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【アメリカ】FRB等、大銀行に気候リスク管理を義務化。地域社会再投資法ルールも改正

 米財務省、連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、通貨監督庁(OCC)は10月24日、連結総資産1,000億米ドル(約15兆円)以上の銀行を対象に、気候変動金融リスクエクスポジャーマネジメントに関する原則を発表した。

 FRB、FDIC、OCCは各々、原則案を公表しており、パブリックコメントを募集していた。今回4機関合同で原則を最終発表した。対象となる「銀行」には、国営銀行、連邦貯蓄組合、州非加盟銀行、州貯蓄組合、州加盟銀行、銀行持株会社、貯蓄貸付持株会社、中間持株会社、外国銀行組織、およびその傘下にある銀行が含まれる。米国内で合計1,000億米ドル以上の業務を行う外資系銀行や、外資系銀行の支店も対象となる。

 まず一般原則として、「ガバナンス」「方針・手続・限度」「戦略計画」「リスクマネジメント」「データ、リスク測定、報告」「シナリオ分析」の6つを掲げた。ガバナンスに関しては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のガバナンスと類似。「方針・手続・限度」では、経営陣に対し、気候変動に関連する重要な財務リスクを方針、手順、限度額の内容に組み入れ、取締役会が設定した戦略やリスク選好度に沿った、銀行のリスクアプローチに関する詳細な指針を策定を求めた。また、潜在的に長期化する時間軸や将来を見通す性質という気候変動に関連する金融リスクの特徴を考慮することや、銀行の経営環境や活動の変化等を反映するために、必要に応じて修正していくことも義務化した。

 「戦略」では、銀行の全体的なビジネス戦略、リスク選好度、経営陣による資本計画の実施を取締役会が監督する際に、重要な気候変動に関連した金融リスクエクスポージャーを様々な時間軸で検討することを推奨。経営陣はその検討内容に対処すべきとした。但し、同原則は、特定のクラスやタイプの顧客に対して銀行サービスを提供することを禁止したり、抑制したりすることは求めず、融資の是非や口座開設の是非は、金融機関自身の判断に委ねられるとした。一方、低・中所得者層やや金融機関に与える影響について検討するよう、経営陣に促すべきとし、気候変動に脆弱なコミュニティを積極的に包摂していく責務を盛り込んだ。

 さらに「戦略」では、一貫性も重視しており、気候変動に関連する戦略やコミットメントの策定及び公表では、金融機関の広範な戦略、リスク選好度、リスク管理の枠組みと整合させることも要求した。

 「リスクマネジメント」では、気候変動のエクスポージャーを測定手法として、エクスポージャー分析、ヒートマップ、気候リスクダッシュボード、シナリオ分析等を例示。「データ、リスク測定、報告」では、物理的リスクや移行リスクの内容毎にわけてリスク情報を開示することを推奨した。リスクの内容では、信用リスク、流動性リスク、その他財務リスク、オペレーショナルリスク、コンプライアンスリスク、その他の非財務リスクを挙げた。

 「シナリオ分析」では、短期的な経済・金融状況に対する一過性のショックの潜在的な影響を評価する伝統的なストレステストのシミュレーションとは異なり、将来を見据えた包括的な視点で行うべきとした。

 また4機関は同時に、地域社会再投資法(CRA)の施行ルール改正の最終内容も合同発表した。同法は1977年に制定されているが、施行ルールの改正では20年ぶりの大規模改正とも言われている。新ルールは2026年1月1日から適用。但し、データ報告要件は2027年1月1日から適用される。

 CRA施行ルール改正では、十分なサービスを受けていない金融的に脆弱な地域社会への投融資・金融サービスの提供での金融インクルージョンを銀行に義務化した。4機関は、金融インクルージョンの実施状況を各行毎に評価していく。オンラインバンキングやブランチレスバンキング等で、支店を持たない金融システムの成長によって生じた従来の評価地域外への貸出についても評価する。

 具体的な評価手法では、地域全体の人口統計データや同業者データ等をもとに対象となる全体人数を把握し、各行のサービス提供状況を評価していく。手頃な価格の住宅等、低・中所得者(LMI)地域、十分なサービスを受けていない地域、先住民、農村地域に焦点を当てた金融サービスの実施も重視する。また、気候変動の物理的リスクや移行リスクに関する対策もLMI地域で積極的展開することを課した。

 資産規模100億米ドル(約1.5兆円)以上の大銀行には、特定のデータ報告要件も課す。

【参照ページ】Agencies issue principles for climate-related financial risk management for large financial institutions
【参照ページ】Agencies issue final rule to strengthen and modernize Community Reinvestment Act regulations

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 米財務省、連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、通貨監督庁(OCC)は10月24日、連結総資産1,000億米ドル(約15兆円)以上の銀行を対象に、気候変動金融リスクエクスポジャーマネジメントに関する原則を発表した。

 FRB、FDIC、OCCは各々、

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 米財務省、連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、通貨監督庁(OCC)は10月24日、連結総資産1,000億米ドル(約15兆円)以上の銀行を対象に、気候変動金融リスクエクスポジャーマネジメントに関する原則を発表した。

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 米財務省、連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、通貨監督庁(OCC)は10月24日、連結総資産1,000億米ドル(約15兆円)以上の銀行を対象に、気候変動金融リスクエクスポジャーマネジメントに関する原則を発表した。

 FRB、FDIC、OCCは各々、原則案を公表しており、パブリックコメントを募集していた。今回4機関合同で原則を最終発表した。対象となる「銀行」には、国営銀行、連邦貯蓄組合、州非加盟銀行、州貯蓄組合、州加盟銀行、銀行持株会社、貯蓄貸付持株会社、中間持株会社、外国銀行組織、およびその傘下にある銀行が含まれる。米国内で合計1,000億米ドル以上の業務を行う外資系銀行や、外資系銀行の支店も対象となる。

 まず一般原則として、「ガバナンス」「方針・手続・限度」「戦略計画」「リスクマネジメント」「データ、リスク測定、報告」「シナリオ分析」の6つを掲げた。ガバナンスに関しては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のガバナンスと類似。「方針・手続・限度」では、経営陣に対し、気候変動に関連する重要な財務リスクを方針、手順、限度額の内容に組み入れ、取締役会が設定した戦略やリスク選好度に沿った、銀行のリスクアプローチに関する詳細な指針を策定を求めた。また、潜在的に長期化する時間軸や将来を見通す性質という気候変動に関連する金融リスクの特徴を考慮することや、銀行の経営環境や活動の変化等を反映するために、必要に応じて修正していくことも義務化した。

 「戦略」では、銀行の全体的なビジネス戦略、リスク選好度、経営陣による資本計画の実施を取締役会が監督する際に、重要な気候変動に関連した金融リスクエクスポージャーを様々な時間軸で検討することを推奨。経営陣はその検討内容に対処すべきとした。但し、同原則は、特定のクラスやタイプの顧客に対して銀行サービスを提供することを禁止したり、抑制したりすることは求めず、融資の是非や口座開設の是非は、金融機関自身の判断に委ねられるとした。一方、低・中所得者層やや金融機関に与える影響について検討するよう、経営陣に促すべきとし、気候変動に脆弱なコミュニティを積極的に包摂していく責務を盛り込んだ。

 さらに「戦略」では、一貫性も重視しており、気候変動に関連する戦略やコミットメントの策定及び公表では、金融機関の広範な戦略、リスク選好度、リスク管理の枠組みと整合させることも要求した。

 「リスクマネジメント」では、気候変動のエクスポージャーを測定手法として、エクスポージャー分析、ヒートマップ、気候リスクダッシュボード、シナリオ分析等を例示。「データ、リスク測定、報告」では、物理的リスクや移行リスクの内容毎にわけてリスク情報を開示することを推奨した。リスクの内容では、信用リスク、流動性リスク、その他財務リスク、オペレーショナルリスク、コンプライアンスリスク、その他の非財務リスクを挙げた。

 「シナリオ分析」では、短期的な経済・金融状況に対する一過性のショックの潜在的な影響を評価する伝統的なストレステストのシミュレーションとは異なり、将来を見据えた包括的な視点で行うべきとした。

 また4機関は同時に、地域社会再投資法(CRA)の施行ルール改正の最終内容も合同発表した。同法は1977年に制定されているが、施行ルールの改正では20年ぶりの大規模改正とも言われている。新ルールは2026年1月1日から適用。但し、データ報告要件は2027年1月1日から適用される。

 CRA施行ルール改正では、十分なサービスを受けていない金融的に脆弱な地域社会への投融資・金融サービスの提供での金融インクルージョンを銀行に義務化した。4機関は、金融インクルージョンの実施状況を各行毎に評価していく。オンラインバンキングやブランチレスバンキング等で、支店を持たない金融システムの成長によって生じた従来の評価地域外への貸出についても評価する。

 具体的な評価手法では、地域全体の人口統計データや同業者データ等をもとに対象となる全体人数を把握し、各行のサービス提供状況を評価していく。手頃な価格の住宅等、低・中所得者(LMI)地域、十分なサービスを受けていない地域、先住民、農村地域に焦点を当てた金融サービスの実施も重視する。また、気候変動の物理的リスクや移行リスクに関する対策もLMI地域で積極的展開することを課した。

 資産規模100億米ドル(約1.5兆円)以上の大銀行には、特定のデータ報告要件も課す。

【参照ページ】Agencies issue principles for climate-related financial risk management for large financial institutions
【参照ページ】Agencies issue final rule to strengthen and modernize Community Reinvestment Act regulations

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