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【カナダ】世界初の遺伝子組換えサケの販売が開始。求められる社会的議論

 米マサチューセッツ州のアクアバンティ・テクノロジーは今年8月、世界初の遺伝子組換え(GMO)サケ「アクア・アドバンテージ」の販売をカナダで開始した。このサケは、遺伝子組換えでないサケに比べ、出荷までの日数を約半分に短縮でき、18カ月程度で出荷できるという。大豆、トウモロコシ等のGMOはすでに20年以上の歴史があるが、GMO技術が動物にも適用され、市場に出回るのは今回が初。餌消費を削減できることで、環境負荷削減と企業のコスト削減が両方の効果があると注目されているが、GMO反対団体は強く反発している。

 遺伝子組換え製品は、開発に非常に長い年月がかけられる。英国生物学者Rebecca Nesbit氏は、9月5日号の「Scientific American」で発表した論文の中で、現在、耐病性をもつブタ、鳥インフルエンザに耐性をもつニワトリ、角のない酪農牛等で研究開発が進められているという。「アクア・アドバンテージ」の開発でも25年が費やされた。しかし、実際に実を結ぶものは限られている。2016年に遺伝子組換え商品の生産は、大豆、とうもろこし、綿、ナ菜種がほとんど。また適用技術は、除草剤や害虫に耐性を持つ遺伝子を備えたもので、全体の99%以上がこのタイプ。
 
 耐性遺伝子を持つ作物の栽培では、雑草や害虫もさらに耐性を強化し対抗してしまうという悩ましい状況を生む。そこで、Nesbit氏は、遺伝子組換え作物と非遺伝子組換え作物を交互に作付しするなど、適切な農地管理を提案している。一方で、同氏は、遺伝子組換え食品の安全性には言及は避けた。遺伝組換え製品の栽培の多くは、発展途上国で気候変動や病気に対処するための手段として用いられており、発展途上国の農家の所得向上に繋がっているという向きもある。一方、耐性害虫や耐性雑草により、遺伝子組換え製品は、農業のサステナビリティを損なうという意見もある。

 新技術として注目されているのは、ゲノム編集の分野だ。特に、遺伝子の位置を特定して削除、置換、挿入することができる「CRISPR-Cas9」は革命的とも言われている。これは、元々は細菌や古細菌のウィルス感染を防ぐために開発された免疫防御システムの一つで、これまで難しかった遺伝子操作の「標的化」が可能になったことで、農業や医療の分野で応用が期待されている。

 日本の農林水産省は、遺伝子組換え食品について、外来の遺伝子やその発現による新たな物質が、人の健康や動植物等に悪影響を生じさせる可能性が否定できないため、個別の案件毎に国が安全性評価を行い、確認・承認を得たもののみが栽培、輸入等ができるとしている。規制に関しては、研究開発段階では現行のカルタヘナ法に基づいて適正に管理し、 最終的に商品化される新品種の使用に当たっては、規制当局との事前協議を行い、規制の適用判断を仰ぐという方針をHP等で公開している。しかし、ゲノム編集については、技術の紹介に留まっている。新たな技術の受容可否については、当局の判断が不可欠となる。日本でも積極的な社会的議論が必要となってきている。

【参照ページ】The Future of GMO Food
【参照ページ】農林水産省:遺伝子組換え技術等の先端技術の農業・食品への応用について
【参照ページ】ゲノム編集技術と克服すべき重要課題

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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