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【国際】SBTi、BVCMで企業に推奨アクション提示。バリューチェーン外での自主削減加速なるか

 科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)は2月28日、バリューチェーンを超えた二酸化炭素排出量削減を指す「ビヨンド・バリューチェーン緩和(BVCM)」に関し、2つの報告書を発表した。当初はガイダンス発行を目指していたが、まずは考え方を整理した報告書の発行となった。

【参考】【国際】SBTi、BVCMガイダンス発行へ。バリューチェーン外のCO2削減に関する目標設定(2023年6月26日)

 SBTiの企業向けネットゼロ・スタンダードでは、「科学的根拠に基づく短期目標」「科学的根拠に基づく長期目標」「BVCM」「残留排出物のニュートラル化」の4つの要素を定めている。このうちBVCMに関しては基準が必ずしも明確ではなく、整理が必要となっていた。

 BVCMは、企業のスコープ1、2、3排出量の削減ではなく、企業のバリューチェーン外で発生している排出量の削減・除去が対象となっている。SBTiは、企業自身のスコープ3を含めた科学的根拠に基づくカーボンニュートラルの達成に加えて、世界全体での1.5℃目標達成に向け、積極的にバリューチェーン以外での削減にも貢献しようとしているが、企業にとってはアクションに関しての合理的な説明が難しい分野にもなっている。

 今回発表したのは、BVCMに関する設計と実施に関する報告書「Above and Beyond」と、企業のBVCM導入加速に関する報告書「Raising the Bar」の2つ。

 Above and Beyond報告書では、BVCMでの目標設定及び実施に向けた推奨ステップを提示した。まずBVCMの目的として、BVCMのゴールとして、2020年代中頃までに世界の温室効果ガス排出量をピークアウトさせ、2030年までに半減させることを「ゴール1」、そして2050年ごろまでの世界全体でのカーボンニュートラルを達成するための気候ソリューションや体系的変革を実現するための追加ファイナンスを「ゴール2」とした。

 BVCMを企業が実施するロジックとしては、気候変動の悪化が企業にとって事業を阻害するリスクになることを踏まえ、バリューチェーン以外の削減についても踏み出していくことを掲げた。その上で、企業の移行計画(トランジションプラン)の中にBVCMも盛り込むことを宣言することを最初のステップとした。BVCMの目標は5年もしくはそれ以上の期間での中期目標を推奨した。

 BVCMに投入する予算設計では、科学的根拠に基づくカーボンプライシング単価と、実際の単価の差額を仮想的な原資とみなし、その原資をゴール1もしくはゴール2の分野に活用すべきとした。活用に向けた原則としては、「スケール」「ファイナンス需要」「コベネフィット」「気候正義」の4つの観点を提示し、具体的な要素も示した。SBTiは当初、排出量の多いセクターに対しBVCMを強いるような検討も行っていたが、最終的には気候変動物理的リスクの多い企業が、リスク全体の軽減のためにBVCMすべきというロジックに落ち着いた。

 BVCMの実施では、プロジェクトの質、他の環境・社会への悪影響の防止を提示。BVCMの報告では、できれば第三者保証を取得し、毎年報告すべきとした。

 Raising the Bar報告書では、企業がBVCMを実施しやすくなる環境整備のため、NGO、アカデミア、政府、基準策定期間、アドボカシー組織、国際機関等が検討すべき内容をまとめた。

 今回のSBTiの報告書に基づき、国際的なカーボンオフセット基準管理団体米ゴールド・スタンダードは3月18日、BVCMを実施するためのガイドを発行。各数テップでのToDoリスト、主要な選択肢、期待される成果物等の自主的にまとめた。

【参照ページ】The SBTi releases new reports to help accelerate corporate climate action beyond the value chain
【参照ページ】Gold Standard Unveils Comprehensive Guide for Effective Beyond Value Chain Mitigation

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 科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)は2月28日、バリューチェーンを超えた二酸化炭素排出量削減を指す「ビヨンド・バリューチェーン緩和(BVCM)」に関し、2つの報告書を発表した。当初はガイダンス発行を目指していたが、まずは考え方を整理した報告書の発行となった。

【参考】【国際】SBTi、BVCMガイダンス発行へ。バリューチェーン外のCO2削減に関する目標設定(2023年6月26日)

 SBTiの企業向けネットゼロ・スタンダードでは、

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 科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)は2月28日、バリューチェーンを超えた二酸化炭素排出量削減を指す「ビヨンド・バリューチェーン緩和(BVCM)」に関し、2つの報告書を発表した。当初はガイダンス発行を目指していたが、まずは考え方を整理した報告書の発行となった。

【参考】【国際】SBTi、BVCMガイダンス発行へ。バリューチェーン外のCO2削減に関する目標設定(2023年6月26日)

 SBTiの企業向けネットゼロ・スタンダードでは、

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 科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)は2月28日、バリューチェーンを超えた二酸化炭素排出量削減を指す「ビヨンド・バリューチェーン緩和(BVCM)」に関し、2つの報告書を発表した。当初はガイダンス発行を目指していたが、まずは考え方を整理した報告書の発行となった。

【参考】【国際】SBTi、BVCMガイダンス発行へ。バリューチェーン外のCO2削減に関する目標設定(2023年6月26日)

 SBTiの企業向けネットゼロ・スタンダードでは、「科学的根拠に基づく短期目標」「科学的根拠に基づく長期目標」「BVCM」「残留排出物のニュートラル化」の4つの要素を定めている。このうちBVCMに関しては基準が必ずしも明確ではなく、整理が必要となっていた。

 BVCMは、企業のスコープ1、2、3排出量の削減ではなく、企業のバリューチェーン外で発生している排出量の削減・除去が対象となっている。SBTiは、企業自身のスコープ3を含めた科学的根拠に基づくカーボンニュートラルの達成に加えて、世界全体での1.5℃目標達成に向け、積極的にバリューチェーン以外での削減にも貢献しようとしているが、企業にとってはアクションに関しての合理的な説明が難しい分野にもなっている。

 今回発表したのは、BVCMに関する設計と実施に関する報告書「Above and Beyond」と、企業のBVCM導入加速に関する報告書「Raising the Bar」の2つ。

 Above and Beyond報告書では、BVCMでの目標設定及び実施に向けた推奨ステップを提示した。まずBVCMの目的として、BVCMのゴールとして、2020年代中頃までに世界の温室効果ガス排出量をピークアウトさせ、2030年までに半減させることを「ゴール1」、そして2050年ごろまでの世界全体でのカーボンニュートラルを達成するための気候ソリューションや体系的変革を実現するための追加ファイナンスを「ゴール2」とした。

 BVCMを企業が実施するロジックとしては、気候変動の悪化が企業にとって事業を阻害するリスクになることを踏まえ、バリューチェーン以外の削減についても踏み出していくことを掲げた。その上で、企業の移行計画(トランジションプラン)の中にBVCMも盛り込むことを宣言することを最初のステップとした。BVCMの目標は5年もしくはそれ以上の期間での中期目標を推奨した。

 BVCMに投入する予算設計では、科学的根拠に基づくカーボンプライシング単価と、実際の単価の差額を仮想的な原資とみなし、その原資をゴール1もしくはゴール2の分野に活用すべきとした。活用に向けた原則としては、「スケール」「ファイナンス需要」「コベネフィット」「気候正義」の4つの観点を提示し、具体的な要素も示した。SBTiは当初、排出量の多いセクターに対しBVCMを強いるような検討も行っていたが、最終的には気候変動物理的リスクの多い企業が、リスク全体の軽減のためにBVCMすべきというロジックに落ち着いた。

 BVCMの実施では、プロジェクトの質、他の環境・社会への悪影響の防止を提示。BVCMの報告では、できれば第三者保証を取得し、毎年報告すべきとした。

 Raising the Bar報告書では、企業がBVCMを実施しやすくなる環境整備のため、NGO、アカデミア、政府、基準策定期間、アドボカシー組織、国際機関等が検討すべき内容をまとめた。

 今回のSBTiの報告書に基づき、国際的なカーボンオフセット基準管理団体米ゴールド・スタンダードは3月18日、BVCMを実施するためのガイドを発行。各数テップでのToDoリスト、主要な選択肢、期待される成果物等の自主的にまとめた。

【参照ページ】The SBTi releases new reports to help accelerate corporate climate action beyond the value chain
【参照ページ】Gold Standard Unveils Comprehensive Guide for Effective Beyond Value Chain Mitigation

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