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【国際】IEA、エネルギー部門メタン排出量2023年報告書。2024年以降は減少と予測

 国際エネルギー機関(IEA)は3月13日、エネルギー部門のメタン排出量を分析した報告書の2024年版を発表した。

 同報告書は、エネルギー部門のメタン排出量を分析したもの。2022年から開始され、今回で3回目。2023年のエネルギー部門からのメタン排出量は過去最高の約1.3億tだった。これは農業部門に続く第2位で、人類の活動による排出量の約3分の1を占めている。石油事業で5,000万t、石炭事業で4,000万t、天然ガス事業で3,000万t、調理等の伝統的なバイオマスエネルギーにより1,000万tが排出された。


(出所)IEA

 国別では、上位10カ国で世界全体の約3分の2を占める約8,000万t排出していると報告。世界最大の石油・ガス生産国である米国が石油、ガス事業での最大の排出国、第2位はロシア。石炭事業では中国が圧倒的に排出量が多かった。


(出所)IEA

 同報告書では、2023年には過去最高だったメタンの排出量は2024年以降減少すると予想。国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)では、2030年までにメタン排出を含めて、二酸化炭素以外の温室効果ガス排出を世界的に加速的に大幅に削減することを合意した。COP28の前後に、カナダ、EU、米国で規制に関する進展があったことも理由に挙げた。

 カナダ政府は2023年12月、石油・ガス部門におけるメタン排出量を2030年までに2012年を基準として最低75%削減することを目標に掲げた規制案を発表。EUでは2023年11月、化石燃料セクターでのメタン排出量の追跡と削減に関するEU規則案で政治的合意に達した。米国でも2023年12月、米環境保護庁(EPA)が2024年から2038年までに推定 5,800万tのメタン排出を抑制するための規制を発表した。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、化石燃料のメタン漏出規制で政治的合意。MRVや補修義務化(2023年11月17日)

 また、COP28で設立された世界の石油・ガス企業50社による「石油・ガス脱炭素憲章(OGDC)」の設立や、国連気候変動枠組条約第26回グラスゴー締約国会議(COP26)の場で米国とEU欧州委員会と協働で設立した「グローバル・メタン・プレッジ(Global Methane Pledge)」にCOP29の議長国であるアゼルバイジャンを含めた新たな国々が加盟していることも報告した。

 国や企業がこれまで発表したメタン排出量に関する誓約がすべて実施された場合、化石燃料からのメタン排出量は2030年までに約50%削減される。しかし、ほとんどの誓約の実現可能性は未知数であり、IEAの2050年ネットゼロシナリオ(NZE2050シナリオ)では化石燃料事業からのメタン排出量を2030年までに約75%減少させる必要があり、対策の必要性を訴えた。

 対策に関しては、2023年のメタン排出量のうち約40%は追加コストなしで削減できたものであり、2030年までにメタン排出量を75%削減するための1,700億米ドル(約26兆円)は、2023年の化石燃料事業の売上の5%以下だと報告した。

 メタン排出量に関するデータや情報のギャップや不確実性についても言及。米国際環境NGO環境防衛基金(EDF)とニュージーランド宇宙庁によるメタン漏出監視用衛星MethaneSATを含む衛星が増加しており、データ精度の向上に寄与するとした。

 また、石油・ガス会社から報告されるメタン排出量は、IEAの2023年推計値より95%少なく、各国から報告される排出量は約50%少ないことも課題視。IEAでは世界のメタン排出量に関するデータ「Methane Tracker」を無料公開しており、今後、石油・ガス事業でのメタン削減の検討に活用できるモデルを公開する予定。

【参照ページ】After slight rise in 2023, methane emissions from fossil fuels are set to go into decline soon
【参照ページ】Canada Gazette, Part I, Volume 157, Number 50: Regulations Amending the Regulations Respecting Reduction in the Release of Methane and Certain Volatile Organic Compounds (Upstream Oil and Gas Sector)
【参照ページ】Biden-Harris Administration Finalizes Standards to Slash Methane Pollution, Combat Climate Change, Protect Health, and Bolster American Innovation
【参照ページ】Oil & Gas Decarbonization Charter launched to accelerate climate action

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 国際エネルギー機関(IEA)は3月13日、エネルギー部門のメタン排出量を分析した報告書の2024年版を発表した。

 同報告書は、エネルギー部門のメタン排出量を分析したもの。2022年から開始され、今回で3回目。2023年のエネルギー部門からのメタン排出量は

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 国際エネルギー機関(IEA)は3月13日、エネルギー部門のメタン排出量を分析した報告書の2024年版を発表した。

 同報告書は、エネルギー部門のメタン排出量を分析したもの。2022年から開始され、今回で3回目。2023年のエネルギー部門からのメタン排出量は

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 国際エネルギー機関(IEA)は3月13日、エネルギー部門のメタン排出量を分析した報告書の2024年版を発表した。

 同報告書は、エネルギー部門のメタン排出量を分析したもの。2022年から開始され、今回で3回目。2023年のエネルギー部門からのメタン排出量は過去最高の約1.3億tだった。これは農業部門に続く第2位で、人類の活動による排出量の約3分の1を占めている。石油事業で5,000万t、石炭事業で4,000万t、天然ガス事業で3,000万t、調理等の伝統的なバイオマスエネルギーにより1,000万tが排出された。


(出所)IEA

 国別では、上位10カ国で世界全体の約3分の2を占める約8,000万t排出していると報告。世界最大の石油・ガス生産国である米国が石油、ガス事業での最大の排出国、第2位はロシア。石炭事業では中国が圧倒的に排出量が多かった。


(出所)IEA

 同報告書では、2023年には過去最高だったメタンの排出量は2024年以降減少すると予想。国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)では、2030年までにメタン排出を含めて、二酸化炭素以外の温室効果ガス排出を世界的に加速的に大幅に削減することを合意した。COP28の前後に、カナダ、EU、米国で規制に関する進展があったことも理由に挙げた。

 カナダ政府は2023年12月、石油・ガス部門におけるメタン排出量を2030年までに2012年を基準として最低75%削減することを目標に掲げた規制案を発表。EUでは2023年11月、化石燃料セクターでのメタン排出量の追跡と削減に関するEU規則案で政治的合意に達した。米国でも2023年12月、米環境保護庁(EPA)が2024年から2038年までに推定 5,800万tのメタン排出を抑制するための規制を発表した。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、化石燃料のメタン漏出規制で政治的合意。MRVや補修義務化(2023年11月17日)

 また、COP28で設立された世界の石油・ガス企業50社による「石油・ガス脱炭素憲章(OGDC)」の設立や、国連気候変動枠組条約第26回グラスゴー締約国会議(COP26)の場で米国とEU欧州委員会と協働で設立した「グローバル・メタン・プレッジ(Global Methane Pledge)」にCOP29の議長国であるアゼルバイジャンを含めた新たな国々が加盟していることも報告した。

 国や企業がこれまで発表したメタン排出量に関する誓約がすべて実施された場合、化石燃料からのメタン排出量は2030年までに約50%削減される。しかし、ほとんどの誓約の実現可能性は未知数であり、IEAの2050年ネットゼロシナリオ(NZE2050シナリオ)では化石燃料事業からのメタン排出量を2030年までに約75%減少させる必要があり、対策の必要性を訴えた。

 対策に関しては、2023年のメタン排出量のうち約40%は追加コストなしで削減できたものであり、2030年までにメタン排出量を75%削減するための1,700億米ドル(約26兆円)は、2023年の化石燃料事業の売上の5%以下だと報告した。

 メタン排出量に関するデータや情報のギャップや不確実性についても言及。米国際環境NGO環境防衛基金(EDF)とニュージーランド宇宙庁によるメタン漏出監視用衛星MethaneSATを含む衛星が増加しており、データ精度の向上に寄与するとした。

 また、石油・ガス会社から報告されるメタン排出量は、IEAの2023年推計値より95%少なく、各国から報告される排出量は約50%少ないことも課題視。IEAでは世界のメタン排出量に関するデータ「Methane Tracker」を無料公開しており、今後、石油・ガス事業でのメタン削減の検討に活用できるモデルを公開する予定。

【参照ページ】After slight rise in 2023, methane emissions from fossil fuels are set to go into decline soon
【参照ページ】Canada Gazette, Part I, Volume 157, Number 50: Regulations Amending the Regulations Respecting Reduction in the Release of Methane and Certain Volatile Organic Compounds (Upstream Oil and Gas Sector)
【参照ページ】Biden-Harris Administration Finalizes Standards to Slash Methane Pollution, Combat Climate Change, Protect Health, and Bolster American Innovation
【参照ページ】Oil & Gas Decarbonization Charter launched to accelerate climate action

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