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【国際】WBCSD、農業セクター1.5度目標達成へ2030年までに年間31兆円の投資必要

 持続可能な発展を目指すグローバル企業団体WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は3月26日、1.5度目標達成に向けた農業セクターに求められる戦略とアクションを分析した2つの報告書を発表した。

 同報告書は、WBCSDとFood & Land Use Coalition(FOLU)、気候変動対策推進の企業ネットワーク米We Mean Business Coalitionにより共同制作されたもの。

 1つ目の報告書では、検討が進んでいる規制やルールが農業セクターと気候、自然に与える影響について概説し、2つ目の報告書では、農業及び土地利用変化に伴う温室効果ガス排出量削減に関する対策を実施する際の財務的なコストやリターンを把握できるようにした。

 1.5度目標を達成するためには農業セクターにおける温室効果ガス排出量を2030年までに30%削減する必要がある。しかし、ほとんどの企業の気候変動に関する戦略は、包括的でもなく野心的でもないと指摘した。

 企業の国連持続可能な開発目標(SDGs)推進国際NGOのWorld Benchmarking Alliance(WBA)の農業・食料サプライチェーン世界大手350社のサプライチェーン農場慣行に特化したランキング「ネイチャー・ベンチマーク(Nature Benchmark)」の結果では、温室効果ガススコープ3排出量のコミットメントを開示しているのは約半分のみだった。

【参考】【国際】WBA、食料・小売大手350社ランキング「ネイチャー・ベンチマーク」発表。日本企業も対象(2023年10月5日)
 
 同報告書では、2025年から2030年までの5年間で年間最大2,050億米ドル(約31兆円)を投資することで、2030年までに年間最大9Gtの温室効果ガスを削減することが可能と報告。これは2030年の農業セクター全体の年間排出量21Gtの約半分に相当する。

 年間2,050億米ドルの投資金額は、同期間に予測される同セクターの年間平均売上13兆米ドルの約2%未満。このうち、約400億米ドルは成長市場への投資であり、年間最大1,900億米ドルのリターンと年間300億米ドル相当のコスト削減等の効果をもたらす可能性があるとした。

 温室効果ガス排出量の削減に伴う負担は、バリューチェーン全体で公平に負担すべきだと主張。一般的にバリューチェーンの上流ほど利益が低くなる傾向にあり、特に農家の利益はバリューチェーンの中で最も低い傾向にある。

 例えば、ブラジルの牛肉の畜産家では温室効果ガススコープ1排出量を30%削減するために、収益全体の17%のコストが必要となる。しかし、一般的な農家の利益率が20%未満であるためこの投資を農家のみで実現することは非現実的だとした。企業、農家、政府を含めたバリューチェーン全体で協力し、透明かつ公正なコストと利益配分を実現する重要性を訴えた。

 また、WBCSDは同日、農業セクターにおけるスコープ3排出量削減に向けたケーススタディに関する報告書を発表した。同報告書では、農業のバリューチェーンをプロバイダー、生産、輸送・物流、加工、小売、消費の6つのフェーズに整理し、各フェーズごとにスコープ3排出量削減に関する課題と機会を整理し、ビジネスケースとしてまとめた。

【参照ページ】USD $205 billion per year needed from agrifood sector to meet climate and nature targets

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 持続可能な発展を目指すグローバル企業団体WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は3月26日、1.5度目標達成に向けた農業セクターに求められる戦略とアクションを分析した2つの報告書を発表した。

 同報告書は、

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 持続可能な発展を目指すグローバル企業団体WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は3月26日、1.5度目標達成に向けた農業セクターに求められる戦略とアクションを分析した2つの報告書を発表した。

 同報告書は、

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 持続可能な発展を目指すグローバル企業団体WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は3月26日、1.5度目標達成に向けた農業セクターに求められる戦略とアクションを分析した2つの報告書を発表した。

 同報告書は、WBCSDとFood & Land Use Coalition(FOLU)、気候変動対策推進の企業ネットワーク米We Mean Business Coalitionにより共同制作されたもの。

 1つ目の報告書では、検討が進んでいる規制やルールが農業セクターと気候、自然に与える影響について概説し、2つ目の報告書では、農業及び土地利用変化に伴う温室効果ガス排出量削減に関する対策を実施する際の財務的なコストやリターンを把握できるようにした。

 1.5度目標を達成するためには農業セクターにおける温室効果ガス排出量を2030年までに30%削減する必要がある。しかし、ほとんどの企業の気候変動に関する戦略は、包括的でもなく野心的でもないと指摘した。

 企業の国連持続可能な開発目標(SDGs)推進国際NGOのWorld Benchmarking Alliance(WBA)の農業・食料サプライチェーン世界大手350社のサプライチェーン農場慣行に特化したランキング「ネイチャー・ベンチマーク(Nature Benchmark)」の結果では、温室効果ガススコープ3排出量のコミットメントを開示しているのは約半分のみだった。

【参考】【国際】WBA、食料・小売大手350社ランキング「ネイチャー・ベンチマーク」発表。日本企業も対象(2023年10月5日)
 
 同報告書では、2025年から2030年までの5年間で年間最大2,050億米ドル(約31兆円)を投資することで、2030年までに年間最大9Gtの温室効果ガスを削減することが可能と報告。これは2030年の農業セクター全体の年間排出量21Gtの約半分に相当する。

 年間2,050億米ドルの投資金額は、同期間に予測される同セクターの年間平均売上13兆米ドルの約2%未満。このうち、約400億米ドルは成長市場への投資であり、年間最大1,900億米ドルのリターンと年間300億米ドル相当のコスト削減等の効果をもたらす可能性があるとした。

 温室効果ガス排出量の削減に伴う負担は、バリューチェーン全体で公平に負担すべきだと主張。一般的にバリューチェーンの上流ほど利益が低くなる傾向にあり、特に農家の利益はバリューチェーンの中で最も低い傾向にある。

 例えば、ブラジルの牛肉の畜産家では温室効果ガススコープ1排出量を30%削減するために、収益全体の17%のコストが必要となる。しかし、一般的な農家の利益率が20%未満であるためこの投資を農家のみで実現することは非現実的だとした。企業、農家、政府を含めたバリューチェーン全体で協力し、透明かつ公正なコストと利益配分を実現する重要性を訴えた。

 また、WBCSDは同日、農業セクターにおけるスコープ3排出量削減に向けたケーススタディに関する報告書を発表した。同報告書では、農業のバリューチェーンをプロバイダー、生産、輸送・物流、加工、小売、消費の6つのフェーズに整理し、各フェーズごとにスコープ3排出量削減に関する課題と機会を整理し、ビジネスケースとしてまとめた。

【参照ページ】USD $205 billion per year needed from agrifood sector to meet climate and nature targets

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