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【国際】IRENA、再生可能エネルギー100%実現に向け提言。柔軟なエネルギーシステム構築

 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は3月、世界のエネルギーを100%再生可能エネルギーのみにすることを検討した報告書を発表した。エネルギー業界では、化石燃料や原子力発電を排除しすべて再生可能エネルギーで賄うエネルギーシステムに移行する可能性への議論が高まっているとし、実現方法を提言した。

 同報告書は、IRENAの下に設置された企業イニシアチブCoalition for Actionが作成したもの。同イニシアチブには、再生可能エネルギー関連企業140社以上が加盟している。再生可能エネルギーの定義では、バイオエネルギーや大規模水力発電も含む。

 フィンランドのラッペーンランタ・ラハティ工科大学、豪シドニー工科大学、米スタンフォード大学が各々発表している再生可能エネルギー100%に関する3つのエネルギーシナリオと、国際エネルギー機関(IEA)の2050年ネットゼロシナリオ(NZE2050シナリオ)とIRENAの1.5℃シナリオの2つのネットゼロシナリオを比較し、より野心的な再生可能エネルギー目標達成に向けた課題と機会を分析し、関連する政策提言をまとめたもの。

 IEAのNZE2050シナリオとIRENAの1.5℃シナリオは、2050年時点で化石燃料や原子力発電の割合が最大25%であり、炭素回収・利用・貯留(CCUS)を活用して炭素除去を行いネットゼロを達成するシナリオとなっている。再生可能エネルギー100%シナリオは化石燃料や原子力発電を一切使用せず、予備電力も含めて再生可能エネルギーで賄う想定。

 同報告書では、分析して得られた知見をシナリオ別、エネルギー種別毎にまとめ、5つの政策提言をまとめた。まず、新規の化石燃料インフラと設備への投資、既存施設の整備を段階的に廃止し、再生可能エネルギー100%のエネルギーシステムを目指すというもの。今後の再生可能エネルギーの競争力を考慮すれば、発電コストは低下し導入可能性が高まっており、化石燃料に関する設備は座礁資産になる可能性が高いと指摘。CCUSのような未知の高価な技術と、危険かつ有害な化石燃料や原子力を前提とした目標設定ではなく、安心安全な再生可能エネルギーを最大限活かすべきだとした。

 次に、エネルギー効率向上のための投資の拡大。世界人口が増加しても、一人当たりエネルギー原単位と最終エネルギー消費量を現在より低くするためのエネルギー効率向上への投資拡大は必須だとした。

 3つ目の提言は、電化。いずれのシナリオであっても今後30年間で様々な技術が電化することで、セクターを問わず大幅に電力が増加する見込み。電化に伴う技術への投資を行うとともに、送電網の拡張や電力システムの強化が必要となると報告した。

 4つ目は、持続可能かつ柔軟なエネルギーシステムのためのインフラ設備強化。将来のエネルギー構成は、再生可能エネルギー比率が高まることで出力が変動する太陽光発電や風力発電等に依存する。そのため、バイオマス発電や蓄電技術等で柔軟なエネルギーシステムを構築することが重要だとした。加えて、需要と供給を均衡させるための技術として、高度なデジタル化、スマートグリッド、デマンドレスポンス等の技術開発が必要だとした。

 最後の提言は、国際協力。完全に持続可能な世界のエネルギーシステムの構築にはキャパシティ・ビルディングを含む国際協力が不可欠であり、再生可能エネルギーへの転換に焦点を当てた対話と行動が必要だとした。

【参照ページ】100% renewable energy scenarios: Supporting ambitious policy targets

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 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は3月、世界のエネルギーを100%再生可能エネルギーのみにすることを検討した報告書を発表した。エネルギー業界では、化石燃料や原子力発電を排除しすべて再生可能エネルギーで賄うエネルギーシステムに移行する可能性への議論が高まっているとし、実現方法を提言した。

 同報告書は、

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 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は3月、世界のエネルギーを100%再生可能エネルギーのみにすることを検討した報告書を発表した。エネルギー業界では、化石燃料や原子力発電を排除しすべて再生可能エネルギーで賄うエネルギーシステムに移行する可能性への議論が高まっているとし、実現方法を提言した。

 同報告書は、

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 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は3月、世界のエネルギーを100%再生可能エネルギーのみにすることを検討した報告書を発表した。エネルギー業界では、化石燃料や原子力発電を排除しすべて再生可能エネルギーで賄うエネルギーシステムに移行する可能性への議論が高まっているとし、実現方法を提言した。

 同報告書は、IRENAの下に設置された企業イニシアチブCoalition for Actionが作成したもの。同イニシアチブには、再生可能エネルギー関連企業140社以上が加盟している。再生可能エネルギーの定義では、バイオエネルギーや大規模水力発電も含む。

 フィンランドのラッペーンランタ・ラハティ工科大学、豪シドニー工科大学、米スタンフォード大学が各々発表している再生可能エネルギー100%に関する3つのエネルギーシナリオと、国際エネルギー機関(IEA)の2050年ネットゼロシナリオ(NZE2050シナリオ)とIRENAの1.5℃シナリオの2つのネットゼロシナリオを比較し、より野心的な再生可能エネルギー目標達成に向けた課題と機会を分析し、関連する政策提言をまとめたもの。

 IEAのNZE2050シナリオとIRENAの1.5℃シナリオは、2050年時点で化石燃料や原子力発電の割合が最大25%であり、炭素回収・利用・貯留(CCUS)を活用して炭素除去を行いネットゼロを達成するシナリオとなっている。再生可能エネルギー100%シナリオは化石燃料や原子力発電を一切使用せず、予備電力も含めて再生可能エネルギーで賄う想定。

 同報告書では、分析して得られた知見をシナリオ別、エネルギー種別毎にまとめ、5つの政策提言をまとめた。まず、新規の化石燃料インフラと設備への投資、既存施設の整備を段階的に廃止し、再生可能エネルギー100%のエネルギーシステムを目指すというもの。今後の再生可能エネルギーの競争力を考慮すれば、発電コストは低下し導入可能性が高まっており、化石燃料に関する設備は座礁資産になる可能性が高いと指摘。CCUSのような未知の高価な技術と、危険かつ有害な化石燃料や原子力を前提とした目標設定ではなく、安心安全な再生可能エネルギーを最大限活かすべきだとした。

 次に、エネルギー効率向上のための投資の拡大。世界人口が増加しても、一人当たりエネルギー原単位と最終エネルギー消費量を現在より低くするためのエネルギー効率向上への投資拡大は必須だとした。

 3つ目の提言は、電化。いずれのシナリオであっても今後30年間で様々な技術が電化することで、セクターを問わず大幅に電力が増加する見込み。電化に伴う技術への投資を行うとともに、送電網の拡張や電力システムの強化が必要となると報告した。

 4つ目は、持続可能かつ柔軟なエネルギーシステムのためのインフラ設備強化。将来のエネルギー構成は、再生可能エネルギー比率が高まることで出力が変動する太陽光発電や風力発電等に依存する。そのため、バイオマス発電や蓄電技術等で柔軟なエネルギーシステムを構築することが重要だとした。加えて、需要と供給を均衡させるための技術として、高度なデジタル化、スマートグリッド、デマンドレスポンス等の技術開発が必要だとした。

 最後の提言は、国際協力。完全に持続可能な世界のエネルギーシステムの構築にはキャパシティ・ビルディングを含む国際協力が不可欠であり、再生可能エネルギーへの転換に焦点を当てた対話と行動が必要だとした。

【参照ページ】100% renewable energy scenarios: Supporting ambitious policy targets

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