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【EU】EU理事会、省エネ、EV・FCV、海運、データセンター等のCO2削減法案可決。重要3法が成立

 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は7月25日、気候変動対策関連のEU法案3本を可決。これらの法案が全て成立した。

 今回成立した1つ目は、改正エネルギー効率指令。EU官報掲載から20日後に発効する。同改正指令では、欧州委員会の原案通り、2020年発表の2030年のエネルギー消費予測と比較し、2030年の最終エネルギー消費量を11.7%以上削減することを法定目標とした。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、エネルギー効率指令改正で政治的合意。コジェネ支援も2030年に終了(2023年3月12日)

 同指令は、全てのEU加盟国に対し、EU全体の目標達成に貢献することを義務化。加盟国は、すでに策定・報告が義務付けられている自国のエネルギー・気候統合計画(NECPs)を改訂案を2023年6月に提出し、最終計画は2024年に提出されることになった。

 最終エネルギー消費の年間省エネ目標は、2024年から2030年にかけて徐々に引き上げられる。加盟国は、この期間中、最終エネルギー消費の平均1.49%の年間節減を新たに確保し、2030年12月31日には1.9%に達する。

 EU全体の目標を、各国の目標に配分する方法も、附属書Iの中で定義した。エネルギー原単位、1人当たりGDP、再生可能エネルギーの開発状況、省エネ可能性等を計算指標として用いた。年間目標は、2024年から2030年にかけて徐々に引き上げられる。そのため、期間中の削減幅の全体平均は1.49%だが、2030年12月31日には1.9%に上る。

 EU加盟国は、年間目標の達成に向け、現行および改正された建築物エネルギー性能指令に基づく政策措置、EU排出量取引制度(設備、建築物、輸送)に由来する措置、緊急時のエネルギー対策を通じて実現したエネルギー節約を、目標達成に向けた計算に含めることができる。また、公共部門が率先垂範するため、公共施設では毎年1.9%の省エネ達成を義務化。加えて、公共機関が所有する建物の総床面積の毎年3%以上を省エネ改修することも義務付けた。

 加えて、大規模データセンター所有及び運営企業の情報公開制度も導入される。ITに関する電力需要が500kW以上の場合、データセンターの床面積、データ・フロー量、データ・ストック量、電力消費量、熱効率、廃水量、再生可能エネルギー利用状況等を公表しなけれならない。さらに、ITに関する電力需要が1MW以上の場合、データセンターのエネルギー効率に関する欧州行動規範の最新版で言及されているベストプラクティスを考慮する努力義務も課された。

 一方、欧州委員会の原案では、地域暖房に接続される天然ガスを使用の高効率のコージェネレーション(熱電併給)システムへの支援は2030年で終了し、それ以外の化石燃料使用の全面禁止も掲げていたが、最終的に、2050年までに、段階的に再生可能エネルギー比率を高め、化石燃料依存を下げていく定量基準を設定するにとどめた。

 今回成立した2つ目は、EV充電ステーションと、水素補給ステーションの大幅普及を義務化した「代替燃料インフラ規則(AFIR)」。EU官報掲載から20日後に発効し、発効の6ヶ月後から適用される。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、陸上・海上・航空での充電・水素補給インフラ増強法案で政治的合意(2023年3月29日)

 同規則では、EU加盟国に対し、2025年以降、「欧州横断輸送(TEN-T)ネットワーク」と呼ばれるEUの主要幹線道路に沿い、出力150kW以上の自動車及びバン用の急速EV充電ステーション60km毎ごとに設置することを義務化。さらに、大型車両向けにも、出力350kW以上の超急速充電ステーションを、TEN-Tコアネットワークでは60km毎、2025年以降はより大規模なTEN-T総合ネットワークでは100km毎に設置し、2030年までにネットワークを完全にカバーすることも義務付けた。充電・給油ステーションでは、決済カードや非接触型機器を使って支払いをできるようにすることも義務付けた。

 水素補給ステーションは、2030年以降、主要都市間とTEN-Tコアネットワークを対象に、200km毎に設置することを義務付けた。

 船舶では、大型旅客船が25回以上、RO-RO船が40回以上、コンテナ船が100回以上寄港する大型港では、2030年までに停泊時の陸上電力供給を開始することを義務化。空港では、2025年までにすべてのゲートで、2030年までにすべてのリモートスタンドで、定置航空機に電力を供給しなければならない。

 今回成立した3つ目は、「FuelEU maritime」イニシアチブに関する新規則。EU官報掲載の20日後に発効する。適用を2025年1月1日だが、一部2024年8月31日から適用されるものもある。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、海運の法定CO2削減目標で政治的合意。2025年に80%減(2023年3月25日)

 同規則では、今回合意したのは、FuelEU Maritime規則。原単位排出量を2025年に2%、2050年には80%削減する法定削減目標を設定した。企業の予見可能性を高め、企業のイノベーションを加速させる。また、非生物起源の再生可能燃料(RFNBO)普及に関する特別インセンティブも盛り込んだ。

 同目標で含まれる排出量には、燃料の燃焼から発生する二酸化炭素だけでなく、燃料サプライチェーン全体で発生するメタンや一酸化二窒素も対象。港湾停泊時の大気汚染を削減する観点も盛り込み、旅客船やコンテナ船に港湾から陸上給電(OPS)できる技術や、代替ゼロエミッション技術の使用も義務付ける。選択する技術にはフリーハンドを与え、詳細規定は避けた。また「プーリング・メカニズム」も導入し、船舶毎ではなく、複数の船舶の合算で目標達成することも可能とした。違反時の罰金は、海運部門のカーボンニュートラル化を支援するプロジェクトを資金使途とすることも定めた。

【参照ページ】Council adopts energy efficiency directive
【参照ページ】Alternative fuels infrastructure: Council adopts new law for more recharging and refuelling stations across Europe
【参照ページ】FuelEU maritime initiative: Council adopts new law to decarbonise the maritime sector

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は7月25日、気候変動対策関連のEU法案3本を可決。これらの法案が全て成立した。

 今回成立した1つ目は、

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 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は7月25日、気候変動対策関連のEU法案3本を可決。これらの法案が全て成立した。

 今回成立した1つ目は、

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 今回成立した1つ目は、改正エネルギー効率指令。EU官報掲載から20日後に発効する。同改正指令では、欧州委員会の原案通り、2020年発表の2030年のエネルギー消費予測と比較し、2030年の最終エネルギー消費量を11.7%以上削減することを法定目標とした。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、エネルギー効率指令改正で政治的合意。コジェネ支援も2030年に終了(2023年3月12日)

 同指令は、全てのEU加盟国に対し、EU全体の目標達成に貢献することを義務化。加盟国は、すでに策定・報告が義務付けられている自国のエネルギー・気候統合計画(NECPs)を改訂案を2023年6月に提出し、最終計画は2024年に提出されることになった。

 最終エネルギー消費の年間省エネ目標は、2024年から2030年にかけて徐々に引き上げられる。加盟国は、この期間中、最終エネルギー消費の平均1.49%の年間節減を新たに確保し、2030年12月31日には1.9%に達する。

 EU全体の目標を、各国の目標に配分する方法も、附属書Iの中で定義した。エネルギー原単位、1人当たりGDP、再生可能エネルギーの開発状況、省エネ可能性等を計算指標として用いた。年間目標は、2024年から2030年にかけて徐々に引き上げられる。そのため、期間中の削減幅の全体平均は1.49%だが、2030年12月31日には1.9%に上る。

 EU加盟国は、年間目標の達成に向け、現行および改正された建築物エネルギー性能指令に基づく政策措置、EU排出量取引制度(設備、建築物、輸送)に由来する措置、緊急時のエネルギー対策を通じて実現したエネルギー節約を、目標達成に向けた計算に含めることができる。また、公共部門が率先垂範するため、公共施設では毎年1.9%の省エネ達成を義務化。加えて、公共機関が所有する建物の総床面積の毎年3%以上を省エネ改修することも義務付けた。

 加えて、大規模データセンター所有及び運営企業の情報公開制度も導入される。ITに関する電力需要が500kW以上の場合、データセンターの床面積、データ・フロー量、データ・ストック量、電力消費量、熱効率、廃水量、再生可能エネルギー利用状況等を公表しなけれならない。さらに、ITに関する電力需要が1MW以上の場合、データセンターのエネルギー効率に関する欧州行動規範の最新版で言及されているベストプラクティスを考慮する努力義務も課された。

 一方、欧州委員会の原案では、地域暖房に接続される天然ガスを使用の高効率のコージェネレーション(熱電併給)システムへの支援は2030年で終了し、それ以外の化石燃料使用の全面禁止も掲げていたが、最終的に、2050年までに、段階的に再生可能エネルギー比率を高め、化石燃料依存を下げていく定量基準を設定するにとどめた。

 今回成立した2つ目は、EV充電ステーションと、水素補給ステーションの大幅普及を義務化した「代替燃料インフラ規則(AFIR)」。EU官報掲載から20日後に発効し、発効の6ヶ月後から適用される。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、陸上・海上・航空での充電・水素補給インフラ増強法案で政治的合意(2023年3月29日)

 同規則では、EU加盟国に対し、2025年以降、「欧州横断輸送(TEN-T)ネットワーク」と呼ばれるEUの主要幹線道路に沿い、出力150kW以上の自動車及びバン用の急速EV充電ステーション60km毎ごとに設置することを義務化。さらに、大型車両向けにも、出力350kW以上の超急速充電ステーションを、TEN-Tコアネットワークでは60km毎、2025年以降はより大規模なTEN-T総合ネットワークでは100km毎に設置し、2030年までにネットワークを完全にカバーすることも義務付けた。充電・給油ステーションでは、決済カードや非接触型機器を使って支払いをできるようにすることも義務付けた。

 水素補給ステーションは、2030年以降、主要都市間とTEN-Tコアネットワークを対象に、200km毎に設置することを義務付けた。

 船舶では、大型旅客船が25回以上、RO-RO船が40回以上、コンテナ船が100回以上寄港する大型港では、2030年までに停泊時の陸上電力供給を開始することを義務化。空港では、2025年までにすべてのゲートで、2030年までにすべてのリモートスタンドで、定置航空機に電力を供給しなければならない。

 今回成立した3つ目は、「FuelEU maritime」イニシアチブに関する新規則。EU官報掲載の20日後に発効する。適用を2025年1月1日だが、一部2024年8月31日から適用されるものもある。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、海運の法定CO2削減目標で政治的合意。2025年に80%減(2023年3月25日)

 同規則では、今回合意したのは、FuelEU Maritime規則。原単位排出量を2025年に2%、2050年には80%削減する法定削減目標を設定した。企業の予見可能性を高め、企業のイノベーションを加速させる。また、非生物起源の再生可能燃料(RFNBO)普及に関する特別インセンティブも盛り込んだ。

 同目標で含まれる排出量には、燃料の燃焼から発生する二酸化炭素だけでなく、燃料サプライチェーン全体で発生するメタンや一酸化二窒素も対象。港湾停泊時の大気汚染を削減する観点も盛り込み、旅客船やコンテナ船に港湾から陸上給電(OPS)できる技術や、代替ゼロエミッション技術の使用も義務付ける。選択する技術にはフリーハンドを与え、詳細規定は避けた。また「プーリング・メカニズム」も導入し、船舶毎ではなく、複数の船舶の合算で目標達成することも可能とした。違反時の罰金は、海運部門のカーボンニュートラル化を支援するプロジェクトを資金使途とすることも定めた。

【参照ページ】Council adopts energy efficiency directive
【参照ページ】Alternative fuels infrastructure: Council adopts new law for more recharging and refuelling stations across Europe
【参照ページ】FuelEU maritime initiative: Council adopts new law to decarbonise the maritime sector

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