Sustainable Japan | 世界のサステナビリティ・ESG投資・SDGs

【国際】国連グローバル・コンパクト、コーポレートガバナンスの自己診断ツール公表。変革的ガバナンス

 国連グローバル・コンパクト(UNGC)は2月13日、国連持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる「社会を変革する」を実現するためのコーポレートガバナンスの普及に向けたガイドを発行した。自己診断ツールも提供した。

 UNGCは、SDGsを実現するためのコーポレートガバナンスを「トランスフォーメーショナル・ガバナンス」と呼称している。今回発行したガイドは、責任ある企業行動、ESGパフォーマンスの向上、制度・法律・システムの強化の原動力として、より大きな説明責任、誠実さ、透明性を支持することを企業に求めるもの。同ガイドを作成したUNGCの「トランスフォーメーショナル・ガバナンスに関するシンク・ラボ」には、セメックス、ディアジオ、エネル、SAP、シーメンス・エナジー、RELX、アステラス製薬、ピアソン、リンクレーターズ、ベーカー・マッケンジー等が参画している。

 トランスフォーメーショナル・ガバナンスは、UNGCが2021年6月に発表した「SDGs16ビジネス・フレームワーク」に由来。同フレームワークは、トランスフォーメーショナル・ガバナンスを原則に基づくアプローチとして導入しており、企業に対し、より説明責任を果たし、倫理的で、包括的で、社内外に対して透明性の高いものとなるよう求めている。またUNGCは、同原則は、経済協力開発機構(OECD)の「G20/OECDコーポレートガバナンス原則」とも整合しているとの立場を採っている。

【参考】【国際】G20/OECDコーポレートガバナンス原則2023が発行。株主によるサステナビリティ強化を重視(2023年9月13日)

 同ガイドでは、テクノロジーに関する問題もESGに含まれるとの考えを明確にし、AI、データ保護とプライバシー、誤情報と偽情報、サイバーセキュリティ、労働力の再構築の課題も取締役会や経営陣が責任を持って扱うべきとした。その上で、サステイナビリティ・スキルを専門的に開発することで、トランスフォーメーショナル・ガバナ ンス・アプローチを適用できる取締役や経営陣を育成していくべきとした。

 また、グリーンウォッシュ・リスクについても触れ、真の変革を実現していくことも、コーポレートガバナンスに含まれるとした。コーポレートガバナンスは、ESGのE(環境)とS(社会)の双方で効果的に対処するためにも優先度の高い事項として考えられていることにも言及した。

 これらを踏まえ、取締役と経営陣に向け7つを提言した。

  • 総合的評価と学習:企業責任、特にSDGsへの支援、そしてそれがトランスフォーメーショナル・ガバナンスとどのように整合しているかを評価する。同時に、事業目的、ステークホルダーエンゲージメント、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)に焦点を当て、企業倫理とサステナビリティにおける既存のイニシアチブから教訓を得る。
  • 多様な専門知識と効果的なコミュニケーション:取締役会と経営陣の双方に多様性を反映させ、トランスフォーメーショナル・ガバナンス関連の問題に効果的に対処できるよう、さまざまな経歴や専門知識を持ち込めるようにする。同時に、広報戦略や声明がトランスフォーメーショナル・ガバナンスの原則と整合しているかを注意深く評価する。
  • 役割と責任の明確化:会社の様々な組織において、役割、責任、説明責任が明確に定義されていることを確認する。最高法務責任者と最高コンプライアンス責任者は、トランスフォーメーショナル・ガバナンスに特に関連性が高いと認識されている。特に、ESG課題の特定の側面は双方の役割に割り当てられつつある。
  • インテグリティ、コンプライアンス、ESGとの整合:倫理基準、腐敗防止、規制遵守を強化する。SDGs16ビジネス・フレームワークに関連する事項に取り組むための部門横断的なプロセスを確立し、ESG戦略をトランスフォーメーショナル・ガバナンスの要件と整合させ、事業運営全体のインテグリティを強化する。
  • リスクマネジメントとデューデリジェンス:レピュテーションリスクやグリーンウォッシュを含む広範なリスクを管理するプロセスを改善する。地政学的リスクに関する洞察を深め、グローバル・サプライチェーンを含むすべての事業活動においてデューデリジェンスの実践を拡大する。
  • レジリエンス、地政学、アドボカシー:総合的なトランスフォーメーショナル・ガバナンス・アプローチを活用し、特に混乱した地政学的情勢におけるレジリエンスを強化する。国際的な事業活動においてトランスフォーメーショナル・ガバナンス・アプローチを実施する際の法的・文化的なニュアンスに対処する。重要な問題に対してアドボカシーを行い、集団的行動を起こすための手段を構築する。
  • ステークホルダー・エンゲージメント、レポーティング、テクノロジーの活用:市民社会、ジャーナリスト、正義保護者との関係強化を通じ、ステークホルダーとのエンゲージメントに関する包括的な戦略を開発する。戦略には、効果的なモニタリング・評価メカニズムや、レポーティング・開示に関する組織能力も含まれる。トランスフォーメーショナル・ガバナンス・アプローチを効果的に実施し、その効果を測定するために、テクノロジーとデータマネジメントを活用する。

 同時に、政府とのエンゲージメントの在り方や、機関投資家が企業のトランスフォーメーショナル・ガバナンスを向上させるためのアプローチについても整理した。
 
【参照ページ】UN Global Compact launches Transformational Governance Corporate Toolkit

ここから先は登録ユーザー限定のコンテンツとなります。ログインまたはユーザー登録を行って下さい。

 国連グローバル・コンパクト(UNGC)は2月13日、国連持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる「社会を変革する」を実現するためのコーポレートガバナンスの普及に向けたガイドを発行した。自己診断ツールも提供した。

 UNGCは、

ここから先は登録ユーザー限定のコンテンツとなります。ログインまたはユーザー登録を行って下さい。

 国連グローバル・コンパクト(UNGC)は2月13日、国連持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる「社会を変革する」を実現するためのコーポレートガバナンスの普及に向けたガイドを発行した。自己診断ツールも提供した。

 UNGCは、

ここから先は登録ユーザー限定のコンテンツとなります。ログインまたはユーザー登録を行って下さい。

ここから先は有料登録会員限定のコンテンツとなります。有料登録会員へのアップグレードを行って下さい。

 国連グローバル・コンパクト(UNGC)は2月13日、国連持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる「社会を変革する」を実現するためのコーポレートガバナンスの普及に向けたガイドを発行した。自己診断ツールも提供した。

 UNGCは、SDGsを実現するためのコーポレートガバナンスを「トランスフォーメーショナル・ガバナンス」と呼称している。今回発行したガイドは、責任ある企業行動、ESGパフォーマンスの向上、制度・法律・システムの強化の原動力として、より大きな説明責任、誠実さ、透明性を支持することを企業に求めるもの。同ガイドを作成したUNGCの「トランスフォーメーショナル・ガバナンスに関するシンク・ラボ」には、セメックス、ディアジオ、エネル、SAP、シーメンス・エナジー、RELX、アステラス製薬、ピアソン、リンクレーターズ、ベーカー・マッケンジー等が参画している。

 トランスフォーメーショナル・ガバナンスは、UNGCが2021年6月に発表した「SDGs16ビジネス・フレームワーク」に由来。同フレームワークは、トランスフォーメーショナル・ガバナンスを原則に基づくアプローチとして導入しており、企業に対し、より説明責任を果たし、倫理的で、包括的で、社内外に対して透明性の高いものとなるよう求めている。またUNGCは、同原則は、経済協力開発機構(OECD)の「G20/OECDコーポレートガバナンス原則」とも整合しているとの立場を採っている。

【参考】【国際】G20/OECDコーポレートガバナンス原則2023が発行。株主によるサステナビリティ強化を重視(2023年9月13日)

 同ガイドでは、テクノロジーに関する問題もESGに含まれるとの考えを明確にし、AI、データ保護とプライバシー、誤情報と偽情報、サイバーセキュリティ、労働力の再構築の課題も取締役会や経営陣が責任を持って扱うべきとした。その上で、サステイナビリティ・スキルを専門的に開発することで、トランスフォーメーショナル・ガバナ ンス・アプローチを適用できる取締役や経営陣を育成していくべきとした。

 また、グリーンウォッシュ・リスクについても触れ、真の変革を実現していくことも、コーポレートガバナンスに含まれるとした。コーポレートガバナンスは、ESGのE(環境)とS(社会)の双方で効果的に対処するためにも優先度の高い事項として考えられていることにも言及した。

 これらを踏まえ、取締役と経営陣に向け7つを提言した。

  • 総合的評価と学習:企業責任、特にSDGsへの支援、そしてそれがトランスフォーメーショナル・ガバナンスとどのように整合しているかを評価する。同時に、事業目的、ステークホルダーエンゲージメント、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)に焦点を当て、企業倫理とサステナビリティにおける既存のイニシアチブから教訓を得る。
  • 多様な専門知識と効果的なコミュニケーション:取締役会と経営陣の双方に多様性を反映させ、トランスフォーメーショナル・ガバナンス関連の問題に効果的に対処できるよう、さまざまな経歴や専門知識を持ち込めるようにする。同時に、広報戦略や声明がトランスフォーメーショナル・ガバナンスの原則と整合しているかを注意深く評価する。
  • 役割と責任の明確化:会社の様々な組織において、役割、責任、説明責任が明確に定義されていることを確認する。最高法務責任者と最高コンプライアンス責任者は、トランスフォーメーショナル・ガバナンスに特に関連性が高いと認識されている。特に、ESG課題の特定の側面は双方の役割に割り当てられつつある。
  • インテグリティ、コンプライアンス、ESGとの整合:倫理基準、腐敗防止、規制遵守を強化する。SDGs16ビジネス・フレームワークに関連する事項に取り組むための部門横断的なプロセスを確立し、ESG戦略をトランスフォーメーショナル・ガバナンスの要件と整合させ、事業運営全体のインテグリティを強化する。
  • リスクマネジメントとデューデリジェンス:レピュテーションリスクやグリーンウォッシュを含む広範なリスクを管理するプロセスを改善する。地政学的リスクに関する洞察を深め、グローバル・サプライチェーンを含むすべての事業活動においてデューデリジェンスの実践を拡大する。
  • レジリエンス、地政学、アドボカシー:総合的なトランスフォーメーショナル・ガバナンス・アプローチを活用し、特に混乱した地政学的情勢におけるレジリエンスを強化する。国際的な事業活動においてトランスフォーメーショナル・ガバナンス・アプローチを実施する際の法的・文化的なニュアンスに対処する。重要な問題に対してアドボカシーを行い、集団的行動を起こすための手段を構築する。
  • ステークホルダー・エンゲージメント、レポーティング、テクノロジーの活用:市民社会、ジャーナリスト、正義保護者との関係強化を通じ、ステークホルダーとのエンゲージメントに関する包括的な戦略を開発する。戦略には、効果的なモニタリング・評価メカニズムや、レポーティング・開示に関する組織能力も含まれる。トランスフォーメーショナル・ガバナンス・アプローチを効果的に実施し、その効果を測定するために、テクノロジーとデータマネジメントを活用する。

 同時に、政府とのエンゲージメントの在り方や、機関投資家が企業のトランスフォーメーショナル・ガバナンスを向上させるためのアプローチについても整理した。
 
【参照ページ】UN Global Compact launches Transformational Governance Corporate Toolkit

ここから先は登録ユーザー限定のコンテンツとなります。ログインまたはユーザー登録を行って下さい。