ロンドンの北に位置するハートフォードシャーにある国立大学、ハートフォードシャー大学は、英国初となる二酸化炭素排出ゼロの学生寮施設が今年9月に完成すると発表した。この建物の建設は、3,000人を収容できる寮で、1億2,000万ポンド(約180億円)をかけて現在建設が進んでいる。このプロジェクトには、仏資産運用会社Meridiam、仏建設会社Bouygues、英住宅建設NGOのDerwent Housing Association、英金融機関Legal & Generalなどが参画している。
ハートフォード大学は、寮の建設に当たり、英国で普及している不動産環境価値評価基準「BREEAM」の取得を目指してきた。BREEAMは、英国建築研究所(Building Research Establishment)とエネルギー・環境コンサルタントのECD Architectsにより1990年に開発した世界初の不動産環境価値評価指標。既存・新築のどちらにも適用でき、管理、健康と快適、エネルギー、交通、水資源、材料、敷地利用、地域生態系、汚染の最大9分野で評価される。BREEAM認証は英国外にも広がりを見せ、今日までに77カ国544,700ヶ所以上でプロジェクトの認証が行われ、登録建築物は220万以上もある。BREEAMは、「法律より厳しい基準を掲げることにより、所有者、居住者、設計者、運営者によるサステナビリティへの自覚を高め、最良の設計・運営・管理を奨励すると共に、それらの建物を区別し認識させる」ことを目標として掲げている。
今回の学生寮では、建設コンサルタント会社のTurner & Townsendが認証機関の役割を担い、スキームの実施を後押ししてきた。そしてこの程、BREEAM認証の最高位である「Outstanding」認証を獲得した。Outstandingは、85%以上のスコアを獲得した建物に対してのみ付与され、家庭住宅以外の建築物で「Outstanding」を獲得できたものは1%にも満たない。格付では、以降、「Excellent(70%以上)」、「Very Good(55%以上)」、「Good(45%以上)」、「Pass(30%以上)、「Unclassified(30%未満)」の全6段階に分けられている。 Excellent以上の取得案件でも10%しかなく、Very Good以上でも25%。Outstnding認証はどれだけ優れているかがわかる。
とくに今回評価されたのは、学生寮内に設置されたバイオマス燃料センター。導入された「熱電併給システム(CHP)」では、熱と電力を同時に発生させ、両方を効率よく使用する方法。今回のものは、バイオマスをエネルギー源とし発電を行い、さらに排熱を利用して給湯等に有効利用する。これにより、キャンパス内で使用する電力のかなりの部分はこのセンターで賄うことが可能となり、二酸化炭素排出をゼロにできた。BREEAMの評価体系においても、エネルギーが全体評価の19%を占め最大の構成要素となっており、特に二酸化炭素排出量の削減に関しては配点が高くなっている。それ他のBREEAM基準は、健康・ウェルビーイング(15%)、資材(12.5%)、運営・管理(12%)、汚染(10%)、土地利用とエコロジー(10%)、交通(8%)、廃棄物処理(7.5%)、水(6%)。また特別に「イノベーション」に値する取り組みに関しては10%が追加加点される。
日本でも同様な評価基準として、2001年に国土交通省が主導して作成した「CASBEE」という指標がある。しかし日本の不動産市場では、免震や汚染物質対応などへの関心は高いが、エネルギーや水といった資源利用の観点はあまり考慮されていないため、CASBEEの認知度も低いままだ。二酸化炭素排出の分野では、発電や交通の分野には大きな視線が注がれているものの、建物からの排出は日本全体の3分の1を占めるにもかかわらず、対応が遅くれている。
【参照ページ】UK's first True Zero Carbon student campus given green light University of Hertfordshire
【参照サイト】国土交通省:環境等新たな価値の不動産への取込み
【認証】BREEAM
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