科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)は6月19日、バリューチェーンを超えた二酸化炭素排出量削減を指す「ビヨンド・バリューチェーン緩和(BVCM)」に関するガイダンスを2023年第4四半期に発行すると発表。意見収集のためのパブリックコメント募集を開始した。締切は7月30日。
SBTiは2021年10月、事業会社向けカーボンニュートラル目標認定基準「ネットゼロ・スタンダード」を発行。その中で、二酸化炭素排出量の削減について「バリューチェーン内」と「バリューチェーン外」という概念区別を導入。企業は2050年のカーボンニュートラルに向けて、バリューチェーン内の削減を実現すべきとしつつ、過渡期の段階では、バリューチェーン外の削減も積極的に進め、世界の1.5℃目標の達成を促進すべきとの立場を採っている。
そのため、SBTiは、気候変動緩和の優先順位について、バリューチェーン内の削減「Abatement」、バリューチェーン外の削減「BVCM」、バリューチェーン内の吸収系オフセットの活用「Neutralization」の順としている。また、カーボンニュートラルを実現するためには、Abatementで削減できなかった残りを、Neutralizationでオフセットしなければならない。
【参考】【国際】SBTi、事業会社向けカーボンニュートラル目標認定「ネットゼロ・スタンダード」発表。早速7社承認(2021年10月28日)
今回のパブリックコメント募集は、現行のネットゼロ・スタンダードでは目標設定の対象とはなっていないBVCMの扱いを定めることを目的としている。「バリューチェーン外の削減」の定義について、ネットゼロ・スタンダードで示したバリューチェーン外での削減もしくは削減貢献(Avoided Emissions)及び大気からの除去・貯留を全て含むという定義の是非についても意見を募集。またBVCMに予算を投下する積極性についても尋ねている。
さらにスコープ1、2、3での削減と、BVCMとの双方で、削減分をダブルカウント(二重計上)をどこまで避けるべきかについても意見を募集。二重計上が認められる場合、BVCMでカーボンクレジットとして創出しつつ、スコープ3の削減にも活用できるルールが明確化されるため、重要な論点と言える。
加えて、追加性(アディショナリティ)の導入是非に関する設問も盛り込んだ。目標設定指標として、バリューチェーン内排出量に対する一定量の排出量(ton-for-ton)、バリューチェーン内排出量に対する単価を事前設定した一定金額(ton-for-money)、売上や利益に対する単価を事前設定した一定金額(money-for-money)の3種類の妥当性についても尋ねた。
目標設定の原則案については、「規模」「喫緊性」「トランスフォーメーション(イノベーション)」「資金需要」「共益」「気候正義」の6つを提示し、こちらでも意見を聞いている。
【参照ページ】The SBTi launches six-week public consultation on Beyond Value Chain Mitigation
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