Sustainable Japan | 世界のサステナビリティ・ESG投資・SDGs

【国際】国連機関、生物多様性の資金ギャップの優先地域や利用効率で分析進む。経済性と両立

 国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)は8月17日、各国の環境保護への政府支出と生物多様性の豊かさの関係性を分析した結果を発表。日本とオーストラリアは優良国と発表した。

 今回の分析は、106カ国を対象に、国際通貨機関(IMF)のデータセットから環境保護に対する政府支出を、米保険情報サイトThe Swiftestの「Global Biodiversity Index」から現時点の生物多様性の豊かさに関する度合いを比較。双方2021年のデータを用いた。

 結果、Global Biodiversity Indexが最も高い15ヶ国のうち、環境保護への政府支出の対GDP比率が1%を超えたのはオーストラリアのみ。0.5%を超えていたのもコロンビアと中国だけだった。一方、環境支出の対GDP比率が最も高い15カ国のうち、Global Biodiversity Indexの高い国は、オーストラリアの337.18と日本の153.58の2ヶ国だけだった。但し、環境支出の多くは、生物多様性保全・再生への直接的な支出ではなく、廃棄物、廃水、公害対策等を目的としたものが多い点には留意が必要。

 世界全体では、106カ国のうち58%が、環境保護にGDPの0.5%未満しか費やしていない。地域別では、アジア、アフリカ、北米、南米が、世界の生物多様性の大部分を保有しながら、環境保護にGDPの0.5%未満しか費やしていない国々が多い。

 別途、ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンス(BNEF)は4月、生物多様性ファイナンスの現状と課題を示したレポートを発行しており、その中で、特に生物多様性が現状比較的豊かだが、資金動員が不足している中・低所得国として、ブラジルの大西洋岸森林、ペルー及びコロンビアのアンデン山脈、メキシコの山地林、中国の南西部山地、インドネシアのスンダランド陸域部、スール・スラウェシ海洋生物圏(フィリピン、マレーシア、インドネシアに跨る)、インドの西ガーツ山脈、コンゴ民主共和国のコンゴ盆地、タンザニアのセレンゲティ地域の9つを挙げており、UNEP FIは今回の調査と結果が一致していると伝えた。

 UNEP FIは今回、現状分析データが政府データしかなく、民間部門からのデータが不足しており、今後、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のパイロット・プロジェクトを実施している金融機関と連携し、民間部門のデータ把握を向上する考えを披露。また、ブレンデッド・ファイナンスを通じ、民間資本を動員していくことも提唱した。

 また、各国で自然資本活用の効率を高めるための方策も検討されている。世界銀行、国際応用システム分析研究所(IIASA)、Natural Capital Projectは6月27日、各国が自然資本をより効率的かつ持続的に利用する方法を評価した報告書を発表している。

 同報告書は、ほぼ全ての国で自然資本の利用効率に大きな課題があり、経済面と環境面のどちらか一方の成果を犠牲にすることなく成長でき、食料と水の安全保障、健康等の問題にも対応できることを示した。

 具体的には、農業、畜産、林業からの経済的リターン、二酸化炭素排出量削減、生物多様性の3つの指標それぞれについて、他の2つの指標を一定に保ちつつ、1つの指標をどれだけ改善できるかを示す効率性をスコア化。具体的には、低所得国の経済効率性47.5%の場合、二酸化炭素排出量、生物多様性を現在の状態から悪化させることなく、経済的なリターンを約2倍にすることが可能とした。


(出所)世界銀行

 さらに、国ごとの特性や状況を考慮した政策が実施できるよう5つのタイプに分類。アゼルバイジャン、ラオス、リベリア、中国、エジプトを例に、具体的なデータの活用方法と政策を提案している。


(出所)世界銀行

 世界銀行等は、土地、水、その他の天然資源を適切に管理することで、農業、畜産、林業の総収入を世界全体で約3,290億米ドル(約48兆円)増加させることができ、生物多様性を損ねることなく2050年までの世界に必要な食料生産を実施できると報告。森林伐採の回避により、世界全体の二酸化炭素排出量の1.7年分に相当する856億tの二酸化炭素を貯蔵することができ、大気汚染防止のための資金を効率的に運用することで年間約36.6万人以上の死者を減らすことが可能だとした。

 今後の課題として、経済面では民間資本を含めた資金調達、政治・社会面では既得権益への考慮を含めたコミュケーションと補償を挙げた。また、今回実施できていない詳細な現地データを利用した分析を行うことでの精度向上も課題とした。

【参照ページ】Livable Planet Possible with More Efficient Use of Natural Resources, Report Says
【参照ページ】$1 Trillion to Protect Biodiversity is Cheaper Than the Cost of Inaction

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 国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)は8月17日、各国の環境保護への政府支出と生物多様性の豊かさの関係性を分析した結果を発表。日本とオーストラリアは優良国と発表した。

 今回の分析は、

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 国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)は8月17日、各国の環境保護への政府支出と生物多様性の豊かさの関係性を分析した結果を発表。日本とオーストラリアは優良国と発表した。

 今回の分析は、

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 国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)は8月17日、各国の環境保護への政府支出と生物多様性の豊かさの関係性を分析した結果を発表。日本とオーストラリアは優良国と発表した。

 今回の分析は、106カ国を対象に、国際通貨機関(IMF)のデータセットから環境保護に対する政府支出を、米保険情報サイトThe Swiftestの「Global Biodiversity Index」から現時点の生物多様性の豊かさに関する度合いを比較。双方2021年のデータを用いた。

 結果、Global Biodiversity Indexが最も高い15ヶ国のうち、環境保護への政府支出の対GDP比率が1%を超えたのはオーストラリアのみ。0.5%を超えていたのもコロンビアと中国だけだった。一方、環境支出の対GDP比率が最も高い15カ国のうち、Global Biodiversity Indexの高い国は、オーストラリアの337.18と日本の153.58の2ヶ国だけだった。但し、環境支出の多くは、生物多様性保全・再生への直接的な支出ではなく、廃棄物、廃水、公害対策等を目的としたものが多い点には留意が必要。

 世界全体では、106カ国のうち58%が、環境保護にGDPの0.5%未満しか費やしていない。地域別では、アジア、アフリカ、北米、南米が、世界の生物多様性の大部分を保有しながら、環境保護にGDPの0.5%未満しか費やしていない国々が多い。

 別途、ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンス(BNEF)は4月、生物多様性ファイナンスの現状と課題を示したレポートを発行しており、その中で、特に生物多様性が現状比較的豊かだが、資金動員が不足している中・低所得国として、ブラジルの大西洋岸森林、ペルー及びコロンビアのアンデン山脈、メキシコの山地林、中国の南西部山地、インドネシアのスンダランド陸域部、スール・スラウェシ海洋生物圏(フィリピン、マレーシア、インドネシアに跨る)、インドの西ガーツ山脈、コンゴ民主共和国のコンゴ盆地、タンザニアのセレンゲティ地域の9つを挙げており、UNEP FIは今回の調査と結果が一致していると伝えた。

 UNEP FIは今回、現状分析データが政府データしかなく、民間部門からのデータが不足しており、今後、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のパイロット・プロジェクトを実施している金融機関と連携し、民間部門のデータ把握を向上する考えを披露。また、ブレンデッド・ファイナンスを通じ、民間資本を動員していくことも提唱した。

 また、各国で自然資本活用の効率を高めるための方策も検討されている。世界銀行、国際応用システム分析研究所(IIASA)、Natural Capital Projectは6月27日、各国が自然資本をより効率的かつ持続的に利用する方法を評価した報告書を発表している。

 同報告書は、ほぼ全ての国で自然資本の利用効率に大きな課題があり、経済面と環境面のどちらか一方の成果を犠牲にすることなく成長でき、食料と水の安全保障、健康等の問題にも対応できることを示した。

 具体的には、農業、畜産、林業からの経済的リターン、二酸化炭素排出量削減、生物多様性の3つの指標それぞれについて、他の2つの指標を一定に保ちつつ、1つの指標をどれだけ改善できるかを示す効率性をスコア化。具体的には、低所得国の経済効率性47.5%の場合、二酸化炭素排出量、生物多様性を現在の状態から悪化させることなく、経済的なリターンを約2倍にすることが可能とした。


(出所)世界銀行

 さらに、国ごとの特性や状況を考慮した政策が実施できるよう5つのタイプに分類。アゼルバイジャン、ラオス、リベリア、中国、エジプトを例に、具体的なデータの活用方法と政策を提案している。


(出所)世界銀行

 世界銀行等は、土地、水、その他の天然資源を適切に管理することで、農業、畜産、林業の総収入を世界全体で約3,290億米ドル(約48兆円)増加させることができ、生物多様性を損ねることなく2050年までの世界に必要な食料生産を実施できると報告。森林伐採の回避により、世界全体の二酸化炭素排出量の1.7年分に相当する856億tの二酸化炭素を貯蔵することができ、大気汚染防止のための資金を効率的に運用することで年間約36.6万人以上の死者を減らすことが可能だとした。

 今後の課題として、経済面では民間資本を含めた資金調達、政治・社会面では既得権益への考慮を含めたコミュケーションと補償を挙げた。また、今回実施できていない詳細な現地データを利用した分析を行うことでの精度向上も課題とした。

【参照ページ】Livable Planet Possible with More Efficient Use of Natural Resources, Report Says
【参照ページ】$1 Trillion to Protect Biodiversity is Cheaper Than the Cost of Inaction

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