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【日本】金融庁、トランジション・ファイナンスでフォローアップガイダンス案公表。パブコメ募集

 金融庁は4月28日、「トランジション・ファイナンスにかかるフォローアップガイダンス」案を発表した。5月26日までパブリックコメントを募集する。

 金融庁は2021年5月、経済産業省と環境省と合同で、「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」を策定。経済産業省が独自にセクター・ロードマップを策定し、グリーンファイナンスでは資金が付きづらい分野に積極的にファイナンスを呼び込む政策を「トランジション・ファイナンス」政策として奨励してきた。この流れは、日本政府が2月10日に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」にも反映されている。

【参考】【国際】経産省、環境省、金融庁、クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針策定(2021年5月10日)

 一方、金融庁は今回、各国のトランジションの道筋は一様ではないものの、トランジション・ファイナンスに対して、「グリーンウォッシュとの批判や実効性を疑問視する声があることも事実」と表現した。

 また、2023年2月には、経済産業省、金融庁、環境省が合同で「官民でトランジション・ファイナンスを推進するためのファイナンスド・エミッションに関するサブワーキング」を開催し、トランジション・ファイナンスにより、ファイナンスド・エミッションが一時的に増加することが「積極的に評価される」べきと国際的に訴えかける方向性を確認したが、金融庁は今回、「ファイナンスド・エミッションの一時的な増加が、金融機関自身のネットゼロに向けた目標達成に支障をきたすこともあり、長期的に見れば排出削減困難(hard-to-abate)なセクターへの投融資控えやダイベストメントの懸念が生じ得る」とやや中立的な表現をした。

【参考】【日本】経産省等、ファイナンスド・エミッションに関する課題提起ペーパー発表。国際協議へ(2023年2月22日)

 そこで今回のガイダンス案は、金融庁として「トランジション・ファイナンス」が何たるかには踏み込まず、投資家や金融機関が自身で掲げる戦略や方針に基づき、投融資先が実際に整合しているかどうかを確認すべきとの立場を採用。投融資後のトランジションの状況を「フォローアップ」し、定期的に進捗状況の確認や今後の進展のあり方等について対話すべきとした。

 具体的なフォローアップ事項としては、「トランジション戦略」「目標」「対象事業」の3つを掲げた。

 トランジション戦略については、科学的根拠に基づく二酸化炭素排出量削減目標に向けた計画を指し、導入を予定している技術、実施を予定している研究開発等、将来に向けた方向性について確認・対話することとした。資金調達者が資金調達時点において参照しているシナリオも確認事項となる。

 目標については、二酸化炭素排出量削減目標は必須とし、その他の目標を含めた進捗を確認・対話する。特に、サステナビリティ・リンクボンドやサステナビリティ・リンクローン型でSPTを設定している場合は、その目標の確認も対話内容に含める。

 資金使途については、資金使途特定型のトランジションボンドやトランジションローンでは、資金充当状況、環境改善効果を確認する。特に償還/返済期限が近付いている場合や資金充当が完了している場合は環境改善効果の実績について確認・対話する。SPTで各年で細かく二酸化炭素排出量削減目標が設定されている場合は、それも参照事項となる。各年の削減目標が設定されていない場合は、資金調達者の取組方向性の重要な変化の有無について確認・対話する。

 さらに、事業環境の変化を踏まえ、これまでの実績や今後の取組について共通認識を醸成するための対話を行うこととした。具体的には、事業環境等の変化により、資金調達時に想定していた進捗と実績が異なる場合は、ファイナンス組成時のフレームワークの是非を問う必要はないが、今後の方向性について対話。参照していたロードマップ等が改訂する等、変化し、トランジション戦略全体を見直す必要が生じた場合には、戦略の見直しについて資金調達者の認識を確認する。

 原料や燃料の価格変動、サプライチェーンリスク等について、現在は影響がみられないが、今後資金調達者の取組に影響を及ぼす事業環境の変化が想定される場合には、早い段階で認識を共有すべきとした。

 金融庁は4月7日、金融機関の気候変動トランジションに関する調査報告書を発表し、国際的に信頼性の高い手法として、グラスゴー金融同盟(GFANZ)が2022年11月に策定した「ネットゼロ・トランジション計画(NZTP)フレームワーク」を位置づけている。

【参考】【日本】金融庁、GFANZ寄りのトランジションファイナンス調査報告書発行。経産省とは距離か(2023年4月15日)

【参照ページ】トランジション・ファイナンスにかかるフォローアップガイダンス~資金調達者とのより良い対話に向けて~(案)について

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 金融庁は4月28日、「トランジション・ファイナンスにかかるフォローアップガイダンス」案を発表した。5月26日までパブリックコメントを募集する。

 金融庁は2021年5月、

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 金融庁は4月28日、「トランジション・ファイナンスにかかるフォローアップガイダンス」案を発表した。5月26日までパブリックコメントを募集する。

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 金融庁は4月28日、「トランジション・ファイナンスにかかるフォローアップガイダンス」案を発表した。5月26日までパブリックコメントを募集する。

 金融庁は2021年5月、経済産業省と環境省と合同で、「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」を策定。経済産業省が独自にセクター・ロードマップを策定し、グリーンファイナンスでは資金が付きづらい分野に積極的にファイナンスを呼び込む政策を「トランジション・ファイナンス」政策として奨励してきた。この流れは、日本政府が2月10日に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」にも反映されている。

【参考】【国際】経産省、環境省、金融庁、クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針策定(2021年5月10日)

 一方、金融庁は今回、各国のトランジションの道筋は一様ではないものの、トランジション・ファイナンスに対して、「グリーンウォッシュとの批判や実効性を疑問視する声があることも事実」と表現した。

 また、2023年2月には、経済産業省、金融庁、環境省が合同で「官民でトランジション・ファイナンスを推進するためのファイナンスド・エミッションに関するサブワーキング」を開催し、トランジション・ファイナンスにより、ファイナンスド・エミッションが一時的に増加することが「積極的に評価される」べきと国際的に訴えかける方向性を確認したが、金融庁は今回、「ファイナンスド・エミッションの一時的な増加が、金融機関自身のネットゼロに向けた目標達成に支障をきたすこともあり、長期的に見れば排出削減困難(hard-to-abate)なセクターへの投融資控えやダイベストメントの懸念が生じ得る」とやや中立的な表現をした。

【参考】【日本】経産省等、ファイナンスド・エミッションに関する課題提起ペーパー発表。国際協議へ(2023年2月22日)

 そこで今回のガイダンス案は、金融庁として「トランジション・ファイナンス」が何たるかには踏み込まず、投資家や金融機関が自身で掲げる戦略や方針に基づき、投融資先が実際に整合しているかどうかを確認すべきとの立場を採用。投融資後のトランジションの状況を「フォローアップ」し、定期的に進捗状況の確認や今後の進展のあり方等について対話すべきとした。

 具体的なフォローアップ事項としては、「トランジション戦略」「目標」「対象事業」の3つを掲げた。

 トランジション戦略については、科学的根拠に基づく二酸化炭素排出量削減目標に向けた計画を指し、導入を予定している技術、実施を予定している研究開発等、将来に向けた方向性について確認・対話することとした。資金調達者が資金調達時点において参照しているシナリオも確認事項となる。

 目標については、二酸化炭素排出量削減目標は必須とし、その他の目標を含めた進捗を確認・対話する。特に、サステナビリティ・リンクボンドやサステナビリティ・リンクローン型でSPTを設定している場合は、その目標の確認も対話内容に含める。

 資金使途については、資金使途特定型のトランジションボンドやトランジションローンでは、資金充当状況、環境改善効果を確認する。特に償還/返済期限が近付いている場合や資金充当が完了している場合は環境改善効果の実績について確認・対話する。SPTで各年で細かく二酸化炭素排出量削減目標が設定されている場合は、それも参照事項となる。各年の削減目標が設定されていない場合は、資金調達者の取組方向性の重要な変化の有無について確認・対話する。

 さらに、事業環境の変化を踏まえ、これまでの実績や今後の取組について共通認識を醸成するための対話を行うこととした。具体的には、事業環境等の変化により、資金調達時に想定していた進捗と実績が異なる場合は、ファイナンス組成時のフレームワークの是非を問う必要はないが、今後の方向性について対話。参照していたロードマップ等が改訂する等、変化し、トランジション戦略全体を見直す必要が生じた場合には、戦略の見直しについて資金調達者の認識を確認する。

 原料や燃料の価格変動、サプライチェーンリスク等について、現在は影響がみられないが、今後資金調達者の取組に影響を及ぼす事業環境の変化が想定される場合には、早い段階で認識を共有すべきとした。

 金融庁は4月7日、金融機関の気候変動トランジションに関する調査報告書を発表し、国際的に信頼性の高い手法として、グラスゴー金融同盟(GFANZ)が2022年11月に策定した「ネットゼロ・トランジション計画(NZTP)フレームワーク」を位置づけている。

【参考】【日本】金融庁、GFANZ寄りのトランジションファイナンス調査報告書発行。経産省とは距離か(2023年4月15日)

【参照ページ】トランジション・ファイナンスにかかるフォローアップガイダンス~資金調達者とのより良い対話に向けて~(案)について

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