企業の「透明性」を加速させる革新的なアプリが米国で話題を呼んでいる。ニューヨークに拠点を置くスタートアップのCollectively社は1月16日、企業の従業員が自社の職場の状況や仕事について完全に匿名で議論を交わすことができるメモアプリ、「Memo」を一般公開した。
匿名という安全な環境下において従業員同士らの本音の議論を促し、企業内部の問題を公に可視化することで企業に対して職場環境の改善を働きかけるのが狙いだ。
今回の一般公開に先立って既にヒューレット・パッカードやIBM、アマゾン、シティグループら一部大手企業の従業員や米軍などで利用されており、数千のユーザーが活発な議論を交わしていた。
CollectivelyのCEOを務めるRyan Janssen氏は同アプリの匿名性について「我々は、ユーザーの勤務先を確認するために企業に連絡したりするようなことはない。すべてのコミュニケーションは独立した個人同士のモバイルネットワークを通して行われる。また我々はIPアドレスも含めてユーザーの個人情報を一切蓄積しない。だからこそ、ユーザーはかつて感じたことがないほど快適な方法で自社について議論を交わしているのだ」と語る。
Memoはこれまで一部企業の従業員しか利用することができなかったが、今回の一般公開によりどの企業の従業員でも特定企業の掲示板を作成することができるようになった。また、所属企業に関係なく誰でも参加できる公開掲示板機能も用意されている。
Janssen氏は「公開掲示板で交わされている会話の質の高さには目をみはるものがある。このアプリが企業内部のコミュニケーションにおいてよく機能することはわかっていた。しかし、異なる企業に勤める見知らぬ人同士が公の場でお互いをサポートし合っている光景は本当に喜ばしいものだ」と語った。
また、アプリ悪用の可能性については「これまでにわかっていることは、人々は自分の勤める会社を好きになりたいということだ。自分の無力さを感じるとき、人は仕事に対して不満を抱く。Memoはそのようなユーザーに『声』を与えている。そしてこれまでのところ、彼らはその『声」を、良い方向に向かうための力として利用している」と説明する。
今後、同社は企業向けにセンチメント分析など従業員理解に役立つツールを提供することで収益化を計画しているとのことだ。「従業員たちは、自社の顧客や技術、ビジネスチャンスのことをよく理解している。彼らの声に耳を傾けない企業経営者は、その全てを自分の力だけで把握しなければならない」とJanssen氏は語る。
Memo上で交わされる議論の内容を見ることで、企業はよりはっきりと従業員の本音を把握することができるようになる。一方で、社内に存在する問題が従業員の声によって外部に晒されるリスクも抱えることになり、企業はますます隠しごとができなくなる。Memoの登場に対する反応も企業によって大きく分かれそうだ。
【企業サイト】Memo
(※写真提供:pcruciatti / Shutterstock.com)
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