Sustainable Japan | 世界のサステナビリティ・ESG投資・SDGs

【EU】欧州議会法務委員会、CSDDD修正案通過。可決に向け望み繋ぐ。COREPERで合意済み

 EU下院の役割を担う欧州議会の法務委員会は3月19日、企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)の修正案を採択した。2月にEU理事会の常駐代表委員会(COREPER)で否決された同法案は、欧州議会選挙前の最後のチャンスとして、可決に向けた調整が進められている。

【参考】【EU】EU理事会、企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令案を否決。加盟国の足並み揃わず(2024年2月29日)

 同指令は、EUおよびEU域内での事業規模の大きい大企業に対し、自社の事業、子会社の事業、サプライチェーンに関し、人権と環境に及ぼす実際もしくは潜在的な悪影響に関するデューデリジェンスの実施を義務化するもの。

 常駐代表委員会(COREPER)での立法審議では3月15日、反対していたドイツとイタリアも含め、義務対象となる企業を絞り込むことで合意した。

 原案では環境・人権デューデリジェンスの実施義務対象を、従業員500人以上かつグローバル売上が1.5億ユーロを超える大企業と、特定セクターに関しては従業員250人以上かつグローバル売上が4,000万ユーロを超える企業とし、さらに同指令発効から3年後には、EU域内で売上が1.5億ユーロを超えるEU域外の大企業と、EU域内での売上が4,000万ユーロを超える特定セクターのEU域外企業にも適用するとしていた。対象企業数はEU域内企業が約12,800社、EU域外企業が約4,000社と推定されていた。

 修正案では、従業員1,000人以上かつグローバル売上が4.5億ユーロを超える大企業に絞り込んだ。適用スケジュールでも、同指令発効の3年後に従業員5,000人以上かつグローバル売上が15億ユーロを超える企業、4年後に従業員3,000人以上かつグローバル売上が9億ユーロを超える企業、5年後に従業員1,000人以上かつグローバル売上が4.5億ユーロを超える企業と3段階に分ける。対象となるEU域内企業は5,300社から6,800社となる。EU域外の大企業の対象基準も売上が4.5億ユーロを超える企業となった。

 また適用基準に設定されている売上は、連結売上とされているが、フランチャイズ企業についても定義が明確となった。フランチャイズ企業では、EU域内売上8,000万ユーロ以上かつフランチャイズ収入2,250万ユーロを超える企業が義務対象となる。

 金融機関に関しては、事業の上流サプライチェーンのみが対象となり、投融資や保険を含む下流サプライチェーンについては対象外となった。下流サプライチェーンを含む追加措置の必要性については、欧州委員会が発効後にレビューを行い、EU理事会と欧州議会に報告するという条項が盛り込まれた。

 環境デューデリジェンスについては、義務適用企業に、気候変動の移行計画(トランジション・プラン)を策定する義務も課し、同様の義務を課している企業サステナビリティ報告指令(CSRD)との重複を避けるため、一つの開示で双方の義務を果たしていることになる法的調整も入った。

 ドイツが懸念していた企業の訴訟リスク増加に関しては、悪影響を被ったと主張する個人、労働組合、NGO等からの訴訟を受け付けない期間を最低5年間設ける措置を導入した。また、証拠の提出、差止命令、訴訟費用に関する内容も盛り込む。

 人権の定義ついては、国際労働機関(ILO)の中核的労働条件と影響を受けやすい集団(Vulnerable Group)が列挙され、環境の定義については森林破壊と生態系サービスが明記された。環境・人権リスクでの取引停止については、「最後の手段」であることも明記され、まずはサプライヤーでの遵守をエンゲージメントすることが求められることも盛り込まれた。エンゲージメントについては時間軸と手法について説明することが必要となる。

 欧州議会法務委員会での採決は、賛成20、反対4、棄権0だった。同指令を審議する欧州議会本会議は4月24日に予定されている。修正案が大きく再修正されることなく欧州議会を通過すれば、閣僚自身が集まるEU理事会での採決となり、可決されれば成立する。

【参照ページ】First green light to new bill on firms’ impact on human rights and environment

ここから先は登録ユーザー限定のコンテンツとなります。ログインまたはユーザー登録を行って下さい。

 EU下院の役割を担う欧州議会の法務委員会は3月19日、企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)の修正案を採択した。2月にEU理事会の常駐代表委員会(COREPER)で否決された同法案は、欧州議会選挙前の最後のチャンスとして、可決に向けた調整が進められている。

【参考】【EU】EU理事会、企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令案を否決。加盟国の足並み揃わず(2024年2月29日)

 同指令は、

ここから先は登録ユーザー限定のコンテンツとなります。ログインまたはユーザー登録を行って下さい。

 EU下院の役割を担う欧州議会の法務委員会は3月19日、企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)の修正案を採択した。2月にEU理事会の常駐代表委員会(COREPER)で否決された同法案は、欧州議会選挙前の最後のチャンスとして、可決に向けた調整が進められている。

【参考】【EU】EU理事会、企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令案を否決。加盟国の足並み揃わず(2024年2月29日)

 同指令は、

ここから先は登録ユーザー限定のコンテンツとなります。ログインまたはユーザー登録を行って下さい。

ここから先は有料登録会員限定のコンテンツとなります。有料登録会員へのアップグレードを行って下さい。

 EU下院の役割を担う欧州議会の法務委員会は3月19日、企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)の修正案を採択した。2月にEU理事会の常駐代表委員会(COREPER)で否決された同法案は、欧州議会選挙前の最後のチャンスとして、可決に向けた調整が進められている。

【参考】【EU】EU理事会、企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令案を否決。加盟国の足並み揃わず(2024年2月29日)

 同指令は、EUおよびEU域内での事業規模の大きい大企業に対し、自社の事業、子会社の事業、サプライチェーンに関し、人権と環境に及ぼす実際もしくは潜在的な悪影響に関するデューデリジェンスの実施を義務化するもの。

 常駐代表委員会(COREPER)での立法審議では3月15日、反対していたドイツとイタリアも含め、義務対象となる企業を絞り込むことで合意した。

 原案では環境・人権デューデリジェンスの実施義務対象を、従業員500人以上かつグローバル売上が1.5億ユーロを超える大企業と、特定セクターに関しては従業員250人以上かつグローバル売上が4,000万ユーロを超える企業とし、さらに同指令発効から3年後には、EU域内で売上が1.5億ユーロを超えるEU域外の大企業と、EU域内での売上が4,000万ユーロを超える特定セクターのEU域外企業にも適用するとしていた。対象企業数はEU域内企業が約12,800社、EU域外企業が約4,000社と推定されていた。

 修正案では、従業員1,000人以上かつグローバル売上が4.5億ユーロを超える大企業に絞り込んだ。適用スケジュールでも、同指令発効の3年後に従業員5,000人以上かつグローバル売上が15億ユーロを超える企業、4年後に従業員3,000人以上かつグローバル売上が9億ユーロを超える企業、5年後に従業員1,000人以上かつグローバル売上が4.5億ユーロを超える企業と3段階に分ける。対象となるEU域内企業は5,300社から6,800社となる。EU域外の大企業の対象基準も売上が4.5億ユーロを超える企業となった。

 また適用基準に設定されている売上は、連結売上とされているが、フランチャイズ企業についても定義が明確となった。フランチャイズ企業では、EU域内売上8,000万ユーロ以上かつフランチャイズ収入2,250万ユーロを超える企業が義務対象となる。

 金融機関に関しては、事業の上流サプライチェーンのみが対象となり、投融資や保険を含む下流サプライチェーンについては対象外となった。下流サプライチェーンを含む追加措置の必要性については、欧州委員会が発効後にレビューを行い、EU理事会と欧州議会に報告するという条項が盛り込まれた。

 環境デューデリジェンスについては、義務適用企業に、気候変動の移行計画(トランジション・プラン)を策定する義務も課し、同様の義務を課している企業サステナビリティ報告指令(CSRD)との重複を避けるため、一つの開示で双方の義務を果たしていることになる法的調整も入った。

 ドイツが懸念していた企業の訴訟リスク増加に関しては、悪影響を被ったと主張する個人、労働組合、NGO等からの訴訟を受け付けない期間を最低5年間設ける措置を導入した。また、証拠の提出、差止命令、訴訟費用に関する内容も盛り込む。

 人権の定義ついては、国際労働機関(ILO)の中核的労働条件と影響を受けやすい集団(Vulnerable Group)が列挙され、環境の定義については森林破壊と生態系サービスが明記された。環境・人権リスクでの取引停止については、「最後の手段」であることも明記され、まずはサプライヤーでの遵守をエンゲージメントすることが求められることも盛り込まれた。エンゲージメントについては時間軸と手法について説明することが必要となる。

 欧州議会法務委員会での採決は、賛成20、反対4、棄権0だった。同指令を審議する欧州議会本会議は4月24日に予定されている。修正案が大きく再修正されることなく欧州議会を通過すれば、閣僚自身が集まるEU理事会での採決となり、可決されれば成立する。

【参照ページ】First green light to new bill on firms’ impact on human rights and environment

ここから先は登録ユーザー限定のコンテンツとなります。ログインまたはユーザー登録を行って下さい。