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【日本】太平洋セメント、2050年までにCO2を80%削減。国際的な共通見解には届かず

 太平洋セメントは7月1日、2050年に二酸化炭素排出量を80%削減する長期ビジョン骨子を策定した。二酸化炭素排出量の削減については、国際的には2050年に二酸化炭素ネット排出量をゼロにする共通見解が形成されつつあるが、日本政府はそれより緩い「2050年までに80%削減」を国是としている。太平洋セメントも今回、「2016年に閣議決定された地球温暖化対策計画での長期目標に符合したビジョンとして、2050年における80%の削減と位置付ける」とした。

 今回の発表では、具体的には2つの分野で削減目標を設定。まず、セメント生産では2050年までに80%削減。そして、セメント製品を活用することで外部的に削減貢献する量を20%とした。

 生産での二酸化炭素排出量削減手法では、「化石燃料以外のエネルギーの使用拡大」「CO2排出量の少ない化石エネルギーの活用」「排ガスからのCO2回収と有効利用および貯留」「低CO2型クリンカやセメントの開発、混合材比率増」とした。

 化石燃料以外のエネルギーの使用拡大では、「再生可能エネルギー」という言葉を用いていないことから、再生可能エネルギーだけでなく原子力発電も想定していると解釈できる。また、CO2排出量の少ない化石エネルギーの活用では、天然ガスが想定していると思われるが、高効率石炭火力発電も含まれるかもしれない。排ガスからのCO2回収と有効利用および貯留については、石炭回収・貯蔵(CCS)の実証実験を藤原工場で2018年度から取り組んでいる。

 低CO2型クリンカやセメントの開発、混合材比率増では、セメント製造の焼成工程で用いる石炭の代替燃料として、廃プラスチックの比率を現在の15%から50%にまで高めていく。報道によると、設備投資額は600億円。2023年までに国内全工場で合計キルン(回転釜)12基で、石炭とプラスチック廃棄物の混合材料を扱えるようにする。セメント生産での二酸化炭素排出量の工程別内訳は、石灰石の脱炭酸が約55%、キルンでの焼成エネルギーが約35%、電力使用が10%。

 酸化化合物の還元のための石炭代替燃料として廃プラスチックを用いる手法は、鉄鋼業界が先行しているが、セメント業界も後追いしてきた。一方、国際的に廃プラスチックの物質へのリサイクル機運が高まる中、2050年までに廃プラスチックを確保し続けることは必ずしも容易とは言えないだろう。2050年という長期目標に廃プラスチックを位置づけることが最善かについては疑問符が付く。太平洋セメントは、都市部で発生する廃プラスチックを、北海道や大分の工場に運搬しているが、運搬時に二酸化炭素排出量を発生させてしまっていることも念頭に置く必要がある。

 また、セメント製品を活用することで外部的に削減貢献する量については、「セメントは、製造後には主にコンクリートとして構造物や建築物に用いられますが、この構造物や建築物として利用されている期間やその後の解体期間には、大気中のCO2を吸収し、固定する特徴」に着目。グループ全体のセメント製品で貢献できるCO2吸収量は、セメント生産における二酸化炭素排出量の12%に相当する量と試算した。それを20%で高める手段を模索するという。

【参照ページ】2050年を展望した温室効果ガス排出削減に係る長期ビジョンの骨子を策定

  •  太平洋セメントは7月1日、2050年に二酸化炭素排出量を80%削減する長期ビジョン骨子を策定した。二酸化炭素排出量の削減については、国際的には2050年に二酸化炭素ネット排出量をゼロにする共通見解が形成されつつあるが、日本政府はそれより緩い「2050年までに80%削減」を国是としている。太平洋セメントも今回、「2016年に閣議決定された地球温暖化対策計画での長期目標に符合したビジョンとして、2050年における80%の削減と位置付ける」とした。

     今回の発表では、具体的には2つの分野で削減目標を設定。まず、セメント生産では2050年までに80%削減。そして、セメント製品を活用することで外部的に削減貢献する量を20%とした。

     生産での二酸化炭素排出量削減手法では、「化石燃料以外のエネルギーの使用拡大」「CO2排出量の少ない化石エネルギーの活用」「排ガスからのCO2回収と有効利用および貯留」「低CO2型クリンカやセメントの開発、混合材比率増」とした。

     化石燃料以外のエネルギーの使用拡大では、「再生可能エネルギー」という言葉を用いていないことから、再生可能エネルギーだけでなく原子力発電も想定していると解釈できる。また、CO2排出量の少ない化石エネルギーの活用では、天然ガスが想定していると思われるが、高効率石炭火力発電も含まれるかもしれない。排ガスからのCO2回収と有効利用および貯留については、石炭回収・貯蔵(CCS)の実証実験を藤原工場で2018年度から取り組んでいる。

     低CO2型クリンカやセメントの開発、混合材比率増では、セメント製造の焼成工程で用いる石炭の代替燃料として、廃プラスチックの比率を現在の15%から50%にまで高めていく。報道によると、設備投資額は600億円。2023年までに国内全工場で合計キルン(回転釜)12基で、石炭とプラスチック廃棄物の混合材料を扱えるようにする。セメント生産での二酸化炭素排出量の工程別内訳は、石灰石の脱炭酸が約55%、キルンでの焼成エネルギーが約35%、電力使用が10%。

     酸化化合物の還元のための石炭代替燃料として廃プラスチックを用いる手法は、鉄鋼業界が先行しているが、セメント業界も後追いしてきた。一方、国際的に廃プラスチックの物質へのリサイクル機運が高まる中、2050年までに廃プラスチックを確保し続けることは必ずしも容易とは言えないだろう。2050年という長期目標に廃プラスチックを位置づけることが最善かについては疑問符が付く。太平洋セメントは、都市部で発生する廃プラスチックを、北海道や大分の工場に運搬しているが、運搬時に二酸化炭素排出量を発生させてしまっていることも念頭に置く必要がある。

     また、セメント製品を活用することで外部的に削減貢献する量については、「セメントは、製造後には主にコンクリートとして構造物や建築物に用いられますが、この構造物や建築物として利用されている期間やその後の解体期間には、大気中のCO2を吸収し、固定する特徴」に着目。グループ全体のセメント製品で貢献できるCO2吸収量は、セメント生産における二酸化炭素排出量の12%に相当する量と試算した。それを20%で高める手段を模索するという。

    【参照ページ】2050年を展望した温室効果ガス排出削減に係る長期ビジョンの骨子を策定

  •  太平洋セメントは7月1日、2050年に二酸化炭素排出量を80%削減する長期ビジョン骨子を策定した。二酸化炭素排出量の削減については、国際的には2050年に二酸化炭素ネット排出量をゼロにする共通見解が形成されつつあるが、日本政府はそれより緩い「2050年までに80%削減」を国是としている。太平洋セメントも今回、「2016年に閣議決定された地球温暖化対策計画での長期目標に符合したビジョンとして、2050年における80%の削減と位置付ける」とした。

     今回の発表では、具体的には2つの分野で削減目標を設定。まず、セメント生産では2050年までに80%削減。そして、セメント製品を活用することで外部的に削減貢献する量を20%とした。

     生産での二酸化炭素排出量削減手法では、「化石燃料以外のエネルギーの使用拡大」「CO2排出量の少ない化石エネルギーの活用」「排ガスからのCO2回収と有効利用および貯留」「低CO2型クリンカやセメントの開発、混合材比率増」とした。

     化石燃料以外のエネルギーの使用拡大では、「再生可能エネルギー」という言葉を用いていないことから、再生可能エネルギーだけでなく原子力発電も想定していると解釈できる。また、CO2排出量の少ない化石エネルギーの活用では、天然ガスが想定していると思われるが、高効率石炭火力発電も含まれるかもしれない。排ガスからのCO2回収と有効利用および貯留については、石炭回収・貯蔵(CCS)の実証実験を藤原工場で2018年度から取り組んでいる。

     低CO2型クリンカやセメントの開発、混合材比率増では、セメント製造の焼成工程で用いる石炭の代替燃料として、廃プラスチックの比率を現在の15%から50%にまで高めていく。報道によると、設備投資額は600億円。2023年までに国内全工場で合計キルン(回転釜)12基で、石炭とプラスチック廃棄物の混合材料を扱えるようにする。セメント生産での二酸化炭素排出量の工程別内訳は、石灰石の脱炭酸が約55%、キルンでの焼成エネルギーが約35%、電力使用が10%。

     酸化化合物の還元のための石炭代替燃料として廃プラスチックを用いる手法は、鉄鋼業界が先行しているが、セメント業界も後追いしてきた。一方、国際的に廃プラスチックの物質へのリサイクル機運が高まる中、2050年までに廃プラスチックを確保し続けることは必ずしも容易とは言えないだろう。2050年という長期目標に廃プラスチックを位置づけることが最善かについては疑問符が付く。太平洋セメントは、都市部で発生する廃プラスチックを、北海道や大分の工場に運搬しているが、運搬時に二酸化炭素排出量を発生させてしまっていることも念頭に置く必要がある。

     また、セメント製品を活用することで外部的に削減貢献する量については、「セメントは、製造後には主にコンクリートとして構造物や建築物に用いられますが、この構造物や建築物として利用されている期間やその後の解体期間には、大気中のCO2を吸収し、固定する特徴」に着目。グループ全体のセメント製品で貢献できるCO2吸収量は、セメント生産における二酸化炭素排出量の12%に相当する量と試算した。それを20%で高める手段を模索するという。

    【参照ページ】2050年を展望した温室効果ガス排出削減に係る長期ビジョンの骨子を策定

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  •  太平洋セメントは7月1日、2050年に二酸化炭素排出量を80%削減する長期ビジョン骨子を策定した。二酸化炭素排出量の削減については、国際的には2050年に二酸化炭素ネット排出量をゼロにする共通見解が形成されつつあるが、日本政府はそれより緩い「2050年までに80%削減」を国是としている。太平洋セメントも今回、「2016年に閣議決定された地球温暖化対策計画での長期目標に符合したビジョンとして、2050年における80%の削減と位置付ける」とした。

     今回の発表では、具体的には2つの分野で削減目標を設定。まず、セメント生産では2050年までに80%削減。そして、セメント製品を活用することで外部的に削減貢献する量を20%とした。

     生産での二酸化炭素排出量削減手法では、「化石燃料以外のエネルギーの使用拡大」「CO2排出量の少ない化石エネルギーの活用」「排ガスからのCO2回収と有効利用および貯留」「低CO2型クリンカやセメントの開発、混合材比率増」とした。

     化石燃料以外のエネルギーの使用拡大では、「再生可能エネルギー」という言葉を用いていないことから、再生可能エネルギーだけでなく原子力発電も想定していると解釈できる。また、CO2排出量の少ない化石エネルギーの活用では、天然ガスが想定していると思われるが、高効率石炭火力発電も含まれるかもしれない。排ガスからのCO2回収と有効利用および貯留については、石炭回収・貯蔵(CCS)の実証実験を藤原工場で2018年度から取り組んでいる。

     低CO2型クリンカやセメントの開発、混合材比率増では、セメント製造の焼成工程で用いる石炭の代替燃料として、廃プラスチックの比率を現在の15%から50%にまで高めていく。報道によると、設備投資額は600億円。2023年までに国内全工場で合計キルン(回転釜)12基で、石炭とプラスチック廃棄物の混合材料を扱えるようにする。セメント生産での二酸化炭素排出量の工程別内訳は、石灰石の脱炭酸が約55%、キルンでの焼成エネルギーが約35%、電力使用が10%。

     酸化化合物の還元のための石炭代替燃料として廃プラスチックを用いる手法は、鉄鋼業界が先行しているが、セメント業界も後追いしてきた。一方、国際的に廃プラスチックの物質へのリサイクル機運が高まる中、2050年までに廃プラスチックを確保し続けることは必ずしも容易とは言えないだろう。2050年という長期目標に廃プラスチックを位置づけることが最善かについては疑問符が付く。太平洋セメントは、都市部で発生する廃プラスチックを、北海道や大分の工場に運搬しているが、運搬時に二酸化炭素排出量を発生させてしまっていることも念頭に置く必要がある。

     また、セメント製品を活用することで外部的に削減貢献する量については、「セメントは、製造後には主にコンクリートとして構造物や建築物に用いられますが、この構造物や建築物として利用されている期間やその後の解体期間には、大気中のCO2を吸収し、固定する特徴」に着目。グループ全体のセメント製品で貢献できるCO2吸収量は、セメント生産における二酸化炭素排出量の12%に相当する量と試算した。それを20%で高める手段を模索するという。

    【参照ページ】2050年を展望した温室効果ガス排出削減に係る長期ビジョンの骨子を策定