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【日本】損保大手3社、保険カーボンニュートラルの目標公表せず。競争法上の事案も複数

 国際環境NGOの保険会社への脱炭素推進ネットワーク「Insure Our Future」と、環境NGOの「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワーク、Friends of the Earth(FoE)Japan、350.org Japan、メコン・ウォッチは9月20日、日本の損害保険大手3社が、NZIA脱退後に関連中期目標の公表を行わなかったと批判した。

【参考】【国際】Net-Zero Insurance Alliance、目標設定プロトコル1.0版発行。7月31日までに設定義務(2023年1月25日)

 今回の発表の矛先となっているのは、東京海上ホールディングス、SOMPOホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングスの3社。3社はともに、保険引受での2050年までのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)にコミットするイニシアチブ「Net-Zero Insurance Alliance(NZIA)」から脱退している。

 NZIAからの脱退は、ミュンヘン再保険が3月31日、チューリッヒ保険が4月5日、ハノーバー再保険が4月19日、スイス再保険が5月23日に脱退を発表。5月26日にはアクサとアリアンツも脱退を表明した。運営を担う国連環境計画(UNEP)は5月24日、NZIAからの相次ぐ脱退に関し、米国共和党が、競争法上の違法性があるとの論理を展開している動きが背景にあるとの声明を発表していた。

【参考】【国際】UNEP、NZIAからの相次ぐ脱退で声明発表。背後には米国共和党の動き(2023年5月23日)

 NZIAから脱退した欧州の大手保険会社は、NZIAで掲げてきた枠組みや目標を堅持することを公言しているのに対し、日本の大手3社は、脱退に関する理由の説明は特に行っていない。また、東京海上ホールディングスは5月29日に「パリ協定に基づく脱炭素社会への移行に貢献する方針に変わりはありません」、MS&ADインシュアランスグループホールディングスは「当社グループは2050年ネットゼロの実現に向けて、ステークホルダーの皆さまとともに引き続き、不断の取組みを進めてまいります」と言及していた。

 今回のNGOの声明は、方針を維持すると説明しているに関わらず、NZIA加盟中に求められていた中期目標の公表期限であった7月31日までに、保険でのコミットメントをしていないことを突いてきたもの。NGO側は今回「2050年にネットゼロを目指すとした3社の気候コミットメントに疑義を持たざる得ない事態となっており、早急に適切な中期目標を発表するべきである」と声明を出した。

 一方、NZIAから脱退したアクサは6月29日、2023年版の気候変動と生物多様性レポートを公表し、保険ポートフォリオと投資ポートフォリオ双方における新たなカーボンニュートラル目標を発表している。アリアンツは、7月末までに発表する以降だったが、まだ発表していない。

【参考】【国際】アクサ、保険・投資ポートフォリオで新たなカーボンニュートラル目標発表(2023年7月5日)

 NZIAの活動が事実上中止していることを受け、今回NGOは、保険監督者国際機構(IAIS)での移行計画策定の枠組み作りの重要性を強調。今年の年次総会は、日本が議長国となり11月に総会が開催されることになっており、NGO側は金融庁にも国際的なリーダーシップを求めた。

 損害保険大手3社は昨今、ガバナンス上の問題も多く抱えている。8月1日には、金融庁はSOMPOホールディングス傘下の損害保険ジャパンに対し、ビッグモーターに関する自動車保険金の不正請求への対応に関し、報告徴求命令を発令している。

 さらに6月19日には、東京海上ホールディングス傘下の東京海上日動火災保険、SOMPOホールディングス傘下の損害保険ジャパン、MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の三井住友海上火災保険に対し、東急グループ向けの火災保険(企業財産包括保険)で、カルテルの疑いがあり、報告徴求命令を発出。8月1日には、西武ホールディングスがシンガポール政府系ファンドGICに売却したホテルやレジャー施設を巡る損害保険契約の入札でも、3社に加え、MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下のあいおいニッセイ同和損害保険の4社が事前調整していた疑いも報じられている。

【参照ページ】共同声明「NZIA脱退した大手3損保は中期目標を期限内に公表せず~早急に保険引受ポートフォリオ排出量の中期目標の設定を!~」を発表
【参照ページ】Net-Zero Insurance Alliance (NZIA Zero Insurance Alliance (NZIA Zero Insurance Alliance (NZIA)の脱退について
【参照ページ】Net-Zero Insurance Alliance(NZIA)からの離脱について

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 国際環境NGOの保険会社への脱炭素推進ネットワーク「Insure Our Future」と、環境NGOの「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワーク、Friends of the Earth(FoE)Japan、350.org Japan、メコン・ウォッチは9月20日、日本の損害保険大手3社が、NZIA脱退後に関連中期目標の公表を行わなかったと批判した。

【参考】【国際】Net-Zero Insurance Alliance、目標設定プロトコル1.0版発行。7月31日までに設定義務(2023年1月25日)

 今回の発表の矛先となっているのは、東京海上ホールディングス、SOMPOホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングスの3社。3社はともに、保険引受での2050年までのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)にコミットするイニシアチブ「Net-Zero Insurance Alliance(NZIA)」から脱退している。

 NZIAからの脱退は、

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 国際環境NGOの保険会社への脱炭素推進ネットワーク「Insure Our Future」と、環境NGOの「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワーク、Friends of the Earth(FoE)Japan、350.org Japan、メコン・ウォッチは9月20日、日本の損害保険大手3社が、NZIA脱退後に関連中期目標の公表を行わなかったと批判した。

【参考】【国際】Net-Zero Insurance Alliance、目標設定プロトコル1.0版発行。7月31日までに設定義務(2023年1月25日)

 今回の発表の矛先となっているのは、東京海上ホールディングス、SOMPOホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングスの3社。3社はともに、保険引受での2050年までのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)にコミットするイニシアチブ「Net-Zero Insurance Alliance(NZIA)」から脱退している。

 NZIAからの脱退は、

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 国際環境NGOの保険会社への脱炭素推進ネットワーク「Insure Our Future」と、環境NGOの「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワーク、Friends of the Earth(FoE)Japan、350.org Japan、メコン・ウォッチは9月20日、日本の損害保険大手3社が、NZIA脱退後に関連中期目標の公表を行わなかったと批判した。

【参考】【国際】Net-Zero Insurance Alliance、目標設定プロトコル1.0版発行。7月31日までに設定義務(2023年1月25日)

 今回の発表の矛先となっているのは、東京海上ホールディングス、SOMPOホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングスの3社。3社はともに、保険引受での2050年までのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)にコミットするイニシアチブ「Net-Zero Insurance Alliance(NZIA)」から脱退している。

 NZIAからの脱退は、ミュンヘン再保険が3月31日、チューリッヒ保険が4月5日、ハノーバー再保険が4月19日、スイス再保険が5月23日に脱退を発表。5月26日にはアクサとアリアンツも脱退を表明した。運営を担う国連環境計画(UNEP)は5月24日、NZIAからの相次ぐ脱退に関し、米国共和党が、競争法上の違法性があるとの論理を展開している動きが背景にあるとの声明を発表していた。

【参考】【国際】UNEP、NZIAからの相次ぐ脱退で声明発表。背後には米国共和党の動き(2023年5月23日)

 NZIAから脱退した欧州の大手保険会社は、NZIAで掲げてきた枠組みや目標を堅持することを公言しているのに対し、日本の大手3社は、脱退に関する理由の説明は特に行っていない。また、東京海上ホールディングスは5月29日に「パリ協定に基づく脱炭素社会への移行に貢献する方針に変わりはありません」、MS&ADインシュアランスグループホールディングスは「当社グループは2050年ネットゼロの実現に向けて、ステークホルダーの皆さまとともに引き続き、不断の取組みを進めてまいります」と言及していた。

 今回のNGOの声明は、方針を維持すると説明しているに関わらず、NZIA加盟中に求められていた中期目標の公表期限であった7月31日までに、保険でのコミットメントをしていないことを突いてきたもの。NGO側は今回「2050年にネットゼロを目指すとした3社の気候コミットメントに疑義を持たざる得ない事態となっており、早急に適切な中期目標を発表するべきである」と声明を出した。

 一方、NZIAから脱退したアクサは6月29日、2023年版の気候変動と生物多様性レポートを公表し、保険ポートフォリオと投資ポートフォリオ双方における新たなカーボンニュートラル目標を発表している。アリアンツは、7月末までに発表する以降だったが、まだ発表していない。

【参考】【国際】アクサ、保険・投資ポートフォリオで新たなカーボンニュートラル目標発表(2023年7月5日)

 NZIAの活動が事実上中止していることを受け、今回NGOは、保険監督者国際機構(IAIS)での移行計画策定の枠組み作りの重要性を強調。今年の年次総会は、日本が議長国となり11月に総会が開催されることになっており、NGO側は金融庁にも国際的なリーダーシップを求めた。

 損害保険大手3社は昨今、ガバナンス上の問題も多く抱えている。8月1日には、金融庁はSOMPOホールディングス傘下の損害保険ジャパンに対し、ビッグモーターに関する自動車保険金の不正請求への対応に関し、報告徴求命令を発令している。

 さらに6月19日には、東京海上ホールディングス傘下の東京海上日動火災保険、SOMPOホールディングス傘下の損害保険ジャパン、MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の三井住友海上火災保険に対し、東急グループ向けの火災保険(企業財産包括保険)で、カルテルの疑いがあり、報告徴求命令を発出。8月1日には、西武ホールディングスがシンガポール政府系ファンドGICに売却したホテルやレジャー施設を巡る損害保険契約の入札でも、3社に加え、MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下のあいおいニッセイ同和損害保険の4社が事前調整していた疑いも報じられている。

【参照ページ】共同声明「NZIA脱退した大手3損保は中期目標を期限内に公表せず~早急に保険引受ポートフォリオ排出量の中期目標の設定を!~」を発表
【参照ページ】Net-Zero Insurance Alliance (NZIA Zero Insurance Alliance (NZIA Zero Insurance Alliance (NZIA)の脱退について
【参照ページ】Net-Zero Insurance Alliance(NZIA)からの離脱について

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