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【国際】MSCI、プラスチックが座礁資産となる可能性を示唆。石油・天然ガス企業に警鐘

 インデックス開発大手米MSCIは8月22日、石油・天然ガス大手が、エネルギー事業から化成品事業への転換している事業シフトが、一時的な対応にしかならず、長続きしないとの見方を示した。昨今、プラスチック規制や消費者心理の動向、投資家に下支えされ、化石燃料由来のプラスチックから、再生プラスチックや代替プラスチックへと転換する動きがあるため。

 MSCIはまず、電気自動車(EV)への移行や、化石燃料による二酸化炭素排出の抑制が進む中、輸送燃料としての石油需要は2025年にピークに達する可能性があることに言及。石油・天然ガス企業としては、主にプラスチックの原料となる石油化学製品の製造への転換が予見され、石油需要の成長の半分以上は、2050年までに石油化学製品が占めるようになる可能性があるとした。

 一方で、プラスチック汚染の削減に向けた規制の数は、過去数年間急増しており、プラスチックに対する消費者心理も変化してきている。例えば、欧州議会は2018年、2021年までに使い捨てプラスチックを大幅に規制するEU指令を可決。同指令では、2025年までに飲料ボトルの90%以上リサイクルするという目標に向けた取り組みも盛り込まれている。プラスチック規制に係る同様の動きは、米国の350の自治体や、その他60カ国でも見られる。MSCIは、この傾向が今後も続く場合、石油化学製品の原料としての石油・ガスも、エネルギー源としての化石燃料同様に座礁資産となる可能性があると指摘した。

 さらに、再生プラスチックや代替パッケージ等の技術の成長も、プラスチック原料としての石油化学製品を脅かす。再生プラスチックについては、BASF、インドラマ、イーストマン・ケミカル、ライオンデルバセル等を中心に、技術開発や提携、買収等が進んでいる。さらに、コルゲート・パーモリーブ、ダノン、ディアジオ、ロレアル、ペプシコ、タッパーウェア、ユニリーバ等の企業も、食品包装に使用するリサイクル材料の割合を、2025年までに少なとも25%にすることを宣言。アムコールやシールドエアーなどのプラスチック包装会社も、2025年までに全ての包装製品を完全にリサイクル可能もしくは再利用可能とすることを宣言している。

 代替パッケージについては、トウモロコシ等を原料とするバイオプラスチックや紙製の包装への移行の動きの高まりがある。バイオプラスチックは、原料生産に向けた土地利用による森林伐採や生分解性の低さが懸念されるが、特に生分解性が改善されれば、プラスチック汚染の低減に寄与することが期待される。

 MSCIは、再生プラスチックや代替パッケージ等の技術が高まる中、収益の80%以上をプラスチック関連製品から得ている化学メーカーや、プラスチックへの移行に注目する石油・天然ガス企業に警鐘を鳴らす。同社が言及した化学メーカーには日本の三井化学も含まれる。現状、生産されたプラスチック全体のうち9%しかリサイクルされておらず、大半がごみとして処分されているとみられる。経済価値にすると毎年800億から1,200億米ドルもの損失となっている計算になる。

 すでに多くの金融機関は、プラスチック廃棄物の削減に向けた投資行動を開始しており、企業による技術開発を促している。例えば、モルガン・スタンレーは、2030年までに埋立地や環境から「5,000万tのプラスチック廃棄物の防止、削減、除去」に取り組んでいる。さらに、BMOグローバル、BNPパリバ、エルメスEOS、サラシン・アンド・パートナーズ等、合計4.2兆米ドルの運用資産を持つ26の金融機関も、エレンマッカーサー財団の新しいプラスチック経済イニシアチブを支持している。

【参考】The last straw: Will plastic become the next stranded asset?

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 インデックス開発大手米MSCIは8月22日、石油・天然ガス大手が、エネルギー事業から化成品事業への転換している事業シフトが、一時的な対応にしかならず、長続きしないとの見方を示した。昨今、プラスチック規制や消費者心理の動向、投資家に下支えされ、化石燃料由来のプラスチックから、再生プラスチックや代替プラスチックへと転換する動きがあるため。

 MSCIはまず、電気自動車(EV)への移行や、化石燃料による二酸化炭素排出の抑制が進む中、輸送燃料としての石油需要は2025年にピークに達する可能性があることに言及。石油・天然ガス企業としては、主にプラスチックの原料となる石油化学製品の製造への転換が予見され、石油需要の成長の半分以上は、2050年までに石油化学製品が占めるようになる可能性があるとした。

 一方で、プラスチック汚染の削減に向けた規制の数は、

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 インデックス開発大手米MSCIは8月22日、石油・天然ガス大手が、エネルギー事業から化成品事業への転換している事業シフトが、一時的な対応にしかならず、長続きしないとの見方を示した。昨今、プラスチック規制や消費者心理の動向、投資家に下支えされ、化石燃料由来のプラスチックから、再生プラスチックや代替プラスチックへと転換する動きがあるため。

 MSCIはまず、電気自動車(EV)への移行や、化石燃料による二酸化炭素排出の抑制が進む中、輸送燃料としての石油需要は2025年にピークに達する可能性があることに言及。石油・天然ガス企業としては、主にプラスチックの原料となる石油化学製品の製造への転換が予見され、石油需要の成長の半分以上は、2050年までに石油化学製品が占めるようになる可能性があるとした。

 一方で、プラスチック汚染の削減に向けた規制の数は、

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 インデックス開発大手米MSCIは8月22日、石油・天然ガス大手が、エネルギー事業から化成品事業への転換している事業シフトが、一時的な対応にしかならず、長続きしないとの見方を示した。昨今、プラスチック規制や消費者心理の動向、投資家に下支えされ、化石燃料由来のプラスチックから、再生プラスチックや代替プラスチックへと転換する動きがあるため。

 MSCIはまず、電気自動車(EV)への移行や、化石燃料による二酸化炭素排出の抑制が進む中、輸送燃料としての石油需要は2025年にピークに達する可能性があることに言及。石油・天然ガス企業としては、主にプラスチックの原料となる石油化学製品の製造への転換が予見され、石油需要の成長の半分以上は、2050年までに石油化学製品が占めるようになる可能性があるとした。

 一方で、プラスチック汚染の削減に向けた規制の数は、過去数年間急増しており、プラスチックに対する消費者心理も変化してきている。例えば、欧州議会は2018年、2021年までに使い捨てプラスチックを大幅に規制するEU指令を可決。同指令では、2025年までに飲料ボトルの90%以上リサイクルするという目標に向けた取り組みも盛り込まれている。プラスチック規制に係る同様の動きは、米国の350の自治体や、その他60カ国でも見られる。MSCIは、この傾向が今後も続く場合、石油化学製品の原料としての石油・ガスも、エネルギー源としての化石燃料同様に座礁資産となる可能性があると指摘した。

 さらに、再生プラスチックや代替パッケージ等の技術の成長も、プラスチック原料としての石油化学製品を脅かす。再生プラスチックについては、BASF、インドラマ、イーストマン・ケミカル、ライオンデルバセル等を中心に、技術開発や提携、買収等が進んでいる。さらに、コルゲート・パーモリーブ、ダノン、ディアジオ、ロレアル、ペプシコ、タッパーウェア、ユニリーバ等の企業も、食品包装に使用するリサイクル材料の割合を、2025年までに少なとも25%にすることを宣言。アムコールやシールドエアーなどのプラスチック包装会社も、2025年までに全ての包装製品を完全にリサイクル可能もしくは再利用可能とすることを宣言している。

 代替パッケージについては、トウモロコシ等を原料とするバイオプラスチックや紙製の包装への移行の動きの高まりがある。バイオプラスチックは、原料生産に向けた土地利用による森林伐採や生分解性の低さが懸念されるが、特に生分解性が改善されれば、プラスチック汚染の低減に寄与することが期待される。

 MSCIは、再生プラスチックや代替パッケージ等の技術が高まる中、収益の80%以上をプラスチック関連製品から得ている化学メーカーや、プラスチックへの移行に注目する石油・天然ガス企業に警鐘を鳴らす。同社が言及した化学メーカーには日本の三井化学も含まれる。現状、生産されたプラスチック全体のうち9%しかリサイクルされておらず、大半がごみとして処分されているとみられる。経済価値にすると毎年800億から1,200億米ドルもの損失となっている計算になる。

 すでに多くの金融機関は、プラスチック廃棄物の削減に向けた投資行動を開始しており、企業による技術開発を促している。例えば、モルガン・スタンレーは、2030年までに埋立地や環境から「5,000万tのプラスチック廃棄物の防止、削減、除去」に取り組んでいる。さらに、BMOグローバル、BNPパリバ、エルメスEOS、サラシン・アンド・パートナーズ等、合計4.2兆米ドルの運用資産を持つ26の金融機関も、エレンマッカーサー財団の新しいプラスチック経済イニシアチブを支持している。

【参考】The last straw: Will plastic become the next stranded asset?

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