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【国際】ICCM5、SAICMに替わる「化学物質に関するグローバル枠組み(GFC)」採択。歴史的合意

 国連環境計画(UENP)は9月25日から29日、ドイツのボンで第5回国際化学物質管理会議(ICCM5)を開催。約110カ国の国と地域が参加した。最終日にボン宣言を採択し、新たな国際化学物質管理に関する枠組みが確定。歴史的な合意が成立した。

 化学物質管理の分野では、2002年に持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)で「2020年までに化学物質が人の健康・環境に与える著しい悪影響を最小化するような方法で生産・使用されるようにする」との目標(WSSD2020年目標)が採択。そのフォローアップのために、2006年2月にICCM第1回会合(ICCM1)が開催され、「国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)」が採択された。

 ICCM5は、SAICMの後継となる2020年以降の枠組みを定めるため、本来は数年前に開催される予定だったが、新型コロナウイルス・パンデミックの影響で3年間も会議日程が遅延していた。

 今回策定された「化学物質に関するグローバル枠組み(GFC)」は、12の内容と、3つの付属文書、さらに12の付随決議で構成されている。策定過程では、政府だけでなく、国際機関、NGO、企業、若者、アカデミアが交渉主体として参加。さらに、環境、経済、社会、保健、農業、労働等の各有害化学物質関連の分野を横断し、ライフサイクル全体での化学物質管理を規制していく枠組みが話し合われた。

 その結果、キャパシティビルディング、法制度整備、ナレッジ・情報・データ、懸念課題、より安全な代替、意思決定プロセスへの統合の5つの戦略的目的と、それらを実現するための28の目標を設定することに成功した。目標の中には、化学物質及び廃棄物の違法貿易の抑制が明確に盛り込まれた。また、農業での非常に有害な農薬を2035年までに段階的に廃止することも入った。2030年までに化学物質汚染の削減を実現するための政策や規制を導入することや、安全な代替措置を講ずること、化学物質とそれに関連するリスクに関する情報の透明性とアクセスを強化することも盛り込まれた。

 加えて、ICCM5では、高懸念農薬(HHP)に関するグローバル・アライアンスを発足させた他、繊維や建設セクター等、化学物質の主要なユーザーが参加するセクターに焦点を当てたイニシアチブを発足するための作業を開始することでも合意した。有価害化学物質規制の範囲に「廃棄物」まで含むことが明確になった点も大きい。

 ICCM5は、同時にボン宣言も採択した。こちらは、有害化学物質への暴露を避けるため、最も有害な化学物質を段階的に廃止していくことで合意した。土壌の微生物を保全する観点から、生態系劣化、生物多様性喪失、土壌品質の悪化を避けるも掲げられた。

 GFCは、法的拘束力のある国際条約ではなく、今後の規制の在り方、実現のための課題解決に向けたソリューションの在り方を包括的に整理したもの。そのため、文書表現には曖昧なものも多い。残課題については、今後の議論で詳細化していくことが求められる。

【参照ページ】Historic Global Framework on Chemicals Adopted Following Years of Talks

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 国連環境計画(UENP)は9月25日から29日、ドイツのボンで第5回国際化学物質管理会議(ICCM5)を開催。約110カ国の国と地域が参加した。最終日にボン宣言を採択し、新たな国際化学物質管理に関する枠組みが確定。歴史的な合意が成立した。

 化学物質管理の分野では、

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 国連環境計画(UENP)は9月25日から29日、ドイツのボンで第5回国際化学物質管理会議(ICCM5)を開催。約110カ国の国と地域が参加した。最終日にボン宣言を採択し、新たな国際化学物質管理に関する枠組みが確定。歴史的な合意が成立した。

 化学物質管理の分野では、

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 国連環境計画(UENP)は9月25日から29日、ドイツのボンで第5回国際化学物質管理会議(ICCM5)を開催。約110カ国の国と地域が参加した。最終日にボン宣言を採択し、新たな国際化学物質管理に関する枠組みが確定。歴史的な合意が成立した。

 化学物質管理の分野では、2002年に持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)で「2020年までに化学物質が人の健康・環境に与える著しい悪影響を最小化するような方法で生産・使用されるようにする」との目標(WSSD2020年目標)が採択。そのフォローアップのために、2006年2月にICCM第1回会合(ICCM1)が開催され、「国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)」が採択された。

 ICCM5は、SAICMの後継となる2020年以降の枠組みを定めるため、本来は数年前に開催される予定だったが、新型コロナウイルス・パンデミックの影響で3年間も会議日程が遅延していた。

 今回策定された「化学物質に関するグローバル枠組み(GFC)」は、12の内容と、3つの付属文書、さらに12の付随決議で構成されている。策定過程では、政府だけでなく、国際機関、NGO、企業、若者、アカデミアが交渉主体として参加。さらに、環境、経済、社会、保健、農業、労働等の各有害化学物質関連の分野を横断し、ライフサイクル全体での化学物質管理を規制していく枠組みが話し合われた。

 その結果、キャパシティビルディング、法制度整備、ナレッジ・情報・データ、懸念課題、より安全な代替、意思決定プロセスへの統合の5つの戦略的目的と、それらを実現するための28の目標を設定することに成功した。目標の中には、化学物質及び廃棄物の違法貿易の抑制が明確に盛り込まれた。また、農業での非常に有害な農薬を2035年までに段階的に廃止することも入った。2030年までに化学物質汚染の削減を実現するための政策や規制を導入することや、安全な代替措置を講ずること、化学物質とそれに関連するリスクに関する情報の透明性とアクセスを強化することも盛り込まれた。

 加えて、ICCM5では、高懸念農薬(HHP)に関するグローバル・アライアンスを発足させた他、繊維や建設セクター等、化学物質の主要なユーザーが参加するセクターに焦点を当てたイニシアチブを発足するための作業を開始することでも合意した。有価害化学物質規制の範囲に「廃棄物」まで含むことが明確になった点も大きい。

 ICCM5は、同時にボン宣言も採択した。こちらは、有害化学物質への暴露を避けるため、最も有害な化学物質を段階的に廃止していくことで合意した。土壌の微生物を保全する観点から、生態系劣化、生物多様性喪失、土壌品質の悪化を避けるも掲げられた。

 GFCは、法的拘束力のある国際条約ではなく、今後の規制の在り方、実現のための課題解決に向けたソリューションの在り方を包括的に整理したもの。そのため、文書表現には曖昧なものも多い。残課題については、今後の議論で詳細化していくことが求められる。

【参照ページ】Historic Global Framework on Chemicals Adopted Following Years of Talks

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