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【EU】改正建築物エネルギー性能指令が成立。既存物件を強制改修へ。太陽光パネル設置義務も

 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は4月12日、建築物エネルギー性能指令改正案を可決。同法案はすでに欧州議会を通過しており、同改正法が成立した。EU加盟国は24ヶ月以内に同EU指令の内容を国内法化する義務を負う。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、新築・改築の物件双方で省エネ義務水準引上げで政治的合意(2023年12月14日)

 今回の改正は、2030年までにすべての新築物件をゼロエミッション化、2050年までにすべての既存物件をゼロエミッション化することを目的としている。

 目標達成のため、住宅と非住宅で異なるルールを設けた。まず、住宅では、EU加盟国は、2030年までに平均一次エネルギー使用量を16%削減し、2035年までに20%から22%削減するという国内目標を設定する。EU加盟国は、平均一次エネルギー使用量削減の55%を、最も性能の悪い建物の改修によって達成することが義務付けられるが、それ以外の達成手法については自由に設計できる。低所得者世帯に配慮した支援策も同時に講じていく。

 非住宅建築物に関しては、1m2当たりの年間一次最終エネルギー量もしくは年間最終エネルギー量の上限を超えないことを義務化する「最低エネルギー性能基準」を導入し、改築義務を課す。改築義務の適用対象は、2030年までにエネルギー性能がワースト16%の建築物を、2033年までに同ワースト26%の建築物。但し、EU加盟国は、歴史的建築物や別荘等、住宅・非住宅建築物の特定のカテゴリーを義務対象から除外することが可能。

 さらに建築物のゼロエミッション化を達成するため、敷地内での化石燃料による温室効果ガス排出が禁止される。公共施設は2028年1月1日から禁止。その他すべての新築物件では2030年1月1日から禁止となる。既存物件では、2040年を視野に入れたロードマップをEU加盟国が今後策定していく。替わりに、新築物件、公共施設、許可を必要とする改修中の既存の非住宅建築物に対しては、太陽光発電パネルの設置を原則義務付ける。EV(電気自動車)充電スタンド、将来のインフラに対応するためのプレケーブルやダクト、自転車用の駐車スペース等の設置も原則必要となる。

 既存物件の改修を促進するため、「建築物改修パスポート」制度がEU全域で導入される。また改修によって影響を受けるテナントや居住者を保護するため、リノベーションに伴う賃料の大幅値上げに関連した事実上の立ち退きリスクに対処する。具体的には、情報公開データベースとデータ共有に関する規定を定め、信頼できる情報を市民や金融機関に提供していく。

 これらをスムーズに進めるため、EU加盟国には「国家建築物改修計画」の策定も義務化された。同計画には、既存建築物のゼロエミッション化に向けた国家戦略や、資金調達、訓練、熟練労働者の確保等、実現する上でのハードルに対処する内容を盛り込まなければならない。また、EU加盟国間の比較可能性を向上させるため、義務的要素と自発的要素を含む共通のテンプレートが導入される。計画案は欧州委員会に提出し、審査を受け、欧州委員会が不十分と判断すれば、是正勧告が出せる。初回の計画案提出期限は2025年12月。

【参照ページ】Towards zero-emission buildings by 2050: Council adopts rules to improve energy performance
【参照ページ】Questions and Answers on the revised Energy Performance of Buildings Directive (EPBD)

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は4月12日、建築物エネルギー性能指令改正案を可決。同法案はすでに欧州議会を通過しており、同改正法が成立した。EU加盟国は24ヶ月以内に同EU指令の内容を国内法化する義務を負う。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、新築・改築の物件双方で省エネ義務水準引上げで政治的合意(2023年12月14日)

 今回の改正は、

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は4月12日、建築物エネルギー性能指令改正案を可決。同法案はすでに欧州議会を通過しており、同改正法が成立した。EU加盟国は24ヶ月以内に同EU指令の内容を国内法化する義務を負う。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、新築・改築の物件双方で省エネ義務水準引上げで政治的合意(2023年12月14日)

 今回の改正は、

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は4月12日、建築物エネルギー性能指令改正案を可決。同法案はすでに欧州議会を通過しており、同改正法が成立した。EU加盟国は24ヶ月以内に同EU指令の内容を国内法化する義務を負う。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、新築・改築の物件双方で省エネ義務水準引上げで政治的合意(2023年12月14日)

 今回の改正は、2030年までにすべての新築物件をゼロエミッション化、2050年までにすべての既存物件をゼロエミッション化することを目的としている。

 目標達成のため、住宅と非住宅で異なるルールを設けた。まず、住宅では、EU加盟国は、2030年までに平均一次エネルギー使用量を16%削減し、2035年までに20%から22%削減するという国内目標を設定する。EU加盟国は、平均一次エネルギー使用量削減の55%を、最も性能の悪い建物の改修によって達成することが義務付けられるが、それ以外の達成手法については自由に設計できる。低所得者世帯に配慮した支援策も同時に講じていく。

 非住宅建築物に関しては、1m2当たりの年間一次最終エネルギー量もしくは年間最終エネルギー量の上限を超えないことを義務化する「最低エネルギー性能基準」を導入し、改築義務を課す。改築義務の適用対象は、2030年までにエネルギー性能がワースト16%の建築物を、2033年までに同ワースト26%の建築物。但し、EU加盟国は、歴史的建築物や別荘等、住宅・非住宅建築物の特定のカテゴリーを義務対象から除外することが可能。

 さらに建築物のゼロエミッション化を達成するため、敷地内での化石燃料による温室効果ガス排出が禁止される。公共施設は2028年1月1日から禁止。その他すべての新築物件では2030年1月1日から禁止となる。既存物件では、2040年を視野に入れたロードマップをEU加盟国が今後策定していく。替わりに、新築物件、公共施設、許可を必要とする改修中の既存の非住宅建築物に対しては、太陽光発電パネルの設置を原則義務付ける。EV(電気自動車)充電スタンド、将来のインフラに対応するためのプレケーブルやダクト、自転車用の駐車スペース等の設置も原則必要となる。

 既存物件の改修を促進するため、「建築物改修パスポート」制度がEU全域で導入される。また改修によって影響を受けるテナントや居住者を保護するため、リノベーションに伴う賃料の大幅値上げに関連した事実上の立ち退きリスクに対処する。具体的には、情報公開データベースとデータ共有に関する規定を定め、信頼できる情報を市民や金融機関に提供していく。

 これらをスムーズに進めるため、EU加盟国には「国家建築物改修計画」の策定も義務化された。同計画には、既存建築物のゼロエミッション化に向けた国家戦略や、資金調達、訓練、熟練労働者の確保等、実現する上でのハードルに対処する内容を盛り込まなければならない。また、EU加盟国間の比較可能性を向上させるため、義務的要素と自発的要素を含む共通のテンプレートが導入される。計画案は欧州委員会に提出し、審査を受け、欧州委員会が不十分と判断すれば、是正勧告が出せる。初回の計画案提出期限は2025年12月。

【参照ページ】Towards zero-emission buildings by 2050: Council adopts rules to improve energy performance
【参照ページ】Questions and Answers on the revised Energy Performance of Buildings Directive (EPBD)

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