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【国際】NGO、アパレル企業約800社の水リスクを分析。2050年までに水リスク上昇

 英金融シンクタンクNGOのプラネット・トラッカーは3月26日、世界のアパレル企業約800社、10万件以上の工場を対象に、水リスクを可視化し分析した報告書を発表した。同NGOは1月、大手29社を対象に情報開示状況を分析していたが、今回はオープンソースデータを活用し分析範囲を広げた。

【参考】【国際】NGO、アパレル大手29社の水リスク情報開示を分析。首位はヘインズ。日本の1社は下位(2024年2月5日)

 同報告書は、世界資源研究所(WRI)の水リスク・データ「WRI Aqueduct 4.0」とアパレル企業のサプライチェーンデータを可視化した「Open Supply Hub」のオープンソースデータを活用。新たなダッシュボードを作成し分析した。WRI Aqueduct 4.0は2023年9月時点、Open Supply Hubは2023年8月時点のデータを利用した。


(出所)プラネット・トラッカー

 対象企業は、アディダス、GAP、H&M、インディテックス、リーバイ・ストラウス、NIKE、フィリップ・バン・ヒューゼン(PVH)、ラルフローレン、VFコーポレーション等。日本企業は、ファーストリテイリング、アシックス、東レ、クラレ、帝人、倉敷紡績、東洋紡、豊島、YKK等が分析対象。

 同報告書では、原材料の生産から染色に至るまでサプライチェーン全体において、水リスクが高く重大な脅威となるため、企業や投資家に対して長期的な持続可能性のために水リスク管理の優先度を上げるよう伝えた。

 まず、前回1月の調査対象となったアパレル大手29社について、水の依存と影響について報告しているか、水のフットプリントを削減するための目標設定しているかを調査。29社のうち15社がCDPへの報告と目標設定していることがわかった。目標設定では水の使用効率等、1つか2つに焦点を当てているため、サプライチェーン全体を網羅し、依存と影響をカバーするために科学的根拠に基づく環境目標策定イニシアチブScience Based Targets Network(SBTN)が2024年1月に発表したガイダンスを活用することを推奨した。

【参考】【国際】SBTN、淡水分野の科学的目標設定ガイド発行。既存の4枠組みとの親和性高い(2024年2月2日)

 次に、10万件以上のアパレル工場のデータに基づき、水リスクが高い地域を分析。アパレル工場の約半分が中国とトルコに位置しており、水ストレススコアが中程度に高い地域であることが判明。バングラデシュとインドを含めると工場数は約3分の2を占めており、水ストレススコアはバングラデシュは非常に高い、インドは高いという結果だった。


(出所)プラネット・トラッカー

 2050年時点での水ストレススコアの予測では、ほとんどの地域で水ストレススコアが向上。特に、トルコ、ブラジル、ベトナムの工場で大きくスコアが上昇する見込み。また、アパレル企業約800社の本社の地域ごとに水ストレススコアを分析。北米に本社を置く企業が最も2050年までに水ストレススコアが高くなると予測した。


(出所)プラネット・トラッカー

 財務リスクでは、すでに多くの主要アパレル拠点において水ストレスが大きいため、粗利率55%、EBITマージン15%で運営している一般的なアパレル企業では、水リスクの影響により売上原価が1%増加すると、営業利益が3%減少する可能性があると試算した。

 アパレル関連の企業は、水の使用量と水関連リスクへのエクスポージャーについて議論し、報告すべきだと主張。金融機関は、投資判断において水関連リスクを考慮し、水使用量とリスクを開示するように企業にエンゲージメントを行い、水に関する科学的根拠に基づく目標設定等、リスク軽減のための戦略を支援すべきだとした。

【参照ページ】Major Fashion Brands and Retailers Face Growing Water-Related Risks, says Planet Tracker Report
【参照ページ】Apparel Facilities and Water Exposure

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 英金融シンクタンクNGOのプラネット・トラッカーは3月26日、世界のアパレル企業約800社、10万件以上の工場を対象に、水リスクを可視化し分析した報告書を発表した。同NGOは1月、大手29社を対象に情報開示状況を分析していたが、今回はオープンソースデータを活用し分析範囲を広げた。

【参考】【国際】NGO、アパレル大手29社の水リスク情報開示を分析。首位はヘインズ。日本の1社は下位(2024年2月5日)

 同報告書は、

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 英金融シンクタンクNGOのプラネット・トラッカーは3月26日、世界のアパレル企業約800社、10万件以上の工場を対象に、水リスクを可視化し分析した報告書を発表した。同NGOは1月、大手29社を対象に情報開示状況を分析していたが、今回はオープンソースデータを活用し分析範囲を広げた。

【参考】【国際】NGO、アパレル大手29社の水リスク情報開示を分析。首位はヘインズ。日本の1社は下位(2024年2月5日)

 同報告書は、

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 英金融シンクタンクNGOのプラネット・トラッカーは3月26日、世界のアパレル企業約800社、10万件以上の工場を対象に、水リスクを可視化し分析した報告書を発表した。同NGOは1月、大手29社を対象に情報開示状況を分析していたが、今回はオープンソースデータを活用し分析範囲を広げた。

【参考】【国際】NGO、アパレル大手29社の水リスク情報開示を分析。首位はヘインズ。日本の1社は下位(2024年2月5日)

 同報告書は、世界資源研究所(WRI)の水リスク・データ「WRI Aqueduct 4.0」とアパレル企業のサプライチェーンデータを可視化した「Open Supply Hub」のオープンソースデータを活用。新たなダッシュボードを作成し分析した。WRI Aqueduct 4.0は2023年9月時点、Open Supply Hubは2023年8月時点のデータを利用した。


(出所)プラネット・トラッカー

 対象企業は、アディダス、GAP、H&M、インディテックス、リーバイ・ストラウス、NIKE、フィリップ・バン・ヒューゼン(PVH)、ラルフローレン、VFコーポレーション等。日本企業は、ファーストリテイリング、アシックス、東レ、クラレ、帝人、倉敷紡績、東洋紡、豊島、YKK等が分析対象。

 同報告書では、原材料の生産から染色に至るまでサプライチェーン全体において、水リスクが高く重大な脅威となるため、企業や投資家に対して長期的な持続可能性のために水リスク管理の優先度を上げるよう伝えた。

 まず、前回1月の調査対象となったアパレル大手29社について、水の依存と影響について報告しているか、水のフットプリントを削減するための目標設定しているかを調査。29社のうち15社がCDPへの報告と目標設定していることがわかった。目標設定では水の使用効率等、1つか2つに焦点を当てているため、サプライチェーン全体を網羅し、依存と影響をカバーするために科学的根拠に基づく環境目標策定イニシアチブScience Based Targets Network(SBTN)が2024年1月に発表したガイダンスを活用することを推奨した。

【参考】【国際】SBTN、淡水分野の科学的目標設定ガイド発行。既存の4枠組みとの親和性高い(2024年2月2日)

 次に、10万件以上のアパレル工場のデータに基づき、水リスクが高い地域を分析。アパレル工場の約半分が中国とトルコに位置しており、水ストレススコアが中程度に高い地域であることが判明。バングラデシュとインドを含めると工場数は約3分の2を占めており、水ストレススコアはバングラデシュは非常に高い、インドは高いという結果だった。


(出所)プラネット・トラッカー

 2050年時点での水ストレススコアの予測では、ほとんどの地域で水ストレススコアが向上。特に、トルコ、ブラジル、ベトナムの工場で大きくスコアが上昇する見込み。また、アパレル企業約800社の本社の地域ごとに水ストレススコアを分析。北米に本社を置く企業が最も2050年までに水ストレススコアが高くなると予測した。


(出所)プラネット・トラッカー

 財務リスクでは、すでに多くの主要アパレル拠点において水ストレスが大きいため、粗利率55%、EBITマージン15%で運営している一般的なアパレル企業では、水リスクの影響により売上原価が1%増加すると、営業利益が3%減少する可能性があると試算した。

 アパレル関連の企業は、水の使用量と水関連リスクへのエクスポージャーについて議論し、報告すべきだと主張。金融機関は、投資判断において水関連リスクを考慮し、水使用量とリスクを開示するように企業にエンゲージメントを行い、水に関する科学的根拠に基づく目標設定等、リスク軽減のための戦略を支援すべきだとした。

【参照ページ】Major Fashion Brands and Retailers Face Growing Water-Related Risks, says Planet Tracker Report
【参照ページ】Apparel Facilities and Water Exposure

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