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【EU】給与透明性指令が成立。前職給与確認禁止。男女賃金格差の当局報告義務も

 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は4月24日、給与透明性指令案を可決した。すでに欧州議会を3月30日に通過しており、同指令が成立した。官報掲載された時点で発効。EU加盟国は3年以内に国内法化する義務を負う。同指令案は2022年12月にEU理事会と欧州議会で政治的合意に達していた。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、男女賃金格差や同一労働同一賃金の厳格化で政治的合意。日系企業にも大きな影響(2022年12月31日)

 EUでは、EU労働基本条約(TFEU)157条や2006年同一賃金指令により、男女の同一労働同一賃金が権利として確立している。但し、給与情報の透明性が確保されていないため、差別の発見が困難だった。EUでは、女性が男性より平均13%給与が少なく、男女の賃金格差の是正は過去10年間ほぼ停滞。そのため給与情報の透明性確保を法定義務とすることが決まった。

 同指令では、従業員数250人以上の企業は、組織内の男女賃金格差について、国の当局に毎年報告することが義務付けられる。従業員数150人以上250人未満の組織は、3年毎の報告義務が課せられる。さらに国内法導入の2年後以内に、従業員100人以上150人未満の企業にも3年毎の報告義務が課せられる。報告により、客観的で正当化できない理由で、5%以上の男女賃金格差が確認された場合、組織は労働者代表と協力し実施する合同賃金査定が義務付けられる。

 さらに、人材採用時にも、雇用主は求職者に対し、求人告知や面接の前に募集職種の初任給や給与範囲を知らせることを義務化。雇用主は求職者に前職等の給与履歴を尋ねることも禁止される。

 さらに雇用されている期間、労働者は雇用主に対し、同じ仕事または同等の価値を持つ仕事をする従業員のカテゴリーについて、男女別に分類した平均給与水準に関する情報を求める情報アクセス権を持つ。給与やキャリアアップを決定するために使用される基準についても、客観的かつ性別にとらわれないものとしなければならない。

 司法アクセスでは、同指令の下、男女の賃金差別を受けた労働者は、バックペイや関連するボーナス、現物支給の全額回復を含む補償を受けることが可能となる。司法での立証責任は、従業員から雇用主側に移転し、雇用主側が差別がなかったことを証明しなければならない。

 さらにジェンダー、民族、セクシュアリティ等の複数のアイデンティティによる差別の組み合わせ「インターセクション差別」の禁止もも初めて同指令の対象となった。障害を持つ従業員への年金加入等のニーズを考慮することも盛り込まれた。

 同指令は、違反行為に対する罰則規定を設けることも決めた。各加盟国が罰則の詳細を規定することになる。

【参照ページ】Gender pay gap: Council adopts new rules on pay transparency

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は4月24日、給与透明性指令案を可決した。すでに欧州議会を3月30日に通過しており、同指令が成立した。官報掲載された時点で発効。EU加盟国は3年以内に国内法化する義務を負う。同指令案は2022年12月にEU理事会と欧州議会で政治的合意に達していた。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、男女賃金格差や同一労働同一賃金の厳格化で政治的合意。日系企業にも大きな影響(2022年12月31日)

 EUでは、

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は4月24日、給与透明性指令案を可決した。すでに欧州議会を3月30日に通過しており、同指令が成立した。官報掲載された時点で発効。EU加盟国は3年以内に国内法化する義務を負う。同指令案は2022年12月にEU理事会と欧州議会で政治的合意に達していた。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、男女賃金格差や同一労働同一賃金の厳格化で政治的合意。日系企業にも大きな影響(2022年12月31日)

 EUでは、

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は4月24日、給与透明性指令案を可決した。すでに欧州議会を3月30日に通過しており、同指令が成立した。官報掲載された時点で発効。EU加盟国は3年以内に国内法化する義務を負う。同指令案は2022年12月にEU理事会と欧州議会で政治的合意に達していた。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、男女賃金格差や同一労働同一賃金の厳格化で政治的合意。日系企業にも大きな影響(2022年12月31日)

 EUでは、EU労働基本条約(TFEU)157条や2006年同一賃金指令により、男女の同一労働同一賃金が権利として確立している。但し、給与情報の透明性が確保されていないため、差別の発見が困難だった。EUでは、女性が男性より平均13%給与が少なく、男女の賃金格差の是正は過去10年間ほぼ停滞。そのため給与情報の透明性確保を法定義務とすることが決まった。

 同指令では、従業員数250人以上の企業は、組織内の男女賃金格差について、国の当局に毎年報告することが義務付けられる。従業員数150人以上250人未満の組織は、3年毎の報告義務が課せられる。さらに国内法導入の2年後以内に、従業員100人以上150人未満の企業にも3年毎の報告義務が課せられる。報告により、客観的で正当化できない理由で、5%以上の男女賃金格差が確認された場合、組織は労働者代表と協力し実施する合同賃金査定が義務付けられる。

 さらに、人材採用時にも、雇用主は求職者に対し、求人告知や面接の前に募集職種の初任給や給与範囲を知らせることを義務化。雇用主は求職者に前職等の給与履歴を尋ねることも禁止される。

 さらに雇用されている期間、労働者は雇用主に対し、同じ仕事または同等の価値を持つ仕事をする従業員のカテゴリーについて、男女別に分類した平均給与水準に関する情報を求める情報アクセス権を持つ。給与やキャリアアップを決定するために使用される基準についても、客観的かつ性別にとらわれないものとしなければならない。

 司法アクセスでは、同指令の下、男女の賃金差別を受けた労働者は、バックペイや関連するボーナス、現物支給の全額回復を含む補償を受けることが可能となる。司法での立証責任は、従業員から雇用主側に移転し、雇用主側が差別がなかったことを証明しなければならない。

 さらにジェンダー、民族、セクシュアリティ等の複数のアイデンティティによる差別の組み合わせ「インターセクション差別」の禁止もも初めて同指令の対象となった。障害を持つ従業員への年金加入等のニーズを考慮することも盛り込まれた。

 同指令は、違反行為に対する罰則規定を設けることも決めた。各加盟国が罰則の詳細を規定することになる。

【参照ページ】Gender pay gap: Council adopts new rules on pay transparency

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