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【アメリカ】全米自動車労組、ストライキ発動権を執行部に付与。賃上げ等要求。EV転換は支持

 全米自動車労働組合(UAW)のショーン・フェイン委員長は8月24日、米自動車大手3社(ビッグ3)のフォード、ゼネラル・モーターズ、ステランティスの労働組合員約15万人が、ストライキの発動権をUAW執行部に与えることを可決したと発表した。ビッグ3労働組合員全体の97%以上が賛成した。ビッグ3が公正な労働協約を拒否した場合、ストライキを発動するかをUAWが最終決定する。

 フェイン委員長は3月、UAW史上初めて直接選挙で選出。ビッグ3のCEOと事前協議を終えた上で、労働協議に入る従来の慣習をやめ、開かれた場で交渉する方針を掲げている。労働協議の妥結期限は9月14日。期限の延長には応じない考え。

 UAWは今回、大幅な賃上げ、新入社員の賃金をベテラン社員より低くする段階的賃金制度の廃止、生活費調整(COLA)制度や退職者医療給付制度の復活、ビッグ3が2007年に廃止した新入社員の確定給付年金制度の復活、退職者年金給付の増額、労働者家族保護プログラムの確立、派遣労働者の低扱いの終了、有給休暇日数の増加等を要求している。大幅な賃上げについては、ビッグ3のCEO報酬が過去4年間で平均40%上昇したいることを受け、8月に46%の賃上げを求めていくことも掲げた。

 UAWは、バイデン政権や各民主党州知事が進めるゼロエミッション車(ZEV)転換については、好意的な立場をとっている。2020年1月には、UAWのリサーチ部門は、電気自動車(EV)に関する白書「Taking the High Road: Strategies for a Fair EV Future」を発行し、EV化が自動車業界を大きく変革させていることを受け止めた上で、政府と企業側に対し「ジャスト・トランジション(公正な移行)」を要求していく方向性をみせた。

【参考】【アメリカ】民主党州、自動車ZEV転換義務ルール制定が8州に拡大。トラックでも(2023年8月25日)

 米環境保護庁(EPA)が4月に2032年までの自動車燃費基準案を公表し、EVシフトを加速させる政策を示した際にも、UAWは「クリーンな自動車産業への移行を支持し、気候変動との闘いにおける誇り高きリーダーとなってきた」との声明を発表。しかし現時点での企業経営は、「経済的正義よりも企業の貪欲さを優先させるもの」とし、再び公正な移行を求めた。その際の声明の中では、「自動車製造を生業とする人々は、内燃エンジンや電気自動車に情熱を持っているからそうしているのではない。私たちは家族や地域社会のために情熱を持っているからだ。EV産業が完全に労働組合化されることで、私たちは経済的公正と気候的公正の両方を手に入れることができる」とも述べていた。

【参考】【アメリカ】EPA、2027年から2032年の自動車燃費基準案公表。小型車で46%減。EVシフト加速(2023年4月12日)

 今回の労働争議を受けた連邦政府の対応では、民主党の連邦上院議員が、ビッグ3に対し、EVへの公正な移行を実現するよう求める共同書簡を発表し、半数以上の民主党上院議員が署名した。書簡の中では、特にEVバッテリー生産の合弁会社で働く人の賃金が低い水準になっていることを問題視し、「貧困状態」と言及。自社株買いによる株主への還元ではなく、労働者へ投資するよう求めた。それに伴い、書簡の宛先は、自動車大手の経営者だけでなく、株主にも向けられている。

 バイデン大統領も8月、声明を発表し、自動車大手経営陣に対し、団結権を尊重し、痛みを伴う工場閉鎖を避けるためにあらゆる手段を講じ、移行が必要な場合には、移行が公正であることを保証し、同等の賃金で同じ工場や地域社会での再整備・再雇用を検討するよう求めた。

 渦中の一つとなったEVバッテリー産業では、GMとLGエナジー・ソリューションの合弁ウルティウム・セルズが8月24日、労働組合との間で、時給を直ちに3米ドルから4米ドル引き上げるとともに、従業員に数千米ドルの遡及支払いで合意。最終的には、労働組合側での可決投票が必要だが、UAWは今回の合意を「勝利」と歓迎している。

 また、2019年創業のEVバッテリー・スタートアップSPARKZは4月、UAWとの間で、労働組合の組成を妨げない「中立協約」を締結。労働組合が組成される見通しとなった。同社は、カリフォルニア州でギガキャンパス拠点を建設する計画を掲げており、初期で500人、最終的には3,000人の雇用を見込んでいる。

【参照ページ】97% OF UAW’S BIG THREE MEMBERS VOTE YES TO AUTHORIZE STRIKE
【参照ページ】NEWS, RESOURCES & ACTIONS FOR 2023 BIG THREE BARGAINING
【参照ページ】Taking the high road: STrategies For a Fair EV Future
【参照ページ】UAW STATEMENT ON NEW EMISSIONS RULES PROPOSED BY THE ENVIRONMENTAL PROTECTION AGENCY
【参照ページ】MAJORITY OF U.S. DEMOCRATIC SENATORS BACK UAW CALLING FOR JUST TRANSITION TO EVS IN BIG THREE CONTRACT TALKS
【参照ページ】Statement from President Joe Biden on the United Auto Workers and Big Three Contract Negotiations
【参照ページ】UAW BATTERY WORKERS AT ULTIUM IN LORDSTOWN WIN BREAKTHROUGH AGREEMENT ON WAGE INCREASE
【参照ページ】NEXT-GEN BATTERY MAKER SPARKZ, UNITED AUTO WORKERS ANNOUNCE NATIONAL LABOR AGREEMENT

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 全米自動車労働組合(UAW)のショーン・フェイン委員長は8月24日、米自動車大手3社(ビッグ3)のフォード、ゼネラル・モーターズ、ステランティスの労働組合員約15万人が、ストライキの発動権をUAW執行部に与えることを可決したと発表した。ビッグ3労働組合員全体の97%以上が賛成した。ビッグ3が公正な労働協約を拒否した場合、ストライキを発動するかをUAWが最終決定する。

 フェイン委員長は3月、UAW史上初めて直接選挙で選出。ビッグ3のCEOと事前協議を終えた上で、労働協議に入る従来の慣習をやめ、開かれた場で交渉する方針を掲げている。労働協議の妥結期限は9月14日。期限の延長には応じない考え。

 UAWは今回、

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 全米自動車労働組合(UAW)のショーン・フェイン委員長は8月24日、米自動車大手3社(ビッグ3)のフォード、ゼネラル・モーターズ、ステランティスの労働組合員約15万人が、ストライキの発動権をUAW執行部に与えることを可決したと発表した。ビッグ3労働組合員全体の97%以上が賛成した。ビッグ3が公正な労働協約を拒否した場合、ストライキを発動するかをUAWが最終決定する。

 フェイン委員長は3月、UAW史上初めて直接選挙で選出。ビッグ3のCEOと事前協議を終えた上で、労働協議に入る従来の慣習をやめ、開かれた場で交渉する方針を掲げている。労働協議の妥結期限は9月14日。期限の延長には応じない考え。

 UAWは今回、

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 全米自動車労働組合(UAW)のショーン・フェイン委員長は8月24日、米自動車大手3社(ビッグ3)のフォード、ゼネラル・モーターズ、ステランティスの労働組合員約15万人が、ストライキの発動権をUAW執行部に与えることを可決したと発表した。ビッグ3労働組合員全体の97%以上が賛成した。ビッグ3が公正な労働協約を拒否した場合、ストライキを発動するかをUAWが最終決定する。

 フェイン委員長は3月、UAW史上初めて直接選挙で選出。ビッグ3のCEOと事前協議を終えた上で、労働協議に入る従来の慣習をやめ、開かれた場で交渉する方針を掲げている。労働協議の妥結期限は9月14日。期限の延長には応じない考え。

 UAWは今回、大幅な賃上げ、新入社員の賃金をベテラン社員より低くする段階的賃金制度の廃止、生活費調整(COLA)制度や退職者医療給付制度の復活、ビッグ3が2007年に廃止した新入社員の確定給付年金制度の復活、退職者年金給付の増額、労働者家族保護プログラムの確立、派遣労働者の低扱いの終了、有給休暇日数の増加等を要求している。大幅な賃上げについては、ビッグ3のCEO報酬が過去4年間で平均40%上昇したいることを受け、8月に46%の賃上げを求めていくことも掲げた。

 UAWは、バイデン政権や各民主党州知事が進めるゼロエミッション車(ZEV)転換については、好意的な立場をとっている。2020年1月には、UAWのリサーチ部門は、電気自動車(EV)に関する白書「Taking the High Road: Strategies for a Fair EV Future」を発行し、EV化が自動車業界を大きく変革させていることを受け止めた上で、政府と企業側に対し「ジャスト・トランジション(公正な移行)」を要求していく方向性をみせた。

【参考】【アメリカ】民主党州、自動車ZEV転換義務ルール制定が8州に拡大。トラックでも(2023年8月25日)

 米環境保護庁(EPA)が4月に2032年までの自動車燃費基準案を公表し、EVシフトを加速させる政策を示した際にも、UAWは「クリーンな自動車産業への移行を支持し、気候変動との闘いにおける誇り高きリーダーとなってきた」との声明を発表。しかし現時点での企業経営は、「経済的正義よりも企業の貪欲さを優先させるもの」とし、再び公正な移行を求めた。その際の声明の中では、「自動車製造を生業とする人々は、内燃エンジンや電気自動車に情熱を持っているからそうしているのではない。私たちは家族や地域社会のために情熱を持っているからだ。EV産業が完全に労働組合化されることで、私たちは経済的公正と気候的公正の両方を手に入れることができる」とも述べていた。

【参考】【アメリカ】EPA、2027年から2032年の自動車燃費基準案公表。小型車で46%減。EVシフト加速(2023年4月12日)

 今回の労働争議を受けた連邦政府の対応では、民主党の連邦上院議員が、ビッグ3に対し、EVへの公正な移行を実現するよう求める共同書簡を発表し、半数以上の民主党上院議員が署名した。書簡の中では、特にEVバッテリー生産の合弁会社で働く人の賃金が低い水準になっていることを問題視し、「貧困状態」と言及。自社株買いによる株主への還元ではなく、労働者へ投資するよう求めた。それに伴い、書簡の宛先は、自動車大手の経営者だけでなく、株主にも向けられている。

 バイデン大統領も8月、声明を発表し、自動車大手経営陣に対し、団結権を尊重し、痛みを伴う工場閉鎖を避けるためにあらゆる手段を講じ、移行が必要な場合には、移行が公正であることを保証し、同等の賃金で同じ工場や地域社会での再整備・再雇用を検討するよう求めた。

 渦中の一つとなったEVバッテリー産業では、GMとLGエナジー・ソリューションの合弁ウルティウム・セルズが8月24日、労働組合との間で、時給を直ちに3米ドルから4米ドル引き上げるとともに、従業員に数千米ドルの遡及支払いで合意。最終的には、労働組合側での可決投票が必要だが、UAWは今回の合意を「勝利」と歓迎している。

 また、2019年創業のEVバッテリー・スタートアップSPARKZは4月、UAWとの間で、労働組合の組成を妨げない「中立協約」を締結。労働組合が組成される見通しとなった。同社は、カリフォルニア州でギガキャンパス拠点を建設する計画を掲げており、初期で500人、最終的には3,000人の雇用を見込んでいる。

【参照ページ】97% OF UAW’S BIG THREE MEMBERS VOTE YES TO AUTHORIZE STRIKE
【参照ページ】NEWS, RESOURCES & ACTIONS FOR 2023 BIG THREE BARGAINING
【参照ページ】Taking the high road: STrategies For a Fair EV Future
【参照ページ】UAW STATEMENT ON NEW EMISSIONS RULES PROPOSED BY THE ENVIRONMENTAL PROTECTION AGENCY
【参照ページ】MAJORITY OF U.S. DEMOCRATIC SENATORS BACK UAW CALLING FOR JUST TRANSITION TO EVS IN BIG THREE CONTRACT TALKS
【参照ページ】Statement from President Joe Biden on the United Auto Workers and Big Three Contract Negotiations
【参照ページ】UAW BATTERY WORKERS AT ULTIUM IN LORDSTOWN WIN BREAKTHROUGH AGREEMENT ON WAGE INCREASE
【参照ページ】NEXT-GEN BATTERY MAKER SPARKZ, UNITED AUTO WORKERS ANNOUNCE NATIONAL LABOR AGREEMENT

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