Sustainable Japan | 世界のサステナビリティ・ESG投資・SDGs

【国際】18カ国加盟海洋パネル、CO2排出ギャップの35%は海洋経済で削減可能と発表

 日本を含む18ヶ国政府首脳は9月20日、米ニューヨークで「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル(海洋パネル)」を開催し、海洋を活用した気候変動ソリューションに関する最新報告書を発表した。世界の排出量削減必要量の35%を海洋が供給できると表明した。

 同会議は、ノルウェー主導で2018年に発足。ノルウェーとパラオが共同議長を務めている。参加国は、ノルウェー、パラオ、日本、米国、カナダ、英国、フランス、ポルトガル、オーストラリア、インドネシア、チリ、メキシコ、ジャマイカ、フィジー、ガーナ、ケニア、ナミビア、セイシェルの18ヶ国。今回から新たにセイシェルが加わった。事務局は世界資源研究所(WRI)が務めている。

【参考】【国際】日本含む14ヶ国とWRI、気候変動のための海洋経済改革でレポート発表。業界イニシアチブも発足(2019年9月29日)
【参考】【国際】日本含む14ヶ国政府、持続可能な海洋経済で2030年ビジョン合意。漁業、海運、観光、エネルギー等(2020年12月7日)

 加盟18カ国は、合計すると、世界の海岸線の50%、世界の排他的経済水域(EEZ)の45%、世界の漁業の26%、世界の船舶の20%を占める規模になる。同パネルは、2020年に「持続可能な海洋経済のための変革、保護、生産及び繁栄に関するビジョン」を表明。海洋の富、海洋の健全性、海洋の平等、海洋の知見、海洋のファイナンスの5つの主要な分野で2030年の目標を設定している。

 また、同パネルは2019年に、気温上昇を1.5℃に留めるための海洋の役割をまとめた科学レポートを発表。今回の報告書はそのアップデート版となる。加盟国の大学やNGOから28人が執筆者として参加。日本からの執筆者はいなかった。

 今回、1.5℃目標の達成に向け、海洋経済が担えるソリューションとして、「海洋再生可能エネルギーの拡大」「海運の脱炭素化」「沿岸及び海洋生態系の保全と再生」「海洋からの低炭素食料の利用」「海洋での二酸化炭素除去(CDR)及び海底での炭素回収・貯留(CCS)の開発」「海洋観光の脱炭素化」「海洋石油・ガス採掘の削減」の7分野を挙げた。

 2050年時点で期待される削減ポテンシャルは、全体で13.76Gtで、国連環境計画(UNEP)が発表している2022年時点「排出量ギャップ」の35%を占める。内訳は、海洋石油・ガス採掘の削減で5.3Gt、海洋再生可能エネルギーの拡大で3.6Gt、海運の脱炭素化が2Gt、海洋からの低炭素食料の利用が1.47Gt、CDR及びCCSが1Gt、沿岸及び海洋生態系が0.285Gt、海洋観光の脱炭素化が0.1Gtだった。


(出所)Ocean Panel

 現時点で、7分野への投資額は、開発資金全体の0.01%に過ぎず、圧倒的に資金が不足している。同報告書は今回、2030年から2050年にかけて、持続可能な海洋経済に2兆米ドルの資金が必要と提唱した。

 今回、新規加盟のセイシェルを除く加盟17カ国の首脳は、共同コミュニケも発表している。まず、国連海洋法条約の「国家管轄圏外区域の海洋生物多様性(BBNJ)」に関する政府間会議が3月に、公海での生物多様性保全と持続可能な資源利用に関する条約案に合意したことを歓迎。自らの早期批准を約束するだけでなく、他国にも批准を呼びかけた。

【参考】【国際】国際海洋法条約加盟国、公海上の海洋遺伝資源や海洋保護区設定で条約案に合意。20年の協議経て(2023年3月22日)

 また、共同コミュニケでは、今回の報告書をもとに、国内および集団的な海洋ベースの気候変動対策を加速させることも表明。但し、「海洋石油・ガス採掘の削減」については言及しなかった。

【参照ページ】RELEASE: Ocean-based Climate Action Could Deliver Up to 35% of Emission Cuts Needed to Limit Temperature Rise to 1.5°C by 2050
【参照ページ】Joint Ocean Panel Leaders Communiqué 2023

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 日本を含む18ヶ国政府首脳は9月20日、米ニューヨークで「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル(海洋パネル)」を開催し、海洋を活用した気候変動ソリューションに関する最新報告書を発表した。世界の排出量削減必要量の35%を海洋が供給できると表明した。

 同会議は、

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 日本を含む18ヶ国政府首脳は9月20日、米ニューヨークで「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル(海洋パネル)」を開催し、海洋を活用した気候変動ソリューションに関する最新報告書を発表した。世界の排出量削減必要量の35%を海洋が供給できると表明した。

 同会議は、

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 日本を含む18ヶ国政府首脳は9月20日、米ニューヨークで「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル(海洋パネル)」を開催し、海洋を活用した気候変動ソリューションに関する最新報告書を発表した。世界の排出量削減必要量の35%を海洋が供給できると表明した。

 同会議は、ノルウェー主導で2018年に発足。ノルウェーとパラオが共同議長を務めている。参加国は、ノルウェー、パラオ、日本、米国、カナダ、英国、フランス、ポルトガル、オーストラリア、インドネシア、チリ、メキシコ、ジャマイカ、フィジー、ガーナ、ケニア、ナミビア、セイシェルの18ヶ国。今回から新たにセイシェルが加わった。事務局は世界資源研究所(WRI)が務めている。

【参考】【国際】日本含む14ヶ国とWRI、気候変動のための海洋経済改革でレポート発表。業界イニシアチブも発足(2019年9月29日)
【参考】【国際】日本含む14ヶ国政府、持続可能な海洋経済で2030年ビジョン合意。漁業、海運、観光、エネルギー等(2020年12月7日)

 加盟18カ国は、合計すると、世界の海岸線の50%、世界の排他的経済水域(EEZ)の45%、世界の漁業の26%、世界の船舶の20%を占める規模になる。同パネルは、2020年に「持続可能な海洋経済のための変革、保護、生産及び繁栄に関するビジョン」を表明。海洋の富、海洋の健全性、海洋の平等、海洋の知見、海洋のファイナンスの5つの主要な分野で2030年の目標を設定している。

 また、同パネルは2019年に、気温上昇を1.5℃に留めるための海洋の役割をまとめた科学レポートを発表。今回の報告書はそのアップデート版となる。加盟国の大学やNGOから28人が執筆者として参加。日本からの執筆者はいなかった。

 今回、1.5℃目標の達成に向け、海洋経済が担えるソリューションとして、「海洋再生可能エネルギーの拡大」「海運の脱炭素化」「沿岸及び海洋生態系の保全と再生」「海洋からの低炭素食料の利用」「海洋での二酸化炭素除去(CDR)及び海底での炭素回収・貯留(CCS)の開発」「海洋観光の脱炭素化」「海洋石油・ガス採掘の削減」の7分野を挙げた。

 2050年時点で期待される削減ポテンシャルは、全体で13.76Gtで、国連環境計画(UNEP)が発表している2022年時点「排出量ギャップ」の35%を占める。内訳は、海洋石油・ガス採掘の削減で5.3Gt、海洋再生可能エネルギーの拡大で3.6Gt、海運の脱炭素化が2Gt、海洋からの低炭素食料の利用が1.47Gt、CDR及びCCSが1Gt、沿岸及び海洋生態系が0.285Gt、海洋観光の脱炭素化が0.1Gtだった。


(出所)Ocean Panel

 現時点で、7分野への投資額は、開発資金全体の0.01%に過ぎず、圧倒的に資金が不足している。同報告書は今回、2030年から2050年にかけて、持続可能な海洋経済に2兆米ドルの資金が必要と提唱した。

 今回、新規加盟のセイシェルを除く加盟17カ国の首脳は、共同コミュニケも発表している。まず、国連海洋法条約の「国家管轄圏外区域の海洋生物多様性(BBNJ)」に関する政府間会議が3月に、公海での生物多様性保全と持続可能な資源利用に関する条約案に合意したことを歓迎。自らの早期批准を約束するだけでなく、他国にも批准を呼びかけた。

【参考】【国際】国際海洋法条約加盟国、公海上の海洋遺伝資源や海洋保護区設定で条約案に合意。20年の協議経て(2023年3月22日)

 また、共同コミュニケでは、今回の報告書をもとに、国内および集団的な海洋ベースの気候変動対策を加速させることも表明。但し、「海洋石油・ガス採掘の削減」については言及しなかった。

【参照ページ】RELEASE: Ocean-based Climate Action Could Deliver Up to 35% of Emission Cuts Needed to Limit Temperature Rise to 1.5°C by 2050
【参照ページ】Joint Ocean Panel Leaders Communiqué 2023

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