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【ドイツ】アリアンツ、初の移行計画発表。投資、損害保険、事業運営でアクション説明

 保険世界大手独アリアンツは9月7日、スコープ3を含めた2050年カーボンニュートラルの達成に向け、初のネットゼロ移行計画(トランジション・プラン)を公表した。2030年までの中間目標も設定した。同社は競争法懸念の観点から、5月に「Net-Zero Insurance Alliance(NZIA)」から脱退していたが、NZIAの方針へのコミットメントは続けている。

【参考】【日本】損保大手3社、保険カーボンニュートラルの目標公表せず。競争法上の事案も複数(2023年8月2日)

 同社は、2018年にパリ協定1.5℃目標へのコミットを発表し、石炭関連向けの損害保険でもガイドラインを発表した。2019年には自己勘定投資ポートフォリオでの2050年カーボンニュートラル目標を発表、2022年にはスコープ1と2での2030年カーボンニュートラルも宣言すると同時に、投融資先やサプライヤーにも1.5℃目標と整合する削減目標を掲げるよう要請していた。

【参考】【国際】アリアンツ、石油・ガスへの一部保険禁止。投融資先やサプライヤーにも1.5度目標要求(2022年5月2日)

 今回の移行計画では、主に事業運営、自己勘定投資ポートフォリオ、企業向け損害保険ポートフォリオ、運用子会社の投資ポートフォリオ、政府への提言の5つの分野で実施内容を示した。

事業運営

 事業運営では、当初掲げていたスコープ1と2の2030年までのカーボンニュートラル目標達成を、カテゴリー15「投融資ポートフォリオ」以外のスコープ3にも拡大した上で、2029年末までに1年前倒しした。2023年までに再生可能エネルギー調達割合100%を達成し、出張からの排出量削減では持続可能な航空燃料(SAF)プログラムを2023年に開始。主要サプライヤーでのカーボンニュートラル宣言済み企業を2025年までに100%にし、空調・冷房の代替エネルギーへの転換を始める。輸送では、2030年までに電動車100%への転換も表明しつつ、化石燃料フリー自動車のみを対象にするかどうかは毎年レビューをして実現可能性を確認していくとした。これらを通じ、2029年時点で2019年比65%減、2030年時点で70%減を達成。残りをオフセットするとみられる。

自己勘定投資ポートフォリオ

 自己勘定投資ポートフォリオのカーボンフットプリントでは、上場株式と社債のアセットクラスでは、2022年末時点で36%減を達成済み。今回新たに、2029年末までに二酸化炭素排出量を原単位で2019年比50%削減目標を設定した。不動産、輸送、石油・ガス、鉄鋼、電力の5つのセクターを対象に、セクター目標も設定した。加えて、直接保有不動産資産及び合弁会社からのカーボンフットプリントも、総量で科学的根拠に基づく1.5℃目標を達成することも掲げた。積極投資分野では、気候変動緩和と気候変動適応の双方を対象に2029年末までに200億ユーロの投資目標を掲げた。運用会社と投資先企業へのエンゲージメントも重視する。

損害保険ポートフォリオ

 企業向け損害保険ポートフォリオでのカーボンフットプリントでは、水素、アンモニア、グリーンビルディング、電気自動車(EV)、バッテリー、炭素回収・貯留(CCS)、鉄道、廃棄物エネルギー等のグリーントランジション分野からの損害保険売上を、2029年末までに2022年比150%増する目標を設定した。

 さらに、企業向けでは、二酸化炭素排出量データの把握が可能な保険引受元のみを対象に、2029年末までに2022年比45%減の目標を設定した。データ把握が可能な企業は、企業向け保険料収入の16%、推定される保険カーボンフットプリントの33%を占める。目標の達成では、排出量を未開示の企業100社への開示エンゲージメントと、毎年2社から3社を対象とした削減エンゲージメントを主要アクションとした。2022年4月に導入した石油・ガスへの一部保険引受禁止、2040年までの石炭セクターからの段階的撤退も継続する。

 個人向け自動車保険では、データ把握が可能な主要市場として、オーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、スイス、英国の9ヵ国を選定し、同市場での排出量を2029年末までに2022年比30%減とする目標を設定した。達成に向けては、個人顧客2,000万人に電気自動車(EV)への切り替えを促す。加えて、自動車乗車時間を短くすることに対する保険加入者へのインセンティブをつけていく。
 

運用子会社投資ポートフォリオ

 運用子会社では、ピムコとアリアンツ・グローバル・インベスターズの2社の移行計画を盛り込んだ。ピムコは、投資先企業の削減エンゲージメントや、気候先進企業や気候ソリューションへの投資拡大、政策アドボカシーを提示。アリアンツ・グローバル・インベスターズは、グリーンボンボや再生可能エネルギー等への投資拡大を掲げている。詳細は、各社のホームページで説明している。

政府への提言

 各国政府への提言として、短期目標設定では、1.5℃目標と整合性のある国別削減目標(NDC)やパスウェイの設定を要求。長期目標では、野心的な1.5℃目標を掲げる企業や金融機関がうかばれるような政策や法規制が必要と述べた。

【参照ページ】Allianz announces first net-zero transition plan with 2030 intermediate targets for core business segments

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 保険世界大手独アリアンツは9月7日、スコープ3を含めた2050年カーボンニュートラルの達成に向け、初のネットゼロ移行計画(トランジション・プラン)を公表した。2030年までの中間目標も設定した。同社は競争法懸念の観点から、5月に「Net-Zero Insurance Alliance(NZIA)」から脱退していたが、NZIAの方針へのコミットメントは続けている。

【参考】【日本】損保大手3社、保険カーボンニュートラルの目標公表せず。競争法上の事案も複数(2023年8月2日)

 同社は、

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 保険世界大手独アリアンツは9月7日、スコープ3を含めた2050年カーボンニュートラルの達成に向け、初のネットゼロ移行計画(トランジション・プラン)を公表した。2030年までの中間目標も設定した。同社は競争法懸念の観点から、5月に「Net-Zero Insurance Alliance(NZIA)」から脱退していたが、NZIAの方針へのコミットメントは続けている。

【参考】【日本】損保大手3社、保険カーボンニュートラルの目標公表せず。競争法上の事案も複数(2023年8月2日)

 同社は、

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 保険世界大手独アリアンツは9月7日、スコープ3を含めた2050年カーボンニュートラルの達成に向け、初のネットゼロ移行計画(トランジション・プラン)を公表した。2030年までの中間目標も設定した。同社は競争法懸念の観点から、5月に「Net-Zero Insurance Alliance(NZIA)」から脱退していたが、NZIAの方針へのコミットメントは続けている。

【参考】【日本】損保大手3社、保険カーボンニュートラルの目標公表せず。競争法上の事案も複数(2023年8月2日)

 同社は、2018年にパリ協定1.5℃目標へのコミットを発表し、石炭関連向けの損害保険でもガイドラインを発表した。2019年には自己勘定投資ポートフォリオでの2050年カーボンニュートラル目標を発表、2022年にはスコープ1と2での2030年カーボンニュートラルも宣言すると同時に、投融資先やサプライヤーにも1.5℃目標と整合する削減目標を掲げるよう要請していた。

【参考】【国際】アリアンツ、石油・ガスへの一部保険禁止。投融資先やサプライヤーにも1.5度目標要求(2022年5月2日)

 今回の移行計画では、主に事業運営、自己勘定投資ポートフォリオ、企業向け損害保険ポートフォリオ、運用子会社の投資ポートフォリオ、政府への提言の5つの分野で実施内容を示した。

事業運営

 事業運営では、当初掲げていたスコープ1と2の2030年までのカーボンニュートラル目標達成を、カテゴリー15「投融資ポートフォリオ」以外のスコープ3にも拡大した上で、2029年末までに1年前倒しした。2023年までに再生可能エネルギー調達割合100%を達成し、出張からの排出量削減では持続可能な航空燃料(SAF)プログラムを2023年に開始。主要サプライヤーでのカーボンニュートラル宣言済み企業を2025年までに100%にし、空調・冷房の代替エネルギーへの転換を始める。輸送では、2030年までに電動車100%への転換も表明しつつ、化石燃料フリー自動車のみを対象にするかどうかは毎年レビューをして実現可能性を確認していくとした。これらを通じ、2029年時点で2019年比65%減、2030年時点で70%減を達成。残りをオフセットするとみられる。

自己勘定投資ポートフォリオ

 自己勘定投資ポートフォリオのカーボンフットプリントでは、上場株式と社債のアセットクラスでは、2022年末時点で36%減を達成済み。今回新たに、2029年末までに二酸化炭素排出量を原単位で2019年比50%削減目標を設定した。不動産、輸送、石油・ガス、鉄鋼、電力の5つのセクターを対象に、セクター目標も設定した。加えて、直接保有不動産資産及び合弁会社からのカーボンフットプリントも、総量で科学的根拠に基づく1.5℃目標を達成することも掲げた。積極投資分野では、気候変動緩和と気候変動適応の双方を対象に2029年末までに200億ユーロの投資目標を掲げた。運用会社と投資先企業へのエンゲージメントも重視する。

損害保険ポートフォリオ

 企業向け損害保険ポートフォリオでのカーボンフットプリントでは、水素、アンモニア、グリーンビルディング、電気自動車(EV)、バッテリー、炭素回収・貯留(CCS)、鉄道、廃棄物エネルギー等のグリーントランジション分野からの損害保険売上を、2029年末までに2022年比150%増する目標を設定した。

 さらに、企業向けでは、二酸化炭素排出量データの把握が可能な保険引受元のみを対象に、2029年末までに2022年比45%減の目標を設定した。データ把握が可能な企業は、企業向け保険料収入の16%、推定される保険カーボンフットプリントの33%を占める。目標の達成では、排出量を未開示の企業100社への開示エンゲージメントと、毎年2社から3社を対象とした削減エンゲージメントを主要アクションとした。2022年4月に導入した石油・ガスへの一部保険引受禁止、2040年までの石炭セクターからの段階的撤退も継続する。

 個人向け自動車保険では、データ把握が可能な主要市場として、オーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、スイス、英国の9ヵ国を選定し、同市場での排出量を2029年末までに2022年比30%減とする目標を設定した。達成に向けては、個人顧客2,000万人に電気自動車(EV)への切り替えを促す。加えて、自動車乗車時間を短くすることに対する保険加入者へのインセンティブをつけていく。
 

運用子会社投資ポートフォリオ

 運用子会社では、ピムコとアリアンツ・グローバル・インベスターズの2社の移行計画を盛り込んだ。ピムコは、投資先企業の削減エンゲージメントや、気候先進企業や気候ソリューションへの投資拡大、政策アドボカシーを提示。アリアンツ・グローバル・インベスターズは、グリーンボンボや再生可能エネルギー等への投資拡大を掲げている。詳細は、各社のホームページで説明している。

政府への提言

 各国政府への提言として、短期目標設定では、1.5℃目標と整合性のある国別削減目標(NDC)やパスウェイの設定を要求。長期目標では、野心的な1.5℃目標を掲げる企業や金融機関がうかばれるような政策や法規制が必要と述べた。

【参照ページ】Allianz announces first net-zero transition plan with 2030 intermediate targets for core business segments

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