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【EU】EU理事会と欧州議会、EU炭素除去認証制度創設で政治的合意。活用は任意。信頼性向上

 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は2月20日、二酸化炭素除去(CDR)、炭素貯留型農業、製品への炭素貯留に関するEU認証フレームワークを確立するためのEU規則案で政治的合意に達した。今後、双方での立法手続に入る。

 今回制定するEU認証は、取得必須ではなく、任意の制度として設ける。二酸化炭素の除去や吸収に関するプロジェクトへの関心が高まる中、EUとして率先して信頼性の高いフレームワークを確立し、市場メカニズムが機能しやすい状況を構築していく考え。

 同認証は4つのメソドロジーで整備される予定。欧州委員会の原案と比べると、土壌や海洋での排出除去・貯留にまで対象が拡大された。

  • 恒久的炭素除去:数世紀にわたって大気中または生物起源炭素を除去・貯留する
  • 一時的炭素貯留:35年以上持続し、モニタリング期間中に現地でモニタリング可能な長寿命製品(木質建材等)
  • 炭素農法による一時的な炭素貯留:森林や土壌の再生、湿地管理、海草草地等
  • 土壌管理による炭素と一酸化二窒素の削減を含む土壌排出削減:湿地管理、不耕起栽培とカバークロップ、土壌管理と組み合わせた肥料使用の削減等

 炭素農法や土壌排出削減活動による一時的炭素貯留は、少なくとも5年間継続しなければ認証されない。また、投機目的で土地を取得し、農村地域に悪影響を及ぼす場合には認証されない。また今回の合意では、増進石油回収(EOR)の炭素回収・利用・貯留(CCUS)については恒久的炭素除去とみなさないことでも一致した。

 今回の合意では、欧州委員会は、2026年までに、土壌(炭素と一酸化二窒素)以外の排出削減をもたらす活動を認証することの実現可能性に関する報告書を作成する責務を負う。同報告書は、畜産での消化管発酵と排泄物管理による排出削減活動のパイロット認証方法についても記載される予定。

 同認証付与の対象は、EU域内の活動に限定される。但し、近隣の第三国がEUの環境・安全基準に合致していることを条件に、EU域外での地中炭素貯留を同制度の対象とすることの是非についても今後検討していく。

 同認証のメソドロジーには、定量性、追加性、長期貯留、サステナビリティの4つの包括的基準が設定される。炭素農法では生物多様性のコベネフィット(土壌の健全性と土地劣化の回避を含む)を創出することも必須となる。さらに炭素農法では、EU加盟国政府が農家に申請手続に関する助言を提供することも可能となる。共通農業政策(CAP)の農業区画識別システム(LPIS)との連動についても検討する。

 同認証では、土地・海洋からの排出と除去・吸収のプライマイナスを合計する「カーボン・ネット・ベネフィット」に基づいて、吸収・除去型のクレジットを創出していくことも視野に入っている。創出されたクレジットは、EU加盟国のパリ協定上の国別削減目標(NDC)やEUとして気候変動目標にのみ使用可能。第三国と売買することは禁止する。但し、2026年に同ルールについてレビューを行う。創出されたクレジットをプロジェクト企業側が自社の排出量削減に使えるか否かは、今後整理されると思われる。

 同認証が付与された活動に関するモニタリングでは、プロジェクト期間だけでなく、その後の炭素貯留状況をモニタリングする期間も設ける。モニタリング期間中に貯留された二酸化炭素が大気中に放出された場合には、事業者が責任を負う。そのため、モニタリング期間中のプロジェクト事業者の責務、モニタリングの不備や中断、コンプライアンス違反等についての対処方法についても事前に設計する。具体的には、バッファー措置、前払い保険制度等が想定されている。

 同認証に認められたプロジェクトについては、透明性の高い情報公開のため、同EU規則発行から4年以内に、EU単位の電子帳簿(レジストリ)も整備される。レジストリの運転資金は、利用者への年間固定料金の支払いで調達。電子帳簿が完成するまでの間は、自動化された相互運用可能なシステムに基づく公開登録簿で代替する。

【参照ページ】Climate action: Council and Parliament agree to establish an EU carbon removals certification framework

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は2月20日、二酸化炭素除去(CDR)、炭素貯留型農業、製品への炭素貯留に関するEU認証フレームワークを確立するためのEU規則案で政治的合意に達した。今後、双方での立法手続に入る。

 今回制定するEU認証は、

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は2月20日、二酸化炭素除去(CDR)、炭素貯留型農業、製品への炭素貯留に関するEU認証フレームワークを確立するためのEU規則案で政治的合意に達した。今後、双方での立法手続に入る。

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 今回制定するEU認証は、取得必須ではなく、任意の制度として設ける。二酸化炭素の除去や吸収に関するプロジェクトへの関心が高まる中、EUとして率先して信頼性の高いフレームワークを確立し、市場メカニズムが機能しやすい状況を構築していく考え。

 同認証は4つのメソドロジーで整備される予定。欧州委員会の原案と比べると、土壌や海洋での排出除去・貯留にまで対象が拡大された。

  • 恒久的炭素除去:数世紀にわたって大気中または生物起源炭素を除去・貯留する
  • 一時的炭素貯留:35年以上持続し、モニタリング期間中に現地でモニタリング可能な長寿命製品(木質建材等)
  • 炭素農法による一時的な炭素貯留:森林や土壌の再生、湿地管理、海草草地等
  • 土壌管理による炭素と一酸化二窒素の削減を含む土壌排出削減:湿地管理、不耕起栽培とカバークロップ、土壌管理と組み合わせた肥料使用の削減等

 炭素農法や土壌排出削減活動による一時的炭素貯留は、少なくとも5年間継続しなければ認証されない。また、投機目的で土地を取得し、農村地域に悪影響を及ぼす場合には認証されない。また今回の合意では、増進石油回収(EOR)の炭素回収・利用・貯留(CCUS)については恒久的炭素除去とみなさないことでも一致した。

 今回の合意では、欧州委員会は、2026年までに、土壌(炭素と一酸化二窒素)以外の排出削減をもたらす活動を認証することの実現可能性に関する報告書を作成する責務を負う。同報告書は、畜産での消化管発酵と排泄物管理による排出削減活動のパイロット認証方法についても記載される予定。

 同認証付与の対象は、EU域内の活動に限定される。但し、近隣の第三国がEUの環境・安全基準に合致していることを条件に、EU域外での地中炭素貯留を同制度の対象とすることの是非についても今後検討していく。

 同認証のメソドロジーには、定量性、追加性、長期貯留、サステナビリティの4つの包括的基準が設定される。炭素農法では生物多様性のコベネフィット(土壌の健全性と土地劣化の回避を含む)を創出することも必須となる。さらに炭素農法では、EU加盟国政府が農家に申請手続に関する助言を提供することも可能となる。共通農業政策(CAP)の農業区画識別システム(LPIS)との連動についても検討する。

 同認証では、土地・海洋からの排出と除去・吸収のプライマイナスを合計する「カーボン・ネット・ベネフィット」に基づいて、吸収・除去型のクレジットを創出していくことも視野に入っている。創出されたクレジットは、EU加盟国のパリ協定上の国別削減目標(NDC)やEUとして気候変動目標にのみ使用可能。第三国と売買することは禁止する。但し、2026年に同ルールについてレビューを行う。創出されたクレジットをプロジェクト企業側が自社の排出量削減に使えるか否かは、今後整理されると思われる。

 同認証が付与された活動に関するモニタリングでは、プロジェクト期間だけでなく、その後の炭素貯留状況をモニタリングする期間も設ける。モニタリング期間中に貯留された二酸化炭素が大気中に放出された場合には、事業者が責任を負う。そのため、モニタリング期間中のプロジェクト事業者の責務、モニタリングの不備や中断、コンプライアンス違反等についての対処方法についても事前に設計する。具体的には、バッファー措置、前払い保険制度等が想定されている。

 同認証に認められたプロジェクトについては、透明性の高い情報公開のため、同EU規則発行から4年以内に、EU単位の電子帳簿(レジストリ)も整備される。レジストリの運転資金は、利用者への年間固定料金の支払いで調達。電子帳簿が完成するまでの間は、自動化された相互運用可能なシステムに基づく公開登録簿で代替する。

【参照ページ】Climate action: Council and Parliament agree to establish an EU carbon removals certification framework

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