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【EU】EU理事会と欧州議会、ガス市場改革で政治的合意。天然ガス比率を33%に低減。水素・バイオガス

 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は11月27日、天然ガスから、水素を含む再生可能ガス及び低炭素ガスのエネルギ転換を進めるため、再生可能ガス及び水素の域内市場共通規則を定めるEU指令案で政治的合意に達した。さらに12月8日、再生可能ガス、天然ガス、水素に関する域内市場共通規則案でも政治的合意に達した。今後、双方での立法手続きに入る。

 EUでは、欧州気候変動法により、2050年までのカーボンニュートラルに向けた中間目標として、2030年までに二酸化炭素排出量を半減させることを、欧州委員会とEU加盟国に義務化している。欧州委員会は2021年12月、「Fit for 55」パッケージの一環として、天然ガスからの水素を含む再生可能な低炭素ガスに段階的に転換していくことを提案した。これにより、2009年制定のガス指令とガス規則の改正、及び2017年制定のガス供給安全保障規則の改正に向けた検討が進められていた。

 改正ガス指令と改正ガス規則では、バイオガス、バイオメタン、再生可能水素、合成メタンを「再生可能ガス」、ライフサイクル全体で天然ガスより二酸化炭素排出量が70%以上少ないガスを「低炭素ガス」と定義。現時点でEU域内のガスの95%を占める天然ガスを、2050年には34%にまで削減し、残り66%を再生可能ガス及び低炭素ガスに転換する目標を掲げている。

 また、同改正指令では、水素分野で、系統運用者(TSO)と配送運用者(DSO)を分割することで合意。また、加盟国に対し、顧客がガス供給事業者を無差別に切り替えることができる権利を確保できるようにすることも義務化する。さらに、将来、事業者がガス供給を停止していくことに備え、顧客に事前通知することを義務化する等、影響を受ける事業者への考慮も規定している。

 さらに、同改正指令では、水素、電力、天然ガスの各ネットワーク開発計画間の調整を強化することも定めており、各加盟国でのネットワーク開発計画は、セクター統合、「エネルギー効率優先」の原則、脱炭素化が困難なセクターにおける水素利用の優先順位についても規定している。

 一方、同改正規則では、水素セクターの新組織として、水素ネットワーク事業者のためのEU組織「ENNOH」を設立することで合意。ENNOHは、既存の欧州ガス送電系統運用者ネットワーク(ENTSOG)及び欧州電力送電系統運用者ネットワーク(ENTSOE)から独立させながらも、緊密に連携させていく。

 系統料金では、水素市場価格に関し、各加盟国の規制当局が近隣国の規制当局と料金設定方法の草案について協議し、エネルギー規制当局協力機構(ACER)に提出することを義務化。また、各加盟国の規制当局は、自国の関税を課す権限も持つ。さらに、各国の規制当局からの要請がある場合、ACERは法的拘束力のない形で、紛争解決について意見を述べることでき、状況を欧州委員会に報告する権限も持つ。

 さらに同改正規則では、ウクライナ戦争後のエネルギー危機によって、暫定的に対応したガス共同購入メカニズムの拡大でも合意。エネルギー共同体諸国に設立されたガス事業者は、購入者として任意に同メカニズムに参加できるが、ロシアやベラルーシからの供給は除外される。水素に関しても、欧州水素バンクの下で欧州委員会が実施する業務を促進することを目的として、自主的なメカニズムを創設することにも合意した。

 欧州委員会は、2030年までに再生可能水素生産用の水電解槽を40GW、再生可能水素を1,000万t生産する目標を掲げている。天然ガスの長期的な調達契約も2050年以降の期限で締結することも禁止する。

【参照ページ】Internal markets in renewable and natural gases and in hydrogen: Council and Parliament reach deal
【参照ページ】Gas package: Council and Parliament reach deal on future hydrogen and gas market

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は11月27日、天然ガスから、水素を含む再生可能ガス及び低炭素ガスのエネルギ転換を進めるため、再生可能ガス及び水素の域内市場共通規則を定めるEU指令案で政治的合意に達した。さらに12月8日、再生可能ガス、天然ガス、水素に関する域内市場共通規則案でも政治的合意に達した。今後、双方での立法手続きに入る。

 EUでは、

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は11月27日、天然ガスから、水素を含む再生可能ガス及び低炭素ガスのエネルギ転換を進めるため、再生可能ガス及び水素の域内市場共通規則を定めるEU指令案で政治的合意に達した。さらに12月8日、再生可能ガス、天然ガス、水素に関する域内市場共通規則案でも政治的合意に達した。今後、双方での立法手続きに入る。

 EUでは、

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は11月27日、天然ガスから、水素を含む再生可能ガス及び低炭素ガスのエネルギ転換を進めるため、再生可能ガス及び水素の域内市場共通規則を定めるEU指令案で政治的合意に達した。さらに12月8日、再生可能ガス、天然ガス、水素に関する域内市場共通規則案でも政治的合意に達した。今後、双方での立法手続きに入る。

 EUでは、欧州気候変動法により、2050年までのカーボンニュートラルに向けた中間目標として、2030年までに二酸化炭素排出量を半減させることを、欧州委員会とEU加盟国に義務化している。欧州委員会は2021年12月、「Fit for 55」パッケージの一環として、天然ガスからの水素を含む再生可能な低炭素ガスに段階的に転換していくことを提案した。これにより、2009年制定のガス指令とガス規則の改正、及び2017年制定のガス供給安全保障規則の改正に向けた検討が進められていた。

 改正ガス指令と改正ガス規則では、バイオガス、バイオメタン、再生可能水素、合成メタンを「再生可能ガス」、ライフサイクル全体で天然ガスより二酸化炭素排出量が70%以上少ないガスを「低炭素ガス」と定義。現時点でEU域内のガスの95%を占める天然ガスを、2050年には34%にまで削減し、残り66%を再生可能ガス及び低炭素ガスに転換する目標を掲げている。

 また、同改正指令では、水素分野で、系統運用者(TSO)と配送運用者(DSO)を分割することで合意。また、加盟国に対し、顧客がガス供給事業者を無差別に切り替えることができる権利を確保できるようにすることも義務化する。さらに、将来、事業者がガス供給を停止していくことに備え、顧客に事前通知することを義務化する等、影響を受ける事業者への考慮も規定している。

 さらに、同改正指令では、水素、電力、天然ガスの各ネットワーク開発計画間の調整を強化することも定めており、各加盟国でのネットワーク開発計画は、セクター統合、「エネルギー効率優先」の原則、脱炭素化が困難なセクターにおける水素利用の優先順位についても規定している。

 一方、同改正規則では、水素セクターの新組織として、水素ネットワーク事業者のためのEU組織「ENNOH」を設立することで合意。ENNOHは、既存の欧州ガス送電系統運用者ネットワーク(ENTSOG)及び欧州電力送電系統運用者ネットワーク(ENTSOE)から独立させながらも、緊密に連携させていく。

 系統料金では、水素市場価格に関し、各加盟国の規制当局が近隣国の規制当局と料金設定方法の草案について協議し、エネルギー規制当局協力機構(ACER)に提出することを義務化。また、各加盟国の規制当局は、自国の関税を課す権限も持つ。さらに、各国の規制当局からの要請がある場合、ACERは法的拘束力のない形で、紛争解決について意見を述べることでき、状況を欧州委員会に報告する権限も持つ。

 さらに同改正規則では、ウクライナ戦争後のエネルギー危機によって、暫定的に対応したガス共同購入メカニズムの拡大でも合意。エネルギー共同体諸国に設立されたガス事業者は、購入者として任意に同メカニズムに参加できるが、ロシアやベラルーシからの供給は除外される。水素に関しても、欧州水素バンクの下で欧州委員会が実施する業務を促進することを目的として、自主的なメカニズムを創設することにも合意した。

 欧州委員会は、2030年までに再生可能水素生産用の水電解槽を40GW、再生可能水素を1,000万t生産する目標を掲げている。天然ガスの長期的な調達契約も2050年以降の期限で締結することも禁止する。

【参照ページ】Internal markets in renewable and natural gases and in hydrogen: Council and Parliament reach deal
【参照ページ】Gas package: Council and Parliament reach deal on future hydrogen and gas market

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