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【EU】改正再エネ指令とReFuelEU Aviation規則が成立。再エネ2030年に42.5%以上に

 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は10月9日、改正再生可能エネルギー指令案とReFuelEU Aviation規則案を可決。両EU法が成立した。これにより、EUの2030年気候変動目標の達成に向けた「Fit for 55」の法制化パッケージが全て成立した。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、再エネ指令改正で政治的合意。イエロー水素は2級品扱い(2023年3月31日)
【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、航空でのSAF及び混合燃料含有義務化で政治的合意。2025年2%(2023年4月26日)

改正再生可能エネルギー指令

 改正再生可能エネルギー指令では、EU全体のエネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合目標を現行の32%から、42.5%以上に引き上げ、さらに45%を目指すことが決まった。各加盟国は、同目標に貢献することが義務付けられる。交通・輸送、工業、不動産、地域冷暖房に関する部門別目標を設定された。同改正指令は、発効から18ヵ月後に法的拘束力が生じる。

 交通・輸送では、2030年までに原単位二酸化炭素排出量を14.5%削減するか、2030年までに運輸部門のエネルギー最終消費量の占める再生可能エネルギーの割合を29%以上にすることが義務化。燃料では、主に再生可能水素と水素ベースの合成燃料(eFuel)による非生物由来の再生可能燃料(RFNBO)の割合を1%以上、さらに先進バイオ燃料(一般に非食用由来原料)と合わせて5.5%以上にすることも義務化した。

 工業分野でも、再生可能エネルギーの利用を毎年1.6%増加することが決定。水素ではRFNBOでの生産割合を2030年までに42%、2035年までに60%にすることも義務化。但し、RFNBO割合目標については、EU全体の目標に対する国別貢献度割合を満たしている場合、もしくは加盟国で消費される化石燃料由来の水素割合が2030年に23%以下、2035年に20%以下を満たしている場合には、目標を2割軽減することができる。

 不動産及び地域冷暖房では、2030年までの再生可能エネルギー比率を49%以上にすることを義務化した。地域冷暖房の再生可能エネルギー目標は段階的に引き上げられ、2026年までは国レベルで年率0.8%、2026年から2030年までは年率1.1%に設定された。全加盟国に適用される年平均の最低引上げ率は、各加盟国毎に算出される追加的な引上げ率によって補完される。

 関連するバイオエネルギーに対しては、エネルギー用バイオマスのサステナビリティ基準が強化された。加盟国は、各国の特質を十分に考慮した上で、バイオマスの使用用途に優先順位をつけた「カスケード原則」が明確に適用される。

 再生可能エネルギープロジェクトの許認可手続きの迅速化も決定。加盟国は、再生可能エネルギー促進地域を設計し、許認可制度を簡素化することが義務化される。さらに、再生可能エネルギー導入を「優先的な公共の利益」とみなし、新設備に対する法的な異議申立ての根拠が制限された。

 改正再生可能エネルギー指令案の採決では、ポーランドとハンガリーが反対。ブルガリアとチェコが棄権した。それ以外は賛成だった。フランスは、途中まで強硬に反発していたが、最後は賛成に回った。これには、6月の常駐代表委員会(COREPER)での協議の中で、フランスが拘っていた2つの異議で最終妥結していたことが関係している。

 まず、同改正指令における原子力発電に位置づけについては、「再生可能エネルギー以外の非化石燃料資源に依存することを決める加盟国にとって、2050年までの気候ニュートラル目標に当該資源が貢献することを欧州委員会は認識する」等の文言が法分の最後に挿入され、原子力発電が再生可能エネルギーに含まれると加盟国が解釈できる道を残した。

 次に、肥料用のアンモニア生産設備の改修に関しても、欧州委員会は、すでに減価償却が終わっている既存の設備に打ちて、改修に関する投資を決定している場合には、同改正指令の目標設定の対象から除外するという注意書きが挿入された。

ReFuelEU Aviation規則

 ReFuelEU Aviation規則では、航空燃料供給会社は、EU域内の空港で航空会社に提供する全ての燃料で、持続可能な航空燃料(SAF)の含有率を2025年からに2%以上、2030年に6%以上、2050年に70%以上にすることを義務化。また、合成燃料(eFuel)の含有率も2030年から1.2%以上、2050年に35%以上にすることも義務化した。対象となるSAF及び合成燃料の範囲には、認証済みのバイオ燃料、非生物起源の再生可能燃料(RFNBO)、再生可能エネルギー指令(RED)のサステナビリティ及び排出削減基準に適合した再生炭素航空燃料が含まれる。

 また、EU域内のフライトで年間で使用される燃料のうち90%以上が、同規則に基づく形でEU域内で給油されることも義務化。これにより、EU域外で給油した上でEU域内で運航する「タンカーリング」慣行を防ぐ。

 航空燃料供給会社と航空会社には、データ報告を義務化。SAFを使用する航空会社に対しては、環境パフォーマンスに関する統一ラベル制度も創設する。違反時の罰金制度も設けた。

 同規則は、EU官報掲載野20日後に発効。2024年1月1日から適用が開始される。但し、一部のルールは2025年1月1日から適用となる。

【参照ページ】Renewable energy: Council adopts new rules
【参照ページ】RefuelEU aviation initiative: Council adopts new law to decarbonise the aviation sector
【参照ページ】Commission welcomes completion of key ‘Fit for 55′ legislation, putting EU on track to exceed 2030 targets

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は10月9日、改正再生可能エネルギー指令案とReFuelEU Aviation規則案を可決。両EU法が成立した。これにより、EUの2030年気候変動目標の達成に向けた「Fit for 55」の法制化パッケージが全て成立した。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、再エネ指令改正で政治的合意。イエロー水素は2級品扱い(2023年3月31日)
【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、航空でのSAF及び混合燃料含有義務化で政治的合意。2025年2%(2023年4月26日)

改正再生可能エネルギー指令

 改正再生可能エネルギー指令では、

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は10月9日、改正再生可能エネルギー指令案とReFuelEU Aviation規則案を可決。両EU法が成立した。これにより、EUの2030年気候変動目標の達成に向けた「Fit for 55」の法制化パッケージが全て成立した。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、再エネ指令改正で政治的合意。イエロー水素は2級品扱い(2023年3月31日)
【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、航空でのSAF及び混合燃料含有義務化で政治的合意。2025年2%(2023年4月26日)

改正再生可能エネルギー指令

 改正再生可能エネルギー指令では、

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は10月9日、改正再生可能エネルギー指令案とReFuelEU Aviation規則案を可決。両EU法が成立した。これにより、EUの2030年気候変動目標の達成に向けた「Fit for 55」の法制化パッケージが全て成立した。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、再エネ指令改正で政治的合意。イエロー水素は2級品扱い(2023年3月31日)
【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、航空でのSAF及び混合燃料含有義務化で政治的合意。2025年2%(2023年4月26日)

改正再生可能エネルギー指令

 改正再生可能エネルギー指令では、EU全体のエネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合目標を現行の32%から、42.5%以上に引き上げ、さらに45%を目指すことが決まった。各加盟国は、同目標に貢献することが義務付けられる。交通・輸送、工業、不動産、地域冷暖房に関する部門別目標を設定された。同改正指令は、発効から18ヵ月後に法的拘束力が生じる。

 交通・輸送では、2030年までに原単位二酸化炭素排出量を14.5%削減するか、2030年までに運輸部門のエネルギー最終消費量の占める再生可能エネルギーの割合を29%以上にすることが義務化。燃料では、主に再生可能水素と水素ベースの合成燃料(eFuel)による非生物由来の再生可能燃料(RFNBO)の割合を1%以上、さらに先進バイオ燃料(一般に非食用由来原料)と合わせて5.5%以上にすることも義務化した。

 工業分野でも、再生可能エネルギーの利用を毎年1.6%増加することが決定。水素ではRFNBOでの生産割合を2030年までに42%、2035年までに60%にすることも義務化。但し、RFNBO割合目標については、EU全体の目標に対する国別貢献度割合を満たしている場合、もしくは加盟国で消費される化石燃料由来の水素割合が2030年に23%以下、2035年に20%以下を満たしている場合には、目標を2割軽減することができる。

 不動産及び地域冷暖房では、2030年までの再生可能エネルギー比率を49%以上にすることを義務化した。地域冷暖房の再生可能エネルギー目標は段階的に引き上げられ、2026年までは国レベルで年率0.8%、2026年から2030年までは年率1.1%に設定された。全加盟国に適用される年平均の最低引上げ率は、各加盟国毎に算出される追加的な引上げ率によって補完される。

 関連するバイオエネルギーに対しては、エネルギー用バイオマスのサステナビリティ基準が強化された。加盟国は、各国の特質を十分に考慮した上で、バイオマスの使用用途に優先順位をつけた「カスケード原則」が明確に適用される。

 再生可能エネルギープロジェクトの許認可手続きの迅速化も決定。加盟国は、再生可能エネルギー促進地域を設計し、許認可制度を簡素化することが義務化される。さらに、再生可能エネルギー導入を「優先的な公共の利益」とみなし、新設備に対する法的な異議申立ての根拠が制限された。

 改正再生可能エネルギー指令案の採決では、ポーランドとハンガリーが反対。ブルガリアとチェコが棄権した。それ以外は賛成だった。フランスは、途中まで強硬に反発していたが、最後は賛成に回った。これには、6月の常駐代表委員会(COREPER)での協議の中で、フランスが拘っていた2つの異議で最終妥結していたことが関係している。

 まず、同改正指令における原子力発電に位置づけについては、「再生可能エネルギー以外の非化石燃料資源に依存することを決める加盟国にとって、2050年までの気候ニュートラル目標に当該資源が貢献することを欧州委員会は認識する」等の文言が法分の最後に挿入され、原子力発電が再生可能エネルギーに含まれると加盟国が解釈できる道を残した。

 次に、肥料用のアンモニア生産設備の改修に関しても、欧州委員会は、すでに減価償却が終わっている既存の設備に打ちて、改修に関する投資を決定している場合には、同改正指令の目標設定の対象から除外するという注意書きが挿入された。

ReFuelEU Aviation規則

 ReFuelEU Aviation規則では、航空燃料供給会社は、EU域内の空港で航空会社に提供する全ての燃料で、持続可能な航空燃料(SAF)の含有率を2025年からに2%以上、2030年に6%以上、2050年に70%以上にすることを義務化。また、合成燃料(eFuel)の含有率も2030年から1.2%以上、2050年に35%以上にすることも義務化した。対象となるSAF及び合成燃料の範囲には、認証済みのバイオ燃料、非生物起源の再生可能燃料(RFNBO)、再生可能エネルギー指令(RED)のサステナビリティ及び排出削減基準に適合した再生炭素航空燃料が含まれる。

 また、EU域内のフライトで年間で使用される燃料のうち90%以上が、同規則に基づく形でEU域内で給油されることも義務化。これにより、EU域外で給油した上でEU域内で運航する「タンカーリング」慣行を防ぐ。

 航空燃料供給会社と航空会社には、データ報告を義務化。SAFを使用する航空会社に対しては、環境パフォーマンスに関する統一ラベル制度も創設する。違反時の罰金制度も設けた。

 同規則は、EU官報掲載野20日後に発効。2024年1月1日から適用が開始される。但し、一部のルールは2025年1月1日から適用となる。

【参照ページ】Renewable energy: Council adopts new rules
【参照ページ】RefuelEU aviation initiative: Council adopts new law to decarbonise the aviation sector
【参照ページ】Commission welcomes completion of key ‘Fit for 55′ legislation, putting EU on track to exceed 2030 targets

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