【インタビュー】野村総合研究所の国内事業会社初グリーンボンド発行。野村総合研究所と野村證券が語るストーリー 2016/12/29 事例を見る

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 2016年9月16日。野村総合研究所(NRI)が国内市場初の円建てグリーンボンドを発行した。100億円の10年無担保社債を、使途を環境目的のために用いる「グリーンボンド」という形で発行したのだ。欧米では近年グリーンボンド発行が急増しており、日本企業でも金融機関やメーカー海外金融子会社による海外市場における外貨建てグリーンボンドの発行事例はあったが、まだ国内市場における円建てグリーンボンド事例はなく、世界的なトレンドからの遅れが指摘されていた。しかしこの日、ついに国内市場初の円建てグリーンボンド発行が成し遂げられた。また、本グリーンボンドは、日本の事業会社が初めて発行したグリーンボンドでもある。

 金融機関や企業財務部門での経験がない方には、社債発行やグリーンボンド発行と言われてもピンとこないかもしれない。社債による企業の資金調達は欧米のほうが先行した歴史があり、日本で社債発行という慣例が生まれたのは1990年代後半から。社債発行の現場では、社債を発行する企業(発行体)とその社債を購入する保険会社や銀行、年金基金などの機関投資家という双方の状況を見定めながら、社債という金融商品の条件面を定めていき、さらに法律で定められた形式をクリアしていく必要がある。発行体と機関投資家の間に入って活躍するのが証券会社。今回のNRIによるグリーンボンド発行を主幹事として担当し引き受けたのは野村證券だ。今回はさらにグリーンボンドという形式をとったため、通常の社債発行にはない新たな手続きや書類の整備が必要となった。前例がないこと尽くしの今回、その舞台裏では、発行体であるNRIと主幹事証券会社を務めた野村證券による大きな努力がなされていた。

 社債の条件設定として最も注目されるのは利率。NRIは国内格付会社である格付投資情報センター(R&I)から「AA-」の格付を獲得し、グリーンボンドの利率は最終的に年0.25%と条件決定された。グリーンボンドの適格性要件として最も重視される調達資金の使途は、現在建設中でNRIが入居予定の「横浜野村ビル」の一部を信託財産の形式で所有する信託受益権の取得資金、並びに同ビルに係る設備投資の資金だと説明されている。このグリーンボンドの適格性要件の確認は、英国とフランスに本部を置く海外のESG評価会社であるVigeoEIRISが担い、「グリーンボンドのサステナビリティに関するセカンドオピニオン」を表明した。加えて、国内の格付投資情報センター(R&I)は、このNRIのグリーンボンド発行に合わせ、「R&Iグリーンボンドアセスメント」というグリーンボンドの評価方法を開発し、最上位評価である「GA1」を付与した。

 グリーンボンドは今、気候変動対策手段として世界的に注目されている。今年のG20杭州サミットでも、世界主要国の首脳の間で、グリーンボンドが気候変動対策のためのカギを握ることになると大きくクローズアップされた。日本では「グリーンボンド」というと昔話題になったものという感覚を抱く人もいるかもしれないが、グリーンボンドはここからが本番で、国内でも発行が常態化していくことが期待されている。NRIと野村證券は、国内事業会社発行グリーンボンド1号債となった今回のグリーンボンドを、世界基準に照らしても高い質を備え、今後の日本グリーンボンド市場を拡大するという大きな目標へと昇華させる布石を打っていた。その立役者となった、NRIの横山賢次・常務執行役員と本田健司・サステナビリティ推進室室長、野村證券の栗原裕治・コーポレート・ファイナンス一部部長と中村徳雄・資本市場部部長にお話を伺った。

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(最左)中村徳雄・野村證券 資本市場部部長
(左中)栗原裕治・野村證券 コーポレート・ファイナンス一部部長
(中央)横山賢次・野村総合研究所 常務執行役員
(右中)本田健司・野村総合研究所 サステナビリティ推進室室長
(最右)夫馬賢治・ニューラル代表取締役社長(聞き手)

今回のグリーンボンド発行に至った経緯はどのようなものだったのですか?

野村総合研究所(NRI)常務執行役員 横山賢次氏:

nri-green-bond2 当社では、以前から環境に力を入れていましたが、リサイクル等、言わば「地味」な活動が中心でした。当社は、コーポレート・ステートメントとして「未来創発」を掲げていますので、ここ数年、世の中全体にインパクトもたらそうと、CSV(Creating Shared Value)という考え方から新しい角度での取組を模索していました。その中で浮上したのがグリーンボンドです。今年の1月ぐらいだったと思いますが、既発社債の償還対応にグリーンボンドを活用できるのではというアイデアが浮かび、日頃から資金調達で相談をしている野村證券に話をしたというのがそもそもの発端です。グリーンボンドを、将来に向けてのひとつのカタチとして広めていくことが当社のCSVとなるのではと考えました。

野村證券 コーポレート・ファイナンス一部部長 栗原裕治氏:

nri-green-bond3 横山氏をはじめNRIからグリーンボンドに挑戦したいという話を頂いたとき、私たちもそれに共感し、実現に向けて動き出そうということになりました。しかし、国内初の案件でしたので、どのような点に気をつけなければいけないかを慎重に議論していきました。

グリーンボンドの使途であるグリーンビルディング構想はどう始まったのですか?

横山氏:

 グリーンボンドの使途は、現在野村不動産が建設している「横浜野村ビル」の信託受益権の取得と、このビルへの設備投資です。野村不動産は、もともと環境性能の高いビルを造ろうと動いており、環境ビルディング認証であるCASBEEやLEEDなどを取得していく計画がグリーンボンドの話の前からありました。当社は、このビルの4分の1を取得することが決まっていましたので、当社からも野村不動産に対してビルの環境面について要望を出していました。

 「横浜野村ビル」を当社のグリーンボンドの使途とした理由は、その汎用性です。太陽光発電や風力発電を対象としたグリーンボンドの発行では、多くの日本企業に広がっていく動きにはしていけないかもしれない。しかしオフィスは世の中で一般的なもの。このオフィスの分野でグリーンボンドを活用していければ、日本企業にとってのひとつのパターンにできるのではないかと考えました。

 そのため、今回のグリーンボンドの発行は、対象物件施工者としての野村不動産、発行体としてのNRI、主幹事の野村證券という野村グループの動きが重なった合作のようなものだと言えます。

グリーンボンド発行に向けて注意した点や不安だった点は?

横山氏:

 当社は上場企業として、キャッシュの金額や使途に対する説明責任があります。グリーンボンドの発行に対しては、「コストをかけてどうしてこのようなことをやるのか」という見方もありうるでしょう。社内で議論を醸成していく上では、今年3月ぐらいより、「『持続性社会』『未来創造』が私達の仕事である」「NRIが実現すべき仕事なのだ」とずっと説明を続けてきました。当社は日頃から、AIロボットや人工知能、シンギュラリティなど新しい動きの仕掛け人(コンダクター)たるべしという想いがありますので、社内からは今回のグリーンボンドも「これはまさにNRIらしい取組だね」という声が結構上がりました。ですので、単なる当社の資金調達としてだけでなく、グリーンボンドが欧米のように国内にも広く普及するためにはという視点で非常に気を使いました。その点でも、野村證券からも多くのアイデアをいただきました。

野村證券 資本市場部部長 中村徳雄氏:

nri-green-bond4 海外ではESG投資家が大きな存在となっている一方、日本ではESG投資に特化した投資家はまだいないと認識しています。この中で発行するグリーンボンドをどのような投資家に対してアピールしていくか、さらに今後のグリーンボンド発行に広がりを見せるものにしていけるか。このあたりを、NRIと一緒に議論しました。

栗原氏:

 特に今はマーケット環境が非常に不安定な状況です。グリーンボンドの商品性、そして発行体としてのNRIの想いを、いかに多くの機関投資家に伝えていけるかに大きな注意を払いました。起債の過程では、VigeoEIRISやR&Iから第三者評価を獲得し、機関投資家に慎重に魅力を伝えていきました。結果として、非常に多くの投資家からの注目を集めることができました。

他にこだわった点はありますか?

中村氏:

 いかに「正統なグリーンボンド」にしていくかという点にはこだわりました。海外における先行事例を調べながら、日本の資本市場の慣行及び金商法の枠組みに沿った正統なグリーンボンドとするためのポイントを把握し、ひとつひとつ実現していきました。

横山氏:

 世の中には「『グリーンボンド』とただ自称しているだけの『グリーンボンド』」があります。グローバル基準の正統なグリーンボンドとしていくため、厳しい評価をして頂ける評価機関を選定しようという結論になりました。その結果、グリーンボンドの評価機関として、VigeoEIRISとR&Iの2社にお願いすることになりました。

VigeoEIRISやR&Iの2社を選んだ理由は?

横山氏:

 VigeoEIRISとR&Iでは評価の視点が異なります。VigeoEIRISは、グリーンボンドの適格性を評価するグローバル基準としてICMA(国際資本市場協会)が定めているGBP(グリーンボンド原則)に則し、発行体自身のESG状況、社債のグリーンボンドとしての適格性、投資家への報告という3点から評価を行います。R&Iは、グリーンボンドで調達された資金が環境問題の解決に資する事業に投資される程度に対する独自の評価として、GBA(グリーンボンド・アセスメント)という格付を与えます。R&Iを選定した背景には、今後国内のグリーンボンドを盛り上げていくために国内の評価機関にも入ってほしいという想いもありました。

野村総合研究所(NRI)サステナビリティ推進室室長 本田健司氏:

nri-green-bond5 評価機関の2社からは、グリーンボンドの適格性判断の中で、「横浜野村ビル」がCASBEEやLEEDといった環境認証を取得していることをプラスに評価して頂きました。ただし、誤解して頂きたくないのは、CASBEEやLEED認証を取っていれば、必ずグリーンボンドの適格性を認めてもらえることではないということです。それ以外にも様々な視点があるからです。

 普通グリーンボンドの評価と言われれば、グリーンボンドという商品そのものの評価と考えますよね。しかし、VigeoEIRISの評価は、発行体企業自身について、それも環境要素だけではなく、社会、ガバナンス含めたESG全体が対象となります。考えれば納得のいく話ですが、最初は驚きました。

 評価への回答の実務面では、CDPが役に立ちました。当社は毎年CDP調査への回答も実施しているのですが、ESG観点で網羅的に聞かれる点は似ていると思いましたね。

横山氏:

 VigeoEIRISの評価に答えていくことは、当社にとっても良い「レントゲン」となりました。ビルの運用面に関する質問への回答では、当社独自の環境マネジメントシステム(NRI EMS)が役立ちました。また、ガバナンス面では、VigeoEIRISとの間で本当に大きな議論がありました。海外では委員会等設置会社型のガバナンスが一般的ですが、日本では監査役設置会社が多い。この監査役設置会社という制度のもとで、日本企業は様々な工夫をして実効性もあるのですが、VigeoEIRISにはなかなか理解してもらえなかったですね。本田室長には「フランスまで行ってでも説明してこい」と言ったりもしました(笑)

本田氏:

 私もフランスまで乗り込む覚悟でいました。私が関与してからは、1ヶ月ほどかけて、お互いに英文の資料などを何度もやりとりし、最後はテレビ会議に落ち着きましたが(笑)。VigeoEIRISのもともとの基準で考えると、日本の監査役設置会社型のガバナンスなどの制度は、最低評価の「Limited(限定的)」と判断されてしまう。しかし、日本の状況を根気強く説明し、最終的にガバナンス評価欄には、「国内基準において」と「国際基準において」と二段階で記載するという形に着地できました。

横山氏:

 まさに本邦初の事業会社グリーンボンドとしての産みの苦しみですね。VigeoEIRISから日本の監査役設置会社の理解を得られたということは、今後グリーンボンドを発行する他の日本企業に向けての良い地ならしができたと思っていますし、この苦労が当社のCSVなのだと思っています。

主幹事証券会社にとっての「産みの苦しみ」はありましたか?

中村氏:

 グリーンボンドも新たな金融商品ですので、金商法との絡みでは「産みの苦しみ」がありました。VigeoEIRISなどからのセカンドオピニオンというグローバルスタンダードを、金商法で定められている国内の開示書類の中にどう埋め込んでいくかについては苦労がありました。そういう意味でも、グリーンボンドの今後の発行体のためには、かなり地ならしができたと思います。

グリーンボンドに対する機関投資家側の反応はどうでしたか?

横山氏:

 当社のロードショー(機関投資家へのプレゼンテーション)は、機関投資家側からの反応を知る良い実験台になったと思いますね(笑)。機関投資家の中には、いままさにESG投資の部門を立ち上げようとしているところがあったり、エクイティ(株式)だけでなく新たにボンド(債券)でのESG投資を検討しているところがあったりと、いろいろなことが見えてきました。

中村氏:

 私たち主幹事証券会社にとっても、機関投資家がESG投資の実績をアピール材料に使おうという動きが始まっていることを知ることができたのは、新たな発見でした。今はまだESG投資の投資対象が少なく、機関投資家がESG投資を大々的にアピールすることは難しい状況です。しかし逆に言えば、今後機関投資家からもESG投資への大きなニーズが出てくる可能性があります。機関投資家側のニーズと発行体側の動きが重なり合い、今後グリーンボンド市場が拡大していくことを期待しています。

国内にはグリーンボンドは金利が高いというイメージがあるようですが?

中村氏:

 多くの日本の機関投資家は、グリーンボンドを社債の延長ととらえていますので、グリーンボンドと言うだけで社債利率(クーポン)が他の社債より高くなる、または低くなるということはありません。また市場が非常にボラタイルな(変動が大きい)状況ですので、今回のグリーンボンドのクーポンが高いか低いかは一概には言えないものがあります。

 ただし、機関投資家側からは、いつも以上の関心の高さが伺えました。特に、保険会社や信託銀行など中央の大手の機関投資家からの高い関心がありました。今回は中央の機関投資家比率が通常の案件に比べてとても高い中で、妥当なクーポンを設定できたという点は大きな意義があると思います。グリーンボンドだからクーポンが低い、というロジックが成り立つには、グリーンボンドに対するより大きな社会認知が必要だと思います。

グリーンボンドの今後の展望は?

栗原氏:

 私たち、事業会社のコーポレート・ファイナンス担当の部門からしますと、今回の起債に対しては、なぜNRIがグリーンボンドを発行する判断をしたのか、条件面はどうだったのかという問い合わせを、事業会社の方々から多数頂きました。グリーンボンド発行に対する事業会社の関心は非常に高いと実感しました。

中村氏:

 昨今、社債発行市場が非常に活況を呈し、事業会社は社債市場にアクセスしやすくなっています。引受側の部門からしますと、グリーンボンドの発行にあたっては、発行体企業がその意義をいかに社内で共有していけるかが非常に重要だと実感しましたし、この点がグリーンボンド発行へのハードルになっているのだと思います。いかにここを克服していけるかが今後のカギになると思います。

 グリーンボンドの発行は、投資家、発行体企業の双方で、まだまだ黎明期のような状況です。環境を全社方針として掲げる企業も増えてきており、さらにグリーンボンドがその実現手段のひとつとして活用できるということもようやく理解されてきたというのが国内の現状です。ここからがスタートだと思います。

横山氏:

 今回の発行で、当社が社内の意義付けをスムーズに進められた背景には、たまたま私自身がオフィス部門と財務部門の双方を担当する立場にいたということが大きかったと思います。また、役員会のレベルでも、過去にも環境委員会報告やサステナブルな話を継続的にしてきましたが、内容が難しく、理解はゆっくりとしたものでした。それが、今回のグリーンボンド発行を通じて、その意義の理解が進み、大きく浸透したと感じています。

事業会社や機関投資家に向けてのメッセージをお願いします

栗原氏:

 今回社債の販売活動に加わる中で、ESG投資の枠を持っている機関投資家がいるとわかったことは大きな発見でした。私たちも、日頃の発行体企業とのコミュニケーションの中で、グリーンボンドの認知を高めていきたいと思っています。

中村氏:

 グリーンボンドは通常の社債発行よりもやることは多くはなります。しかし、ESG投資を行いたい機関投資家がいる中で、グリーンボンドという手法は、発行体のメッセージやコミットメントをアピールする良いきっかけとなります。ハードルはありますが、それを上回る価値のある結果となると考えています。

本田氏:

 日本と比べ、ヨーロッパや、また最近はアメリカでも、ESGに対する意識が高いと思います。ヨーロッパ企業にはCSVを当たり前のように実践している企業も多い一方、国内はまだまだ少ない。投資家側からの動きは、企業の変化に向けた重要なカギになっていくと思います。

横山氏:

 サステナブルというテーマは、グローバルな大きな流れになってきています。この流れにどう対応していけるかが今後の肝なのだと思います。

 当社の環境活動もグローバルを意識するようになりました。パリ協定や「SBT(Science Based Targets、科学的根拠に基づく排出削減目標)」の会議などにも足を運ぶようになりました。今回のグリーンボンド発行を通じて、日本にもグリーンボンドを含め「持続性ある未来社会」を構築していく基盤が生まれつつあるという手応えを強く感じています。いままさに変わろうとしている時期なのだと思います。

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グリーンボンドのセカンドオピニオンを実施したVigeoEIRISのコメント

VigeoEIRIS サステナビリティボンド・サービス部門長 Laurie Chesne氏

vegioeiris 今回のグリーンボンドの評価では、NRIの企業レベルでのESGへの良好なコミットメントや、調達資金使途がGBP(グリーンボンド原則)に即しているとの判断から、グリーンボンドとしての最高位の保証レベルである「合理的(Reasonable)」を付与しました。

 評価の上で難しかった点は、対象案件である「横浜野村ビル」の建設や保守に関わるステークホルダーが多く、そのステークホルダーへの情報アクセスが限られていた点です。それを克服するため、関連する全てのステークホルダーに対してインタビューを実施しました。また、インタビューの前には、対象者に対して、発行体であるNRIのコミットメントや実践度合い、及び「野村不動産ビル」の建設や運用などに関する個別の質問表を送りました。NRIとステークホルダーの対応は、全ての評価プロセスにおいて協力的でした。

 グリーンボンドには、発行体にとって様々なメリットがあります。イノベーションや持続可能な開発に対するコミットメントをアピールしていくこともできますし、持続可能なバリューチェーンの構築に向けて社内の動きを一体化していくこともできます。国際的な機関投資家や地域の機関投資家は、グリーン資産ポートフォリオを構築する動きがある中、ESG投資家にアクセスすることで、株主構成を多様にしていくこともできます。

 今回のNRIグリーンボンドは日本として事業会社初のグリーンボンドとなります。GPIFによるPRI(責任投資原則)への署名を始め日本では責任投資原則の考え方が大きな規模で浸透し始めている兆候があり、資産運用にESG投資を統合していく動きも加速しているようです。このトレンドはグリーンボンド市場を後押ししていくと思います。より多くの日本企業がグリーンボンドを発行していくことを期待しています。

R&Iグリーンボンドアセスメントを実施したR&Iのコメント

格付投資情報センター(R&I) 
ストラクチャードファイナンス本部スペシャライズドファイナンスグループ
チーフアナリスト(グループリーダー) 森丘敬氏
アナリスト 齋藤恭子氏

r-i 今回の評価では、当社のグリーンボンド評価基準に基づき、対象事業であるオフィスビルの省エネルギー性能が相応に高いこと、資金管理方法の厳格性やレポーティング予定内容の充実度合いなどを考慮し、最上位の「GA1」を付与いたしました。

 検討に時間を要した点は、資金使途のグリーン度合いをどのように評価していくかでした。評価においては、GBP(グリーンボンド原則)や、これまでに世界で発行されたグリーンボンドの事例を尊重するとともに、日本の環境政策や環境認証にも配慮しました。資料の収集やヒアリングに時間がかかりましたが、NRIおよび関係者の方々に積極的な協力をいただき、形にすることができました。

 今年9月にR&Iグリーンボンドアセスメントをリリースして以来、発行体、証券会社、銀行等から多くの問い合わせをいただいており、日本の市場関係者の間でグリーンボンドへの関心が高まっていることを感じています。グリーンボンドの発行には、対象事業の特定や評価、資金管理体制などの整備に時間とコストを要します。しかし、グリーンボンドの発行を通じて、環境活動への積極的な関与・推進を行うことができ、さらに地球環境の維持・改善に力を入れる企業としてのプレゼンス向上につながることと考えています。ぜひご検討ください。

インタビューを終えて

 インタビューの回答にもあったように、かつては「グリーンボンド」に明確な定義や規定がなく、呼称だけのグリーンボンドが多数を占めていた。しかしここ数年でグリーンボンドの定義や適格性規定は大きく進歩しており、国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則(GMP)や気候債券イニシアチブ(CBI)の気候変動債券基準(Climate Bond Standards)が世界的なデファクトスタンダードとなっている。これによりグリーンボンド市場は金融関係者の間でも信頼度が上がり、CBIによると2015年のグリーンボンド発行高は世界で420億米ドル(約5兆円)、2016年には1,000億米ドル(約12兆円)にまで飛躍すると見立てている。

 日本市場では前例がなかった事業会社によるグリーンボンドは、今回NRIと野村證券が、先陣を切って産みの苦しみに耐えてくれたことで、大きく発行プロセスが整備され、両者が狙うように他社にも活用しやすいものになったと率直に感じる。NRIが使途としたようにオフィスの分野でもグリーンボンドの適格性は得られるなど、グリーンボンドの対象は実は非常に幅広い。

 日本では社債発行は実質的に上場企業に限られるなど、社債やグリーンボンドを活用できる企業は多くないのかもしれない。しかし、グリーンボンドが機関投資家にも受入れられてきているこの時代、日本だけでなく海外市場でグリーンボンドを発行する企業が国内からたくさん出てきてもおかしくない。今後、多くの日本企業が、日本や海外市場でグリーンボンドを発行することを、強く期待するとともに、支援していきたい。

【参照】NRIグリーンボンド
【社債要綱】社債要綱
【セカンドオピニオン】グリーンボンドのサステナビリティに関するセカンドオピニオン
【グリーンボンドアセスメント】R&Iグリーンボンドアセスメント

著者プロフィール

聞き手:夫馬 賢治

株式会社ニューラル 代表取締役社長兼サステナビリティ研究所所長

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