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【EU】EU理事会と欧州議会、都市排水処理指令改正で政治的合意。拡大生産者責任導入や再エネ利用促進

 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は1月29日、都市排水制度を強化する都市排水処理指令の改正案で政治的合意に達した。今後、双方での立法手続に入る。

 同指令改正は、欧州委員会が2021年6月8日に発表した「ゼロ汚染アクションプラン」の一環として進められている。微量汚染物質の廃水処理に対する最も汚染度の高い部門に拡大生産者責任(EPR)スキームを導入することと、都市排水処理からの二酸化炭素排出量を削減することが柱となっている。

【参考】【EU】欧州委、ゼロ汚染アクションプラン策定。2030年までの汚染ゼロ中期目標設定(2021年6月8日)
 
 今回の合意では、同指令の適用範囲を拡大し、現行の人口相当2,000人以上の規模を扱う排水処理施設から、人口相当1,000人以上の排水処理施設へと拡大。人口相当とは、1人1日当たりの潜在的な水質汚濁負荷量という観点から排水量を定義するために使用される指標。「人口相当1人」は、1日当たり60gの酸素を5日間の生物化学的酸素要求量とする1日あたりの有機生分解性負荷量で算出される。

 適用対象となった排水処理施設には、都市排水の集水システムの設置義務が課される。但し、義務の遵守期限は欧州委員会が提案した2030年から2035年に先延ばしした。沿岸水域に排出される小規模な排水処理施設や、感応性の低い地域での排出、及びルーマニア、ブルガリア、クロアチア等のEUへの新規加盟国については、激変緩和措置を導入する。集水システムの確立が正当化されず、実行可能でなく、費用対効果も低い場合、都市排水を集水処理する個別のシステムを利用することも認められる。

 さらに、各EU加盟国に対し、大規模排水処理施設を対象とした都市排水統合管理計画の策定義務も課す。人口相当10万人以上の排水処理施設は2033年まで、人口1万人から10万人までの排水処理施設は2039年が期限となる。統合管理計画は、水フレームワーク指令に沿って、少なくとも6年ごとに見直すことも制度化される。

 次に、廃水処理の方法については、人口相当1,000人以上の排水処理施設に対し、2035年までに、都市排水が環境放出される前に二次処理(生分解性有機物の除去)を施す義務も設ける。同様に、小規模排水処理施設や、新規EU加盟国に対しては適用が除外される。

 三次処理(窒素とリンの除去)と四次処理(広範な微量汚染物質の除去)の基準値とスケジュールでも合意した。三次処理は2033年と2036年、四次処理は2033年と2039年が中間目標設定年となる。一定のリスク基準を満たす地域で排出される人口10,000人相当以上の排水処理施設については、2045年までに3次処理と4次処理の義務を拡大することで合意した。また、都市廃水を処理し農業灌漑に再利用する場合、環境・衛生上のリスクがないことを条件に、三次処理義務を免除する。

 四次処理に伴う追加費用の負担では、「汚染者負担原則」に則り、拡大生産者責任(EPR)制度を導入。追加処理費用の80%以上をEPRで賄うことも義務化する。医薬品メーカーや消費財メーカーが主な対象となる。上市された製品のデータ収集と検証のための費用もメーカー側が負担する。

 二酸化炭素排出量削減では、排水処理施設は、定期的なエネルギー監査に基づき、段階的な中間目標を設定する。2045年までに、排水処理施設で再生可能ネルギーを生産することを促進するとともに、非化石エネルギー調達比率を65%以上にすることも義務付ける。

【参照ページ】Urban wastewater: Council and Parliament reach a deal on new rules for more efficient treatment and monitoring

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は1月29日、都市排水制度を強化する都市排水処理指令の改正案で政治的合意に達した。今後、双方での立法手続に入る。

 同指令改正は、

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は1月29日、都市排水制度を強化する都市排水処理指令の改正案で政治的合意に達した。今後、双方での立法手続に入る。

 同指令改正は、

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 同指令改正は、欧州委員会が2021年6月8日に発表した「ゼロ汚染アクションプラン」の一環として進められている。微量汚染物質の廃水処理に対する最も汚染度の高い部門に拡大生産者責任(EPR)スキームを導入することと、都市排水処理からの二酸化炭素排出量を削減することが柱となっている。

【参考】【EU】欧州委、ゼロ汚染アクションプラン策定。2030年までの汚染ゼロ中期目標設定(2021年6月8日)
 
 今回の合意では、同指令の適用範囲を拡大し、現行の人口相当2,000人以上の規模を扱う排水処理施設から、人口相当1,000人以上の排水処理施設へと拡大。人口相当とは、1人1日当たりの潜在的な水質汚濁負荷量という観点から排水量を定義するために使用される指標。「人口相当1人」は、1日当たり60gの酸素を5日間の生物化学的酸素要求量とする1日あたりの有機生分解性負荷量で算出される。

 適用対象となった排水処理施設には、都市排水の集水システムの設置義務が課される。但し、義務の遵守期限は欧州委員会が提案した2030年から2035年に先延ばしした。沿岸水域に排出される小規模な排水処理施設や、感応性の低い地域での排出、及びルーマニア、ブルガリア、クロアチア等のEUへの新規加盟国については、激変緩和措置を導入する。集水システムの確立が正当化されず、実行可能でなく、費用対効果も低い場合、都市排水を集水処理する個別のシステムを利用することも認められる。

 さらに、各EU加盟国に対し、大規模排水処理施設を対象とした都市排水統合管理計画の策定義務も課す。人口相当10万人以上の排水処理施設は2033年まで、人口1万人から10万人までの排水処理施設は2039年が期限となる。統合管理計画は、水フレームワーク指令に沿って、少なくとも6年ごとに見直すことも制度化される。

 次に、廃水処理の方法については、人口相当1,000人以上の排水処理施設に対し、2035年までに、都市排水が環境放出される前に二次処理(生分解性有機物の除去)を施す義務も設ける。同様に、小規模排水処理施設や、新規EU加盟国に対しては適用が除外される。

 三次処理(窒素とリンの除去)と四次処理(広範な微量汚染物質の除去)の基準値とスケジュールでも合意した。三次処理は2033年と2036年、四次処理は2033年と2039年が中間目標設定年となる。一定のリスク基準を満たす地域で排出される人口10,000人相当以上の排水処理施設については、2045年までに3次処理と4次処理の義務を拡大することで合意した。また、都市廃水を処理し農業灌漑に再利用する場合、環境・衛生上のリスクがないことを条件に、三次処理義務を免除する。

 四次処理に伴う追加費用の負担では、「汚染者負担原則」に則り、拡大生産者責任(EPR)制度を導入。追加処理費用の80%以上をEPRで賄うことも義務化する。医薬品メーカーや消費財メーカーが主な対象となる。上市された製品のデータ収集と検証のための費用もメーカー側が負担する。

 二酸化炭素排出量削減では、排水処理施設は、定期的なエネルギー監査に基づき、段階的な中間目標を設定する。2045年までに、排水処理施設で再生可能ネルギーを生産することを促進するとともに、非化石エネルギー調達比率を65%以上にすることも義務付ける。

【参照ページ】Urban wastewater: Council and Parliament reach a deal on new rules for more efficient treatment and monitoring

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