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【イギリス】オンライン安全法成立。AI安全では大手7社がポリシー制定。市場リード狙う

 英国でオンライン安全法が10月26日、成立した。SNS事業者に対し、違法コンテンツやネットいじめに関する対策を義務化した。違反時の罰則規定も設けた。

 同法は、オンライン・コミュニティでの、子供や女性等の悪影響を受けやすい人々を保護するために制定された。事業者に対しては「ゼロ・トレランス・アプローチ」での対策を要求するとともに、子供の閲覧内容について保護者が制限をかけやすくなるような措置を講ずることも求めている。デジタル・ヘイトや、リベンジ・ポルノ等も対策範囲となる。

 具体的な措置としては、自傷行為を助長するコンテンツを含め違法なコンテンツを速やかに削除もしくは非表示化、有害で年齢不相応なコンテンツへのアクセス阻止、年齢制限と年齢確認の強化、問題発生時の通報窓口の明確化等。また、大手SNS事業者に対しては、リスク評価の公表も義務付ける。英通信庁(Ofcom)は今後、事業者向けの行動規範を策定する予定。

 また、リシ・スナク首相は10月26日、王立協会での演説の中で、世界初の「AI安全研究所(AI Safety Institute)」を英国内に創設する考えも表明した。AI安全性の分野で世界をリードしていく考えを伝えた。

 AI安全性の分野では、所管しているサービス・イノベーション・テクノロジー省は、「Emerging Processes for Frontier AI Safety」という方針を発表しており、政府が大まかな観点を伝え、企業側が自主的にポリシーを策定するというアプローチを採っている。同省は9月、AI大手に対し、安全性ポリシーの自主策定を要請。要請結果の回答が10月27日に発表された。策定に応じたのは、アマゾン、マイクロソフト、グーグル・ディープマインド、メタ・プラットフォームズ、OpenAI、インフレクション、Anthropicの7社。

 同省がAI安全で掲げている観点は全部で9つ。

  • Responsible Capability Scaling:組織がフロンティアAIの能力を拡張する際のリスク管理のフレームワークを提供し、企業が将来起こりうる、より危険なAIリスクに事前に備える
  • Model Evaluations and Red Teaming:AIモデルがもたらすリスクを評価し、AIモデルの学習、安全確保、配備に関するより良い意思決定に役立てる
  • Model Reporting and Information Sharing:AI開発・搭載の最前線に対する政府の可視性を高め、ユーザーのAIの使用方法について十分な情報に基づいた選択を行う
  • Security Controls Including Securing Model Weights:AIの安全性のための統制を行う
  • Reporting Structure for Vulnerabilities:第三者がAIの安全性とセキュリティの問題を特定できるようにする
  • Identifiers of AI-generated Material:コンテンツがAIによって生成または修正されたかどうかに関する追加情報を提供し、AIが生成した欺瞞的なコンテンツの作成と配布を防止する
  • Prioritising Research on Risks Posed by AI:AIがもたらすリスクに関する研究を優先順位を高める
  • Preventing and Monitoring Model Misuse:AI搭載後の有害活用の動向をモニタリングする
  • Data Input Controls and Audits:AIが持つ危険な能力と、それらがもたらすリスクを増大させる可能性のある学習データを特定し、除去する

 スナク首相の王立協会での演説では、AI分野に1億ポンド(約180億円)を投じていきたい意欲も見せており、その中でもAI安全の分野に重点を置くという。さらに、治療の難しい疾病分野のAI活用にも1億ポンド(約180億円)を投資していくことも表明した。英政府は、今後18ヶ月以内に新たなテクノロジーをテスト・試行するために、臨床ニーズが最も高い英国の地域に投資していくという。今後5年間で、世界クラスのデータインフラを開発し、メンタルヘルス分野の研究も加速させる。

 また別途、クリス・フィリップ犯罪・警察・消防担当閣外相は10月29日、各警察署長に宛てた文書の中で、犯罪者追跡捜査での顔認証技術活用を強化していくようしている。同相は、イングランドとウェールズの全警察が総力を挙げることで、顔認識技術を使った警察全国データベースに対する静止画像の検索件数が、来初夏までに20万件を突破し、犯人の逮捕と治安維持に役立つと指摘した。特にライブ顔認証技術の導入に意欲をみせた。

【参照ページ】Overwhelming support for Online Safety Act as rules making UK the safest place in the world to be online become law
【参照ページ】Prime Minister’s speech on AI: 26 October 2023
【参照ページ】Leading frontier AI companies publish safety policies
【参照ページ】New £100 million fund to capitalise on AI’s game-changing potential in life sciences and healthcare
【参照ページ】Police urged to double AI-enabled facial recognition searches

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 英国でオンライン安全法が10月26日、成立した。SNS事業者に対し、違法コンテンツやネットいじめに関する対策を義務化した。違反時の罰則規定も設けた。

 同法は、

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 英国でオンライン安全法が10月26日、成立した。SNS事業者に対し、違法コンテンツやネットいじめに関する対策を義務化した。違反時の罰則規定も設けた。

 同法は、

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 英国でオンライン安全法が10月26日、成立した。SNS事業者に対し、違法コンテンツやネットいじめに関する対策を義務化した。違反時の罰則規定も設けた。

 同法は、オンライン・コミュニティでの、子供や女性等の悪影響を受けやすい人々を保護するために制定された。事業者に対しては「ゼロ・トレランス・アプローチ」での対策を要求するとともに、子供の閲覧内容について保護者が制限をかけやすくなるような措置を講ずることも求めている。デジタル・ヘイトや、リベンジ・ポルノ等も対策範囲となる。

 具体的な措置としては、自傷行為を助長するコンテンツを含め違法なコンテンツを速やかに削除もしくは非表示化、有害で年齢不相応なコンテンツへのアクセス阻止、年齢制限と年齢確認の強化、問題発生時の通報窓口の明確化等。また、大手SNS事業者に対しては、リスク評価の公表も義務付ける。英通信庁(Ofcom)は今後、事業者向けの行動規範を策定する予定。

 また、リシ・スナク首相は10月26日、王立協会での演説の中で、世界初の「AI安全研究所(AI Safety Institute)」を英国内に創設する考えも表明した。AI安全性の分野で世界をリードしていく考えを伝えた。

 AI安全性の分野では、所管しているサービス・イノベーション・テクノロジー省は、「Emerging Processes for Frontier AI Safety」という方針を発表しており、政府が大まかな観点を伝え、企業側が自主的にポリシーを策定するというアプローチを採っている。同省は9月、AI大手に対し、安全性ポリシーの自主策定を要請。要請結果の回答が10月27日に発表された。策定に応じたのは、アマゾン、マイクロソフト、グーグル・ディープマインド、メタ・プラットフォームズ、OpenAI、インフレクション、Anthropicの7社。

 同省がAI安全で掲げている観点は全部で9つ。

  • Responsible Capability Scaling:組織がフロンティアAIの能力を拡張する際のリスク管理のフレームワークを提供し、企業が将来起こりうる、より危険なAIリスクに事前に備える
  • Model Evaluations and Red Teaming:AIモデルがもたらすリスクを評価し、AIモデルの学習、安全確保、配備に関するより良い意思決定に役立てる
  • Model Reporting and Information Sharing:AI開発・搭載の最前線に対する政府の可視性を高め、ユーザーのAIの使用方法について十分な情報に基づいた選択を行う
  • Security Controls Including Securing Model Weights:AIの安全性のための統制を行う
  • Reporting Structure for Vulnerabilities:第三者がAIの安全性とセキュリティの問題を特定できるようにする
  • Identifiers of AI-generated Material:コンテンツがAIによって生成または修正されたかどうかに関する追加情報を提供し、AIが生成した欺瞞的なコンテンツの作成と配布を防止する
  • Prioritising Research on Risks Posed by AI:AIがもたらすリスクに関する研究を優先順位を高める
  • Preventing and Monitoring Model Misuse:AI搭載後の有害活用の動向をモニタリングする
  • Data Input Controls and Audits:AIが持つ危険な能力と、それらがもたらすリスクを増大させる可能性のある学習データを特定し、除去する

 スナク首相の王立協会での演説では、AI分野に1億ポンド(約180億円)を投じていきたい意欲も見せており、その中でもAI安全の分野に重点を置くという。さらに、治療の難しい疾病分野のAI活用にも1億ポンド(約180億円)を投資していくことも表明した。英政府は、今後18ヶ月以内に新たなテクノロジーをテスト・試行するために、臨床ニーズが最も高い英国の地域に投資していくという。今後5年間で、世界クラスのデータインフラを開発し、メンタルヘルス分野の研究も加速させる。

 また別途、クリス・フィリップ犯罪・警察・消防担当閣外相は10月29日、各警察署長に宛てた文書の中で、犯罪者追跡捜査での顔認証技術活用を強化していくようしている。同相は、イングランドとウェールズの全警察が総力を挙げることで、顔認識技術を使った警察全国データベースに対する静止画像の検索件数が、来初夏までに20万件を突破し、犯人の逮捕と治安維持に役立つと指摘した。特にライブ顔認証技術の導入に意欲をみせた。

【参照ページ】Overwhelming support for Online Safety Act as rules making UK the safest place in the world to be online become law
【参照ページ】Prime Minister’s speech on AI: 26 October 2023
【参照ページ】Leading frontier AI companies publish safety policies
【参照ページ】New £100 million fund to capitalise on AI’s game-changing potential in life sciences and healthcare
【参照ページ】Police urged to double AI-enabled facial recognition searches

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