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【国際】G7閣僚級会合、全てのAI関係者向けの指針採択。米英の先行指針がベース。今後はGPAIで

 G7は12月1日、G7デジタル・技術相会合をテレビ会議形式で開催。議長国日本政府からは経済産業省、総務省、デジタル庁が出席した。「広島AIプロセス G7デジタル・技術閣僚声明」と「DFFT G7デジタル・技術閣僚声明」を採択したことに加え、「全てのAI関係者向けの広島プロセス国際指針」を策定した。

 総務省が主担当となった「広島AIプロセス G7デジタル・技術閣僚声明」では、議長国日本が2023年に進めてきた「広島AIプロセス包括的政策枠組み」を一旦完成させ、「生成AIに関するG7の理解に向けた経済協力開発機構(OECD)レポート」「全てのAI関係者向け及び高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際指針」「高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際行動規範」「プロジェクト・ベースの協力」の4つを盛り込んだ。

【参考】【国際】G7、AI開発者向けに10の重点分野提示。OECD等は2023年後半に指針策定へ(2023年9月11日)

 日本政府は、広島AIプロセスに基づくAI規範設定に関し、OECDが9月に発行した生成AIに関するレポートをベースとした。同レポートでは、生成AIの開発と利用の双方での透明性、偽情報やフェイクニュース巧妙化、学習した資料の著作権を含む知的財産権の3つを重要な課題として取り上げている。

 それを踏まえ、G7は10月の広島AIプロセスに関するG7首脳声明の中で「高度なAI関係者向けの広島プロセス国際指針」とそれに基づく「高度なAI関係者向けの広島プロセス国際行動規範」を発表。国際指針では11の指針を、行動規範では11の指針毎のアクションの方向性を固めた。

  • AIライフサイクル全体にわたるリスクを特定、評価、軽減するために、高度なAIシステムの開発全体を通じて、その導入前及び市場投入前も含め、適切な措置を講じる
  • 市場投入を含む導入後、脆弱性、及び必要に応じて悪用されたインシデントやパターンを特定し、緩和する
  • 高度なAIシステムの能力、限界、適切・不適切な使用領域を公表し、十分な透明性の確保を支援することで、アカウンタビリティの向上に貢献する
  • 産業界、政府、市民社会、学界を含む、高度な AI システムを開発する組織間での責任ある情報共有とインシデントの報告に向けて取り組む
  • 特に高度なAIシステム開発者に向けた、個人情報保護方針及び緩和策を含む、リスクベースのアプローチに基づく AI ガバナンス及びリスク管理方針を策定し、実施し、開示する
  • AIのライフサイクル全体にわたり、物理的セキュリティ、サイバーセキュリティ、内部脅威に対する安全対策を含む、強固なセキュリティ管理に投資し、実施する
  • 技術的に可能な場合は、電子透かしやその他の技術等、ユーザーが AI が生成したコンテンツを識別できるようにするための、信頼できるコンテンツ認証及び来歴のメカニズムを開発し、導入する
  • 社会的、安全、セキュリティ上のリスクを軽減するための研究を優先し、効果的な軽減策への投資を優先する
  • 世界の最大の課題、特に気候危機、世界保健、教育等(ただしこれらに限定されない)に対処するため、高度なAIシステムの開発を優先する
  • 国際的な技術規格の開発を推進し、適切な場合にはその採用を推進する
  • 適切なデータインプット対策を実施し、個人データ及び知的財産を保護する

 同指針の策定に先駆け、米政府が7月、責任あるAIの実現のためのコミットメントを主要企業と発表。また英政府は11月、「AI安全サミット」を開催し、ブレッチリー宣言に28ヶ国・地域署名しており、完成した指針と国際規範には、基本的に双方の内容が叩き台となっている。

【参考】【アメリカ】政府とマイクロソフト等7社、責任あるAIで共同コミットメント発表。8項目(2023年7月30日)
【参考】【国際】英政府、ブレッチリー宣言発表。28ヶ国・地域署名。AI安全性での国際協調(2023年11月2日)
 
 その上で、今回採択した「全てのAI関係者向け及び高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際指針」は、「高度なAIシステムを開発する組織の向けの広島プロセス国際指針」の内容を11の指針をそのまま採用し、「全てのAI関係者に対し、適時適切に、適切な範囲で、適用されるべきである」との文言を追加。また、12番目の指針として「高度なAIシステムの信頼でき責任ある利用を促進し、貢献する」を盛り込み、全てのAI関係者は、リスクに対応するため、リテラシーやケーパビリティを高めるべきとした。

 生成AIに関しては、OECD、GPAI、国連教育科学文化機関(UNESCO)が、認証機関VDE及びAI推進期間「AIコモンズ」と協働で、マルチステークホルダー型の指針を策定する作業「Global Challenge to Build Trust in the Age of Generative AI」を進めており、指針を2023年後半に発行する予定。今回の「広島AIプロセス G7デジタル・技術閣僚声明」でも同プロジェクトに触れており、同プロジェクトが実際のルール形成の場となっていく見込み。G7としては、2024年の議長国イタリアが、同プロジェクトとの調整役を担っていくという形と取ることで、日本政府が創設した「広島AIプロセス」を継続するという体裁を保った。

【参考】【アメリカ】政府とマイクロソフト等7社、責任あるAIで共同コミットメント発表。8項目(2023年7月30日)
【参考】【国際】15ヶ国・地域、AIに関するグローバル・パートナーシップGPAI設立。OECD原則を基軸に(2020年6月21日)

 日本政府としては、経済産業省と総務省が合同で事業者向けのAIガイドラインの策定を進めていく。

 デジタル庁が主担当となった「DFFT G7デジタル・技術閣僚声明」では、先のG7閣僚級会合で合意した個人情報及び非個人情報の越境データ流通の促進を実用的かつ実質的に支援するための仕組み「DFFT具体化に向けたパートナーシップのための制度的アレンジメント(IAP)」に関し、マルチステークホルダー型で議論することの重要性を強調。特に優先度の高い分野として4つを挙げた。

  • 国際的なリポジトリの開発など、データの越境移転に関する政策や規制の透明性の向上
  • DFFTの課題とデータ越境移転およびデータ保護要求に関する規制アプローチにおける共通性を特定し、特定分野(例:クロスボーダー決済)における国際的なコンプライアンスアプローチの推進
  • 国境を越えたデータ共有におけるPETsの新たなユースケースの特定とドキュメント化、そのユースケースに基づいた様々なPETs規制サンドボックスの知見の活用の検討 (例:ヘルスデータ、金融データなどが重なる箇所での活用)
  • OECD宣言に則った国数の拡大を視野に入れた OECDガバメントアクセス原則の推進と啓蒙活動

 G7は12月7日には、テレビ会議で首脳会談を実施。12月1日のG7デジタル・技術大臣会合で合意された「広島AIプロセス包括的政策枠組」を歓迎するとともに、今後もG7として指針や行動規範を国際社会に広げていく努力を続けていくことを確認した。

【参照ページ】G7デジタル・技術大臣会合の開催結果
【参照ページ】G7デジタル・技術大臣会合の開催結果
【参照ページ】G7 Hiroshima Process on Generative Artificial Intelligence (AI)
【参照ページ】広島AIプロセスに関するG7首脳声明
【参照ページ】高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際指針
【参照ページ】高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際行動規範
【参照ページ】全てのAI関係者向けの広島プロセス国際指針
【参照ページ】G7デジタル・技術大臣会合を開催しました
【参照ページ】G7首脳テレビ会議(概要)

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 G7は12月1日、G7デジタル・技術相会合をテレビ会議形式で開催。議長国日本政府からは経済産業省、総務省、デジタル庁が出席した。「広島AIプロセス G7デジタル・技術閣僚声明」と「DFFT G7デジタル・技術閣僚声明」を採択したことに加え、「全てのAI関係者向けの広島プロセス国際指針」を策定した。

 総務省が主担当となった「広島AIプロセス G7デジタル・技術閣僚声明」では、

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 G7は12月1日、G7デジタル・技術相会合をテレビ会議形式で開催。議長国日本政府からは経済産業省、総務省、デジタル庁が出席した。「広島AIプロセス G7デジタル・技術閣僚声明」と「DFFT G7デジタル・技術閣僚声明」を採択したことに加え、「全てのAI関係者向けの広島プロセス国際指針」を策定した。

 総務省が主担当となった「広島AIプロセス G7デジタル・技術閣僚声明」では、

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 G7は12月1日、G7デジタル・技術相会合をテレビ会議形式で開催。議長国日本政府からは経済産業省、総務省、デジタル庁が出席した。「広島AIプロセス G7デジタル・技術閣僚声明」と「DFFT G7デジタル・技術閣僚声明」を採択したことに加え、「全てのAI関係者向けの広島プロセス国際指針」を策定した。

 総務省が主担当となった「広島AIプロセス G7デジタル・技術閣僚声明」では、議長国日本が2023年に進めてきた「広島AIプロセス包括的政策枠組み」を一旦完成させ、「生成AIに関するG7の理解に向けた経済協力開発機構(OECD)レポート」「全てのAI関係者向け及び高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際指針」「高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際行動規範」「プロジェクト・ベースの協力」の4つを盛り込んだ。

【参考】【国際】G7、AI開発者向けに10の重点分野提示。OECD等は2023年後半に指針策定へ(2023年9月11日)

 日本政府は、広島AIプロセスに基づくAI規範設定に関し、OECDが9月に発行した生成AIに関するレポートをベースとした。同レポートでは、生成AIの開発と利用の双方での透明性、偽情報やフェイクニュース巧妙化、学習した資料の著作権を含む知的財産権の3つを重要な課題として取り上げている。

 それを踏まえ、G7は10月の広島AIプロセスに関するG7首脳声明の中で「高度なAI関係者向けの広島プロセス国際指針」とそれに基づく「高度なAI関係者向けの広島プロセス国際行動規範」を発表。国際指針では11の指針を、行動規範では11の指針毎のアクションの方向性を固めた。

  • AIライフサイクル全体にわたるリスクを特定、評価、軽減するために、高度なAIシステムの開発全体を通じて、その導入前及び市場投入前も含め、適切な措置を講じる
  • 市場投入を含む導入後、脆弱性、及び必要に応じて悪用されたインシデントやパターンを特定し、緩和する
  • 高度なAIシステムの能力、限界、適切・不適切な使用領域を公表し、十分な透明性の確保を支援することで、アカウンタビリティの向上に貢献する
  • 産業界、政府、市民社会、学界を含む、高度な AI システムを開発する組織間での責任ある情報共有とインシデントの報告に向けて取り組む
  • 特に高度なAIシステム開発者に向けた、個人情報保護方針及び緩和策を含む、リスクベースのアプローチに基づく AI ガバナンス及びリスク管理方針を策定し、実施し、開示する
  • AIのライフサイクル全体にわたり、物理的セキュリティ、サイバーセキュリティ、内部脅威に対する安全対策を含む、強固なセキュリティ管理に投資し、実施する
  • 技術的に可能な場合は、電子透かしやその他の技術等、ユーザーが AI が生成したコンテンツを識別できるようにするための、信頼できるコンテンツ認証及び来歴のメカニズムを開発し、導入する
  • 社会的、安全、セキュリティ上のリスクを軽減するための研究を優先し、効果的な軽減策への投資を優先する
  • 世界の最大の課題、特に気候危機、世界保健、教育等(ただしこれらに限定されない)に対処するため、高度なAIシステムの開発を優先する
  • 国際的な技術規格の開発を推進し、適切な場合にはその採用を推進する
  • 適切なデータインプット対策を実施し、個人データ及び知的財産を保護する

 同指針の策定に先駆け、米政府が7月、責任あるAIの実現のためのコミットメントを主要企業と発表。また英政府は11月、「AI安全サミット」を開催し、ブレッチリー宣言に28ヶ国・地域署名しており、完成した指針と国際規範には、基本的に双方の内容が叩き台となっている。

【参考】【アメリカ】政府とマイクロソフト等7社、責任あるAIで共同コミットメント発表。8項目(2023年7月30日)
【参考】【国際】英政府、ブレッチリー宣言発表。28ヶ国・地域署名。AI安全性での国際協調(2023年11月2日)
 
 その上で、今回採択した「全てのAI関係者向け及び高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際指針」は、「高度なAIシステムを開発する組織の向けの広島プロセス国際指針」の内容を11の指針をそのまま採用し、「全てのAI関係者に対し、適時適切に、適切な範囲で、適用されるべきである」との文言を追加。また、12番目の指針として「高度なAIシステムの信頼でき責任ある利用を促進し、貢献する」を盛り込み、全てのAI関係者は、リスクに対応するため、リテラシーやケーパビリティを高めるべきとした。

 生成AIに関しては、OECD、GPAI、国連教育科学文化機関(UNESCO)が、認証機関VDE及びAI推進期間「AIコモンズ」と協働で、マルチステークホルダー型の指針を策定する作業「Global Challenge to Build Trust in the Age of Generative AI」を進めており、指針を2023年後半に発行する予定。今回の「広島AIプロセス G7デジタル・技術閣僚声明」でも同プロジェクトに触れており、同プロジェクトが実際のルール形成の場となっていく見込み。G7としては、2024年の議長国イタリアが、同プロジェクトとの調整役を担っていくという形と取ることで、日本政府が創設した「広島AIプロセス」を継続するという体裁を保った。

【参考】【アメリカ】政府とマイクロソフト等7社、責任あるAIで共同コミットメント発表。8項目(2023年7月30日)
【参考】【国際】15ヶ国・地域、AIに関するグローバル・パートナーシップGPAI設立。OECD原則を基軸に(2020年6月21日)

 日本政府としては、経済産業省と総務省が合同で事業者向けのAIガイドラインの策定を進めていく。

 デジタル庁が主担当となった「DFFT G7デジタル・技術閣僚声明」では、先のG7閣僚級会合で合意した個人情報及び非個人情報の越境データ流通の促進を実用的かつ実質的に支援するための仕組み「DFFT具体化に向けたパートナーシップのための制度的アレンジメント(IAP)」に関し、マルチステークホルダー型で議論することの重要性を強調。特に優先度の高い分野として4つを挙げた。

  • 国際的なリポジトリの開発など、データの越境移転に関する政策や規制の透明性の向上
  • DFFTの課題とデータ越境移転およびデータ保護要求に関する規制アプローチにおける共通性を特定し、特定分野(例:クロスボーダー決済)における国際的なコンプライアンスアプローチの推進
  • 国境を越えたデータ共有におけるPETsの新たなユースケースの特定とドキュメント化、そのユースケースに基づいた様々なPETs規制サンドボックスの知見の活用の検討 (例:ヘルスデータ、金融データなどが重なる箇所での活用)
  • OECD宣言に則った国数の拡大を視野に入れた OECDガバメントアクセス原則の推進と啓蒙活動

 G7は12月7日には、テレビ会議で首脳会談を実施。12月1日のG7デジタル・技術大臣会合で合意された「広島AIプロセス包括的政策枠組」を歓迎するとともに、今後もG7として指針や行動規範を国際社会に広げていく努力を続けていくことを確認した。

【参照ページ】G7デジタル・技術大臣会合の開催結果
【参照ページ】G7デジタル・技術大臣会合の開催結果
【参照ページ】G7 Hiroshima Process on Generative Artificial Intelligence (AI)
【参照ページ】広島AIプロセスに関するG7首脳声明
【参照ページ】高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際指針
【参照ページ】高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際行動規範
【参照ページ】全てのAI関係者向けの広島プロセス国際指針
【参照ページ】G7デジタル・技術大臣会合を開催しました
【参照ページ】G7首脳テレビ会議(概要)

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