことも有効とした。

【参照ページ】Preventing and addressing violence and harassment in the world of work through occupational safety and health measures

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