Sustainable Japan | 世界のサステナビリティ・ESG投資・SDGs

【金融】ESG投資・SRIを推進するグローバル機関

esg投資やsriのchaos map カオスマップ
(図)ESG投資・SRI推進機関 カオスマップ。Sustainable Japan作成。

世界規模で展開するESG投資・SRIの推進

 前回、「【レポーティング】サステナビリティ(CSR)報告ガイドラインを主導するグローバル機関」では、サステナビリティ報告に関するガイドライン策定に取り組んでいる機関を取り上げました。今回は、機関投資家サイドの状況を取り上げたいと思います。機関投資家には、アセットオーナー、証券会社、資産運用会社、銀行、保険会社、証券取引所、格付会社、金融データ提供会社など様々な種類があります。そのそれぞれの機関投資家について、ESGを考慮する投資方針を求める声が世界的に高まっています。日本でも昨年、金融庁が日本版スチュワードシップ・コードを策定し、ESG投資に関する機運が一気に高まってきたと言われています。ESG投資という大きなうねりを作り出している世界の主要機関をご紹介していきましょう。

PRI 〜ESG投資推進の中心的存在〜

 ESG投資推進の大きな立役者となっているのがPRIです。PRIは、正式名称を”Principles for Responsible Investment”と言い、日本語では「責任投資原則」「国連責任投資原則」と呼ばれています。PRIとは、2006年に、当時国際連合事務総長であったコフィー・アナン氏が金融業界に対して提唱したイニシアティブで、今ではPRIは組織名称にもなっています。PRIの後見を行っている機関が、国連グローバル・コンパクトとUNEP(国連環境計画)の金融イニシアティブ(UNEP FI)です。PRIで定められている原則は6つと、非常にコンパクトにまとめられています。

  • 私たちは、投資分析と意志決定のプロセスにESGの課題を組み込みます。
  • 私たちは、活動的な(株式)所有者になり、(株式の)所有方針と(株式の)所有慣習にESG問題を組み入れます。
  • 私たちは、投資対象の主体に対してESGの課題について適切な開示を求めます。
  • 私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行います。
  • 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協働します。
  • 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。

 PRIで定める原則への支持は、機関投資家や金融サービサーからの自発的な参加署名によって成されています。現時点(2015年5月12日)でのPRIへの署名企業数は、世界全体で1,382社。アセットオーナーが289社、運用会社が899社、金融サービサーが194社です。国別では、アメリカが230社、イギリスが194社、オーストラリアが118社、カナダが65社、ニュージーランドが17社で、アングロサクソン諸国で46%を占めます。また、フランスは135社、スイスは64社、ドイツは56社、ブラジルは63社で、ちなみに日本は30社です。

 また、PRIは、後見母体である国連グローバル・コンパクトとUNEP FI、さらにUNCTAD(国連貿易開発会議)とともに、証券取引所に対してESG投資環境を構築していくための推進機関であるSSE(Sustainable Stock Exchange、持続可能な取引所イニシアチブ)を2009年に立ち上げました。現在では、SSEに加盟している取引所は世界で19社あり、ニューヨーク証券取引所、NASDAQ、ロンドン証券取引所、ドイツ証券取引所の他、新興国の取引所も多数加盟しています。

GSIA 〜民間団体からのESG投資推進〜

 PRIが国連主導で動いているのに対し、民間からの自発的なESG投資推進の動きも始まっています。その動きを世界規模で統括している代表的な機関がGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)です。GSIAは、地域単位や国単位で活動しているESG投資推進機関を総括している機関です。GSIAに加盟しているのは、アメリカのUSSIF、イギリスのUKSIF、欧州のEurosif、オーストラリア・ニュージーランドのRIAA、カナダのRiA、オランダのVBDO、アジアのASrIAです。GSIAは、世界各地域のESG投資の統計データをまとめたレポート”Global Sustainable Investment Review”を2年に一度発行しています。

 GSIAに加盟しているUSSIFやUKSIFなどの各地域の機関には、それぞれの地域の機関投資家や金融サービサーが自主的に参加しており、ナレッジの交流やネットワーキング、ルール策定などを行っています。Eurosifには、ベルギーのBELSIF、オランダのVBDO、ドイツ・オーストリア・リヒテンシュタイン・スイスのFNP、フランスのFiR、イタリアのForum per la Finanza Sostenibile、スペインのSpainsif、スウェーデンのSWESIF、イギリスのUKSIFが加盟しています。一方ASrIAには、中国のChinaSIF、韓国のKosif、日本のJSIFが加盟していますが、ASrIAが発行する地域レポートの”Asia Sustainable Investment Review”には、JSIFは参加していません。

GISR 〜ESG視点でのインデックス・格付〜

 インデックス・格付の世界にもサステナビリティの視点が加わってきています。これまで、ESGを考慮したインデックスや格付は、MCSI、ダウ&ジョーンズ、FTSEなど多数の機関が発表してきています(詳細はSRI/ESG投資インデックス一覧)が、あるべきインデックス評価や格付メソッドの姿を考えていこう動きの中で設立されたのが、GISR(Global Initiative for Sustainabile Ratings)です。GISRは2011年に、CeresとTellus Instituteによって立ち上げられたプロジェクトで、その後、組織名称となりました。CeresとTellus Instituteの両機関によって設立されたものには他にGRI(Global Reporting Initiative)があり、その意味で、GRIとGISRは兄弟関係にあると言えるかもしれません。GISRは現在、各社・各機関が発行するインデックス、格付、ランキングについての認証を付与するサービスを提供しています。

 GISRの協働機関には、企業手動でのコーポレート・サステナビリティのルール作りを進めるアメリカのBSRや、不動産業界のサステナビリティ評価を行うGRESB(Global Real Estate Sustainability Benchmark)も名を連ねており、またIIRCとの間で報告と格付を協調させていく覚書を交わしています。

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(図)ESG投資・SRI推進機関 カオスマップ。Sustainable Japan作成。

世界規模で展開するESG投資・SRIの推進

 前回、「【レポーティング】サステナビリティ(CSR)報告ガイドラインを主導するグローバル機関」では、サステナビリティ報告に関するガイドライン策定に取り組んでいる機関を取り上げました。今回は、機関投資家サイドの状況を取り上げたいと思います。機関投資家には、アセットオーナー、証券会社、資産運用会社、銀行、保険会社、証券取引所、格付会社、金融データ提供会社など様々な種類があります。そのそれぞれの機関投資家について、ESGを考慮する投資方針を求める声が世界的に高まっています。日本でも昨年、金融庁が日本版スチュワードシップ・コードを策定し、ESG投資に関する機運が一気に高まってきたと言われています。ESG投資という大きなうねりを作り出している世界の主要機関をご紹介していきましょう。

PRI 〜ESG投資推進の中心的存在〜

 ESG投資推進の大きな立役者となっているのがPRIです。PRIは、

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世界規模で展開するESG投資・SRIの推進

 前回、「【レポーティング】サステナビリティ(CSR)報告ガイドラインを主導するグローバル機関」では、サステナビリティ報告に関するガイドライン策定に取り組んでいる機関を取り上げました。今回は、機関投資家サイドの状況を取り上げたいと思います。機関投資家には、アセットオーナー、証券会社、資産運用会社、銀行、保険会社、証券取引所、格付会社、金融データ提供会社など様々な種類があります。そのそれぞれの機関投資家について、ESGを考慮する投資方針を求める声が世界的に高まっています。日本でも昨年、金融庁が日本版スチュワードシップ・コードを策定し、ESG投資に関する機運が一気に高まってきたと言われています。ESG投資という大きなうねりを作り出している世界の主要機関をご紹介していきましょう。

PRI 〜ESG投資推進の中心的存在〜

 ESG投資推進の大きな立役者となっているのがPRIです。PRIは、

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世界規模で展開するESG投資・SRIの推進

 前回、「【レポーティング】サステナビリティ(CSR)報告ガイドラインを主導するグローバル機関」では、サステナビリティ報告に関するガイドライン策定に取り組んでいる機関を取り上げました。今回は、機関投資家サイドの状況を取り上げたいと思います。機関投資家には、アセットオーナー、証券会社、資産運用会社、銀行、保険会社、証券取引所、格付会社、金融データ提供会社など様々な種類があります。そのそれぞれの機関投資家について、ESGを考慮する投資方針を求める声が世界的に高まっています。日本でも昨年、金融庁が日本版スチュワードシップ・コードを策定し、ESG投資に関する機運が一気に高まってきたと言われています。ESG投資という大きなうねりを作り出している世界の主要機関をご紹介していきましょう。

PRI 〜ESG投資推進の中心的存在〜

 ESG投資推進の大きな立役者となっているのがPRIです。PRIは、正式名称を”Principles for Responsible Investment”と言い、日本語では「責任投資原則」「国連責任投資原則」と呼ばれています。PRIとは、2006年に、当時国際連合事務総長であったコフィー・アナン氏が金融業界に対して提唱したイニシアティブで、今ではPRIは組織名称にもなっています。PRIの後見を行っている機関が、国連グローバル・コンパクトとUNEP(国連環境計画)の金融イニシアティブ(UNEP FI)です。PRIで定められている原則は6つと、非常にコンパクトにまとめられています。

  • 私たちは、投資分析と意志決定のプロセスにESGの課題を組み込みます。
  • 私たちは、活動的な(株式)所有者になり、(株式の)所有方針と(株式の)所有慣習にESG問題を組み入れます。
  • 私たちは、投資対象の主体に対してESGの課題について適切な開示を求めます。
  • 私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行います。
  • 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協働します。
  • 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。

 PRIで定める原則への支持は、機関投資家や金融サービサーからの自発的な参加署名によって成されています。現時点(2015年5月12日)でのPRIへの署名企業数は、世界全体で1,382社。アセットオーナーが289社、運用会社が899社、金融サービサーが194社です。国別では、アメリカが230社、イギリスが194社、オーストラリアが118社、カナダが65社、ニュージーランドが17社で、アングロサクソン諸国で46%を占めます。また、フランスは135社、スイスは64社、ドイツは56社、ブラジルは63社で、ちなみに日本は30社です。

 また、PRIは、後見母体である国連グローバル・コンパクトとUNEP FI、さらにUNCTAD(国連貿易開発会議)とともに、証券取引所に対してESG投資環境を構築していくための推進機関であるSSE(Sustainable Stock Exchange、持続可能な取引所イニシアチブ)を2009年に立ち上げました。現在では、SSEに加盟している取引所は世界で19社あり、ニューヨーク証券取引所、NASDAQ、ロンドン証券取引所、ドイツ証券取引所の他、新興国の取引所も多数加盟しています。

GSIA 〜民間団体からのESG投資推進〜

 PRIが国連主導で動いているのに対し、民間からの自発的なESG投資推進の動きも始まっています。その動きを世界規模で統括している代表的な機関がGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)です。GSIAは、地域単位や国単位で活動しているESG投資推進機関を総括している機関です。GSIAに加盟しているのは、アメリカのUSSIF、イギリスのUKSIF、欧州のEurosif、オーストラリア・ニュージーランドのRIAA、カナダのRiA、オランダのVBDO、アジアのASrIAです。GSIAは、世界各地域のESG投資の統計データをまとめたレポート”Global Sustainable Investment Review”を2年に一度発行しています。

 GSIAに加盟しているUSSIFやUKSIFなどの各地域の機関には、それぞれの地域の機関投資家や金融サービサーが自主的に参加しており、ナレッジの交流やネットワーキング、ルール策定などを行っています。Eurosifには、ベルギーのBELSIF、オランダのVBDO、ドイツ・オーストリア・リヒテンシュタイン・スイスのFNP、フランスのFiR、イタリアのForum per la Finanza Sostenibile、スペインのSpainsif、スウェーデンのSWESIF、イギリスのUKSIFが加盟しています。一方ASrIAには、中国のChinaSIF、韓国のKosif、日本のJSIFが加盟していますが、ASrIAが発行する地域レポートの”Asia Sustainable Investment Review”には、JSIFは参加していません。

GISR 〜ESG視点でのインデックス・格付〜

 インデックス・格付の世界にもサステナビリティの視点が加わってきています。これまで、ESGを考慮したインデックスや格付は、MCSI、ダウ&ジョーンズ、FTSEなど多数の機関が発表してきています(詳細はSRI/ESG投資インデックス一覧)が、あるべきインデックス評価や格付メソッドの姿を考えていこう動きの中で設立されたのが、GISR(Global Initiative for Sustainabile Ratings)です。GISRは2011年に、CeresとTellus Instituteによって立ち上げられたプロジェクトで、その後、組織名称となりました。CeresとTellus Instituteの両機関によって設立されたものには他にGRI(Global Reporting Initiative)があり、その意味で、GRIとGISRは兄弟関係にあると言えるかもしれません。GISRは現在、各社・各機関が発行するインデックス、格付、ランキングについての認証を付与するサービスを提供しています。

 GISRの協働機関には、企業手動でのコーポレート・サステナビリティのルール作りを進めるアメリカのBSRや、不動産業界のサステナビリティ評価を行うGRESB(Global Real Estate Sustainability Benchmark)も名を連ねており、またIIRCとの間で報告と格付を協調させていく覚書を交わしています。

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