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【アメリカ】ハーツ、EV2万台売却。事故修理が利益圧迫。2025年末EV比率25%は堅持

 レンタカー世界大手米ハーツ・グローバル・ホールディングスは1月11日、同社がグローバルで保有する電気自動車(EV)の3分の1に相当する約2万台を米国で売却すると発表した。売却は2023年12月から開始され、2024年にかけ順次行われる予定。売却対象車種はテスラを含め、複数のメーカーとモデルが対象となる。EVの売却代金の一部を、ガソリン・ディーゼル車の購入に充てる。

 同社は今回、EV売却決定の要因について3つを挙げた。まず、車両資産価値の低下。EVメーカー各社が2023年に車両価格を3分の1ほどに大幅に引き下げたことで、同社の保有EVの減価償却後の残存価額が大幅に低下。そのため毎年の減価償却費を引き上げなければならなくなった。

 2つ目が、事故の増加による修理費用の増大。同社によると、EVの通常メンテナンスは同クラスのガソリン・ディーゼル車と比較して低水準で推移したものの、EVの衝突・損傷修理の増加が引き続き重荷となり、EBITDAにマイナスの影響を及ぼした。EVの衝突・損傷修理は、同クラスのガソリン・ディーゼル車の約2倍になることが多いと言及した。

 特に、修理費用が嵩む影響は、ライドシェア事業の拡大と関係している。同社はライドシェア事業を強化しており、同事業の売上が前年比50%増となった。最近では、ニューヨーク市等がライドシェア用のEV専用事業ライセンス等の発行を発表しており、同社もライドシェア事業へのEV投入を促進していた。しかし、2023年初期にEVライドシェアのドライバーによる損害事故が多発。その結果、同社はライドシェア事業へのEV投入を抑制し、通常のレジャー用レンタカー向けに転換していた。

 3つ目の要因が、2つ目の要因も起因しているEV稼働率の低下。ライドシェア向けEVをレジャー用レンタカー向けに振り向けた結果、特に2023年度第3四半期にレジャー用レンタカーEVの稼働率が低下し、車両当たり売上(PRU)が低下した。同社は、ライドシェアでのEVドライバーの質が向上してきたことを受け、第4四半期から再びレジャー用レンタカーEV数千台をライドシェア用に振り戻した。

 今回、スティーブン・M・シェールCEO兼会長は、可能な限り幅広い選択肢を顧客に提供し、顧客のニーズや好みに最も適した方法でサービスを提供していくと説明。EVに関連する減価償却費、修理、RPUの影響を考慮すると、第3四半期の車両が同規模のガソリン・ディーゼル車のみで構成されていた場合、EBITDAマージンは数ポイント上昇していたと推定されると述べた。また、EVの導入は事前の予想よりも遅れるとした。

 一方、2024年末までに保有車両の25%をEVにする当初目標については今後も継続すると表明した。シェールCEO兼会長は、同社によるEV転換の「先行者利益」は大きいということも強調。早期参入に前向きな企業とのパートナーシップにより、利益が得られているとした。また、企業や政府のEV需要が高まれば、レンタル需要も連動して高まり、EVの収益性の向上も期待できると予想した。

 EVの収益率を高めていくポイントとしては、アフターマーケットの普及や部品供給の普及により修理価格が下がっていくことを挙げた。そのため、同社としても、大幅なディスカウントで部品調達交渉を行い、自分たちで修理を行い、費用を下げる努力を強化すると表明。UberとLyft等のドライバーでライドシェアのEV需要が高まり、レジャー用でも需要が高まれば、さらにEVの収益性は高まるとした。また車両価格が下がったタイミングでの新規車両の購入することもマージンを向上させるとした。車両購入ペースについては、現行の課題の状況を見極めながら、決めていくとした。

 同社は今回、EVは同社の車両全体の約11%で、テスラはその約80%を占めているとことも明らかにした。そのため、車の性能改善や事故リスクの低減、部品調達や人件費の低減に向け、テスラとの直接協議を行っていることも表明した。さらにGM等の他のEVメーカーの車両比率を上げ、購入価格低減を図っていくことも示唆した。

【参照ページ】FORM 8-K
【参照ページ】Q3 Earnings

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 レンタカー世界大手米ハーツ・グローバル・ホールディングスは1月11日、同社がグローバルで保有する電気自動車(EV)の3分の1に相当する約2万台を米国で売却すると発表した。売却は2023年12月から開始され、2024年にかけ順次行われる予定。売却対象車種はテスラを含め、複数のメーカーとモデルが対象となる。EVの売却代金の一部を、ガソリン・ディーゼル車の購入に充てる。

 同社は今回、

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 レンタカー世界大手米ハーツ・グローバル・ホールディングスは1月11日、同社がグローバルで保有する電気自動車(EV)の3分の1に相当する約2万台を米国で売却すると発表した。売却は2023年12月から開始され、2024年にかけ順次行われる予定。売却対象車種はテスラを含め、複数のメーカーとモデルが対象となる。EVの売却代金の一部を、ガソリン・ディーゼル車の購入に充てる。

 同社は今回、

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 レンタカー世界大手米ハーツ・グローバル・ホールディングスは1月11日、同社がグローバルで保有する電気自動車(EV)の3分の1に相当する約2万台を米国で売却すると発表した。売却は2023年12月から開始され、2024年にかけ順次行われる予定。売却対象車種はテスラを含め、複数のメーカーとモデルが対象となる。EVの売却代金の一部を、ガソリン・ディーゼル車の購入に充てる。

 同社は今回、EV売却決定の要因について3つを挙げた。まず、車両資産価値の低下。EVメーカー各社が2023年に車両価格を3分の1ほどに大幅に引き下げたことで、同社の保有EVの減価償却後の残存価額が大幅に低下。そのため毎年の減価償却費を引き上げなければならなくなった。

 2つ目が、事故の増加による修理費用の増大。同社によると、EVの通常メンテナンスは同クラスのガソリン・ディーゼル車と比較して低水準で推移したものの、EVの衝突・損傷修理の増加が引き続き重荷となり、EBITDAにマイナスの影響を及ぼした。EVの衝突・損傷修理は、同クラスのガソリン・ディーゼル車の約2倍になることが多いと言及した。

 特に、修理費用が嵩む影響は、ライドシェア事業の拡大と関係している。同社はライドシェア事業を強化しており、同事業の売上が前年比50%増となった。最近では、ニューヨーク市等がライドシェア用のEV専用事業ライセンス等の発行を発表しており、同社もライドシェア事業へのEV投入を促進していた。しかし、2023年初期にEVライドシェアのドライバーによる損害事故が多発。その結果、同社はライドシェア事業へのEV投入を抑制し、通常のレジャー用レンタカー向けに転換していた。

 3つ目の要因が、2つ目の要因も起因しているEV稼働率の低下。ライドシェア向けEVをレジャー用レンタカー向けに振り向けた結果、特に2023年度第3四半期にレジャー用レンタカーEVの稼働率が低下し、車両当たり売上(PRU)が低下した。同社は、ライドシェアでのEVドライバーの質が向上してきたことを受け、第4四半期から再びレジャー用レンタカーEV数千台をライドシェア用に振り戻した。

 今回、スティーブン・M・シェールCEO兼会長は、可能な限り幅広い選択肢を顧客に提供し、顧客のニーズや好みに最も適した方法でサービスを提供していくと説明。EVに関連する減価償却費、修理、RPUの影響を考慮すると、第3四半期の車両が同規模のガソリン・ディーゼル車のみで構成されていた場合、EBITDAマージンは数ポイント上昇していたと推定されると述べた。また、EVの導入は事前の予想よりも遅れるとした。

 一方、2024年末までに保有車両の25%をEVにする当初目標については今後も継続すると表明した。シェールCEO兼会長は、同社によるEV転換の「先行者利益」は大きいということも強調。早期参入に前向きな企業とのパートナーシップにより、利益が得られているとした。また、企業や政府のEV需要が高まれば、レンタル需要も連動して高まり、EVの収益性の向上も期待できると予想した。

 EVの収益率を高めていくポイントとしては、アフターマーケットの普及や部品供給の普及により修理価格が下がっていくことを挙げた。そのため、同社としても、大幅なディスカウントで部品調達交渉を行い、自分たちで修理を行い、費用を下げる努力を強化すると表明。UberとLyft等のドライバーでライドシェアのEV需要が高まり、レジャー用でも需要が高まれば、さらにEVの収益性は高まるとした。また車両価格が下がったタイミングでの新規車両の購入することもマージンを向上させるとした。車両購入ペースについては、現行の課題の状況を見極めながら、決めていくとした。

 同社は今回、EVは同社の車両全体の約11%で、テスラはその約80%を占めているとことも明らかにした。そのため、車の性能改善や事故リスクの低減、部品調達や人件費の低減に向け、テスラとの直接協議を行っていることも表明した。さらにGM等の他のEVメーカーの車両比率を上げ、購入価格低減を図っていくことも示唆した。

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