Skip navigation
サステナビリティ・
ESG金融のニュース
時価総額上位100社の96%が
Sustainable Japanに登録している。その理由は?

【EU】EU理事会と欧州議会、再エネ指令改正で政治的合意。イエロー水素は2級品扱い

 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は3月30日、再生可能エネルギー指令の改正で政治的合意に達した。2030年のEU域内のエネルギー全体に占める再生可能エネルギーの割合目標を現行の32%から42.5%にまで引き上げる。今後、双方での立法手続きに入る。

 再生可能エネルギー割合の引上げは、2021年7月に欧州委員会が発表した包括的気候産業規制「Fit for 55」で示されていた。当初欧州委員会は40%への引上げを掲げており、EU理事会も支持していた。しかし、ウクライナ戦争後に欧州委員会が発表した「REPowerEU」政策では、目標を45%に引上げる方針を表明。今回、最終的に最低42.5%、努力目標45%目標とすることでEU理事会および欧州議会と合意に至った。

【参考】【EU】EU理事会、再エネ割合40%への引上げで合意。データセンターも省エネ対象(2022年6月28日)
【参考】【EU】欧州委、包括的気候産業規制「Fit for 55」採択。国境炭素税も盛り込む。大企業賛同(2021年7月15日)
【参考】【EU】欧州委、REPowerEU採択。ロシア産天然ガス依存度低下へ28兆円。原発も言及(2022年5月20日)

 同指令で掲げる目標は、電力だけでなく、エネルギー全般が対象。EUの再生可能エネルギー割合は2021年時点で21.8%であり、あと7年で約2倍にすることになる。同比率の達成では、水素も重要なエネルギー源となるが、原子力エネルギーを活用して生成したイエロー水素を、同指令の「再生可能エネルギー」に含めるかで最後まで揉めた。

 EUはすでに水素では、ブルー水素を支持しない姿勢を決めている。そのため、欧州委員会は、2022年5月に再生可能エネルギー指令改正を見据え、5月にグリーン水素と合成燃料の適格性を定める委託法令を発表している。今回、この「グリーン水素」に、原子力発電の電力で水電解したイエロー水素をも含めるか否かが焦点となった。3月28日の時点で、オーストリア、ドイツ、スペイン等11カ国は、イエロー水素を除外するよう主張。一方、フランス、チェコ、フィンランド、イタリア、ポーランド等13カ国はイエロー水素を容認するよう主張。真っ二つにわかれた。最終的に、イエロー水素は、「グリーン水素」とは定義しないが、「低炭素水素」と一段格下げの扱いをしつつも、再生可能エネルギー目標達成に含められる「再生可能水素」と扱われることで合意した。この結末は、EUタクソノミーの議論と同様と言える。

【参考】【EU】欧州委、グリーン水素と合成燃料で適格性ルール案発表。厳しすぎるとの反発も(2022年5月26日)
【参考】【EU】欧州委、「再生可能水素」定義を委託法令で規定。追加性、時間的相関、LCA排出量等(2023年2月15日)
【参考】【EU】欧州金融監督機構、SFDR開示で原発とガスをタクソノミー全体から分離へ。反対派実質勝利(2022年10月1日)

 同様に、合成燃料やバイオエネルギーに関しても、適格性が厳しく設定されることになる。具体的にはライフサイクルでの排出量算出ルールが設定。バイオマス原料では、森林バイオマスが生物多様性や炭素蓄積の観点から特に重要な特定の地域から調達されないことを保証する規定が盛り込まれた。また、木質バイオマスは、経済的・環境的付加価値の高いものから利用する「カスケード利用」も盛り込まれ、安易な燃料利用は忌避される。製材用丸太、単板用丸太、工業用丸太、切り株や根を使用して生産されるエネルギーには、補助金支給が禁止される。これらの基準が適用されるバイオマス発電は現行の20MW以上から、7.5MW以上へと対象が拡大される。

 輸送分野では、EU加盟国には2つの選択肢が与えられる。一つは、エネルギー消費の再生可能ネルギー比率を29%以上に引き上げること。もう一つは、輸送経済規模に対する二酸化炭素原単位排出量を14.5%削減すること。原子力発電等の多いフランス等は後者で目標達成を目指すとみられる。先進バイオ燃料と非生物起源の再生可能燃料の内訳を合計5.5%とすることでも合意した。

 不動産分野では、エネルギー消費にしめる再生可能エネルギーの割合を49%にまで高めることで合意。冷暖房や地域暖房システムが主な対象となる。

 今回から同指令の対象となる産業分野では、水素生産について、2030年までの再生可能水素の割合を42%以上とすることを義務化。2035年までに60%にすることでも合意した。但し、加盟国が全体の二酸化炭素排出量目標を達成している場合や、化石燃料由来の水素消費の割合が著しく小さい場合は免除される。こちらも原子力発電に依存する国向けへの配慮と言える。

【参照ページ】European Green Deal: EU agrees stronger legislation to accelerate the rollout of renewable energy

author image

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

この記事のタグ

Sustainable Japanの特長

Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。

  • 時価総額上位100社の96%が登録済
  • 業界第一人者が編集長
  • 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
  • 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする

※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら

"【ランキング】2019年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能な企業100社」"を、お気に入りから削除しました。