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【国際】企業のCO2削減は自主性尊重からルール化の時代へ。COP27に向け国連表明

 国連ハイレベル気候チャンピオンは9月21日、ルームバーグ・フィランソロピーと共同で、国連総会が開かれている米ニューヨークで、国際会議「United Nations Climate Action: Race to Zero and Race to Resilience Forum」を開催。企業、金融機関、NGO等のリーダーを招集し、非国家主体に向けたアクションを発表した。

 国連ハイレベル気候チャンピオンは、2015年の第21回国連気候変動枠組条約パリ締約国会議(COP21)で発足した制度で、毎年のCOPの中で議論を主導する役割を担う。2022年のCOP27では、ナイジェル・トッピング博士とマフムード・モヒールディン博士の2人が任命されている。

 まず、今回の会議では、国連気候変動ハイレベル・チャンピオンが、2030年までに気候変動に脆弱な40億人の気候災害に対するレジリエンスを高めるため、11の共通目標「適応と回復力のブレークスルー」を設定したと発表。国連の「Race to Resilience」キャンペーンの柱となることが決まった。

  • 農業:気候レジリエントで持続可能な農業を通じ、農地拡大を伴わずに収量を17%増加。小規模農家を含む人々の生活を向上。
  • 食料:食料生産での廃棄量と一人当たりの食料廃棄量の割合を2019年比で50%減。食料安全保障を向上。
  • 環境保全・再生:陸上と内陸水域で4,500万haを保護区化、20億haを持続可能な管理化、3億5,000haを土地再生する。水セキュリティと生活を改善するための自然を軸としたソリューション(NbS)による先住民の権利と地域社会を確保。
  • 金融:金融機関が、2030年までに必要な年間3,540億米ドルの自然を軸としたソリューション(NbS)への投資機会を活用。2025年までに、金融機関がポートフォリオから商品生産での森林破壊を全廃し、土地転換の阻止に貢献。
  • 住宅:10億人にディーセント、安全、手頃な価格、気候レジリエントな住宅を提供。そのために、設計、建設、金融アクセスを改善。
  • 減災:スマートな早期警戒システムが世界30億人をカバー
  • マングローブ:40億米ドルを投資し、世界全体でマングローブ生息地1,500万haを保護。沿岸地域コミュニティのレジリエンス強化。
  • クリーンエネルギー:電力アクセスのない世界6億7,900万人にクリーンで気候レジリエントな電力を供給。さらにアクセスが不十分な10億人のアクセスも改善。
  • 交通・輸送:22億人に、安価でレジリエンスのある公共・民間輸送サービスを拡大し、低コストでクリーンな車両やモビリティ・ソリューションを利用可能化。
  • 適応計画:1万の都市がエビデンスに基づく実行可能な適応計画を策定
  • 損害保険:業界キャパシティの枠組みを設け、プロジェクトの実施を積極的に支援し、気候変動適応に向けた業界の長期的なアプローチを制度化。

 11の共通目標が設定された背景には、気候変動適応への投資が大幅に不足していることが在る。今回の発表では、2030年までに発展途上国の年間適応資金需要が1,150億米ドルから3,000億米ドルに達すると推定される一方、2019年と2020年にアフリカに約束された年間295億米ドルの気候資金のうち、適応を対象としたものは39%の114億米ドルのみ。さらに民間部門からのファイナンスはわずか3%だった。

 また今回の会議では、「Race to Zero」キャンペーンの一環として、企業・金融機関を対象に、自主的な気候変動対策から標準化・規制された対策に移行するため、国際規格やガイドライン、業界ルール等の整備状況を俯瞰したレポート「Pivot Point」も発行。GRIスタンダードやCDP、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)等を含み32のルールをマッピングした。その中で、特徴的なのは、法定ルールが業界ベストプラクティスを最低基準とする施策としては有効としつつも、ベストプラクティスそのものでイノベーションを起こすには、法定ルール以上にボランタリールールの方が有効とした点。業界や企業が積極的にボランタリールールを整備しベストプラクティスのレベルを上げつつ、定まったベストプラクティスを順次法定ルール化していく手法を提唱した。

 法定ルール側の状況では、環境法、通商法、競争法、金融安定法、証券法、公共調達関連法等の幅広い法規制を、企業や金融機関にとってのエンゲージメント対象とすべきとした。さらに訴訟、経済刑法、市場プレッシャー、アクティビズム、教育に働きかけることも、望ましい法規制を実現していく上で重要とした。

 さらに同会議では、「Race to Zero」と「Race to Resilience」の双方の進捗レポートも初めて発行。加盟している13,000以上の企業、金融機関、自治体等の状況を伝えた。加盟機関では、過去3ヶ月でアジア太平洋地域の加盟が30%増加し、最も増えたことがわかった。また、CDPに提出されたデータとも突合し、Race to Zero加盟企業の77%が、1.5℃に沿った削減計画を定めていることも明らかとなった。しかし、今後のアクションをさらに加速させていくためには、自発性ではなくルールベースの制度設計を行っていくことが重要とした。

【参照ページ】Race to Resilience and Race to Zero Forum concludes with launch of adaptation & resilience breakthroughs and push for new era of climate regulation
【参照ページ】Now is the time to accelerate adaptation
【参照ページ】Pivot Point
【参照ページ】Progress Report 2022
【画像】UNFCCC

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 国連ハイレベル気候チャンピオンは9月21日、ルームバーグ・フィランソロピーと共同で、国連総会が開かれている米ニューヨークで、国際会議「United Nations Climate Action: Race to Zero and Race to Resilience Forum」を開催。企業、金融機関、NGO等のリーダーを招集し、非国家主体に向けたアクションを発表した。

 国連ハイレベル気候チャンピオンは、

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 国連ハイレベル気候チャンピオンは9月21日、ルームバーグ・フィランソロピーと共同で、国連総会が開かれている米ニューヨークで、国際会議「United Nations Climate Action: Race to Zero and Race to Resilience Forum」を開催。企業、金融機関、NGO等のリーダーを招集し、非国家主体に向けたアクションを発表した。

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 国連ハイレベル気候チャンピオンは9月21日、ルームバーグ・フィランソロピーと共同で、国連総会が開かれている米ニューヨークで、国際会議「United Nations Climate Action: Race to Zero and Race to Resilience Forum」を開催。企業、金融機関、NGO等のリーダーを招集し、非国家主体に向けたアクションを発表した。

 国連ハイレベル気候チャンピオンは、2015年の第21回国連気候変動枠組条約パリ締約国会議(COP21)で発足した制度で、毎年のCOPの中で議論を主導する役割を担う。2022年のCOP27では、ナイジェル・トッピング博士とマフムード・モヒールディン博士の2人が任命されている。

 まず、今回の会議では、国連気候変動ハイレベル・チャンピオンが、2030年までに気候変動に脆弱な40億人の気候災害に対するレジリエンスを高めるため、11の共通目標「適応と回復力のブレークスルー」を設定したと発表。国連の「Race to Resilience」キャンペーンの柱となることが決まった。

  • 農業:気候レジリエントで持続可能な農業を通じ、農地拡大を伴わずに収量を17%増加。小規模農家を含む人々の生活を向上。
  • 食料:食料生産での廃棄量と一人当たりの食料廃棄量の割合を2019年比で50%減。食料安全保障を向上。
  • 環境保全・再生:陸上と内陸水域で4,500万haを保護区化、20億haを持続可能な管理化、3億5,000haを土地再生する。水セキュリティと生活を改善するための自然を軸としたソリューション(NbS)による先住民の権利と地域社会を確保。
  • 金融:金融機関が、2030年までに必要な年間3,540億米ドルの自然を軸としたソリューション(NbS)への投資機会を活用。2025年までに、金融機関がポートフォリオから商品生産での森林破壊を全廃し、土地転換の阻止に貢献。
  • 住宅:10億人にディーセント、安全、手頃な価格、気候レジリエントな住宅を提供。そのために、設計、建設、金融アクセスを改善。
  • 減災:スマートな早期警戒システムが世界30億人をカバー
  • マングローブ:40億米ドルを投資し、世界全体でマングローブ生息地1,500万haを保護。沿岸地域コミュニティのレジリエンス強化。
  • クリーンエネルギー:電力アクセスのない世界6億7,900万人にクリーンで気候レジリエントな電力を供給。さらにアクセスが不十分な10億人のアクセスも改善。
  • 交通・輸送:22億人に、安価でレジリエンスのある公共・民間輸送サービスを拡大し、低コストでクリーンな車両やモビリティ・ソリューションを利用可能化。
  • 適応計画:1万の都市がエビデンスに基づく実行可能な適応計画を策定
  • 損害保険:業界キャパシティの枠組みを設け、プロジェクトの実施を積極的に支援し、気候変動適応に向けた業界の長期的なアプローチを制度化。

 11の共通目標が設定された背景には、気候変動適応への投資が大幅に不足していることが在る。今回の発表では、2030年までに発展途上国の年間適応資金需要が1,150億米ドルから3,000億米ドルに達すると推定される一方、2019年と2020年にアフリカに約束された年間295億米ドルの気候資金のうち、適応を対象としたものは39%の114億米ドルのみ。さらに民間部門からのファイナンスはわずか3%だった。

 また今回の会議では、「Race to Zero」キャンペーンの一環として、企業・金融機関を対象に、自主的な気候変動対策から標準化・規制された対策に移行するため、国際規格やガイドライン、業界ルール等の整備状況を俯瞰したレポート「Pivot Point」も発行。GRIスタンダードやCDP、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)等を含み32のルールをマッピングした。その中で、特徴的なのは、法定ルールが業界ベストプラクティスを最低基準とする施策としては有効としつつも、ベストプラクティスそのものでイノベーションを起こすには、法定ルール以上にボランタリールールの方が有効とした点。業界や企業が積極的にボランタリールールを整備しベストプラクティスのレベルを上げつつ、定まったベストプラクティスを順次法定ルール化していく手法を提唱した。

 法定ルール側の状況では、環境法、通商法、競争法、金融安定法、証券法、公共調達関連法等の幅広い法規制を、企業や金融機関にとってのエンゲージメント対象とすべきとした。さらに訴訟、経済刑法、市場プレッシャー、アクティビズム、教育に働きかけることも、望ましい法規制を実現していく上で重要とした。

 さらに同会議では、「Race to Zero」と「Race to Resilience」の双方の進捗レポートも初めて発行。加盟している13,000以上の企業、金融機関、自治体等の状況を伝えた。加盟機関では、過去3ヶ月でアジア太平洋地域の加盟が30%増加し、最も増えたことがわかった。また、CDPに提出されたデータとも突合し、Race to Zero加盟企業の77%が、1.5℃に沿った削減計画を定めていることも明らかとなった。しかし、今後のアクションをさらに加速させていくためには、自発性ではなくルールベースの制度設計を行っていくことが重要とした。

【参照ページ】Race to Resilience and Race to Zero Forum concludes with launch of adaptation & resilience breakthroughs and push for new era of climate regulation
【参照ページ】Now is the time to accelerate adaptation
【参照ページ】Pivot Point
【参照ページ】Progress Report 2022
【画像】UNFCCC

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