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【国際】G20環境相会合、化石燃料廃止で合意ならず。自然資本では対策方向性確認

 G20環境・気候相は7月28日、インドのチェンナイで会合を開催。議長国インドが「成果文書及び議長総括」が発出した。「気候変動」「土地と生物多様性」、「水資源管理」「ブルーエコノミー」「サーキュラーエコノミー」の各テーマでの議論を総括した。G20のコンセンサスが必要なコミュニケ採択には至らなかった。

 今回の会合では、2023年7月22日にゴアで開催されたG20エネルギー転換相会合を想起しつつ、クリーンエネルギー転換に向けた努力の加速の緊急性が認識された。

【参考】【国際】G20エネルギー転換相会合、化石燃料段階廃止ロードマップ合意ならず。サウジ等抵抗(2023年7月23日)

 また、各国政府からは、気候エネルギー・ネクサス、再生可能エネルギーの規模拡大のさらなる加速、再生可能エネルギー設備容量の3倍化、削減努力のない(Unabated)化石燃料の段階的削減、エネルギー効率の世界的改善率の2倍化、利用可能な低排出・ゼロエミッション技術の規模拡大、炭素除去・削減技術、エネルギーミックスの多様化、ネット・ゼロ・エネルギー・システム、途上国向けの低コストの資金調達へのアクセス等の指摘があったという。

 しかし、議長総括では、1.5℃目標の重要性は再確認したものの、石炭や化石燃料の削減に関する表現はなく、コンセンサスに至らなかったことを伺わせた。EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)についても一部の国が問題を提起した。対策の方向性では、特に新興国側からは、気候変動適応対策の重要性を訴えるとともに、先進国から新興国への資金支援コミットメントを要求する構図となった。特に、気候レジリエントな農業、物理的インフラ、水資源の統合マネジメント、持続可能な冷暖房ソリューション、グリーンビルディング等の関連分野の開発で、適応の主流化が必要と強調した。

 一方、汚染や生物多様性喪失の自然資本分野は、多くの記載が盛り込まれた。泥炭地、マングローブ、サンゴ礁、草原、森林等の生態系の破壊が、気候変動、生物多様性の損失、土地の劣化に寄与していることを認識し、自然を軸としたソリューション(NbS)が重要とした。「2030年までに土地劣化ニュートラルを達成するために、生物多様性の喪失を止め、再生させるための取り組みを拡大し、森林減少、砂漠化、土地劣化、旱魃と闘うとともに、劣化した土地を再生させる」との表現も入った。2040年までに劣化土地の50%削減を達成するというG20目標も再確認した。

 水資源管理では、水・衛生(WASH)が持続可能な開発の基本と認識。また、水、エネルギー、食料、生態系の相互関係の重要性も認識した。

 ブルーエコノミーでは、「サステナブルでレジリエントなブルー・海洋ベースの経済のためのチェンナイ・ハイレベル原則」を採択。海洋生態系の保全・再生、海洋と気候変動の連関、世代間公平・ジェンダー平等、海洋空間設計(MSP)、先住民や伝統的知識の尊重、モニタリング・評価枠組みの開発、国際協力、海洋ファイナンス強化等で合意した。また、海洋プラスチック対策強化で、作業が進められている国際条約の動きを支持した。漁業における適正な労働条件や、違法・無報告・無規制(IUU)漁業の防止・抑止・排除にも言及した。

 サーキュラーエコノミーでは、特に発展途上国では、製鉄セクターが経済の基盤となっていることを確認し、鉄のリサイクルを促進していくことで、二酸化炭素排出量を削減していくべきと認識した。食料廃棄物を有効活用しつつ、バイオ素材が拡大していくことにも期待を寄せた。各国でサーキュラーエコノミーに関する拡大生産者責任(EPR)制度を確立していくことも強く求めた。

 また議長国インド政府は、企業主導の「資源効率・サーキュラーエコノミー産業連合(RECEIC)」を発足。発足式には、EU、フランス、イタリア、デンマーク、カナダ、モーリシャス、アラブ首長国連邦(UAE)の閣僚も出席。タタ・グループ、マヒンドラ・グループ、ダルミア・バーラト・グループ、タタ・パワー、ユニリーバ、サウジ基礎産業公社(SABIC)、シンジェンタ、シーメンス、コカ・コーラ・カンパニー、ネスレ、HP、ファーストソーラー、アミタホールディングス、マルチ・スズキ・インディア等が早期創業メンバーとなった。

【参照ページ】Environment and Climate Ministers’ Meet concludes in Chennai; G20 ministers stand united in their commitment to create a sustainable and resilient future
【参照ページ】Outcome Document and Chair’s Summary
【参照ページ】Union Minister launches Resource Efficiency Circular Economy Industry Coalition in Chennai

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 G20環境・気候相は7月28日、インドのチェンナイで会合を開催。議長国インドが「成果文書及び議長総括」が発出した。「気候変動」「土地と生物多様性」、「水資源管理」「ブルーエコノミー」「サーキュラーエコノミー」の各テーマでの議論を総括した。G20のコンセンサスが必要なコミュニケ採択には至らなかった。

 今回の会合では、

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 G20環境・気候相は7月28日、インドのチェンナイで会合を開催。議長国インドが「成果文書及び議長総括」が発出した。「気候変動」「土地と生物多様性」、「水資源管理」「ブルーエコノミー」「サーキュラーエコノミー」の各テーマでの議論を総括した。G20のコンセンサスが必要なコミュニケ採択には至らなかった。

 今回の会合では、

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 G20環境・気候相は7月28日、インドのチェンナイで会合を開催。議長国インドが「成果文書及び議長総括」が発出した。「気候変動」「土地と生物多様性」、「水資源管理」「ブルーエコノミー」「サーキュラーエコノミー」の各テーマでの議論を総括した。G20のコンセンサスが必要なコミュニケ採択には至らなかった。

 今回の会合では、2023年7月22日にゴアで開催されたG20エネルギー転換相会合を想起しつつ、クリーンエネルギー転換に向けた努力の加速の緊急性が認識された。

【参考】【国際】G20エネルギー転換相会合、化石燃料段階廃止ロードマップ合意ならず。サウジ等抵抗(2023年7月23日)

 また、各国政府からは、気候エネルギー・ネクサス、再生可能エネルギーの規模拡大のさらなる加速、再生可能エネルギー設備容量の3倍化、削減努力のない(Unabated)化石燃料の段階的削減、エネルギー効率の世界的改善率の2倍化、利用可能な低排出・ゼロエミッション技術の規模拡大、炭素除去・削減技術、エネルギーミックスの多様化、ネット・ゼロ・エネルギー・システム、途上国向けの低コストの資金調達へのアクセス等の指摘があったという。

 しかし、議長総括では、1.5℃目標の重要性は再確認したものの、石炭や化石燃料の削減に関する表現はなく、コンセンサスに至らなかったことを伺わせた。EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)についても一部の国が問題を提起した。対策の方向性では、特に新興国側からは、気候変動適応対策の重要性を訴えるとともに、先進国から新興国への資金支援コミットメントを要求する構図となった。特に、気候レジリエントな農業、物理的インフラ、水資源の統合マネジメント、持続可能な冷暖房ソリューション、グリーンビルディング等の関連分野の開発で、適応の主流化が必要と強調した。

 一方、汚染や生物多様性喪失の自然資本分野は、多くの記載が盛り込まれた。泥炭地、マングローブ、サンゴ礁、草原、森林等の生態系の破壊が、気候変動、生物多様性の損失、土地の劣化に寄与していることを認識し、自然を軸としたソリューション(NbS)が重要とした。「2030年までに土地劣化ニュートラルを達成するために、生物多様性の喪失を止め、再生させるための取り組みを拡大し、森林減少、砂漠化、土地劣化、旱魃と闘うとともに、劣化した土地を再生させる」との表現も入った。2040年までに劣化土地の50%削減を達成するというG20目標も再確認した。

 水資源管理では、水・衛生(WASH)が持続可能な開発の基本と認識。また、水、エネルギー、食料、生態系の相互関係の重要性も認識した。

 ブルーエコノミーでは、「サステナブルでレジリエントなブルー・海洋ベースの経済のためのチェンナイ・ハイレベル原則」を採択。海洋生態系の保全・再生、海洋と気候変動の連関、世代間公平・ジェンダー平等、海洋空間設計(MSP)、先住民や伝統的知識の尊重、モニタリング・評価枠組みの開発、国際協力、海洋ファイナンス強化等で合意した。また、海洋プラスチック対策強化で、作業が進められている国際条約の動きを支持した。漁業における適正な労働条件や、違法・無報告・無規制(IUU)漁業の防止・抑止・排除にも言及した。

 サーキュラーエコノミーでは、特に発展途上国では、製鉄セクターが経済の基盤となっていることを確認し、鉄のリサイクルを促進していくことで、二酸化炭素排出量を削減していくべきと認識した。食料廃棄物を有効活用しつつ、バイオ素材が拡大していくことにも期待を寄せた。各国でサーキュラーエコノミーに関する拡大生産者責任(EPR)制度を確立していくことも強く求めた。

 また議長国インド政府は、企業主導の「資源効率・サーキュラーエコノミー産業連合(RECEIC)」を発足。発足式には、EU、フランス、イタリア、デンマーク、カナダ、モーリシャス、アラブ首長国連邦(UAE)の閣僚も出席。タタ・グループ、マヒンドラ・グループ、ダルミア・バーラト・グループ、タタ・パワー、ユニリーバ、サウジ基礎産業公社(SABIC)、シンジェンタ、シーメンス、コカ・コーラ・カンパニー、ネスレ、HP、ファーストソーラー、アミタホールディングス、マルチ・スズキ・インディア等が早期創業メンバーとなった。

【参照ページ】Environment and Climate Ministers’ Meet concludes in Chennai; G20 ministers stand united in their commitment to create a sustainable and resilient future
【参照ページ】Outcome Document and Chair’s Summary
【参照ページ】Union Minister launches Resource Efficiency Circular Economy Industry Coalition in Chennai

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