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【レポーティング】法令、基準、ガイドライン、ガイダンスの違い 2017/02/07 体系的に学ぶ

 サステナビリティ関連で頻繁に登場する「基準(Standard)」「ガイドライン(Guideline)」「ガイダンス(Guidance)」などの言葉。実はそれぞれの言葉には、意味の違いがあります。おさらいしていきましょう。

法令(Law)

 違いを知るために、まずは「法令」からおさえていきましょう。日本で法令とは、「法律」と「命令」を併せたものを指します。国会で成立したものが「法律」、「法律」に基づき行政機関が制定するものが「命令」です。「命令」には種類があり、力の強いものの順に、内閣が制定する「政令」、各省が制定する「省令」、地方自治体が制定する「条例」などに分けられます。

 日本では通常、法律は政令と省令とともにワンセットで定められています。法律では大枠を定め、政令で細部を定め、省令でより細部を定めるという構造になっています。実務では、法律は「本法」、政令は「施行令」、省令は「施行規則」という呼ばれています。労働基準法を例に挙げると、労働基準法が本法、そして、内閣が「労働基準法施行令」を閣議で定め、厚生労働大臣が「労働基準法施行規則」を定めています。そのため、労働基準法の法令を知るためには、労働基準法を読むだけでは足りず、労働基準法施行令と労働基準法施行規則を読む必要があります。

 海外各国でもほぼ同様の法体系が整備されていますが、違いもあります。例えば、連邦制を採用している国々では、連邦法と州法があります。連邦法と州法の範囲や権限は各国の憲法で定められていることが多く、一般的には連邦法が州法より強い権限を持ちます。すなわち、連邦法に反する州法は無効となるということです。無効判定は通常は裁判所により判断されます。

 法令と似たものに「条約」があります。条約は、国家間や、国家と国際機関の間で締結されるルールですが、法令とは異なります。まず、条約を締結したことがそのまま国内で強制力を持つかどうかという問題があります。これを「直接適用可能性」と言います。この直接適用可能性問題については、日本でも海外でも、国際法学者や裁判所の中でも見解が分かれることが多く、はっきりしていません。そのため、条約で定められた内容が堅実に国内で運用されるために、国会が条約の内容を国内法として制定することが望まれています。

 EUの法律である「EU法」は、さらに複雑になります。通常、EU(欧州連合)は国際機関として理解されていますが、一つの疑似国家として運用されている側面もあります。そのため、EU法は、条約なのか国内法なのかという理解の難しさがあります。結論として、EU法は条約と国内法の間の存在と言うことができます。EU法には2種類あり、規則(Regulation)、指令(Directive)という名称が付けられています。EU規則は、EUが制定した後、加盟国が国内法を制定しなくとも直接強制力を伴います。つまり国内法として側面を持ちます。一方、EU指令は、EUが制定した後、加盟国が国内法を制定して初めて強制力を持ちます。つまり条約として側面を持ちます。EU法を制定する際に、EU規則とするかEU指令とするかは、立法府である欧州連合(EU)理事会と欧州議会が、立法手続きの中で決定します。

基準(Standard)

 「基準」とは、法令ではないものの、最低限満たすべき義務的ルールのことです。すなわち「基準を満たす」という言葉があるように、基準で定められた事項を遵守しなければ、基準に違反している、または基準を取得できないということになります。

 基準は、政府が定めるもの、国際機関が定めるもの、NGOが定めるものなど、非常に多くの種類があります。例えば、環境省が定める「水質汚濁に係る環境基準」には、遵守すべき様々な事項が定められています。日本では政府が定める基準は、法令に基づく形で定められていることが基本であり、そのため、法令という形式ではないものの、法令と同様の強制力を持つのが通常です。

 国際的に有名な「基準(Standard)」策定機関には、国際標準化機構(ISO)があります。国際標準化機構の英語名は、International Organization for Standardizationで、「Standard」が用いられていますが、日本語名では「標準」という公式訳になっています。また、ISOは業界の様々な基準を定めていますが、ISOが定める個々の基準は、「規格」や「国際規格」と日本では呼ばれています。ISOの基準を取得するには、ISOが定める基準を満たし、さらに第三者による認証を得る必要があります。しかしながら、ISOが定める規格の中には、ISO26000(社会的責任のガイダンス規格)のように、基準ではなく、あとで述べる「ガイダンス」としているものも混在しており、話をややこしくしています。

 同様に、昨年制定されたGRIの「GRIスタンダード」にも、Standardという言葉が用いられています。GRIスタンダードには、必須事項と推奨事項の2つが定められており、GRIスタンダードを参照するためには「必須事項」があることを強調するために、Standardが用いられたと言われています。しかし、GRIスタンダードは現状、一般的なISOとは異なり第三者認証を伴うものではないため、「GRIスタンダードを取得する」という言い方はしません。このあたりも話が複雑になっています。さらに、次に説明する「ガイドライン」という用語が広く使われるようになった結果、基準も含めて広義の「ガイドライン」と呼ばれることも多くあります。

ガイドライン(Guideline)

 「ガイドライン」とは、自主的に遵守することが推奨されるルールです。日本ではガイドラインの日本語直訳「指針」や「行動規範」と呼ばれることもあります。基準との違いは、義務か推奨かという違いにあります。但し、「ガイドライン」という言葉が普及するに従い、用語の混乱も発生しており、ガイドラインと言いつつ、基準としての運用を要求するものもあるため注意が必要です。また、海外でもガイドラインではなく、フレームワークや原則(プリンシプル)等、他の呼び方をする場合もあります。例えば、IIRC(国際統合報告委員会)が定める「国際統合報告フレームワーク」は、フレームワーク(Framework)という名称が使われています。ガイドライン、フレームワーク、プリンシプルの違いについては、ほぼニュアンスの問題となってきますが、より少数の基本的な考え方に絞ったものは「原則」、もう少し言葉数を増やしてあるべき形の全体像を示したものは「フレームワーク」、より細かく内容を定めたものは「ガイドライン」という使い方がなされているように感じます。

 似た言葉に「イニシアチブ(Initiative)」もあります。イニシアチブとは、特定の理念や目的を共有する自主的な共同体や活動のことを指します。各イニシアチブは、その理念や目的を実現に向けて、参画者に対するルールを定めることが一般的であり、そこで定められるルールが「ガイドライン」となります。より踏み込んで必須事項を定める場合は「基準」にもなります。

 また「行動規範(Code of Conduct)」という言葉もあります。行動規範は、もともと倫理、社会的責任等の概念から派生してきたもので、組織が自主的に遵守する規範事項のことを指します。しかし、今では、企業などが社内規程として定めるだけでなく、業界団体等もひとつの組織として「行動規範」を制定することも増えてきました。その点においては、行動規範と原則、行動原則とガイドラインは近いものと言えるでしょう。

ガイダンス(Guidance)

 「ガイダンス」は、日本語では「手引き」とも呼ばれます。ガイダンスは、法令や基準、ガイドラインを遵守する上で、より細かい解釈方法や行動すべき内容をまとめたものです。ですので、ガイダンスは通常、法令のためのガイダンス、ガイドラインのガイダンスのように、他の規定を補足、補完するための文書として策定することが多いです。

 しかし、ガイダンスとガイドラインの違いがよくわからなくなるケースもあります。例えば、前述のISO26000(社会的責任のガイダンス規格)は、ガイダンスという名称が付いていますが、特定のガイドラインについてのガイダンスという位置づけではないため、ISO26000をガイドラインと呼んだとしても特段おかしくないように思います。

著者プロフィール

夫馬 賢治

株式会社ニューラル 代表取締役社長兼サステナビリティ研究所所長

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