パリの大審裁判所(地方裁判所に相当)は2月23日、米アップルが、仏全土のアップルストアで抗議活動を展開しているNGOのAttacに対し、活動停止と損害賠償を求めた裁判で、アップル側の訴えを棄却し、Attac側が勝訴した。AttacはアップルがEUへの納税を回避していると抗議している。
判決理由は、Attacの行為が暴力やバンダリズム(器物損壊)、顧客の入店阻止を行っておらず、単に店舗周辺や店舗内に集まっているだけであり、それを制限する十分な正当性がないと述べた。さらに、同団体は欧州人権条約およびEU基本権憲章で保障されている表現の自由や集会・結社の自由に沿って行動しており、公共の利益に関する問題であるという判断を示した。仏ウェブサイト「MacGeneration」によると、アップルに対し、Attacの裁判費用として2,000ユーロ(約26万円)を支払うよう命じたという。
Attacは、昨年11月には南部の都市エクス・アン・プロヴァンスのアップルストアでガラス窓に「税金を払え」とペイントし、12月にはパリのオペラハウス脇のアップルストアに約100人が集まり、コンガを踊ったり垂れ幕を掲げる等し、今年2月にはパリの高等裁判所の前でストームトルーパー等、スターウォーズをテーマにした衣装で集結し、アップルを邪悪な銀河帝国と見なしたデモを行っている。
Attacの抗議活動が始まったのは、2016年8月に欧州委員会が過去3年間の調査結果を踏まえ、130億ユーロ(約1.7兆円)の追徴課税をアイルランド政府がアップルから徴収するよう命じて以来。アイルランド政府が、同国にあるアップルの欧州本社に対し違法な政府補助に当たる課税優遇措置を行っていたと結論付けた。BBCによると、アイルランドの平均的な法人税率は12.5%だが、アップルに対しては、長期にわたって非常に低い税率を適用していた。例えば2003年にはヨーロッパ全土での利益に対して1%、2014年には約0.005%だったという。
これに対しアップルとアイルランド政府は、税回避を否定し、追徴課税には応じられないとEUの裁判所に提訴している。アップルは、Attacに対しては、「これまで意見を平和的に表現する個人や団体を支援する長い伝統」を持っていたが、Attacは「店舗を破壊・汚損してスタッフや顧客の安全を脅かす」と批判。大審裁判所に提訴していた。
【参照ページ】Apple Denied Request to Ban Tax Protestors From Its Stores in France
【参照ページ】Apple asks court to ban tax campaigners from its French stores
【参照ページ】Apple should repay Ireland 13bn euros, European Commission rules
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