西サハラでの資源管理問題に関する活動を行っているNGOのWestern Sahara Resource Watch(WSRW)は3月3日、モロッコ政府が西サハラを含む地域での太陽光発電所建設計画の資金調達のためにグリーンボンドを発行した問題で、グリーンボンドの第三者評価を行い適格との判断を下したESG評価会社Vigeo Eirisに対して問題を指摘した。
同プロジェクトは、グリーンボンドにより調達した資金で、太陽光発電所をモロッコ国内で1件、西サハラで2件建設するというもの。モロッコ政府は、グリーンボンドの発行の目処がついたことで、サウジアラビアのACWA社は、西サハラでの太陽光発電建設に着手することを決定した。3件の発電設備容量は合計170MW。そのうち西サハラでは100MWの創出を目指す。モロッコ政府は将来的にはさらに規模を拡大する予定。
この西サハラでのプロジェクトが問題視されているのは、同地域はモロッコとサハラ・アラブ民主共和国亡命政府の間で領土問題を抱える「西サハラ問題」のためだ。同地域は現在、モロッコが実効支配しているが、同国による西サハラの領土占領は国際的な合意を得ておらず、「不法占領」の問題を抱えている。約40ヶ国はサハラ・アラブ民主共和国亡命政府と外交関係を結んでおり、亡命政府はアフリカ連合(AU)の公式加盟国にもなっている。また欧州司法裁判所(ECJ)は2016年12月、EUとモロッコの間での合意や条約は西サハラには適用されないとの判決を下し、モロッコによる西サハラの管轄権を却下する判断を下している。
WSRWによると、Vigeo Eirisは当該グリーンボンドに適格性判断を下した理由について、(1)同社の役割は、プロジェクトによる気候変動およびエネルギー効率と、それらによる持続可能性への影響の評価に限定されている、(2)モロッコによるサハラ以南のプロジェクトに関連する認証を拒絶することは政治行為であり、独立調査機関としての役割のためそのようなことはできない、(3)今回のプロジェクトは、国際的に認知されたモロッコ国境内または国境外で地域住民の生活状況を改善することができる、としている。
企業の経済活動や金融市場の中で、環境や社会の重要性が認識されるにつれ、欧米では領土問題等の政治的課題についても、関連性がクローズアップされるようになってきている。Vigeo Eirisが主張するように、企業や認証機関が政治的行為に対して一定の判断を下すことは容易ではない。しかし、同様の課題は今後、Vigeo Eiris以外の評価機関にも突きつけられていく。イスラエルによるパレスチナ入植、ロシアによるクリミア半島併合などの問題について、一定の見解を持つ機関投資家も出てきている。ESG関連の評価機関には、重い社会的責任がのしかかってきている。
【参考】【ノルウェー】政府年金基金、西サハラで石油採掘調査の2企業を投資先から排除(2016年7月14日)
【参照ページ】The Vigeo Eiris shock: from ethics to occupation
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